『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師
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墓石?
「わん娘の奴、今日は来ねぇんだって?」
「腹が痛いんだってよ」
事務所のTVを見ながら聞いてくる雪之丞へ、俺も視線を画面に向けながら答える。
今日は来る日だったが、さっき電話でそれが伝えられたばかりだ。
「う◯こが出なくて苦しんでんのか……やっぱ、おっさんに『う◯この出る薬』を貰っとくべきたったな」
「ば〜か、逆だ。あいつは、う◯こが出ないんじゃなくて、う◯こが出過ぎて苦しんでんだよ」
「2人共・汚い」
「お主らのモテん理由が解ったぞ……」
「んだよ。卑猥にならないように、ちゃんと間に◯を入れてるだろ?」
「余計、卑猥だわ!」
「わかったよ。じゃあ、うん__」
「止めんかっ!」
◇◇◇
「11月11日……」
「何かあんのか?」
カレンダーを見ながら唐突に呟く雪之丞に言葉を返す。経験上、こう言う呟き方をする時は大抵どうでもいい話と決まってるんだが、それにお約束のように返しちまう俺の態度も何とかしたいと思う……ちなみに爺さんとマリアは、部屋から出て行って此処には居ない。
「『ポッキン&プレッツェの日』だ」
「好きなのか?」
今の2つは、棒状のクッキーにチョコや塩をまぶして食べるお菓子だ。俺もガキの頃に、良く食った思い出はある。もっと言えば、あれで飢えを凌いだ事すらある……
「いや、そこまでは………」
「じゃあ、何で言ったんだよ?」
「ただ、何となく……」
「暇なのか?」
「それを一々俺に聞く、お前は忙しいのか?」
「………………」
……………………この野郎!!
後で聞いた話だが、由来は『1』ガ4本並んであのお菓子に見えるからで、それを理由に発売元が記念日にしたそうだ………糞どうでもいい。
「…………質問を変える。大して好きでもねぇもんを、何でわざわざ買ってきた?」
「俺じゃねぇよ。ロボ娘が店から貰って来たんだよ。記念日のサービスらしい」
テーブルにある2つの箱が気になってたが、そういう事か……
「貰えて良かったな」
「いや、微妙……俺、甘い物苦手だしな」
そういや、そうだったな……酒好きのこいつは嫌いまでは行かないが、余り好きでもなかった。大方、断るのも悪いから受け取ったんだろう。
「食うか?」
「いや、いい」
「お前、別に甘い物平気だろ?」
「平気だけど、それは要らない……」
極貧時代がフラッシュ・バックして涙が出そうになるし……
「んだよ……じゃあ、爺さんにでも………」
「食わねぇだろ。だから、マリアはお前に渡したんだし……」
「それも、そうか。じゃあ、仕方ねぇ……捨てるか」
「何か勿体ねぇけど……誰も、食わねぇんじゃな………」
“…………てる…………ろ……”
「おい……」
「お前も聞こえたか?」
2人で顔を見合わせると、即座に周りを見渡す。
どこからだ?
周りに神経を尖らせる内に徐々に高まる緊張感……建物には、隙間無く結界を張り巡らしてんだぞ。どうやって中に入って来た?
「解るか?」
「駄目だ、解からん」
俺達の霊感探知は、そう強い物じゃない。だけど、事務所のフロアくらいなら有効だ。それでも、気付けなかった。
「結界は、ちゃんと張ってあんだろ?どうやって、入って来た?」
俺が、ついさっき感じた疑問を口に出す雪之丞。言った所で、どうにもならない事なんか解ってるだ___いや、そうでもない……か?
「自分で入ったんじゃなくて、俺達に付いて来たとしたら……?」
「!?」
俺の言葉に、ハッとしたように自分の体を弄るように確認しだす雪之丞。だけど、残念そこじゃない。
「目の前にあんだろ?」
以前は無くて、今は在る物が……
「はっ!?」
まだ、ピンと来ないらしい。なので、俺は手っ取り早くそれを拾い上げる。テーブルの上にあった、それを……
「ポッキリ……!?」
「それとプレッツェ………」
やや間の抜けた声を上げながら、俺に倣うようにもう一つの箱を手にする。
「これにか……?」
「他に無いだろ?新しい物なんて……」
…………とは、言ったものの殆ど当てずっぽうだ。触った瞬間も特に何も感じなかったし、やっぱり気の所為__
“早く食え……” “…………てるな”
「「………………」」
聞こえた……いや、感じた。持ってる箱からの思念を……
「お前、感じたか?」
「ああ……」
非常に微弱だが、確かに感じる………中に “何か” 居るのか?
そう思ってると、雪之丞が声を荒げる。
「おいっ!お前、何モンだ!?ここで、何してる!?」
“プレッツェ……食われたい”
「「………………」」
聞こえた。今度は、もっとハッキリと聞こえた。箱を持ってない俺の方にも……じゃあ、これも?
「お、お前……ポッキリ?」
“そう……ポッキリ………俺を捨てるな”
………………気持ち悪!?なんだよ、このおっさん声?ついでに言えば、プレッツェの方も何かおっさん臭かった。
「す、捨てるか……?」
「ああ、燃やそう」
もう、開けないでそのまま燃やした方がいい。そんな風に感じた……
“止めろーーーーーっ!!燃やすなーーーっっ!!!”
「うるせぇな!何なんだだよ?お前等!」
“だから、プレッツェって言ってんだろ!!”
“俺は、ポッキリだよ!1回で覚えろや!チン◯ス!!”
「はぁっ!?んな訳ねぇだろ!なんで、お菓子がおっさんの声なんだよ?」
“知らねぇよ!お前等の影響でも受けたんだろ!?”
“そうだ!そうだ!お前達のイメージによっちゃ、美男美女にだってなれたんだぞ!!?”
影響……?イメージ……?始めの微弱な反応と言い、こいつら………お菓子に宿る思念体?
俺達の霊気に反応して、具現化し始めたのか?
「美男美女だぁ!?声しか出せねぇ癖に何言ってやがる?」
“なら、もっと霊気を分けてくれ!”
“そうすりゃ、視覚的に具現化だって出来るだぜぇ!”
やるわけねぇだろ。何が楽しくて、おっさん具現化すんだよ?
…………つーか、ウッサくて敵わねぇな。持ってんのは、俺なのに雪之丞と罵り合いやがって。
パタンッ……
面倒臭くなった俺は、無造作に箱をテーブルに投げ捨てる。
“おいっ!投げんじゃねぇよ!!食べ物は、もっと大事に扱えやっ!!”
「ちっ……放せば、消える(声が)消えると思ったのに」
始めに触った時は、余程念をこらさないと聞き取れなかったのに、今は1メートル以上離れてもウザい程ハッキリ聞こえる。こりゃ、完全に意思を持って具現化したな……面倒くさっ………
「お前達「食え」とか言ってたけど、食ったら消えんのか?」
いや、本当はそのまま燃やしちゃいたいんどけど、流石にそれもな………渋々なら、食っても__
“消えない……”
“お前達と一つになる”
「気持ち悪ぃなっ!!」
「ぜってぇっ!嫌だわっっ!!」
“何でだよっ!?”
“食べるもんって、基本そんなもんだろっ!?”
「んな訳ねぇだろ!食べもんが、一々喋るか!」
“皆、喋れねぇだけで、ちゃんと物考えてんだよっ!”
“そうだよ!俺等もお前達と同じ様に感じとれるんだよ!食べ物舐めんなスカタン野郎!”
どっちも、口悪ぃなぁ……言ってる事は一理あるが………
「あぁっ!?それが、食ってくれって頼む態度かよ!!?今直ぐお前等粉砕して、粉にしてやったって良いんだかんな!!」
“上等だっ!やってみろ!やった所で消えやしねぇよ!!”
“ああ、消えねぇ!!いつまでも、消せねぇお前をずっと罵り続けてやるよっ!!”
「そうかっ!言ったなぁ!!じゃあ、望みど__」
「止めろ……お菓子相手に」
「んだぁっ!このまま、舐められたままで……」
「どうせ、燃やしたら消えちまうんだ。放っとけ。お前達も、余りこいつを煽るな。本当に燃やされたら困んだろ?」
“ “う……” ”
困惑した、連中の声を聞いて雪之丞もある程度落ち着いたのか、プレッツェの箱をテーブルに投げ捨てると、そのままドカッとソファーに腰を下ろす。プレッツェの方も不満を感じただろうが、さっきの今なので何も言わなかった。
「けっ………」
「どうしたもんかな?」
“どうしたもんかって、食ってくれよぉ〜兄ちゃん達ぃ〜”
“そうだぜぇ……俺達、賞味期限切れたらどんどん味が悪くなんだよ。食い時の時に食って欲しいんだよ”
…………ったく、端からそういう態度でいりゃこんな事にもならなかったのに……とにかく、《消えない》と《一つになる》発言が気になり過ぎる。
「食われる時、お前等大人しくしてんのか?」
“そいつぁ〜難しいかもな……”
“とにかく、《初めて》にして《最後》の体験なんだ。でも、すっごく痛いだろうが、すっごく嬉しい事と思いながら受け入れるぜぇ♪”
「「……………………」」
………………何だ、その女の “初体験” みたいな表現は?齧られる毎に、喘ぎ声でも出すんじゃねぇだろうな?
余計、食いたく無くなったんだけど………
(おい……?)
(何だ?)
グイッと体を寄せて来た雪之丞に小声で答える。
(もう、燃やそうぜ。いや、埋めよう。嫌だわ。こいつら……)
(此処にか!?でも、んなことしたら化けて出て来そうだぞ)
んでもって、周りの悪霊まで取り込んでパワーアップなんてしたら、目も当てれねぇ……
(それも、何か楽しみかも……♪)
(いや、食わないしても埋めるのは無しだ。色々ヤバい………)
“な〜に、コソコソ話してんだよ?”
“深く考えずに食ってくれよぉ〜、食わず嫌いは良くないぜぇ”
お前等が喋る分だけ、食欲が減退すんだけどな……
(おい、鴉……)
(……………解った)
…………前言撤回。
もう、いいや。どう考えても食う気になんかならねぇし、かと言って誰かに食わせるのも気が引ける(進めた所で食わねぇだろうけど……)。その辺に、野良犬やカラスでも居たら食わしてやれたんだけど、此処はそいつらからも避けられてるしな。
◇◇◇
“おいおいおいっ!!マジかよっ!?”
“お前等、正気か!?食べ物粗末にしたら、化けて出るんだぞ!!《勿体ないオ◯ケ》を知らねぇのか!?”
「うるせぇ!穴埋めさせられる、こっちにも身にもなれや!」
「…………溶けて、地面と “一つ” になってくれ」
そう言って、霊盾で爆破した穴に箱から出したそいつらを放り込む。大体、直径1メートル、深さ2メートルくらいか……確かに埋めんの大変だわ。
“ “お前等呪ってやるからなぁ〜〜〜〜〜〜っっ!!!” ”
その後、数十分掛けて穴を埋める。途中まで、ギャーギャーー煩かった声も、半分くらい土を掛けると何も聴こえなくなった。
そして、埋め終わったらそこを丁寧に踏み固める。 “何か” が生えて来ないように……ついでに目印にと石を積んで置いた。
「何だったんだろうな?一体………」
「さあな……でも燃やすよりは、供養になったんじゃないか?土に還れんだし」
どうか、何も生えて来ませんように…………
「シロが来たら、注意しておかないとな……」
「そこで、う◯こすんなってか?」
「いや違ぇよ!!」
「冗談だよ」
………………本当だろうな?
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