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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第67話 霊帝の勅命

冥琳を配下に加えて、6日間が過ぎました。

私は5日間に渡り療養をする羽目になり、その間の執務を揚羽に代行してもらいました。

私の決済が必要な場合、彼女が私の元を尋ねてくれたので、執務に支障はありませんでした。

麗羽は私が療養中に虎賁中郎将に昇進しました。

彼女は多忙な中、私を尋ねたときに、私に教えてくれたことがあります。

月華が左豊の讒言で洛陽に護送され、彼女の後任には東中郎将の董卓が就いたと言っていました。

董卓は史実通り、月華が抑えこんでいた黄巾賊を討伐するでもなく、のらりくらりと戦を長引かせているそうです。

宦官共も今頃、どうすれば良いか思案中でしょう。

私は早く月華を介抱してやりたかったのですが、麗羽と揚羽に止められ今日まで療養に専念していました。

今、私は揚羽を連れ議場に急いでいます。

議場に急ぐのはもちろん左豊を弾劾するためです。

あの宦官の汚職の数々を調べ抜いています。

もはや左豊には逃げ延びる手段はないです。

私は議場に向かうと衛士に止められましたが、中に無理矢理入りました。

「陛下!劉正礼、参上いたしました。ご報告したきことがございます」

私は議場に乱入し、拱手して平伏しました。

「き、貴様、この場は今、人払いの最中であるぞ!司隷校尉如きが粋がるでないぞ!」

張讓が私の乱入に激昂しています。

「張讓、まあよい。劉ヨウ、そちは病で療養していたはず。体調は大丈夫なのか?」

霊帝は張讓を諌めて、私に声を掛けてきました。

「陛下にこの身を心配して頂き、感激の極みにございます。体調は療養にて回復いたしました。今日、無礼を承知で参上いたしましたのは、陛下の権威をとぼしめる奸臣を弾劾するためにございます。その者の所為にて、逆賊討伐に支障が出ております」

私は平伏したまま霊帝に言いました。

「何じゃと?して、その者の名は何と申す」

「その者の名は左豊と申します」

「劉ヨウ、言葉には気をつけよ。妄言であれば許さぬぞ」

霊帝が怒りに満ちた声を言いました。

「死の覚悟ならばとうにできております。私は陛下の御為、日夜職務に励んでおります」

「言いがかりもはなはなだしい。この左豊が何故、逆賊討伐を拒まねばならないのです」

左豊が余裕綽々な表情で言いました。

「ならば、ご説明させていただきます」

私は揚羽に調べ上げさせた左豊の汚職の数々を上げ連ねました。

もちろん証拠を一部ですが持参しています。

私が汚職の内容を話す度に、左豊の表情が青くなっていき、対して霊帝の表情は怒りに震え真っ赤になっていきました。

「劉ヨウ、もうよい!聞くに堪えぬわ!この痴れ者の首を刎ねよ!」

霊帝は左豊を睨みつけて、声高に虎賁郎に言いつけました。

「へ、陛下、こ、これは何かの間違いで、ご、ございます」

左豊は霊帝に縋り付こうとしましたが、霊帝に払い除けられました。

「この無礼者が!朕に触れるでない!さっさと首を刎ねてしまえ!」

左豊は数人の虎賁郎に引きずられながらつれていかれました。

このとき張讓は苦虫を噛んだ表情で私を睨んでいました。

「劉ヨウ、あの痴れ者が何故、逆賊の討伐を邪魔したというのか説明せよ」

「はっ!謹んでご説明させていただきます。左豊は盧北中郎将の元に視察した際、彼女に賄賂を要求しております。しかし、彼女はそれを拒否した為に、左豊は腹を立て、陛下に讒言を上奏いたしました」

私は左豊が盧植について行ったことを霊帝に言いました。

「して、その証拠は?」

霊帝は厳しい顔で私に言いました。

「私は左豊を以前より汚職の嫌疑で監視し、盧北中郎将の視察の折も、私の手の者を送り込んでいました。左豊は彼女だけでなく、校尉以上の官職にある者にも賄賂を要求していました。その中で、黄巾賊討伐の暁の報償に手心を加えることを約束した念書を取り交わした者がいましたので、その者の念書を強奪し、ここに持参いたしました」

私は証拠の品である念書の布を霊帝に献上しました。

霊帝はその布の内容を読むと手を震わせて憤怒の形相をしていました。

「劉ヨウ、話を続けよ」

霊帝は私に話を続けるように促しました。

「盧北中郎将は黄巾賊を押さえ込み討伐は順調でしたが、左豊の愚かな欲望により、黄巾賊は息を吹き返しております。それというのも、後任の董東中郎将の黄巾賊の討伐が遅々として進んでいないためです」

「もうよいわ!おのれ、あの痴れ者めが!朕の顔に泥を塗り追って!」

霊帝の怒りは収まらないのか、玉座から立ち上げって調度品を蹴っていました。

「陛下、お待ちください。その念書のみで左豊が盧北中郎将を貶めたことの証拠にはなりませぬ」

張讓が霊帝に言いました。

「張讓殿、それは違います。左豊は賄賂を差し出さない者に濡れ衣を着せ、差し出し者には手心を加える。このようなことを繰り返している人物が盧北中郎将にのみ賄賂を要求しない可能性の方が低いのではありませんか?左豊は彼女と会談した後、周囲を憚らず悪態をついていたと報告もございます。良い機会です。それを聞いた者達をこの場に呼ばれますか?」

私は悠然と張讓に言いました。

張讓は怒りに満ちた表情で私を睨みました。

「二人とも控えよ!劉ヨウ、大義であった。お前に申し付ける。盧植を直ちに牢より出し、任地に戻るように命じよ」

霊帝は私に向かって言いました。

「陛下、それはなりません。今、盧北中郎将を開放しては、陛下の権威が損なわれます」

張讓が横槍を入れてきました。

「張讓よ、何故だ」

「仮にも、陛下は盧北中郎将を職務怠慢の罪で牢にいれたのです。それが朝礼暮改では臣への示しがつきませぬ。彼女には申し訳ありませんが、逆賊の討伐が済むまで牢にて形だけでも謹慎していただくべきかと存じます。もちろん、罪人としての待遇ではなく、女官達に相応の待遇で世話をさせれば、彼女とて陛下の胸の内を理解してくれるものと存じます」

張讓は意味不明なことをもっともらしく言っていました。

「陛下、盧北中郎将は罪を犯しておりませぬ。罪無き者を形だけとはいえ、罰するのは如何なものかと存じます」

私は張讓の上奏を批判しました。

「劉ヨウ、そち言い分も最もなれど、朕は張讓の上奏を採用しようと思う。張讓、盧植がいない以上、誰が冀州の逆賊を討伐するのだ」

張讓は私の一目見て、一瞬趣味の悪い笑いをしました。

「陛下、ここには賊を恐怖せしめる者がおりますではありませぬか?彼の者を盧北中郎将の代わりに立てればよいと存じます」

「ほう、彼の者とは誰だ?」

「劉司隷校尉でございます」

張讓はいけしゃあしゃあと私を推挙しました。

彼が私をこの洛陽から追い出したいのは前々から知っていましたが・・・・・・。

「劉司隷校尉は宮中に入る前は、諸国を周り山賊や盗賊を数多の数討伐してまいりました。彼ならばきっと陛下に仇名す逆賊共を見事討ち果たすものと存じます」

張讓はうやうやしく頭を垂れて言いました。

「うむ・・・・・・。劉ヨウ、今回の左豊を弾劾せし功を加味し、左将軍・冀州刺史に任じる。四万の軍を預ける故、現地の兵と合流し逆賊を見事討ち果たせ。将軍任命の儀式の日取りは急ぎ伝える故、屋敷にて待機せよ」

霊帝は私に威厳に満ちた声で勅令を下しました。

「はっ!この劉正礼、慎んで拝命させていただきます」

左将軍と冀州刺史を兼任ですか・・・・・・月華の件の口止め料込みにしては少々大盤振る舞いな気がします。

「へ、陛下、お待ちください!劉正礼殿を左将軍に任じた上、刺史を兼任させるのは問題でございます」

私が霊帝の勅命を黙って聞いていた張讓は慌てて霊帝に言いました。

「張讓、黙れ!朕の決めたことに異を唱えるつもりか!」

霊帝は張讓を怒鳴りつけました。

「め、滅相もございません!」

張讓は霊帝に平伏しながら謝罪をしましたが、彼は横目で私を悔しそうな目で睨んでいました。

霊帝は何を企んでいるのでしょうね・・・・・・。
 
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