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〜独白〜黒衣の除霊師……ゴミ置き場

作者:wood12
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文化祭・ニ

「スゲェな……!」
「良く見ると……結構可愛い?」
「これ……本当に幻なのか!?」



 ……………………上手く行ったみたいだな。始めの連中よりも、明らかに反応は和らいでる。


 文化祭の出し物、午後の開始の一発目。午前中の阿鼻叫喚の嵐に危機感を覚えた俺達は、急遽見せる物に変化を加えた。

 始めは、愛子の作り出した不気味な校舎内で、ステルスが怨霊や妖怪達の映像を客に向かって解き放って(襲い掛かる)いたんだが、今はそれをリアル調からアメリカのアニメなんかに出て来そうな愛嬌を感じ易いデフォルメ調にしてみた。

 変える必要に迫られはても、そんな簡単に良いアイデアなんて出て来ない。ああにしたのは、殆ど苦し紛れの窮余の策ではあったんだが、感触は思った程悪くない。

 驚きはしても、パニクらない。ビビりはしても、怯えない。


 ………………ちょうどいい塩梅かもしれない……のか?



 そんな事を考えている内に、客は出し物のトリに差し掛かる。


「おおっ……!!」
「綺麗ぇ……」


 今、連中が見てるのは、窓の外に広がるオーロラの景色だ。これもさっきの言った窮余の策の一環で、「何か最後は綺麗な物を見せよう」的なノリで最後に披露している。

 不気味な校舎→デフォルメ化した幽霊、妖怪→いきなりオーロラ…………正直かなり強引な流れだとは思うんだが、幸いにもそこに突っ込まれてる様子はなかった。それ以上に感動の方が勝っているらしい……

 確かに自然界の神秘と言われるこの幻想的な風景は、例え “まやかし” と解っていても圧倒される物がある。間近で見せられたら、尚更だ……
 ステルスも本来ここまで見せるには、師匠のサポートが必須らしいがここは愛子の異空間……要は愛子の協力のお陰で、普段より何倍も楽に出来るそうだ。



「あれは、上手く行った……でいいのかしら?」
「午前よりは、絶対にマシだろう」


 今度は、床から抜け出して来た愛子に思ったままの事を伝える。

 あれなら、「意味が解からん」とは言われても「見るんじゃなかった」とは言われないだろう。出来れば楽しんで欲しいが、それよりもオカルトに忌避感を抱かれる方が不味い。
 俺達(GS)は兎も角、愛子にそんな感情を向けられるのは何としてと避けなきゃならない。



「おおっ!何かメルヘンチックでござる」
「なるほど、考えたな。こうすりゃ、見てる方はビビらなくて済む」


 午後の2組目には、雪之丞とシロも居た。

 出迎えてやりたかったんだが、出し物の都合上俺達(俺、ステルス、愛子、ピート)4人は殆ど外に出られないからな。
 勿論、中でも休憩は取るが他の出し物には回れないし、ああして来た連中と話す事も出来ない。愛子に頼んでみるか……


 そう思った俺は、近くにある壁に手の平を軽く押し付けると、そこへ微弱な霊波を送った。これは、事前に決めていた互いに用がある時に送る合図だ。

 すると、程なくして愛子が壁から顔を出す。


「どうかした?」
「いや、そういわけじゃないんだが、ちょっと頼みたいことがあってな」

「なら、あの2人でしょ?伊達さんと、彼と一緒に居る尻尾の生えた女の子ね」
「ああ、そうだ」


 流石に話が早くて助かるな。愛子と雪之丞は何度か顔を合わせてるし、シロとは初対面だけど妖気や見た目で自分と同類だと気付いてたな。


「終わったら少し話したい。あの2人だけ残してくれないか?」
「お安い御用だわ。だけど、あの娘もちゃんと私に紹介してよ」

「それこそ、お安い御用だよ。取り敢えず、あいつの名前は “犬塚シロ” 覚えておいてやって欲しい」
「了解♪それじゃあ、また」


 そう言うと、愛子は再び壁の中に引っ込んだ。



    ◇◇◇


「よぉ!久しぶりだな」
「雪之丞!」
「雪之丞さん」

「お前等と最後に会ったのはGS試験以来だったよなぁ?なら、5ヶ月振りって所か……」
「ご、5ヶ月…………」
「早いですよね……本当」


 5ヶ月……もぅ、そんなにか………俺は、学校に来れば会えるがこいつ(雪之丞)は、そうも行かねぇからな。

 そんな雪之丞とステルス達を横目にこっちでは、女同士の自己紹介が始まっていた。


「はじめまして。 “付喪神” の愛子です。横島君とはクラスメイトで、見ての通り机が私の本体よ」
「おおっ!では、貴殿がここの主様と言う訳ですな。しかも、先生のご学友と!はじめまして、拙者横島先生の弟子、犬塚シロと申します。横島先生と雪之丞殿には、いつも拙者の剣の修業を着けて貰っております!」

「先生……?剣??」
「本気にしなくていいから……?」


 ポカンとする愛子に軽く突っ込む。

 本当、人前でそれ言うの止めてくれ。普通に恥ずい……大体、剣なんて教えてねぇだろ。いや、あいつ本人は(妖波刀)振ってるから、剣の修業でいいのか?

 ただ、そんなちょっとした混乱はありつつも、2人は問題無く打ち解けそうだった。シロは誰にでも人懐っこい性格だし、そんなシロを愛子は妹の様に見てる感じだった。


 そして、目線を雪之丞達に戻すとこっちはこっちで盛り上がっていた。


「お前等、2人で修業してんだろ?何で俺を呼ばねぇんだよ?」
「まだ、見せられる段階ジャないんですわ」

「見せられるって、修業だろ?劇をする訳でもあるめぇし……」
「あなた達、2人を倒す為の修業です。まだ、僕等じゃ勝てない」

「ほぅ……なら、ピート。お前は、何時ぞやの借り(GS試験)を返す気な訳だな?」
「ええ、勿論。ただ、あなたは横島さんの後だ。もう、少し待って下さい」
「「「「!?」」」」


 ………………おいおい。何か、話の矛先が急にこっちへ向いたぞ。


「俺が先なのか?順番なら、そいつ(雪之丞)の方が早いだろ?」
「雪之丞の時は、邪魔が入ったからだ。でも、あなたには普通にやられてしまった。だから、あなたが先です」

「やられた……?」
「2人は、果し合いをしたのでござるか?」

「そりゃどうも……」


 やる気満々って感じだな。まぁ、変にギクシャクするよりこっちの方が何倍もマシだが、話に付いて行けてない愛子とシロが戸惑ってるぞ。


「んだよ……じゃあ、忠夫に負けてる内は俺には来ねぇのか!?退屈だぞ」
「お前は、す…タイガーに相手にして貰え」
「もう、そろそろ時間なんジャけど……」

「ふっ……まぁ、いい。どうせ全員倒すんだ。順番なんか拘っても仕方ねぇか」
「「「「「……………………」」」」」


 だから、何でそうやっていちいち敵を作んだよ、お前は……?


    ◇◇◇


「喧嘩したの?」
「手合せをしただけだよ」


 雪之丞達を外へ送り返した後、案の定と言うべきか俺達は愛子に質問責めに合っていた。と言っても互いに別の所に待機してるので、片方ずつにしか聞けてない状況だが……どうやら、この異空間の中でも分身体は、普段通り一体しか出せないらしい。


「何で、海でなんかしたの?」
「なんか、海でしたい気分だった」

「…………海で何かあったんじゃない?」
「ピートは、何て言ってるんだよ?」

「「別に揉めた訳じゃありません」って……」
「そうだよ。別に揉めた訳じゃない」


 その言い方だと「揉めました」って宣言してるのと変わらないんだが、ピートに話す意思が無いようなんで俺もそれに乗っかった。正直、俺としてもアレはネガティブな話なんで愛子に話すのは、もう少し時間を置きたい。


「だから、心配はしなくていい。お互い今後もやり合うけど、殺し合うを訳じゃないし、恨み合ってる訳でもない。要はスキンシップの一つだ」
「………………あなた、本当に変わったわね。まるで伊達さんみたい。殴り合いをスキンシップだなんて……」


 そこには、激しく同意するよ。こんな台詞俺より、寧ろあいつが一番言いそうだ。でも、この場は勢いで乗り切る。


「女に女の世界があるように、男には、男の世界があるって事だよ。俺もあいつも周りに迷惑を掛けたりしないから、大丈夫だ」
「ふぅ…………まぁ、いいわ。なら、その “手合せ” 以外の時は仲良くしてよね」
「解ってる」


 俺が答えると、愛子は音もなく壁の奥へ消えて行った。納得はしてないな。ただ、まだ作業中だし現時点ではこれ以上追求出来ないと思ったんだろう。顔にそう書いてあった。


「やれやれだぜ……」


 出し物が落ち着いたと思ったら、今度は別の事に気を回す事になりそうだ。


 だが、仲間内でそんな一幕がありつつもオバケ屋敷……この時点で、呼称を “オバケ屋敷” から “オカルト体験” に変えてるんだが、とにかくそれ自体は特にトラブルも無く進んで行った。
 既に時刻は3時過ぎで、文化祭も終わりに差し掛かっている。午前から働き通しの愛子とステルスの負担が気になるが、特に負担にはなってないようだし、これなら明日も同じような感じで進めても大丈夫だろう。

 そんな感想を抱きながら、今日最後の客を招き入れた所で、意外な人物を見つける。


 ………………珍しい人間が来たもんだな。


 生徒じゃない。かといって一般客でもない。彼女は、この学校の教員……週に1回しか、出勤しない暮井緑(本物)教諭だった。

 何しに来たんだ?

 あの人は、赴任して来たばかりで特にクラスや部活も受け持ってない筈だが………だとすると、普通に見学か?
 まぁ、ここに入って来た時点で見学しかないだろうが、教員を腐れ仕事なんて抜かす彼女がわざわざ仕事も無いのにここ(学校)へ来るなんて、どう行った風の吹き回しだろうな?

 そんな彼女を物陰から観察するが、特に変わった様子は無い。始めは、相変わらずサバサバした表情をしちゃいたが、ステルスの見せる幻影が現れると他の客同様に驚いていた。そして、最後に見せられたオーロラにも普通に感動している感じだったな。

 …………本当に、珍しい物が見たくて来ただけだったのか?オカルトやGSは、世間に認知されてるとは言っても、一般人からすりゃ珍しい物である事に変わりはないからな。
 別にあの人がそう思ったとしても、不思議じゃあないが……


 とにかく、今日はこれで終わりだ。愛子が最後の客達と共に彼女を外に送り出したのを見届けて、ホッと息をつく。
 本当に大変だったのは愛子とステルスだろうけど、こっちはこっちでそれなりに気を使ってたから、ある程度は疲れた。


 
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