〜独白〜黒衣の除霊師……ゴミ置き場
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
文化祭・三
「あっ……!?」
「どうも………今日は、仕事だったんですか?」
愛子から出て直ぐの事だった。自販機でジュースを買って戻る途中、見学に来た暮井先生と廊下でばったり出くわしたのは……
「ええ……文化祭には関係ないけどね」
なら、たまってた仕事を片付けてたってことか?まぁ、向こうの都合である以上追求する理由もないが…………
俺が、そう思っていると今度は向こうの方から話し掛けて来た。
「あんたのクラスの出し物……興味があって見に行ったんだけど、あんた居なかったわね」
「居ましたよ」
「はっ……!?居たの?」
「あの異空間の中で常に待機してたんですよ。物陰から、先生が見学に来てたのも見ていました」
「あっ……そう、居たんだ………」
「どうでしたか?私達の出し物は」
「そうね……机の中に入るってだけでも驚きだったけど………」
絵の中になら、1ヶ月も入ってたろうに……
{IMG227449}
「何、その顔………??」
「いえ、別に……」
「………………まぁ、いいわ。でも、凄かったわよ。特に最後のオーロラ……プラネタリウムなんて目じゃないわ。霊能者ってのは、皆あんな事が出来るわけ?」
「まさか……あそこまで出来る奴は稀ですよ」
「奴……?あんたが出してたんじゃないの?」
「私は、何もしてません。出していたのは、“大河” ですよ。強力な精神感応の使い手なんです」
「タイガ……?」
「……… “大河寅吉” あの馬鹿デカいゴリマッチョですよ」
「あ、ああ………彼……」
「…………覚えてないんですか?」
「そ、そんな訳ないじゃんっ……!」
そのキョドった顔じゃ説得力0だけどな。哀れステルス……
「か、彼もあんたの仲間だったんだ」
「………少し違いますね。奴もGSですが、ただのクラスメイトで仕事を一緒にする訳じゃありません……まぁ、たまに一緒になった事はありますがね」
「ふうん……違うんだ。でも、あの付喪神……?の女の子といい、同じ霊能者が一つクラスになるって偶然なの?」
「…………多少、偶然な部分もありますが……学校が配慮してくれたんでしょう。やはり、霊能者と言うだけで浮いてしまいますからね」
噓じゃない。1箇所に集まったのは偶然だが、3年に進級してからも4人一緒なのが良い証拠だ。確認したわけじゃないがな……
「なるほど、そういう訳ね……」
「やはり、抵抗がありますか?」
「ん……いや、そういう訳じゃないわ。私だって、あの娘と一緒に暮らしてる訳だし………ただ、驚いてるのよ。人……ましてGSと妖怪が共存することがあるんだって」
「私達の所属するGS協会の理念には、人と人ならざる者との共存も含まれていますからね。妖怪だって、職員として働いているんです。人じゃないと言うだけで、殲滅したりはしませんよ」
「…………そうなんだ。初めて知ったわ……」
…………意外そうな顔をする彼女を見ながら、俺も協会の現状について思いをはせる。
これも嘘ではない……嘘ではないんだが、内実はかなり打算的な側面が強い。
妖怪、悪霊、そして悪魔に魔族……とにかく数が多過ぎて人間だけじゃ対処しきれないんだ。それに、高位の魔族となれは束になったって勝てない事もある。
そう言った事情があるから、例え人間と敵対したとしても交渉で済むならそれで済ます。利害が一致するなら、場合によっては共闘する。なるべく、敵対する対象を絞って臨機応変に対応せざるお得なくなってるんだ。
まぁ、中には鳥巣神父の様に倫理的観点から戦いを避けようとする人も居るには居るんだがな……だけど、ここまで言う必要はないか。
「……ただ、そうなるケースは稀で大体が除霊ですからね。世間のイメージは、どうしてもそうなってしまうんです」
「ふ〜ん。でも、これで合点が行ったわ」
「合点?」
「あんた達が私の部屋に来た時、意外だと思ったのよ。あんた達、あの娘に同情し出すんだもん。GSって言ったら、例え “ああ言う” 事情があっても問題無用で除霊しちゃうんだと思ってたから」
「ああ……そう言う事ですか。だけど、全てのGSがそう考えてる訳じゃありませんよ。中には、妖怪と言うだけで毛嫌いしてる輩も居ます。もし、先生があの人の事を話す時は慎重になって下さい」
「そうなの?GSも色々なのね……」
「前にも言いましたが、先生の一件は正式な依頼じゃなかったので、内々で話を済ませました。だから、協会もあの人の事は把握してません」
「それって……」
「ええ、事情を知らないGSがもし彼女を知ったら、さっきあなたの言ったように問答無用で攻撃して来る可能性があると言う事です。あの絵の具自体、禁止法に違反してますから」
「や、ヤバいじゃん………」
そう、ヤバいんだよ。物凄くな……
「もし、何か相談のある時はピート……金髪のヴァンパイア・ハーフが居るでしょう。あの男もGSなんで、奴の師匠を頼ってみて下さい。信頼出来る人で、GS協会にもかなり顔が効くから事情を話せば、きっと力になってくれますよ」
「解ったけど……あんた達は駄目なの?」
「勿論、出来る事があれば何でも言って下さい。ただ、この前お伝えしたように私は見習い、大した事は出来ません。ウチの所長もこういう事には疎いし………でも、先生の苦手なあの爺さんなら何か知恵を出してくれそうだな……」
「うっ……!!あのジジィは、かなり苦手………でも、あんたって見習いだったのよね。忘れてたわ。あの娘が、あんたの事「あり得ないGS」とか言ってたから……」
それは、なんてコメントすりゃ良いんだ……?
「見習いって事は、この前居た中であんたが一番強いんじゃないの?」
「一番強いのは、所長……あのコートを着た、小男ですよ」
「ああ……あの目が、 “こんなん” になってる………」
そう言いながら彼女は、目尻の皮膚を引っ張って強引にツリ目を作る…………割と似てんな。
結局、その後二、三言話して彼女とは別れた。今後の事に関しては、2人で考えてみるらしい。
だけど、随分と時間を食っちまったな。
◇◇◇
教室に戻った頃には、今日の片付けは既に終わり中は閑散としていた。と言っても、元から物は少ないんでやる事も殆ど無かったんだが……
「遅かったわね」
「そこで、暮井先生に捕まっちまってな」
そんな教室に残っていた愛子も、いつもの様に帰り支度をしていた。ピートやステルス達の姿は無い。鞄はあるんで、何処かへ行ってるんだろう。
「そう言えば、最後に来てたわね…………横島君って、暮井先生と仲いいの?」
「そう言う訳じゃねぇが、最近割と話してるかな」
俺がそうに答えると愛子は、探るような目をしながら聞いてきた。
「横島君………何か知ってるんじゃない?」
「何か……?」
「あの先生の “豹変” 振りよ。真面目で大人しそうだったのに、最近急にサバサバした感じになっちゃって、皆戸惑ってるのよ。この前なんか、授業中煙草を吸えなくて苛々しだすし本当何が何だか……」
「………すぐに慣れるよ」
…………実を言うと、2人の暮井先生の事は愛子達にも言ってない。勿論、余計な混乱を防ぐ為だが、絶対にバレるよな。あの人、分身に自分を寄せる気皆無だし……
「もっと変なのは、他のクラスでは今まで通りらしいのよ。それで色々聞いてみたら、変わったのはウチのクラスの時だけだって」
「………………………」
……正確に言えば、他の学年もどっかのクラスは彼女がやってんだが(だから、各学年に一クラスはウチ同様混乱してる?)、そこまでは流石に把握してないらしい。
「それに横島君、暮井先生が変わる前は殆ど喋らなかったのに、変わった途端急に喋るようになったわよね。授業が終わった後、よく話してるし」
「…………………………」
殆ど愚痴だけどな…………当初は、相当フラストレーションが溜まってた上に、学校で事情を知ってんのが俺だけだったから余計にそうなっちまった。
「ねぇ……本当に何も知らないの?」
「勘弁してくれ……」
そう、言いながら乱雑に前髪を掻きむしる。
こいつ…………ここまで言うって事は、もう探り入れる段階じゃねぇな。既に俺が何か知ってる前提で喋ってる……
「勘弁してくれって事は、知ってるって事?」
「ああ……だけど、先生のプライバシーに関わる事だから言えねぇ………少なくとも今はな」
だから、知ってると言う事は素顔に白状した。
こいつがここまで掴んでるって事は、ピートやステルスも同じように考えてる可能性が高い。ここで変に “しら” を切ると、後々面倒になる。
「…………なら、いずれは教えてくれるの?」
「それも、先生次第だな。何とも言えん。あと……先生を余り “つつかない” でやってくれ。デリケートな問題なんだ」
「ひょっとして……仕事だったの………?」
「ん…………そうだな。本当は、言っちゃ不味いんだが……その通りだよ」
まぁ、微妙に違うんだが、そうに通した方が話が纏まりそうなんで、俺は愛子の言葉に乗っかった。
「だから、この話はこれで終わりだ。ピートやす…タイガーになら話してもいいけど、それ以上は広めないで欲しい」
{IMG227451}
「ふぅ………解ったわ……でも、横島君最近 “秘密” が増えた感じよね」
…………何だよ?微妙にドキッとする事言いやがったぞ。
「仕事なんだから、仕方ないだろ……」
「はいはい………ただ、2人を怪しんでるのは私達だけじゃないから気を付けてね」
なんだと…………!!?
「……………………貴重な情報ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして。じゃあ、明日も頑張りましょう♪それじゃあね」
最後に澄まし顔でそう言うと、机を背負った愛子は廊下へ出て行った。多分、萩原達とどっかで待ち合わせでもしてんだろう。
そして、残された俺の微妙な気分と言ったら、もう…………
「どうしろってんだよ……?」
取り敢えず持っていた缶の残りを飲み干す。微妙な気分の時は、感じる味も微妙だ……
…………ったく、最後に爆弾落としやがって………………昼間の事も引っくるめて怒ってんのか?あいつ……
でも、怪しまれてるか………今後、先生と話す時は注意しないと不味いな。
ページ上へ戻る