| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師

作者:wood12
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

尾行(ドリアン・グレイ編)

 
前書き
新章突入 

 


 ガララッ


 時刻は、午後の4時過ぎ。既に放課後の時間だけど、幸いにも職員室にはまだ、かなりの教員が残っていた。

 そして、私の目当てにしてる教員は…………



 …………居た。眼鏡を掛けた中年の男性教員が、机で事務作業をしている。初対面で顔は知らないけど、席の位置から彼であってる筈。

 私は、ゆっくりと彼に近づくとなるべく自然な体を装って話し掛ける。


「お忙しい所、失礼いたします」
「おや……あなたは、先日赴任して来た」


 近眼が進んでいるのか眼鏡を直しながら、私の顔を見上げる彼に、私は自分の名前を告げると初対面の挨拶を済ませる。
 今回の目的に比べれば些細な事だけど、この学校に長く勤める以上、こう言った事は丁寧にしておかないと不味い。


「これは、これはご丁寧に……」


 私が挨拶を済ませると、目の前の教員は、やや恐縮したように頭を下げ返してきた。彼の本心はともかく、社交辞令としては合格かもしれない。


「それで、私に何か?」
「いや、大した事ではありません。あなたのクラスで行った課題の資料を持って来ただけですわ」


 そう言って、私は持って来た資料を男性教員に差し出す。これは、元から予定していた事だからすんなり行く筈。

 問題なのは、ここから……私の中で幾分か緊張感が高まる。ここから、如何に自然を装って “彼” の情報を引き出すか………それが、今後の明暗にも間違いなく影響する。

 ただ、下手に嗅ぎ回るような真似をして怪しまれる事だけは絶対に避けなきゃならない。 “彼” の住所は、名簿から既に解ってる。最低限の情報を得てる以上、無理をしては駄目……

 だから、少しでも状況が悪くなりそうなら、直ぐに退散しよう。


「ああ、そうでしたか」


 そう言いながら、教員は特に怪しむ素振りも見せず資料を受け取る。ここまでは、予想通りだった。


「あの………それで……」
「……何か?」


 こっちから、話を切り出そうとしていた所に向こうから話し掛けられて、少し面食らうが、それでも平静を装い聞き返す。

 何かしら……?

 訝しむ……ではないけど、彼のこちらを伺うような目が気になった…………どちらかと言えば、これはバツが悪そうにしてるようにも見えるわ。


「ウチの連中ですけど…………何か先生に失礼な事しませんでしたか?」
「し、失礼……ですか?」


 全く予想外な方向から話を振られて、今度は本当に面食らってしまう。いや、この場合は面食らってる方が寧ろ自然なのかも…………


「いや……ウチには悪い連中は居ないんですけど、 “変な連中” は割と居ましてね………」
「は、はぁ……」


 変な連中って………まぁ、確かに騒がしい生徒は、多かったわね。 

 そんな事を考えてると、教員は尚もバツが悪そうに続ける。


「特に……あの__って奴は、あなたに何かしませんでしたか?いや、あいつは馬鹿なだけで悪い奴ではないんですがね。でも、若い女性……特にあなたのような、綺麗な方を目の前にすると正気を失ってしまうようで………」


 来たっ……!!

 僥倖だわ。こっちが何もしてないのに、向こうからわざわざ教えてくれるなんて。

 その後も私は勝手に恐縮してる教員に、ひたすら面食らった演技をしていたけど、内心では “ほくそ笑んでる” のをバレないようにするのに必死だった。




    ◇◇◇


“キーン・コーン・カーン・コーン……”



 ……………… “あいつ” が来た。

 
 学校から少し離れた路地裏で待機してると、目的の男子生徒が鞄を持って歩いてるのが見えた。今は、ちょうどあいつ1人……

 私は路地裏から出ると10mくらいの間隔を持って、慎重に彼の跡を付ける。絶対にバレる訳には行かないし、見失う訳にも行かない。


 昨日は思わぬ形で彼の情報を得た私だったけど、それが追い風になってるとは言い難かった。言い方を変えれば “時間的猶予” が無い事が解って、逆に追い詰められてるのかもしれない……

 そうに思った私は、あの後急いで彼の部屋まで行ってみたけど帰ってる気配は無く、そこから暗くなるまで張ってみたけど結局は空振りに終わってしまった。

 夜遊びだったのか、それとも “仕事” だったのかは解らないし、確認のしようも無かった。
 確実なのは、その時間的ロスが私にとって好ましく無かったと言う事だろう。


 だから、今回はこうして隠れながら待っていたわけだ。彼が、私にとって “危険” かどうか見極める必要があるから。

 さっきも言ったように時間はない。今回が勝負よ。

 今回で全てを見極める。何も無いなら、それでよし。危ないようなら、早急に手を打つ(・・・・)

 …… “アレ” は持って来てる。もし、出来そうならその場で…………!!


 そう決意……いや、覚悟と言うべきだろう。失敗すれば、今後の全てを失ってしまう可能性すらあるのだから。
 とにかく、気持ちを新たにした私は彼を追い続けた。




    ◇◇◇


「やっぱり、今日も部屋には戻らない積りね……」


 彼を追いながら、私は誰にともなく呟いた。

 違和感は、尾行し始めてすぐに現れた。彼の向かう先が部屋とは別方向だからだ。


 この方向は……駅ね。

 その予想通り、彼は程なくして駅に辿り着くと慣れた動作で改札口を通って行く。
 彼が定期なのに対して、私は切符だったので買ってる間は流石に慌てたけど幸いにも見失わずに済んだ。

 そして、そのまま彼の隣の車両へ乗り込む。

 そうして程なく、発車する電車。一駅……二駅……東京の駅間は短いけど、車両の扉が開く度に、彼が出るんじゃないかと冷や冷やする。そんな感じで常に神経を尖らせてるけど、中々彼は出て来なかった。
 時折、見失ったんじゃないかと不安になって、デッキのドア窓を確認するけど、そんな事は無く彼は車両内に普通に立っていた。

 何処に行く気かしら?このまま行くと、本当に海の方まで出ちゃうけど……

 そんな事を考えながら、20分程が過ぎ駅数も数えるのが億劫になって来た頃にようやく彼は、降りた。
 それを見計らって私も降りる。駅はとても混雑してるから、尾行が気付かれないのはいいけど、見失わないようにするのが大変だった。

 そんな苦労をしながら彼を追うけど、どうやら駅から出る気はないらしい。路線を乗り換えて、更に何処かへ向かう気のようだ。

 だけど、そんな彼を追いながら思う。

 この方面って…………もぅ、工業地帯しかないじゃない!?

 昨日も同じ所へ行ったの?そもそも、高校生が何でそんな所に?それとも、彼の仕事の一環とか……?

 いくら、考えてもさっぱりだった私だけど、ここで更に事態は変わる。

 彼が、構内で知り合いと思わしき若い女性と会ったのだ。相手は、Tシャツにジーンズと行ったラフな格好をして、黒髪をショートカットにした中々の美人。

 始めはデート(こんな所で?)かと思ってしまったが、それは直ぐに違うと気付いた。
 2人の様子が待ち合わせではなく、偶然会ったと言う感じだったから……もっと、言えば恋人同士という感じでもなかった。明らかに、彼の方が女性の方に気を使ってる。彼女の方が年上?

 あの教員は無類の女好きと言ってたけど、本当にそうなのかしら?今の所、そう見えないけど…………

 でも、参ったわね……これじゃ、今日仕掛けるのは無理だわ。だけど、このまま何の情報も得ずには帰れない。

 その光景を見て、落胆仕掛けた私だったけど、何とか気を取り直して尾行を再開する。


 今日、尾行を始めるまでは、手を打つかどうか迷ってた。そして、今日の結果次第でそれを決めようと思っていた。
 でも、それじゃ駄目……ここまで来て気が変わった。こうやって1回尾行した所で、大した事なんて解らない。解らないけど、放置なんかしたら状況は私にとってどんどん悪くなる。


 そんな事になるくらいなら、彼には完全黙って貰うしか無いわ。


 そのチャンスを伺う為にも、ここから何処に行くか把握する必要がある。



 その後、路線を乗り換えた2人は、10分程してようやく電車を降りた。着いた先は、予想通り東京湾に面した工業地帯。

 駅を出た2人は、そのままずんずんと歩いて行く。かなり慣れた様子ね。それとこの周辺は、今までと比べて人通りが一気に減って、見付けるのは簡単になったけど、今度は尾行がバレないようにするのが大変になってしまった。

 距離も始めは10mくらいの間隔が、今はその倍くらいになってる。それくらい空けなきゃバレちゃうし、それくらい空けた所で見失うことは無かったから。


 …………でも、人通りが少ないこの辺はチャンスだわ。今は2人だから出来ないけど、1人の時なら……


 ずっと戸惑いっ放しだったけど、ここに来てやっと運が巡って来たかもしれない。そんな高揚感が、私の身を軽くする。



 そんな状態で数分過ぎた頃だった……

 周りは既に工場ばかり、多少はあった人通りも今は完全に無くなっていて、そこにいるのは、私を含めた3人だけ。

 その前を歩く2人が、曲がり角の陰に姿を消したのが見えて、私も足音立てないよう小走りなって追った。2人を見失わない為に……

 ここに至るまで、私は最新の注意を払っていた積りだった。


 だけど…………



「!?」


 いきなりの出来事に私は、驚愕して動揺した。

 角を曲がって、先に進んだと思った2人は、男1人になって立って居た。

 私の方を向いて……


 傍から見れば、急いで角から出て来た私と立って居た彼が偶然鉢合わせしたように感じたかもしれない。

 でも、違う…………


 私は完全に面食らってるのに、向こうは平静のまま………

 待ち構えられてた。気付かれてたんだわ…………でも、いつの間に?それに、あの女は??……いや、そんな事より…………
 

「どうも……暮井先生」
「っ……!」



 横島……忠夫…………


 平坦な表情で口を開く彼に、私は絶句するしかなかった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧