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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第65話 周瑜の治療は命がけ? 後編

「劉正礼殿、お約束通り、この周公瑾はあなたにお仕えいたします。これよりは私のことを真名でお呼びください。私の真名は冥琳と申します」

冥琳は麗羽を押しのけて、私の元に来るとかしずきました。

「冥琳、ありがとう・・・・・・」

私は自分の愚かさに涙を流していました。

「何を泣いておいでなのです・・・・・・。劉正礼様は私に真名を預けてはくださらないのですか?」

冥琳は私の手を取り優しく声を掛けてきました。

「ありがとう・・・・・・、ありがとう・・・・・・」

私はただ感謝の言葉だけしか口にできませんでした。

その様子を麗羽達は黙って見ていました。

「もうっ!湿っぽいな!正宗様、泣くのは止めぇ。ウチ等の大将はそんなに情けない人やったんか」

真桜が口火を開き言いました。

「正宗様、元気だしてなの―――!」

他のみんなも口々に思い思いのことを言われました。

「すまなかった。これからは無理をしない。冥琳、私の真名は正宗だ。私の真名を預かってくれるか」

「正宗様、あなたの真名を謹んで預からせていただきます」

冥琳は拱手をして応えました。

彼女の目に嘘偽りは感じられませんでした。

彼女は私を本当に信頼して真名を預けてくれました。

私も彼女に応える必要があると思います。

「冥琳、今夜つき合っては貰えないか?」

私は真剣な表情で言いました。

「はっ、喜んでご一緒させていただきます」

冥琳は拱手をして私の申し出を受けました。

「私も一緒にご一緒しますわ」

麗羽は間髪入れずに言いました。

「麗羽殿、ここは遠慮なさってください。正宗様は周公瑾殿と話したいことがあるのでしょう」

揚羽は麗羽を遮りました。

「なっ!揚羽さん、何を言ってますの!」

揚羽は麗羽の両肩を掴み、目を瞑り顔を左右に数回振りました。

「・・・・・・分かりましたわ。揚羽さん、後で詳しく話して貰いますわ」

「正宗様、それではお体に触りますのでゆっくりお休みください」

揚羽は私に礼をすると麗羽達と冥琳を連れでて行こうとしました。

「麗羽と揚羽は残ってくれないか?眠るまで話し相手をしてくれ」

私は麗羽と揚羽に言いました。

「わかりましたわ」

「はい、喜んでおつきあいいたします」

麗羽は嬉しそうな、揚羽は全てを理解しているような表情でした。





麗羽と揚羽は私が話すのを黙って待っています。

「私は冥琳に私の秘密を全て話そうと思う」

「本気なんですの?一つ間違えば、離反の可能性もありますわ。もし、離反した場合、周瑜を生かしてはおけませんわ。それくらいなら何も言わずに、買い殺すせばよくてはなくて。近く美羽さんは南陽大守に任じられ任地に向かいますわ。彼女の元に榮奈さん、渚さん、明命さん、呂蒙さんを送りこみ、紀霊、文聘、諸葛玄を士官させる手はずになっているじゃありませんの。孫策の母、孫堅は随分と越権行為をして好き勝手にやっているので、これを利用すれば謀反の嫌疑をかけ孫策、孫堅を葬ることができますわ。わざわざ、正宗様が危険を犯す必要はありませんわ」

麗羽は厳しい表情で言いました。

「冥琳は私に信頼で応えてくれた。なら、私も応える必要があると思う」

「正論ですわね。相手は将来、正宗様と敵対する相手なのでしょう。裏切った場合のことを考えれば、孫堅達を始末した後で周瑜を始末する方がよくてなくて」

麗羽は腕を正面で組み、私に厳しい表情で言いました。

「確かに、正宗様が周瑜に二人で会いたいと仰らなければ、麗羽殿の仰る通りの結果になったでしょう」

揚羽は私と麗羽を見て言いました。

「どういう意味ですの・・・・・・。揚羽さん、はっきり仰っしゃいなさい。回りくどい言い方は嫌いですわ」

麗羽は揚羽に言いました。

「言葉の通りの意味です。私が正宗様を止めなかったのは周瑜の腹が決まっていたからです。彼女は正宗様を試したのです。本当に信頼できる人物であるかを見定めるために」

揚羽は淡々と話だしました。

「試したとはどういことですの?」

麗羽は揚羽を訝しむ表情をしました。

「正宗様は周瑜を治療した結果、気絶し未だ立ち上がることもできない。彼女の言葉を思い出してください。あなたが本当に卑劣な人物ならば、そこまでして私を救いはしないと思います、と。あの言葉には正宗様が敬意に値する人物と思っている証拠です。その上で、敬意に値する人物が何故、自分にあのような真似をしてまで士官させようとしたのかが知りたいはずです。にも関わらず、彼女は正宗様に何も尋ねずに士官を申し出ました。彼女は正宗様が自分を信頼して語ってくれることを待っております。あの場で、正宗様が判断し彼女と二人で会うと決めたことに意味があるのです。それ以後では意味がありませんでした」

揚羽は麗羽を見て、確信を持った目で言いました。

「揚羽さん、私はあなたが有能であることを知っていますわ。でも、周瑜が裏切らぬという確証が何処にありますの?正宗様にもし何かあったらあなたはどうやって責任を取るつもりですの!」

麗羽は揚羽を厳しい表情で睨んで言いました。

睨みつける麗羽に揚羽を目を瞑り、数分程思慮した後口を開きました。

「このことは言わずにいようと思いましたが・・・・・・周瑜は我らが彼女を調査していたことに気づいています。ただし、これだけは断言できます。周瑜は未だ孫家の者との関係はありません。だから、彼女は正宗様に敵意を抱いていたのです。事前にお伝えしなかったのは、そのことを知った正宗様が余計な真似をなさらないようにするためです。その敵意も正宗様の行いで良い方向に向かいました」

揚羽は話終わると目を開き私と麗羽を順番に見ました。

「な、なんですって!それは本当なんですの。何故、私達に黙っていたのです。正宗様、こうなっては周瑜を殺すしかありませんわ」

麗羽は揚羽を非難し、周瑜を殺しに行こうとしました。

「待て、麗羽、早まるな!」

私は麗羽を止めようと叫ぶと、揚羽は麗羽の体を羽交い締めにして止めました。

「こうなると思って言わなかったのです。周瑜は我らに監視されていることを承知で我らの招きに応じたのです。病をどうしても治したい気持ちが強かったのは事実と思います。しかし、正宗様に会って治療を受け気持ちが変化したのも事実です」

揚羽は麗羽を抑えながら、彼女を説得しました。

「放しなさい!揚羽さん、周瑜は私達に疑心を抱いているはず。洛陽に現れたのも、私達に組みしたと安心させ、離反する機会を狙ったものに違いありませんわ。後に禍根を残さないために、今夜、周瑜を殺しますわ」

麗羽は揚羽の戒めを解こうと暴れています。

「麗羽、落ち着いてくれ。私が二人を部屋に残したは言い争うだめじゃない。私の行おうとしていることの是非について、二人の意見を聞きたいと思ったからだ」

私は未だ重い体を無理に起こし麗羽に語気を強め言いました。

「正宗様・・・・・・。分かりましたわ。揚羽さん、放してくださいませんこと。もう、周瑜を殺しに行くとは言いませんわ」

麗羽が大人しくなると揚羽は彼女の拘束を解きました。

「正宗様、あなたが思うままに周瑜にお話ください。後のことは、この私にお任せください。周瑜を取り込む機会はこれが最後となるでしょうから」

揚羽は真剣な表情で私の目を見て言いました。

「揚羽さん、あなた何を考えていますの」

麗羽は揚羽を訝しむように言いました。

「私は正宗様が周瑜を取り込むことが叶わなければ、独断で彼女を今夜中に始末し、孫堅と孫策もこの黄巾の乱に乗じ始末するつもりでした。孫堅親子は所詮、海賊上がりの無頼者。戦場にて始末すれば、木っ端役人の死などどうにでもなります。ですが、孫堅親子は武人としては一流なので始末し損ねれば、禍根を残すものとなると思い最後の手段と考えておりました」

揚羽は怜悧な表情で麗羽に言いました。

「揚羽さん、そんなことを考えていましたの?」

麗羽は揚羽の言葉に驚いています。

「私は正宗様の夢実現のためならば、その障害をどのような手段を用いても全て取り除きます。逆に、正宗様の天下統一の夢実現のために働く人物ならば、この揚羽は命を掛けてでも推挙いたします」

揚羽は麗羽を見やり、私を見て言いました。

「揚羽さんは今の周瑜は信用に足ると言いいますのね」

「はい、今の周瑜ならば信用できます」

麗羽は目を瞑り考えこみました。

「正宗様、いいですわ。あなた様の思うになさってください」

麗羽は揚羽を一目見ると、私の方に向き直り言いました。

「二人ともありがとう」

私はそれだけいうと更に強い決意を胸にしました。

麗羽と揚羽は私に笑顔で応えてくれました。
 
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