| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師

作者:wood12
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

前夜祭?

「今日は、10月31日じゃったか………」
「何かあんのか?」


 別に興味があった訳じゃねぇが、朝のニュースを見ながら呟いた爺さんの言葉に(雪之丞)は釣られる様に反応した。頭が、まだ覚醒しきって無いせいかもしれない。
 今は互いに別のソファーに座って、TVを見ている。ロボ娘は、朝食の準備中だ。


「たわけ。今日は、ハロウィン……『死者の来る日』じゃぞ」
「…………そうだったのか?でも、それってヨーロッパの風習だろ?」


 眠気の残る頭を、無理矢理(・・・・)回転させるようにして思い出す。

 確か幽霊や妖怪達の仮装をして、魔除けをするって聞いた事がある。後は、ガキが大人達にお菓子を “せびる” んだったっけか?


「確かにそうじゃが、日本で言うなら “盆” の様なもんじゃぞ。オカルトに関わっている以上、知っておくべき事であろう?」
「まぁ、そう言われりゃそうだが………」


 祭りだけじゃないって、言いたいわけか……だけども、自分に縁の無い物に興味を持てるかと言われても、正直難しいもんがある。


「実際、日本じゃ何もしねぇんだろ?」
「今はな……」


 何だ?少し、ブスッとしたように答えたぞ……


※1990年代初頭の日本では、特にハロウィンで騒いだりしてません


「今は……?じゃあ、今後はあるのか?」
「この国のクリスマスが良い例じゃ。あれは、本来キリスト教徒が行う神聖な儀式のはずなのに、実際それで騒いでおるのは関係ない者ばかりじゃろ?」

「確かにな……キリストそっちのけでケーキだ。サンタだ。プレゼントだとか、ガキが飛び付きそうなもんにしか触れてねぇな」
「全て、日本の企業が利益に繋がりそうな物にだけ乗っかった結果に過ぎん。ハロウィンもいずれは、同じ様になってしまうじゃろうて」


 なるほど……


「死者の魂そっちのけで、南瓜被って大騒ぎってか?」
「そうなるじゃろうな。嘆かわしい話じゃよ……」


 俺が黙っていると、爺さんは更に続ける。


「真似ることを否定したりはせん。じゃが、本当に真似なければならないのは、その “心” じゃ。利に釣られて形ばかり真似た所で、そこに学びも成長も無い。ただただ、虚しいだけじゃて……」
「……………………」


 …………盆は、俺にとってママと触れ合えるかもしれない重要な日だ。ヨーロッパのハロウィンが、それに当たるってんなら爺さんにもそういう人が居るわけだよな?


 あのロボ娘の元になった人の事でも考えてんのか?


 TVに向かって嘆息する爺さんを見て、何となくそう思った。


「爺さん……」
「何じゃ?」

「菓子寄越せ」
「………冷蔵庫に羊羹があるから、勝手に食え」

「あんたが、分厚く切って持って来てくれよ」
「じゃあ、食うな……!」


 …………んだよ、人が折角元気付けようとしてやってんのに……


 TVの中では、いつかの赤毛の出っ歯が両脇から女に抱えられながら、ひたすら「豚バラ」を連呼してた。

 このCM、何バージョンあるんだ?




    ◇◇◇


「そうか……今日が、その日だったのか」
「何かあるのか?」


 その日の午後。

 事務所にやって来た鴉といつも通り外で鍛錬を始めて数時間経ち、今はその休憩中だ。


「いや、別にない。特に馴染みもないしな」
「馴染みのある日本人なんて、逆に居ないだろ?それより、今日が10月の最後だけど、あの娘とはどうなったんだ?」


 確かに、隣に住んでる娘とは今月中にケリを付けると言ってた気がする。

※『十五夜』参照


「……ちゃんと伝えたよ『君の想いには、応えれない』ってな」
「そうしたら……?」

「『はい……』って……」
「そうか……」


 それだと、部屋の隣に住んでる以上、今後も気不味くなりそうだが黙っていた。奴の表情や空気から、今はそっとしておいた方がいいと思ったからだ。

 だけど、沈黙するのも面識だったんで別の話題を強引に振る。


「そういや、文化祭どうだった?タイガー達の出来なら、盛り上がったんじゃねぇか?」


 そう…鴉の高校では一昨日、昨日と文化祭があって、こいつもそれに参加していた。
 かく言う、俺も初日には暇潰しがてら顔を出したんだが、奴等(タイガーと付喪神……名前忘れた)の作り出す幻想空間は見事なもんだった。

 タイガーの故郷らしいジャングルの風景を始めとした、日本に居たら絶対に味わえないだろう生気に満ちた風景。神秘に溢れた景色。特に最後に見せたオーロラの星空は、鳥肌もんだったぞ。
 見せられたのは10分程度だったが、300円でこのクオリティなら十分過ぎる程元が取れる。実際、他の客達も呆気に取られまくってた。


「ああ。大盛り上がりだ。愛子もス…タイガーも息ぴったりで、なんのトラブルも無かった。中に居た俺とピートは、暇で仕方なかったよ」
「何してんだ?」

「2人に何かが起きた時の為に待機してたんだよ。でも、何も無いんで寝てたら愛子にシバかれた」
「はっ!ザマァねぇな♪」

「言ってろっ……」
「まぁ、何も無くて良かったな」

「文化祭はな……」
小鳩(そっち)の方は、出来る事がありゃあ言ってくれ」


 っても、大した事なんて出来ねぇだろうがな……

 その後も、あーでもねぇ、こーでもねぇと(いつも通り)どうでもいい話をしつつ時間は過ぎて行く。


 …………………そういや、始めは何の話してたんだったけ?

 俺は、ドサクサに紛れて寄って来た雑魚を裏拳で吹っ飛ばしながら、そんな事を考えていた。



    ◇◇◇


「な、なんじゃあマリア……!?」
「派手な料理ばっかりだな……」
「ハロウィンだからか?」


 口から出る言葉は3人3様だったが、目の前の料理に驚愕してるのは全員一致していた。


 鍛錬を終えて、夕飯の時間を迎えた俺達が目にしてるのはロボ娘の作った南瓜を中心とした数々の料理。それが、テーブルの上に所狭しと置かれてる………

 南瓜スープ。南瓜のグラタン。一口大に切った南瓜のロースト。血糊の色を意識したのか、赤い色が鮮やかなトマトパスタ。普通のトマトピザの上に、黒オリーブで形作ってる黒猫……じゃあ、これは黒猫ピザと言えばいいのか?

 まぁ、なんだ……とにかく、他にも色々あった。どれも、アイデアとバラエティに富んだ目の飽きない物ばかり。それでいて、食欲をそそる様ないい香りのする所を見ると、味も決して悪いもんじゃないんだろう。
 こいつの料理の腕は毎日の食事で解ってるし、この前の十五夜で食った餅も酷い目にはあったが、味は良かった。

 …………にしても、良く作ったな。大した設備はねぇのに……


 この物件には、始めは小さなシンクとガスコンロが一つあっただけだった。その後、オーブンとか電子レンジ、新しいガスコンロなんかを買って色々出来るようにはなったけど、それでも充実してるとは言えねぇ。


「ろ、ロボ娘……何で、こんなに?」


 そんな余りの光景に呆気に取られながら、口を開く。さっきの口振りから、爺さんも知らなかったみたいだから、多分こいつ本人の考えだろう。普段の言動が諸にロボットなんで見失い勝ちだが、こいつにはハッキリとした意思がある。


「ハロウィン・皆で・祝いましょう」


 やっぱり、ハロウィンか……だけど…………


「皆さん・席に着いて下さい」
「う、うむ……」
「ああ……」
「……………………」

 
 何となく釈然としなかったが、ロボ娘に促されて2人が座った事で俺もなし崩し的にソファーに座る。


「食べて下さい」
「「「い……いただきます」」」


 そして、そのまま3人で少し……いや、かなり “ぎこちない” 感じで言うと、俺は取り敢えずフォークでパスタを口に運ぶ……


「美味い……」


 お世辞じゃなく、自然と出て来た言葉だ。

 真っ赤な色合いから濃い味を想像していたが、酸味も程よく効いていて丁度いい。腹も空いてたんで、どんどん食えた。
 他の料理も始めの印象通り、見た目だけじゃなくて味もしっかりしていた。

 他の2人も同じ様に美味そうに食ってる。まだ、戸惑っている感じだったが……

 俺自身もそうだ。

 普段なら、何も考えずにガッつく。ただ、朝の爺さんとの話から何となく、それが出来ずに居た。
 料理は普通に美味いのに、そこに目一杯没入出来ないもどかしさ。

 爺さんも、多分一緒……いや、奴は慣習を理解してるから単に面食らってるだけか。忠夫に関しては、この前の十五夜の一件が効いてるのかもしんねぇ。


「な、なぁロボ娘……」


 場の空気が悪くなるかもとも思ったが、どうにも我慢出来なかった俺は、遂に口を開いた。

 すると、それまでソファーに座ったまま微動だにしないでいたロボ娘も口を開く。


「何でしょうか?」


 …………やっぱ、止めときゃ良かったかなと思いつつも、言い出した手前引っ込みも付かないんで、俺は思ってる事を正直に続けた。


「ここまで、食っちまって何なんだけど……良かったのか?爺さんはともかく、俺と鴉(巻き添え)はハロウィンの事なんて殆ど知らねぇんだよ」


 この質問は、完全に俺の自己満足。

 最悪、沈黙も覚悟したが、そんな俺にロボ娘はいつも通り淡々と答えた。


「ノープロブレム・皆で美味しい料理を食べて喜ぶ事が大事・武威・美味しいですか?」


 ………………なるほどな。


「ああ……とても、美味い。お前、すげぇよ…………」

 

 例え正しい形じゃなくても、皆で楽しんだり、喜んだりする心は本物であって、それはとても素晴らしい事……ロボ娘は、そうに言いたいんだ。

 横目で爺さんの方を見る。どっか憮然としてたが、特に何も言わなかった所を見ると、ロボ娘にやられたって感じてるのかもしれねぇな……


「ありがとうございます・武威」


 そう答えるロボ娘の顔は、いつものポーカーフェイス………だけど、心なしか嬉しそうに見えたのは、俺の気の所為なんだろうか……?


 いつか、何か返さねぇとな………何となくだが、そう思った。
 
 
 

 
後書き
横島と小鳩の失恋エピソードを考えていましたが、ありきたりにしかならないんで、武威と鴉の会話だけで触れる形にしました。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧