『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師
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高速老婆
「2人とも、優勝おめでとうございます」
「過酷な道のりを走り切る……『青春』だわ♪」
着替えて教室へ戻った俺達は、ピートや愛子に続いて他のクラスの面々からも次々と祝福やら賞賛される。
ドサクサに紛れて「どんなズルしやがったぁ!?」とかダミ声で抜かす糞眼鏡はデコピンで黙らせた。
「光栄です。皆さん!これで、地味と言われ続けたワッシも汚名を挽回出来たんジァぁっ!!」
「挽回して、どうすんだよ?汚名は、返上しろ……」
つっても、2〜3日もしたら皆今日の事なんて忘れると思うけどな。まぁ、喜んでるようだから言わんけど……と言うか、よく喜べるな………
そんな風に思ってると、皆が席に戻ったのを見計らって愛子が話し掛け来る。
「何よ?横島君。タイガー君と違って、テンション低いわね。嬉しくないの?」
「いや…嬉しいよ」
……とは、言ったものの正直な所微妙だ。周りに居る奴はステルス以外、皆一般人だし。
霊的格闘を修める人間は、体に自分の霊気でブーストを掛けれる。要するにパワー、スピード、持久力全てにおいて常人を越えちまうわけだ。
妖怪や魔族達に後れを取らないよう、常にそれを心掛けてる結果ではあるんだが、今日みたいな持久走大会だとそれがやたらと目立っちまう。
ブースト掛けれる人間と、そうでない人間を一緒にしたら不味いだろう。これで勝って “おめでとう” と言われたって、モヤるだけだわ。
ピートの奴だって、それはわかってるが気を使って言っただけだ。そして、どうでもいいが奴(ついでに愛子も)は妖怪って事で参加を免除されていた。
「余り、そうは見えないわね……でも、正直驚いたわ」
「うん?」
「横島君のことだから、てっきり「めんどくせぇ」とか言いながら、田嶋君達と歩って来ると思ったのに」
「真面目に走って驚いたか?」
答えながら互いに席へ着く。
そして、実を言えばそれも考えてはいた。だけど、連中のペースに合わせたら遅過ぎて、もっと面倒に感じたから真面目にやっただけだ。
「ええ。走るの好きだったの?」
「別に好きじゃねぇよ。だけど、いつもこれくらい(15キロ)は普通に走ってるからな(追い込む時には、もっと走る)」
もっと言えば、ペース的にはかなり流してた。いつものように霊気全開でつっ走ったら、目立って騒ぎになっちまう。ステルスと一緒に抑えながら走るのにやたらと苦労したぜ。
※横島やステルスが常軌を逸してるだけです。他の霊能者では、そこまで差は付きません。
「そうなの……?」
「霊能者舐めんな♪」
俺がそう答えると、愛子は近くで話を聞いてたであろうステルスにも話し掛ける。
「タイガー君も?」
「ワッシは、もう少し長いですのぉ〜」
「本当に!?運動部顔負けじゃない。ウチのクラスって、実は化け物の集まり!?」
「お前も、その一員だからな……」
◇◇◇
ブオーーーン!
「そうか。今日は持久走だったのか」
「お前は、参加したことあるか?」
助手席で少し気怠そうにして座る雪之丞の言葉に、俺は(雪之丞の)ボロ車のハンドルを握りながら答える。
ここは、夜間の人気の無い山道。照明すら殆ど無く、辺りは深い闇に包まれて何とも不気味な雰囲気を醸し出していた。当然だが、聴こえてくるのも自分達の出すエンジン音だけだ。ちなみに、免許は最近になってやっと取れた。これで、無免卒業だ。
「ガキの時に何回かな。他の連中を突き離してやったら、教師の糞共がズルをしたと決め付けやかってな。頭に来て、そいつらブチのめしてからは、参加するのを辞めちまったよ。気分も悪いしな」
「教師にとっては、トラウマだったろうな……」
大の大人が、ランドセル背負ったチビにブッ飛ばされる。
間違いなく人生観変わるぞ。その後、教師辞めてるんじゃないか……?
「へっ……ざまぁ、見やがれ♪」
「良い人生を……」
あんた達は、単に運が悪かったんだ。
そんな感じで、会ったことの無い教員達へ憐憫の念を向けていると再び雪之丞が呟く。
「しっかし、わかんねぇな」
「何がだ?」
「鴉。お前、(高校)3年だろ?」
「ああ」
「お前やタイガーは進路決まってっけど、他の連中は受験が控えてんじゃねぇか」
「そんな大事な時期に無茶して体調崩したら、元も子もねぇか?」
季節は11月過ぎ。空気は冷たく成りかかって、体調も崩しやすい。言われてたみりゃ、ここでのロスが数ヶ月後の本番に響く可能性は十分あり得るな。
「普段、体調管理をしっかりやれとかしつこく抜かす癖に何考えてんだろうな?体調大事なら、休ませろよ」
「別に何も考えてないだろ?文武両道とか、病は気からとか都合の良い言葉持ち出して誤魔化すだけだ」
もっと言えば、惰性でやってるだけな気がする。生徒も教員も今までの行いをただ追従してるだけ。
互いに不満を抱えてる(俺個人は、別にどうでもいい)筈なのに、誰も表だって文句を言わない。馬鹿な話だぜ……
※時代は1990年代初頭。現代では、大分考えが変わっています。
そんな調子で、互いに駄弁り続ける事数十分。退屈さに負けて、本来の目的を忘れる掛けた頃__
「来たな……」
「ああ」
雪之丞の声に答えると共に、互いにウィンドウのノブを回す。それと同時に山間部特有の冷たい空気が頬を撫でるが、弛緩しかかった自分を締め直すには丁度良かったのかもしれない。
多分だが、来るのは俺の方………
そう思ってる間にも、後方に感じた妖気はどんどん迫り数秒もしない内に__
“テメェッ!!この野っっ__”
「うるせぇ……!」
70キロ近くで走行する車の真横に並走して来た、ボロを纏う気持ち悪いババア。皺だらけの顔に血走ったギョロ目とデカくて醜い鷲っ鼻……その醜悪極まりない顔面を、俺は霊手で鷲掴みにする。そして……
ヴオンッッ!!
一瞬にした弾ける爆音と閃光。俺の手で生成した霊盾が破裂したからだ。ババアの顔面と一緒に……
「…………殺ったか?」
「消滅した……」
右手に残る粘つくような嫌な感触が、皮肉にも俺に確固たる確信を与えていた。残った体の方は、数分もしない内に消えるだろう。
「今のが『ジェットババア』……」
「聞きしに勝るインパクトだったな」
驚きとも呆れとも取れる雪之丞の呟きに、俺は胸を撫で下ろすようなして答える。とにかく、顔面の圧と狂声が半端無かっ……男だった時の鎌田さんより酷い。←失礼
妖怪『ジェットババア』……人が暗闇に対して抱く恐怖と、人の生み出す都市伝説の思念が融合して生まれた現代妖怪。
脚で車の速度に追い付き、夜な夜なドライバーをその醜悪な容貌と強烈な怒声で脅かしては、事故を引き起こさせる傍迷惑な奴で、俺達以外の車が居ないのは、皆ババアを恐れてたからだ(元々、通りは少ない)。
「一匹だけだよな?」
「そのはすだ……」
………と言うより、そうあって欲しい。さっきの悪夢に出てきそうな顔面を一晩で何度も見たくない。大して妖気も感じないのに、ここまで人を嫌悪させるって相当だぞ。
「じゃあ、撤収するか。どうする?帰りは、俺が(運転を)代わるか?」
「頼む……」
そして、さっきのが出たら、今度はお前が殺ってくれ………そう思いながら、俺は路肩へ車を停めた。
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