〜独白〜黒衣の除霊師……ゴミ置き場
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文化祭・五
愛子に机から追い出されて、大体2時間くらい経った。飯は、既に食い終えて大体の出し物も回った。
食べ物は、取り敢えず色んな物をつまんでみた。焼きそば、フランクフルト、ポテトフライ……所謂、出店の定番って奴だな。だが、どれもはっきり言って美味い物じゃなかった。当たり前だ。素人がぶっつけ本番で作ってるんだから。
ただ、出来立てだったのと、一生懸命作っていたこと。そして、何よりこの文化祭特有の熱気が舌を後押ししてくれたのか、それなりに満足する事が出来た。
出し物……美術部、写真部なら、それにちなんだ写真や絵画、彫刻と言った展示品。ブラバンや軽音部なら演奏会。演劇部なら上演劇。映研部なら短編フィルムの上映………どれも、初めて見るものばかりで新鮮に感じた。
勿論、この短時間で全部回れる訳じゃないし、殆ど流し見だったが、それでも雰囲気は十分に楽しめた。こう言ったお祭り関連のイベントを見物するのは、中学の時以来だから懐かしい気分にもなれたと思う。
問題なのは、それを手放しに喜べないこと…………
「どうすっか……?」
校内を回りながら、数時間前と同じ呟きを繰り返す。
取り敢えず頭を空にして、校内を全て周って見た。それなりに楽しめた。だが、機嫌を取る手立てが全く思い浮かばん……
あの様子じゃ、今戻っても入れてくんねぇだろうし、かと言って、そのまま家に帰る訳にも行かん。
16時の終了時間には、もう一度顔を出さなきゃならんが、どの面下げて行きゃ良いんだ?
出店の何か差し入れでも買って帰ろうか、なんて事も考えたが、それは昨日の時点で他の連中がやってんだ。ほぼ意味ねぇ……
とにかく、戻ったら謝り倒すしか無いんだろう。ただ、それだと余りにも芸が無さすぎる。
「ったく、本気で言った訳じゃねぇのに………」
愚痴りながら、ガシガシと頭を掻く。掻いた所でどうにもならないが、掻かずにはいられない……
改めて、追い出された時の事を考える。
あの時は、順調に行ってて大変だった訳じゃない。普段のあいつなら、あれくらいの軽口簡単に聞き流したと思う。
それでも怒ったのは、昨日の出来事が影響してるからだろう。ピート達の一件、暮井先生の一件、どっちも大っぴらに話すような事じゃないが、一言も相談されなかったのが気に入らなかった……寂しかったのかもしれない。
それ自体は、我慢して貰うしかないが、何にしてもタイミングが悪すぎったって事だな。その辺をもうちょっと考慮して対応すべきだったかもしれない。
…………と、反省は出来た。だが、出来たとしてどうする?
それを考える為に、さっきまで校内を周ってた訳だが、結局振り出しに戻っただけで、何の進展もしてないのが現状だ……
「……………………止めた」
息を吐きながら、そう呟く。
グダグダ考えても仕方ねぇ……下手な小細工した所で、状況は悪くなるだけだ。謝るのは、自分の中で決定してるんだし、後は当たって砕けるしかねぇ。
そう思い直した時だった………
ビュオッ…………!
窓の外を横切る影のようなが物が横切った…………これは……霊気?悪霊の類か?
咄嗟に窓を開き、視線で影の行方を追う。
居た……黒い影が向かいの壁を上へ、駆け登って行く。あの方向は、いつも俺達が屯する屋上だ。
ふと、横目で周りを見る。変わらず人がごった返していて、マトモに進むのは無理だろうな。そもそも、この距離じゃ走っても間に合わねぇ……
瞬時にそう判断した俺は、屋上とは逆のトイレに向かって、ドアを開ける。そして、中に誰も居ないのを確認すると文珠に意識を飛ばした。
◇◇◇
“気に入らねぇ……!!どいつも、こいつも浮かれやがって!!”
「祭りだ。浮かれて当然だろう?」
客で賑わう校庭を見下ろしながら、忌々しげに呟くソイツに俺は後ろから声を掛けた。
“!?”
「…………それは、『ジャック・オー・ランタン』の “つもり” か?」
振り向いたソイツの姿を見た俺は、呆れ混じりに呟く。
『ジャック・オー・ランタン』……アイルランドに伝わる怨霊で、生前に悪事を重ねた影響で天国からも、地獄からも見放された『ジャック』と言う男が、南瓜をくり抜いた灯ろうを片手に彷徨い歩く伝承がある。
ただ、俺の前方に居るソイツは、明らかにソレとは別物だった。
まず、くり抜いた南瓜……それは、灯ろうにしないで頭に面として被っている。そして、黒い服に、黒いマント。手にはショットガン………総じて、趣味の悪い仮装にしか見えない。
要は、変態だな。さっきの呪詛の様に吐いた台詞からも、それが良くわかる。
多分、楽しみや、喜び……そう言った正の感情を抱く人間に対して無条件に殺意を抱くタイプの怨霊だ。人が多く集まった事で、その熱気に引き寄せられたか?
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“うるせぇっ!!俺は、悪魔だ!失せろっっ!!”
ズバァッ!!
俺の言葉にヒステリックに返したソイツは、持っていた銃をぶっ放す。出てくるのは、勿論実弾じゃなくて奴の怨霊としてのエネルギーだ。感情に任せて撃った割に狙いは合ってるな。
ただ、撃つ前から気配で察していた俺は、左の掌を開くと瞬時に霊盾を展開して、それを防ぐ。
今回は爆弾じゃなくて、1m程の半透明な六角形の盾……文字通り盾として使った。
…………にしても、手応えがないねぇ……左手に伝わる感覚から、そんな風に感じた。下位に近い中級クラスか。
“おまっ……!?GS!!?”
「妬むのも、僻むのもお前の自由だ。だが、楽しむ人間の邪魔をすんじゃねぇ!」
力任せの一撃を防がれて驚愕するソイツに、右手で作っていた霊盾(二連式ダイナマイト)を投げ付ける。
“シャラくせぇっっ!!!”
ズバァッ!!
それに合わせて、ソイツも銃をぶっ放す。撃ち落とす気だ。さっきも言ったが、奴は精神が不安定な割に 狙いは正確。そのまま行けば、俺の霊盾は簡単にその場で爆発したろう。
そのまま行けばな……
“何っ!!?”
霊盾の軌道がグニャりと曲がり、銃弾(便宜上、銃弾と呼称)を避けた事に戸惑うソイツは2発目を撃つが、それも同じ様に躱される。そして、霊盾は不規則な軌道のまま奴の元へ……もぅ、逃げられねぇぞ。
撃ち落とすんじゃなくて、端から逃げを選択してりゃ、まだ勝機はあったのにな(限りなく低いが)。
“く、糞っ!!”
ちょうど屋上の端に居たソイツは、咄嗟に床を蹴って上へ跳ぶ。人のそれとは違い、ひとっ飛びで数メートル飛び上がる大ジャンプだ。だが、 そんなもん悪足掻きにしかならねぇよ。
“えっ……そ、そん…………!!?”
「着弾……ジ・エンド」
ブゥアアァァァーーーーーーーーッッン!!!
成すすべも無く、追い詰められたソイツは空中でそのまま爆散した。
“なんだ?今の音…………”
“上の方から聞こえたけど……”
“花火……とか?”
屋上の端まで歩を進めると、下の方から、色んな声が聴こえて来た。怨霊も霊盾も一般人には見えない。だが、音は普通に聴こえるからな……
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「ふっ……花火ね………汚ねぇ花火だ♪」
※ドラゴンボールのベジータを思い出して、脳内補完して下さい。堀川亮さんの美声です。
◇◇◇
ガララッ……
やや、緊張しながら教室の戸を引く。すると、ちょうど良く全員集まって片付けをしていた。中には当然、ステルスにピート、そして愛子も居る。
「あっ、横島……」
「戻って来た……」
「何処、行ってたんだよ?」
「帰っちゃったのかと思った………」
全員の視線が一気に集まるのは、何とも気分が悪い。他にも色んな声が聞こえて来たが、視線も引っ括めて、どれも好意的とは言い難いな。当たり前だが……
「間に合って良かったぜ……」
「何、言ってんだ?もう、終わりだぞ!」
俺が、そう言いながら中に入ると、近くで作業していたフックが速攻で切り返して来る。
「全員、残ってるから間に合ってるよ。ドーナツ買って来た。これ食って、何とか機嫌を直して欲しい」
そう言って、持って来た袋を空いていた台に置く。
「外まで買い行ってたのかよ?」
「そうだよ。他の出し物のは皆、食ってるだろうしな」
これは、駅前のドーナツ店で大量に買ってきた物だ。
小細工しても仕方ないと思い直したはいいが、流石に手ぶらは不味いと思って、あの怨霊を倒した後に速攻で駅前の店まで行って来た。ケーキも考えたけど、値段的にはドーナツが手頃だったんでこっちにした。
すると、俺達のやり取りを見てた他の奴が声を掛けて来る。
「駅前って、結構遠いよな?」
「ああ、帰りは大変だったよ」
そいつに俺は、やれやれと言った感じに答える。
大体、徒歩で片道30分。それを帰りは、両手一杯に手荷物を抱えてんだから大変だよ。まぁ、屋上に行った時みたいに帰りは転移したんだけど……
ただ、そのパフォーマンスは連中に思いのほか刺さった。
「マジかよ……」
「そこまでして………」
良し……狙ったわけじゃねぇが、周りが俺を許してやろうか的な空気になってる。
後は、愛子だが………そう思って、あいつに目を向ける。駄目だ。近くに居るピートやステルスが、窺うように見てるが、完全にそっぽを向いてる。一番近くに居た萩原達が小声で何か話し掛けてるが、それでも無反応だ。
まぁ、いい……この辺は、予想通りだ。だから………
「愛子!俺が悪かったよ!」
「……………………」
俺は、愛子に向かって声を張り上げる。だけど、反応は無い。変わらず、そっぽを向いたまま……
「配慮が足らなかった。反省したから、許してくれよ」
「……………………」
この場で許してくれるとは、正直思ってない。でも、俺に謝る意思があると言う事は、見てる連中も含めてハッキリ示しておく必要がある。
「ドーナツで埋め合わせになるとは、思ってねぇよ。でも、それ食って機嫌直してくんねぇか?」
「……………………」
…………周りの連中も、固唾を飲んで見守るが愛子に反応は無い。
仕方ねぇ……これは、長い時間を掛けて__
「…………それだけじゃ、足らない!」
諦め掛けたその時、急に振り向いた愛子が声を挙げる。
「足りない……?」
「これから、皆で打ち上げに行くの。私の分も払って!それで、今日の事は許してあげる」
打ち上げ……?そんな、予定あったか?
「お前が来る、少し前に決まったんだよ。今回は、大成功だったからな」
怪訝な顔をする俺を見て、空気を読んだフックがそう告げて来た。
なるほど。そういう事か……
「解った。払おう……」
「うん♪」
俺が答えて、愛子がそれに笑顔で応じると、クラスの緊張していた空気が一気に和んだ。
やれやれって感じだな……
最初で、最後の文化祭。とにかく、良いことも、悪い事も一気に起こった気がする。最後には悪霊まで出るし、中々に疲れたぜ。
悪霊に関しては、俺が愛子の外に出てたから速攻で対処出来たってのもあるし、何とも言えんな。
「所で愛子」
ドーナツの箱を愛子達に渡しながら尋ねる。
「ん?」
「打ち上げって、何処に行くんだ?」
まぁ、学生が行くんだから、ファミレス辺りだろうけど……
「魔鈴さんの店よ!電話したら、席空けといてくれって♪」
「そうか。金だけ渡すから、楽しんで来い」
めでたし、めでたし……??
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