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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第70話 いざ冀州へ 後編

「アニキ――――――、美羽様との涙の別れは終わりましたか?姫が少し嫉妬してましたよ――――――」

現れたのは麗羽、猪々子、斗詩、鈴々です。

猪々子はニヤニヤしながら私と麗羽の顔を伺っています。

「もうっ!文ちゃん、そういうの止めなよ。正宗様に失礼だよ」

デリカシーの欠片もない猪々子には斗詩の爪の垢を飲ませてやりたいです。

「猪々子さん、いい加減におよしなさい。正宗様と私はあなたの玩具じゃありませんわ」

麗羽は剣の鞘の部分で猪々子を本気で殴りつけました。

「い、痛だぁぁ、姫ぇ―――、何するんですか」

猪々子は涙目で麗羽に抗議をしました。

「文ちゃん、自業自得だよ」

「猪々子は馬鹿だから仕方ないのだ!」

鈴々が大声で猪々子を笑っていました。

「鈴々、テメエ許さねえ!」

猪々子は鈴々に剣を抜刀して襲いかかりました。

「許してくれなんて、一言も言っていないのだ」

鈴々が猪々子に売り言葉、買い言葉で返すと彼女達は周囲を無視して乱闘をしだしました。

「あの二人は本当に好きですわね」

麗羽は頭が痛そうに眉間を指で押さえていました。

「麗羽様、ちゃんと言わないと」

斗詩は麗羽の耳元に小さい声で言いました。

「そうでしたわね。あの二人のお陰で忘れるところでしたわ」

麗羽は私に向き直ると背を伸ばして、深呼吸を数回しました。

「正宗様、左将軍の正式な就任おめどうございます」

麗羽は私に頭を下げて祝いの言葉を言いました。

「麗羽、わざわざ畏まってどうしたんだい」

「正宗様、戦地に夫になる方を見送りにきたのですから、畏まって当然ですわ。正宗様のことですから大丈夫だとは思っています。ですが、戦場では何が起きてもおかしくないですわ。だから、私の願いを聞いてくださいませんこと。必ず無事に私の元にお戻りください。これはお守りですわ」

麗羽は話の終わりに不意打ちの様に顔を近づけ接吻をしてきました。

前世から女性の口づけをしたことがなかった私は、ただ口をパクパクさせ、さながら酸欠状態の魚のようです。

「な、何をしたんだ?」

私は動揺しながら麗羽に言いました。

「何って、接吻ですわ。叔父様が男を戦地に送る時は妻がお守りに接吻をする習わしがあると聞きましたの」

麗羽は頬を染めながら、私をチラチラと見ています。

そんな習わしがあるのでしょうか?

前世では映画でそんなシーンを見たことがありますけど・・・・・・。

「そういう習わしあるとは初耳だな・・・・・・。でも、麗羽に接吻して貰って凄く嬉しかったよ」

私は素直な気持ちを恥ずかしい気持ちを押さえて麗羽に伝えました。

「え、そういう習わしはないんですの?」

麗羽はリンゴのように真っ赤な顔になりながら言いました。

「習わしなんか関係ない。麗羽のその気持ちは嬉しいし、できればもう一度して貰えないかな」

私は我ながら大胆なことを口にしました。

「次は正宗様がせ、接吻をしてくださいませんこと。私ばかり恥ずかしい想いをするのは卑怯ですわ」

私が麗羽に接吻の催促をすると、彼女は目を反らしながら言いました。

「えっっと、わかった」

私は勇気を振り絞って自分から麗羽に接吻をしました。

「アニキ―――、姫―――、もう少し周りを気にしてくれよ―――」

「麗羽お姉ちゃんと正宗お兄ちゃんが口づけをしているのだ」

いつのまにか猪々子と鈴々は喧嘩を止め、こちらをニヤニヤしながら見ていました。

「お前達、いつから見ていたんだ」

私は恐る恐る聞きました。

「麗羽様が接吻するところからだけど」

「なのだっ!」

猪々子と鈴々は二人仲良く元気に応えました。

「ふ、二人とも黙っていなさい。正宗様、ご武運をお祈りいたしますわ。さあ、あなた達帰りますわよ!」

麗羽は顔を真っ赤にして、私に見送りの言葉を告げました。

私の顔は先ほどから暑いので、麗羽同様、私の顔も真っ赤でしょう。

人前で接吻をするなど、私らしくないです。

「アニキ、ラーメン百杯で手を打つよ」

「鈴々もそれでいいのだ」

「あなた達っ!許せませんわ。折檻して上げます!」

麗羽は剣を抜いて、猪々子と鈴々に攻撃をしました。

「姫、あ、危ないじゃないですか!怪我したらどうすんですよ」

猪々子は大剣で麗羽の一撃を受け止め、彼女に抗議しました。

「猪々子さん・・・・・・、私達のことを面白がるなんて許せませんわ!」

麗羽はギリギリと猪々子を押しています。

「あははは、姫、冗談ですよ。冗談・・・・・・。鈴々、助けてくれよ―――。お前だって同罪じゃないか―――」

猪々子は麗羽の気迫に顔を引きつらせながら言いました。

「し、知らないのだ―――」

鈴々は愛馬じゃなく、愛豚に股がり逃げ出して行きました。

「ひでぇ――――――、アタイのことを見捨てやがったな!」

「何を無視してますの!」

猪々子が気を反らした瞬間、麗羽の剣が猪々子の耳元を擦りました。

「ひえええぇ――――――!」

猪々子は横方向に体を滑らし、麗羽から逃げ出しました。

「お待ちなさい――――――!」

麗羽は猪々子を追いかけて行きました。

「麗羽様、お強くなりましたね・・・・・・。はははっ・・・・・・」

斗詩は麗羽の走り去る後ろ姿を見ながら言いました。

「そうだな・・・・・・」

麗羽の剣術の腕が予想以上に上がっていたので驚愕しました。

「正宗様、私は麗羽様の元にいきます。このままだと文ちゃんが危ない気がするので。それでは、ご武運を」

斗詩は私に一礼すると去って行きました。

出陣の仕度が大体終わった頃、揚羽と今回私に同行しない者達が見送りに来ました。
 
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