『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師
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対決(ドリアン・グレイ編)
「行けっ!グレイ・ドール!!」
私の声と共に、開いたスケッチブックから勢い良く飛び出す5体の黒い影………
「っ……!?」
「……人形?」
それを見て驚愕する2人の前に、ゆらりと並び立ったのは、一体一体が人と同じくらいの大きさをした、全身が黒い人形。
私と同じ『ドリアン・グレイの絵の具』で描かれた “オカルト生命体” よ。
モデルのあった私と違って自我は持たないけど、私の思い通りに動くわ!
そして、私は周りの《ドール》達に命令を下す。
「こいつらを取り押さえて!」
すると、あいつに1番近い所にに居た一体が右手を突き出した。そして……
びゅおっ!!
「ぐっ……」
フフッ……右手が一気に伸びて、あいつの首に絡み付いたわね。さっきまでの無色な表情に初めて色が浮かんで来たわ。
苦悶と言う色がね……!
彼等は、力こそ人間と同じくらいしかないけど、元は絵の具だから体の形を自由に変形させれるし、衝撃にも強い。
ただの人間なら抵抗することも出来ないし、GSだって仕留めるには苦労するわ。まして、一度に数体なんか相手にするなんて不可能よ。
「ここまで来たら、1人も2人も関係ないわ!あんた達、両方とも邪魔の入らない場所で始末してやる!」
…………そう、今更躊躇なんてしない。
折角得た自由を守る為なら、私はなんだってするわ。あんた達に恨みはないけど、このま__
ヴァンッ!
「え……?」
意図せず、間の抜けた声がた。
一瞬、何が起きたか解らなかった。いえ、何でそんな事になったのだか解らなかった……
「千切れた……?」
あいつの首を掴んでたドールの腕が音と共に千切れた。腕を掴んでた、あいつの手によって………
何……?何をしたの??
私がそう思った瞬間、あいつはドールに向かって空いてる左腕を横に振った。今度は何っ……?何か光っ__
ヴォンッ!! ドベェチャッッ!!
「キャアッ!」
信じられない光景に思わず悲鳴が漏れる。
…………は、弾けた!?ドールの体が完全に……
ドール達には、生物に見られるような弱点は無い。刺されても、斬られても構わず動き回るし、手足が欠損したとしても体内に蓄積した霊気が尽きない限り止まる事はない。
でも、それを上回るような霊的衝撃を受ければ、体を維持出来ずただの絵の具に戻ってしまう。
現に今やられたドールは、飛び散って路上にこびり着いた黒いシミになってしまった。
「なるほど……お前の正体は、絵の具か」
「っ……!?」
口調と目付きが変わった!?
今までの探る様な感じから、明らかに攻撃的になってる……あいつの中で、私は探る対象から “抹殺” する対象に変わったんだわ。
……何?何?
本当になんなの、こいつ…………ドールを一瞬で破壊するなんて!?
「はぁぁっ!」
ジュバッ……!!
だけど、私の衝撃はそれだけじゃ済まなかった。
掛け声と音に反応して振り向くと、女によって別のドールが縦に真っ二つにされていた。
ただ、真っ二つにされただけなら、瞬く間に元通りにくっつくドール……でも、そうはならずそのまま飴細工のように溶け崩れてしまった。
あの木刀が光を纏ってる!?ただの木刀じゃなくて、オカルトアイテムだったのね……
いや、そうじゃなくて…………
不味い……! 不味い………!! 不味い…………!!!!!
覚悟を決めて強くした気持ちが一瞬で氷解して、一気に恐怖へと傾く。
何なの?こいつら……10秒もしない内に、2体もやられちゃうなんてっ……!
取り押さえる所じゃない。このままじゃ、他のドールも……いや、私も消される!!
「くっ……」
すぐに形勢の不利を悟らされた私は、回れ右をして女の脇を目指す。前に行かなかったのは、直感的に横島の方がヤバく見えたから。
あいつは、不味い……捕まったら…触れられたら、一瞬で粉々にされるわ!!
ただ、そんなことを女の方が許す筈もなく、一瞬で私の進路を塞ぎに走る。それを阻止するようにドールが動くけど、これまた一刀に斬られる。
速すぎる……!!これじゃ、ドール達に対応出来るわけがないわ。
「逃がすかっ!」
そして、迫りくる横薙ぎの一閃…………
私が、本物の暮井緑ならこの時点で終わっていたろう。普通の人間がこの距離と、この体勢で躱すことなんて不可能だからだ。
でも、私は人間じゃない……
ぎゅおっ……!
「!?」
驚愕する女の顔が見えた直後、私の頭上を通過する木刀の一閃。
身を低くした。 “しゃがんだ” んじゃなくて、文字通り体を半分程度まで縮めて剣閃を躱したのよ。
今の私の姿は、連中から見たら、不定形の濁った色をしたスライムに見えてるでしょうね。黒一色のドール達と違って、色んな色を大量に使ってる私は彼らよりも自在に変形出来るし、その速さも上なのよ。
だから、頭上と言うには少し語弊があるけど、とにかくそうして絶命する危機を脱した私は、そのままの状態でスケッチブックを開く。
「行ってっ!!」
バシュッ!! ブァシュッ!
そうして、再び出てくるの黒いドール達。ブックに残ってた10体を解き放ったのは、始めに出した最後の一体が横島に消滅させられたのとほぼ同時だった。
「ちっ……」
「性懲りもなく……」
何とでも、言うがいいわ………だけど、この程度の数じゃ大した時間稼ぎにもならない。
ぎゅおっ……
私は、体を元の形に戻すとドール達に命令を下す。
「そいつらを防いでぇっ!」
金切り声になりながらも、何とかそれだけ伝えると、今度は一目散に走り出す。
「何が、「見習い」よ!何が「大した事ない」よっ!十分にヤバ過ぎるじゃないっっ……!!」
走りながら、吐き捨てるように毒づく。
いい加減な情報を与えてくれた教員、油断していた自分、両方への怒りが湧き上がって来る。そんな事考えてる場合じゃないのに、勝手に湧き上がって来てしまう。
こんな連中が相手だって解ってたら、もっと沢山用意しとくべきだったわ………いえ、もっと強力な物を……でも__
「ここは、いい!奴を追って下さい!!」
「……はいっ!」
……………後ろ見ると、まだ連中から数十メートルくらいしか離れていない。
そして、立っているドールは既に半分くらいにまで減っていた。
「…………逃げ切れない」
自分の消される恐怖と焦燥に支配される中、頭の別の部分では冷静に割り切る自分がいた。
逃げなきゃいけないし、捕まる気も毛頭無い。捕まるイコール自分には、消滅しかないのだから………
だけど、現実とは非情な物で、いざ目の当たりにすると嫌でも認識せざるお得ないらしい……
どうしよう………あの女の脚じゃ、数分も掛からず追い付かれる。横島が来るよりはマシだけど、私じゃあの女にも勝てない。
身を隠すくらいなら出来るかもしれないけど、それも悪手な気がした。隠れると言うことは、ここに長く留まる事になる。長く留まれば、ドールを倒しきった横島も合流して探しに来る。そうなれば、私の生存確率は更に下がってしまう……
そして、そんな事を考えてる間にも女の影はどんどん迫って来ていた。
迷ってる場合じゃないわ……
私は、前を向いたままスケッチブックのある1ページを後ろに向かって解き放つ。
描いた最後の一体を召喚する為に……!!
「行けっ!グレイ・ゴーレム」
グオーッッ!!
ブックから大きな力が解放されるのが、感覚で解る。出来れば使いたくなかったけど、もうこれに賭けるしかなかった。
「なぁっっ!!?」
するとその直後、すぐそこまで迫っていたであろう女の驚愕する声が聞こえて来た。
ページに収納されてたとは、思えないくらいの巨体が現れたんだから当然よね。多分、使った絵の具の量から推定すると、高さ10メートルはある筈。
全身をゴツゴツした岩で構成した、無骨な岩石の巨人。
ユダヤの伝承を元にイメージしたその姿は、手足が先に行くにつれて太く巨大になり、全体的にかなりアンバランスではあったけど、それが逆に頑強さと力強さを兼ね備えた独特な威圧感を放っていた。
私が、ドールで駄目だった時の為の切り札……と言うか備えとして、描いておいた最後の一体………
絵の具で生み出した者たちの力は、使った絵の具と種類と量に比例して強くなる。サイズからも解る様にあれはパワー、破壊力、耐久力全てに置いてドールと比べ物にはならないわ。
ただ、あれには使うのを躊躇するだけの理由があった。
一つは、強力を与える為に体を大きくしてしまった事で目立ち過ぎてしまう事。目立たず、平穏に過ごしたい私にとって騒ぎを起こすことは、極力避けたかった。
そして、もう一つ……こっちの方が遥かに危ない。
さっきあれを出した時、私はドール達にしたような命令をしなかった。してる余裕が無かったからじゃない。まして__
ドゴォンッ!! バキャッッ!!
「…………………」
…………後ろから、ゴーレムのアスファルトやコンクリートを砕いた時の破壊音と、その合間を縫うように女の叫び声が響き渡って来る。
私が命令しなくても、あれは勝手に戦ってる。いえ、単に暴れてる だけ。あの場に居たら、私にも攻撃して来るでしょうね………
そう……従順なドール達と違ってゴーレムは、私の言う事なんて聞かない。力を与え過ぎると、その個体は創造者の命令に従わなくなるのよ。
もっと、創意工夫を重ねれば解決方法はあったかもしれない。だけど、それをするには圧倒的に時間が足らなかった。出来た事と言えば、ゴーレムに余計な知能や知識を与えなかった事くらい。
お陰で力は強いけど、本能で暴れるだけのデクが出来ちゃったわ…………
そんな事を考えながら、駅へ向かって走り続ける。
自分で、自分の首を絞めるような真似をしたにも関わらず、私は何処か落ち着いていた。
コントロール出来ない怪物を呼び出すなんて、平穏を望む私にとって、明らかに悪手……でも、あの2人ならゴーレムを簡単に駆逐出来る。
あのデクでも、精々足止め程度にしかならないと言う自分の見立てが、私に変な安心感と落ち着きを与えていた。
そうして、何とか駅に辿り着いた頃、ゴーレムを解き放った方角から大きな爆発音が聞こえた気がした。
多分、ゴーレムがやられたんだわ……私は、直感的にそう思った。
そんなこんなで、ホームを通りすぎた私は電車に乗り込みながら考える。これからの事を…………
『ドリアン・グレイの絵の具』は手元にある。このまま遠くまで逃げてしまおうかしら?
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