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髑髏天使

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第五十六話 使長その十四


「私の力で出す酸は」
「混沌の中心にある力か」
 死神はそれだというのだ。
「それによってか」
「さて、覚悟はいいわね」
 神は動かない。その不気味な身体を全く動かさない。
 そのうえでだった。髑髏天使達に言うのである。
「このまま。溶かされることね」
「さて、どうしたものか」 
 ここでこう言ったのはバジリスクだった。
「俺の石化を使うか」
「酸を石にするのか」
「そうだ。それならどうか」
 こうだ。ワーウルフに対して言うのである。
「それで防ぐか」
「それはできそうにないな」
 ワーウルフはこうバジリスクの問いに答えた。
「残念だがな」
「できないか」
「そうだ、石では酸を止められない」
 だからだ。できないというのだ。
「それは無理だ」
「そう言うのか」
「他のことを考えるべきだな」
「俺は石化が最大の武器なのだがな」
「しかしそれはできない」
 また言ってみせるワーウルフだった。
「どうしてもな」
「通じないか」
「そうだ。そして俺の力もだ」
 今度はだ。ワーウルフが話すのだった。
「それはできないのだ」
「貴様もか」
「俺はこの身体で戦う」
 つまりだ。彼の得意技は接近戦だというのだ。その牙と爪によってである。
「しかし。これではだ」
「近付けないのだな」
「どうしてもな。できない」
 また言うワーウルフだった。
「溶かされてしまう」
「そういうことになるか」
「そうだ、俺も攻められない」
「手詰まりか、これでは」
 少なくとも彼等ではだった。有効な手は打てなかった。
 しかしだった。それでもだ。
 魔神達はそれぞれの手や目、口から光を放つ。それで酸を防いではいた。
 それは一定の効果を発揮していた。ある程度止めてはいた。
 しかしだ。それでもだ。
 それは完全ではない。少しずつだ。
 酸は彼等に迫っていた。全てを溶かしながらだ。
「さて、このままではね」
「溶かされるわね」
「そうなるか」
 九尾の狐とウェンティゴが忌々しげに言う。その酸を見ながら。
「そのつもりはなくても」
「そうなってしまうか」
「さて、どうするのかしら」
 余裕と共にだ。また言ってみせる神だった。
「覚悟を決めて運命を受け止めるのかしら」
「運命か」
 その言葉に反応を見せたのはだ。髑髏天使だった。
 彼は黄金の六枚の翼の姿だ。その姿でだ。
 神の巨大な姿を見据えてだ。こう言うのだった。
「運命を言うのか」
「そうよ、その通りよ」
 神は彼に対しても余裕を見せる。
「混沌に飲み込まれる。それが運命なのよ」
「運命はそうしたものではない」
 髑髏天使は神のその言葉を否定した。違うというのである。 
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