機動戦士ガンダムSEED DESTINY -白き翼-
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PHASE-00 ―白き翼―
前書き
SEED FREEDOMの公開の頃よりポツポツと作り上げてきました。
しばらくはあまり進展しないですが、ごゆるりとお付き合い下さい。
ある程度まとめて話を更新していきます。
——オーブ解放作戦。
解放という名ばかりのこの作戦による戦火は、美しい島国を容赦なく焼き尽くしていた。
砲撃に崩れる街並み。
黒煙に覆われた空。
逃げ惑う人々の悲鳴が、絶え間なく響く。
「父さん、母さん、マユ!」
シン・アスカは必死に家族を、妹の名を叫んだ。
だが、その声は爆発音に飲み込まれ、届かない。
目の前では実弾、ビームが雨あられと飛び交い、モビルスーツが交戦をしている。
駆け出した先は地獄だった。
かつて、自らの父や母であったハズの人間が血塗れになって倒れている。
「父さん……? 母さん……?」
優しかった父が、母が、その呼び声に答えることは無かった。
「あぁ……、そんな……」
まるで当たりから空気が無くなってしまったと錯覚する程に呼吸が乱れる。
自分は何を見ているのか、これは現実なのか。
その問いには誰も答えない。
肉の焦げるような匂いと硝煙の香りが、現実と認めない自分を責め立てている様に感じられた。
三度、炎が吹き上がる。
瓦礫の向こうに、小さな手が見えた気がした。
「マユッ!」
世界が赤く染まる。
それに見覚えがない筈がなかった。
幼き日からその手を引き、兄妹はいつも一緒だったのだから。
例え煤や泥で汚れていようと、
例え、腕の先に身体が無かろうと
それを少年が見間違える筈がなかった。
「……嘘だ」
嗚咽が止まらない。
そんな自分の事などお構いなしにと、燃え盛る炎の向こうには、家族を奪ったモビルスーツが飛び交っている。
「……お前等が」
震える声。
怒り。
悲しみ。
喪失。
全てが混ざり合い、その瞳は憎しみだけを映していた。
――その日。
シン・アスカは、全てを失った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あれから二年。
世界は再び戦争の渦へ飲み込まれていた。
ザフトと地球連合。
終わることのない憎しみは、新たな戦場を生み続ける。
その中で、一機の白いモビルスーツが静かに飛んでいた。
純白の装甲をまとい、大きな翼のような高機動パックを背負ったその機体は、砲火の中を迷いなく駆け抜ける。
しかし、その進路は敵機ではない。
撃墜された味方機だった。
「パイロットの生存を確認!」
少女の声が通信へ響く。
急降下し、降り注ぐビームの前へ割って入る
右腕のシールドが展開され、撃墜されたモビルスーツを庇う。
爆発。
衝撃。
それでも白い機体は退かなかった。
「早く脱出して、長くは保たない!」
少女は操縦桿を握り直す。
「もう少し……!」
敵機が接近する。
自衛の為にビームライフルを放つ。
しかし放たれたそのビームは、敵機のライフルだけを正確に撃ち抜いた。
敵機は武器を失い、そのまま離脱する。
撃墜はしない。
ただ、人を救う。
それが、この機体の戦い方だった。
『後は任せろ、そいつはオレのダチなんだ』
通信が届く
撃墜されたモビルスーツの友軍が駆けつける。
少女は小さく息を吐いた。
「よかった……」
これで命が救われる、
一つの命が助かった安堵だけが、彼女の胸を満たしていた。
一方、戦場にいる兵士たちは、皆一様にその白い機体を見つめていた。
「あの白いモビルスーツ……」
「あいつ、また救助してる」
「あいつに助けられた仲間が、俺の小隊にもいる」
「撃墜するより、人を助ける事の方がが多いパイロットだ」
白い機体は今日も戦場を飛ぶ。
敵も味方も関係なく。
ただ、生きて帰ってほしいという願いだけを胸に。
その姿を、人々はいつしかこう呼ぶようになっていた。
――白き翼、と。
そして、そのコックピットで静かに微笑む少女の名を、この戦場で知る者はいない。
彼女の名は、マユ・アスカ。
オーブ侵攻で命を落としたと、世界中が信じている少女だった。
彼女自身もまだ知らない。
運命は再び、自らの兄と巡り会わせようとしていることを。
そして、その再会が、一人の少年と、一つの世界の運命を大きく変えていくことを。
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