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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第69話 いざ冀州へ 前編

議場は霊帝が玉座に鎮座し、百官全てが居並び、厳粛な空気が周囲に漂っています。

私は霊帝の御前に平伏しています。

霊帝からの勅命を受けた日の夜に、皇帝の使者が現れ2日後に将軍の任命式を行うことを伝えていきました。

その後は、噂を聞きつけた袁逢殿と司馬防殿が将軍就任祝いにと鎧と涼州馬など色々な物を持参してきました。

後から聞いた話ですが、彼らはお互いの顔を立てるために、持参品の費用を折半で出したそうです。

私としては要らぬ争いをしないでくれてありがたいです。

姉上は「守り刀として持って行きなさい」と、私に私の家に代々伝わる家宝の短剣をくれました。

麗羽は意外にも私と一緒に付いて来ると言いませんでした。

「これより将軍の就任の議を執り行なう。劉正礼、前へ」

侍中が霊帝の斜め前に立つと彼は私に指示を出しました。

「はっ!」

私は短く返事をすると前に進みで平伏しました。

「劉正礼、面を上げよ。そちに持節・左将軍・開府・冀州刺史に任ず」

私が顔を上げると霊帝が玉座を離れ私に近づき、私に直接斧鉞を手渡しました。

「この劉正礼、謹んで拝命いたします」

「劉ヨウ、朕は御主の働きに期待するぞ。見事、朕に渾名す逆賊共を討伐せよ!」

霊帝は厳かな声で私に檄を飛ばしました。

「この劉正礼、必ずや陛下の期待に応えてみせます」

霊帝は私の言葉を聞き頷きました。

将軍の任命式はその後は何かあるでも無し、直ぐ終わりました。





任命式を終えた私は出陣の準備をしています。

袁逢殿と司馬防殿に頂いた真新しい軍装は気が引き締まる感じがします。

ところで、この軍装の色が深紅なのはどうにかならないでしょうか?

袁逢殿達に悪いですが、私は藍とか黒とか地味な色の方が好きなんですけど・・・・・・。

軍装から周囲に視線を戻すと、私の周囲では兵士達が慌ただしく動いています。

彼らの邪魔にならないように隅で様子を見ていた方が良いと思い、私は敷地の隅に移動しました。

先ほど、手持ち無沙汰だったので兵士達の作業を手伝おうとすると、「左将軍ともあろう御方が兵士混ざって荷造りなんてしてはいけません」と、兵士から大慌てで止められました。

凄く暇すぎます。

私は溜息をつくと、空を眺めながら、黄巾賊討伐に私と一緒に付いて行く者達のこと考えました。

それ意外の者達は揚羽と一緒に冀州入りすることになっています。

揚羽なら万事上手くやってくれるでしょう。

劉ヨウ組と司馬懿組に現地で困らないよう事前に官職を割り振っています。

<<劉ヨウ組>>

周瑜は「軍師」

司馬朗を「長史」

趙雲を「司馬」

太史慈を「営軍督」

満寵を「門下督」

夏候蘭を「刺姦督」

<<司馬懿組>>

司馬懿を「別駕従事」

司馬孚を「功曹従事」のまま据え置き

楽進を「主簿」のまま据え置き

李典を「功曹従事仮左」のまま据え置き

于禁「省事記室」のまま据え置き

榮菜には「従事中郎」の官職を与え私の家臣として、美羽と一緒に南陽郡に言ってもらうことになっています。

初め彼女にこの話を持ち込んだら渋い顔をされましたが、私が頭を下げて誠心誠意頼んだら快く聞いてくれました。

彼女には荊州で紀霊、文聘、諸葛玄の三人を最優先で士官させ、他にも有能な人材がいれば、美羽の家臣として取り込むように言っています。

それが、終わり次第、彼女は私の元に戻って来る手筈になっています。

念のため彼女には士官をさせてはいけない者のブラックリストを渡しています。

七乃に美羽を任せるのは心配だったので、渚を「丞」にするように美羽に言い、美羽の補佐を彼女に頼むことにしました。

そのことを知った七乃から抗議を受けましたが、美羽専属の侍女をしてくれないかと言うと借りてきた猫のように静かになりました。

亜莎、明命は当初の予定通り、美羽に同行してもらいます。

彼女達は美羽と年が近いこともあり、渚を先生にして勉強に武道に励んでいます。

美羽も友達がいれば、私の目が届かなくても暗愚になる心配はないでしょう。





「兄様――――――!はぁ、はぁ・・・・・・」

「美羽様、急ぎ過ぎです。怪我したらどうするんです」

「美羽様、もう少しゆっくり走って下さい」

美羽、明命、亜莎が私の所に駆け足で走って来ました。

「美羽、そんなに急いでどうしたんだ」

「兄様をお見送りに来ました」

美羽は太陽のような笑顔で私に笑いかけました。

「美羽、ありがとう。明命、亜莎も美羽につき合わせてしまって済まないな」

美羽の頭を撫でながら、明命と亜莎に言いました。

「正宗様、お気になさらないで下さい」

「はい、いつものことですので」

二人とも笑顔で言いました。

美羽と二人の関係は良好なようですね。

「・・・・・・しかし、美羽を見送ることができないのは残念だ。私が出征中に美羽が大守として南陽郡に向かうなんて・・・・・・」

私は寂しさを堪えきれず美羽の頭を撫でました。

「兄様、しばらく会えないのはさみしいのじゃ。でも、妾も兄様のように頑張るから、いつか南陽郡に来て欲しいのじゃ」

美羽は涙を貯めて必至に、私に笑いかけようとしていました。

「美羽、泣きたいときに泣いていいんだ。私もこの戦が終われば、南陽に遊びに行くからそれまで待ってくれないか」

私は美羽の頭を優しく何度も何度も撫でました。

「兄様、本当かえ?本当に、本当かえ?」

美羽は涙を流し、私に何度も同じことを聞いてきました。

「本当に決まっている。そのときは麗羽も連れて一緒に行く」

「あ、兄ざま、約束なのじゃ―――!」

美羽は私の胸に飛び込む泣きじゃくっていました。

「約束だ・・・・・・」

私は泣きじゃくる美羽の頭を優しく撫でてていると、明命と亜莎は貰い泣きをしていました。

しばらくすると渚が私達の所に現れ、美羽達を連れて行きました。

美羽が渚に連れられながらも、いつまでも私の方を名残惜しそうに見ている姿が私を感傷的な気持ちにさせました。
 
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