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〜独白〜黒衣の除霊師……ゴミ置き場

作者:wood12
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文化祭・四

「おおっ!ビックリしたぁ〜……」
「本当っ……でも、何か可愛い〜♪」


 文化祭2日目。この日も、ウチの出し物……名前を『オバケ屋敷』から『異空間、精神感応体験』に変更したそれは好調だった。元々、珍しい事をやってるって事で、初っ端から客は食い付いて来てたんだが、そこにしっかりとした満足度が加わって安定した感じだ。

 ただ、やってる内容は、昨日の午後から変更して弄ってない。ステルスは、もっと色々変化させようって乗り気だったが、時間的に厳しいのと、折角好評なのに変に弄って評判を落とすのは勿体ないと言った意見が多数を占めた事で見送りになった。

 だが、意見こそ通らなかったものの、奴は見る人間皆が喜んでくれるお陰で終始上機嫌だったから問題無いだろう。

 でも…………


「皆さん、観ていてつかさいっ!ワッシの面目躍如ジャーーーっ!!」
「「「「「「「…………………………………………」」」」」」」



 ……………………………………黒子のお前は、人前に出れないんだけどな。

 とは、誰も言えなかった…………



    ◇◇◇

 
「くあっ……」


 欠伸………しても平気だろうが、出そうになったそれを強引に噛み殺す。


 正直に言う……すげぇ退屈だ。出し物は、順調だけどスゲェ退屈だ。順調だから、退屈だ………

 出し物に対する客の反応は上々。それを提供するステルスや愛子にも、特に問題は見られない。寧ろ、昨日1日で要領を掴んで手際が良くなった様にすら感じる。


 心配することは、何もない。



 ………………だからこそ、俺やピートは全くする事が無くて困ってる(離れてるから解からんけど、多分困ってるはず……)。いや、俺達が忙しくなるようじゃ不味いから、それでいいんだが、本当にする事が無いってのは、それはそれで苦痛になってくる。現金なもんだぜ……

 昨日は、まだ良かった。何もしなかったけど、出だしに躓いたことで、最後まで緊張と集中を保ててたから。だから、時間が過ぎるのも早く感じた。でも、今は違う………


「11時3分か……」


 壁に掛かった時計を見て独りごちる。

 現在の客は3巡目………まだ、3巡目…………これと、後一組見届ければ昼休憩を1時間取れる。だが、1時間したら、またここで待機するだけの単純作業……


 退屈だ…………声に出して、そう言いたかった。

 言う事でどうにかなる訳じゃないが、それでも多少のストレスは捌ける。
 言いたいことを我慢するより、言っちまった方が何倍も楽なんだ。だが、この時の俺はそれをせず敢えて別の言語を選択した。そうせざる、お得なかったから………


「サボってないぞ……」 


 呟く……と言うより、絞り出す感じで声を出すと、呆れたようや返しが真上から響いて来る。





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「それ……床に寝そべりながら言う台詞なの?」


 いや、だってする事ないし………


「お前達が、順調過ぎるんだよ」


 例によって、壁から出て来た愛子にそう答える。


「じゃあ、何か起こそうかしら?地震とか、起こそうと思えば、起こせるけど」
「止めろ……一番困るの、お前だろ?」
「冗談よ。折角喜んでくれてるのに、そんな事しないわ」

「……何か用か?」
「様子を見に来た………と言いたいけど、実を言うと私も暇なのよ」

「慣れて来たから?」
「そう……昨日は、まだ手探りだったけど、要領を掴めば後は流れ作業だしね」


 言いながら、やれやれと言った感じに肩を竦める愛子。

 なるほど……やっぱり、こっちの見通しと一緒か………


「ねぇ?」
「あん?」


 ……と、俺がそんな事を考えてると、始めから変わらず人を見下ろし続ける愛子が再び口を開く。


「私、居るんだけど……」
「見りゃわかる」

「私、来たんだけど……」
「知ってる」

「じゃあ、何でずっと寝たままなの?」
「起きるのが面倒だから………」

「本当にっ?」
「じゃあ、起きる……」


 語尾が微妙に強まったのを察して、いそいそと上体を起こして胡座を掻く。

  “サービスタイム” 終了ってか…………?

 

「TVとか持ち込めないか?」
「持ち込めるけど、見れないわよ」

「だろうね。漫画でも、持ってくりゃ良かったな……」
「あなたは、ここに何しに来てるの?」

「寝に来てる」
「違うでしょっ!」

「解ってる。何かの時の為に待機してる。でも、それが退屈過ぎて困ってる」
「それは、私も一緒。さっき、言った」

「なら、お前も寝ちゃえば?」
「寝るかっ!ってか、寝たらそれこそ大変な事になるわよ!!」

「冗談だ。ちなみにだが、寝たらとどうなるんだ?」
「…………基本的には、何も無いわ。でも、気分が悪い時はここが洗濯機みたいにグルグル回っちゃうかも……」
「地獄だな……じゃあ、寝そうになったら起こせ。逃げるから」


 そう言って、ゴロンとまた横になる。

 勿論、寝るのも逃げるのも冗談だけども、何か話してても余り進展しなさそうなんで諦めた。

 本当は、ピートと “代わり番こ” で外に出る提案をしたかったんだが、流石に愛子とステルスだけ中に残すってのは気が引けたんで黙ってた(そもそも真面目なピートが、そんな提案に乗るとも思えない)。例え寝転がってても、ここに居ることに___


「出てけっ!!」
「ぐぇっ!」


 突如、腹に加わる強烈な衝撃…………と言うか踏まれた。愛子の足で……と、思った次の瞬間、今度は背中に広がる独特な感覚………

 今まで硬さを感じていたフローリングが、急に粘土の様な柔らかみを帯びて俺の体を飲み込んでるんだ。沈んでると言った方が良いかもしれない。そして、完全に体が沈んで視界が暗転するまでに3秒と掛からなかった。

 だが、その状態は1秒も無かった。床に飲まれたと思ったと同時に、今度は横から強い力が掛かり、俺を押し出す。愛子の外へ……


「うぉっ……!?」


 次に見えたのは、本物の学校の教室の天井。そして、体全体に感じる浮遊感………

 要するに俺は、さっきの寝転がった姿勢のまま宙に吐き出された訳だ。瞬時にそう理解すると、体全体を丸めて力を込める。

 落ちるのは免れねぇが、頭は守らねぇと……


 ドンッ……!


「痛っ……!!」


 落ちると同時に背中に軽い衝撃が走るが、タイミング良く両手で床を叩いて勢いを相殺出来たんで少しの痛みだけで済んだ。頭も無事だ……

 まぁ、無事だったのは体だけで状況は最悪だったんだが………


「な、何だ……?」
「横島……お前何で?」


 いきなり、(愛子)から吐き出されて床に落ちる俺……そして、それを見て驚き、戸惑う他のクラスメイトや次の待ち客達…………

 今回の出し物は、待ち客を整理する為に次の客たちは一組(10人)だけ、教室に椅子を置いて、そこで待機して貰う形を取っていた。

 わかり易く言うと、教室の中央に愛子が鎮座してそこに向かい合う形で椅子が並んでいる感じだ。

 そんな所に、急に1人の人間が投げ出されたんだ。驚きもするよな……


「失礼、出るのに失敗してしまいました」


 仕方ないので、咄嗟に何事も無かったかのように立ち上がりながらそう言うと、戸惑う連中を他所に速攻で教室を出た。
 色々不味い気がしたが、それ意外思い浮かばなかったんで仕方ない。


    ◇◇◇



「おいっ!横島」


 そうして、取り敢えず廊下を出た俺だったが、後ろからフックの奴が慌てて追い掛けて来たんで立ち止まる。ちょうど、こいつが待ち客の整理をしてたらしい。


「何があったんだ?」
「追い出された……」


 誤魔化してもいずれバレるんで正直に言う。かなりバツが悪い……


「愛子に?」
「他に居ないだろ?」

「何やらかした?」
「何故、俺が悪いのが前提なんだ?」

「………じゃあ、愛子が悪いのか?」
「いや、俺が悪いんだけど……」

「なら、いいだろ!!………で、何したんだ?」
「居眠りしてたら、シバかれた……「出てけっ!!」ってな………」


 別に噓じゃない。まぁ、他にも “色々” 重なってキレたんだろうがな。昨日の放課後も何か不機嫌だったし……


「何してんだよ、お前…………」
「2人共、感じを掴んでるから問題ねぇよ」

「そういう問題なのか……?」
「そういう問題にしてくれ………飯行ってくる」

「はぁっ!?この状態でか?」
「じゃあ、 “頭を冷やす” って事にしとけ」


 そう言って、尚も何か言おうとするフックを振り切ってその場を後にした。

 あの様子じゃ、愛子も簡単には許してくれねぇ……だとしたら、あれ以上あそこに居た所で出来る事なんて何も無い。
 なら、他の連中の仕事を手伝えって話なんだろうが、俺達のは通常の出し物と違って殆どする事が無い。

 客の先導、受付、待ち客の整理……それくらいで、どれも人手が余って代わり番こにやってるような状態だ。
 そこにノコノコ行った所で、来られた方も対応に困るだろう。と言うか、どの面下げてやれってんだ?間抜け過ぎてそんな事したくねぇ。


   ◇◇◇


「………………どうすっか……?」


 廊下を当てもなく進みながら、独りごちる。

 ふと周りを見れば、いろんなクラスが様々な出し物やイベントをこなしている。そこへウチの生徒や、他校の生徒なんかも引っくるめた外部からの客達、そう言った人間達が入り混じって、大いに賑わっていた。
 多分、外や体育館でも、似たような感じなんだろう。2日目の最終日なだけに、今が正に盛況と言う奴だな。


 適当にぶらつくか……?

 そう言った光景を眺めながら、何となく、そう考える。思えば、3年になるまで文化祭には参加してなかった。昨日は、昨日で1日中愛子の中に居て、他のクラスの出し物は見ていない。
 他の連中が飲食店を出してるクラスの食べ物を買って来てくれたから、本当に何も体験出来なかったわけじゃないが、それでも自分で買うのとは訳が違うだろう。中には、見落とした店もあるかも知れない。

 …………と言う事は、これが本当に見て回る最後のチャンスだ。理由は褒められたもんじゃねぇが、折角得た機会だ。頭を空にして行ってみよう。

 上手くりゃ、何か仲直りする算段が着くかもしんねぇしな…… 


「先ずは、何か食うか」


 そう思い直した俺は、取り敢えず出店を多く出ている外を目指した。




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