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〜独白〜黒衣の除霊師……ゴミ置き場

作者:wood12
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文化祭

「豚バラ♪豚バラ♪」
「豚バラ♪豚バラ♪」

「豚バラ♪豚バラ♪」
「豚バラ♪豚バラ♪」

「豚バラ豚バラ豚バラ豚バラ豚バラ豚バラ」
「長過ぎるでござるぅ〜〜っ!!」


 ……………………どんな光景だよ……?

 夕方の事務所の敷地(荒地)で一心不乱に「豚バラ」連呼する2人に、俺は異様な戦慄を感じずにはいられなかった………なんか、いきなり始まったけど俺の居ない時に打ち合わせでもしてたのか?


 ちなみに、今ここに居るのは(横島)、雪之丞、そして手合せ(遊び)に来たシロだ。

 さっきまで、ずっと3人でやり合ってた訳だが、もぅ数カ月くらい前から、それがが習慣になってる。
 来る頻度は、月に2、3度。それと、俺は毎回居るわけじゃないから、その時はもっぱら雪之丞、たまにマリアも相手をすることがあるらしい。
 今日は居ないけど、マリアとのやり合いは少し見てみたいな。

 ただ、今はそんな事より………


「シロ……お前、ラーメン食べるのか?」
「食べるでござる!」


 …………まぁ、そうか。肉は好物だけど、肉しか食わなぇわけじゃねぇもんな。


「ラーメン、ツルツル〜でござる♪所で先生……」
「うん?」

「豚バラとは、何でござるか?」
「……………………」


 知らねぇで騒いでたのかよ………


「はははっ!お前ノリの良さには感心したぜ、ワン()♪」
「雪之丞殿!拙者は、狼でござるっ!!」

「じゃあ、狼は何て鳴くんだ?」
「 “ワン” でござる!」

「なら、ワン娘で合ってるじゃねぇか?」
「そうでござるなぁ……?」


 ………………マチガッテルダロ……!!


「所で忠夫」
「ん……?」


 今度は何だ………?


「呼び出すような形になっちまったけど、良かったのか?文化祭、明日なんだろ?」
「ああ、それなら準備も全部終わったから大丈夫だよ」


 都立光明高校文化祭……年に一度、この時期に2日間掛けて行う恒例行事で、それなりに歴史を重ねてる。創立当初からやってるって話だから、多分数十年くらいだろう。
 ただ、ウチは何の変哲も無い一般的な普通校。強いて言うなら、『除霊委員』なんてぶっ飛んだ役職をマジに作るくらい、オカルト(人外)に寛容な特徴があるくらいか……?
 少し話しが逸れたが、要するにやってる事は他の高校と大差無いってこった。様々な催し物や地域交流を通して、生徒の育成を図るただの季節行事。

 
 そして、その文化祭で明日俺達は愛子の亜空間でステルスの精神感応を交えた霊場(幻想)体験を出す事になっている。
 だから、準備する物なんて殆ど無い。打ち合わせも万全だし、もっと言っちまえばサポートする俺達(俺とピート)だって不要な気がする。

 もっとも、不測の事態が起こり得る以上待機はしなきゃならねぇがな……


「開始は、10時つったっけ?」
「ああ、だから俺はその1時間前までに行けばいい」
「なるほどな。明日は暇だし、俺も午後から顔を出すぜ」


 明日はと言うか、お前は仕事と修業以外常に暇だろと思ったが、流石にそれは黙ってた。俺も似たようなもんだし……凹

 すると、それまで俺達の会話を横で聞いていたシロが口を開く。


「……ブンカサイ?それは、何でござるか?」
「学校でする祭りみたいなもんだよ。俺も明日、そこで出し物を出す手伝いをする」


 そう言うと、シロの目にパッと輝かしい光が宿る。 “祭り” と言う言葉に反応したんだろう。案の定、次の瞬間嬉しそうに食い付いて来た。


「祭り……拙者も行っても大丈夫でござるかっ!?」
「別に構わないけど……事務所開けて平気か?」

「今日、明日は仕事が無いから大丈夫でござるぅ♪」
「そうか。なら、いいけど余り大騒ぎするなよ」
「失礼な!拙者は武士でござる。武士は、人の迷惑になるような事はしないでござる」


 嘘つけ!興奮したら、すぐ周りが見えなくなる癖に……


「そう言えば先生。先程出し物と仰られたが、先生達は何を出すのでござるか?」
「オバケ屋敷」

「おおっ!すると、遊園地にある “あの” オバケ屋敷でござるか!?」
「う……うん、まぁ………」


  “あの” オバケ屋敷が、 “どの” オバケ屋敷の事なんだか全く解からんかったが、取り敢えず曖昧に頷く。

 だが、そんな俺の微妙な心情とは裏腹にシロのテンションは爆上がりだ。


「それは楽しみでござるっ!拙者、明日は必ず先生の元へ馳せ参じるでござるよ!!」


 ……やるのは、俺じゃないんだけどな。馳せ参じられた所で何も見えんぞ…………


「大袈裟だ……それに、お前が見たって退屈だぞ。低級の霊や妖怪を見せるだけだからな」
「低級の霊……?それでは、見てる者が納得しないのでは?」


 そんな俺の言葉にキョトンとするシロへ、今度は雪之丞が答える。


「いいんだよ。霊の見慣れてねぇ一般人なら、低級でも十分ビビる。それに、余り派手にやると騒ぎになる恐れがあるからな」
「そう言うこった。高校の文化祭なんだから、日常にちょっと毛が生えたくらいが丁度いいんだよ」


 ただ、俺達の返答にシロは顔を難しくする。


「…………良く解らないでござる……」


 ちょっと、小学生レベルのシロには難しかったか……?



    ◇◇◇


「ワァーーッ!!」
「いやぁ~〜〜っっ!!」



 …………盛況……で、いいのか?


 翌日、俺達のクラスは予定通り愛子とステルスの作り出した空間に観客を招き入れた訳だが、中の様子を見て予想以上にビビりまくる連中に俺は一抹の不安を覚えていた。


 ここは、この学校の内観に良く似た愛子の異空間。

 当然ながらそこに人の気配はなく、何より窓から覗く太陽の無い赤い空が、その不気味さと現実世界との差異をこれでもかと表していた。

 俺とピートは、互いに別の場所からそこへ連れられて来た観客の様子を影から見守ってるんだが、想定以上の反応がデカかに少し不安になってる……
 入って来る連中には、事前にこれが全てが幻で現実的被害の無いことも告げてるんだが、あの様子だと殆ど効果は無かったらしい。

 まぁ、口で言われただけじゃ中々理解出来ないのも解るんだが(それだけステルスの見せる風景がリアルと言うのもある)、余り騒がれると今後客が入って来なくなる恐れがあるぞ。最悪、トラブル防止だとか言われて中止にでもさせられたら目も当てれねぇ。


「横島君」
「愛子か……」


 気配のした方に振り向くと、普段机でやるように壁から愛子が上半身だけを覗かせて来た。顔に若干の曇りが見える。


「どうしよう?予想以上に怖がっちゃってるけど……」
「余り酷いようなら、途中で切り上げよう。パニクって怪我でもされたら、取り返しが付かなくなる」

「…………仕方ないわね。事前に皆に見てもらったから、大丈夫だと思ってたんだけど」
「ウチの連中は、なんだかんだ言ってこう言うのに耐性があるんだろ」


 そう………愛子の言うように何を出すかは教師を含めた他の生徒達に事前に見せてから、その反応を見て決めた。
 だから、これくらいなら平気だろうと思ってたんだが、やっぱり身内だけの反応じゃ見極めるのにも限界があったようだ。


 今回のオバケ屋敷は30分に1度、10人の人間が先導役の生徒に付いて行って愛子の異空間を回って貰う事になってる。実施するのは10〜12時、昼休みを挟んで13〜16時までの計10回。文化祭は、明日もあるからそれを考慮すると20回だな。
 ステルスは、もっと短い頻度でも行けると言ってたが、無理をする理由も無いんでこのサイクルにした。そもそも、こんな作業全員が初めてなんで、これでも多い気がした。

 そして、回る時間は大体10分。現実のオバケ屋敷もそれくらいで回れる筈だから、この辺はそれで丁度いいと思う


 …………ただ、それらの取り決めもこれから変更する必要があるか?頻度や長さ、もっと言えば見せてる内容その物も……

 別に霊障に限らず、見せようと思えばもっと綺麗な物だって見せれたんだ。オバケ屋敷を選択したのは安直過ぎた気がして来た。

 そんな、反省にも後悔にも取れるような感情を抱いてる間にも何とか一発目の通しは終わった。見てきた連中は、皆這々の体と言った感じだった。とても、楽しんでた雰囲気じゃない……

 余り白けられても困るんだが、この反応じゃな……いや、捉えようによっては白けられてる方が、まだマシにすら思えて来る。


    ◇◇◇


「取り敢えず終わったわね」
「皆、驚くのを通り越して怯えちゃってましたね……」
「これを、後20回近くやるのは流石にキツくないか?」
「いや、まだ1組目ジャし……」


 1組目の客を送り出した直後、俺達4人は愛子の作り出した教室の1つに集まって、今後について話合っていた。
 ただ、そんな悠長に話し合ってる時間も無い。後、15分すれば次の客を回さなきゃならないんだ。

 そう思ってると、愛子が俺に言った事を残りの2人にも呟く。


「皆に見て貰った時は、割と楽しんでくれてたわよね?」
「そうジャのぉ〜……ワッシもあの反応なら、今日は大成功ジャと思ったんですが………」
「でも、見てくれたのはウチのクラスの人達だけですからね。彼等は、普段から僕等と接して居るんで “人外” と言う存在に慣れていたんでしょう」


 …………うん。全く同意見。

 今更だが、準備してる時に他のクラスにも見て貰おうかなんて考えてもいた。
 けれども、他はどこも準備にてんてこ舞ってたし、余り大っぴらに見せても有難みが薄れるなんて “コスい” ことまで考えちまって、結局はスルーしちまった。

 その結果が、今思い切り出てる。後悔先に立たずとは、良く言ったもんだぜ……


 話し合いは、その後も少し続いたがすぐに良い案なんて出る筈もなく、取り敢えずステルスの意見を入れて午前中はこれで様子を見てみようと言う話になって、その場はお開きになった。


 …………と、そんな感じで再開したはいいんだが、2組目からも結果は同じだった。事前の説明や、愛子が管理してるお陰で悪態をつかれたりトラブったりする事は無かったんだが、連中の青白くなった顔を見ていると、何の為にこんな事してんだか解らなくなって来る。

 本当、午後からどうするか……?

 
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