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『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師

作者:wood12
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十五夜


“豚バラ♪ 豚バラ♪”
“ “ “豚バラ♪ 豚バラ♪” ” ”

“豚バラ♪ 豚バラ♪”
“ “ “豚バラ♪ 豚バラ♪” ” ”

“豚バラ豚バラ “ぶっ……”豚バラ豚バラ豚バラ豚バラ…… ”
“何処まで言うねんっ!!”

“エターナル・コック♪ 豚バラ♪♪”


「癖になりそうなCMだぜ……」
「この前、一緒に食ったな」


 コンビニを大勢の客と一緒に占拠(?)した、赤毛の出っ歯と、そこそこイケメンな金髪のお笑いコンビがひたすら “豚バラ” を連呼するだけのCM。
 そのCM に、独特な想いを吐露する雪之丞。そして、それに相槌を打つ俺。


「どうだった?」
「不味い……」


 ボリュームは、それなり……豚バラ肉も一応は入ってたから、不当表示も宣伝も無い。でも、特徴としてはそれだけ。あくまで、金のない学生連中の腹をそこそこ満たせるくらいしか、買うメリットが無い………

 現に、この前食った時(一応、汁まで飲んだ)も、お互い特にコメントしなかったのが良い証拠だ。


「お前もか……俺も、大して美味いと思わなかった」
「斬新なCMに軽く洗脳されたな。PRさえ上手くすりゃ、不味いカップ麺も売れるってこった……」

「…………姐さん(美神令子)は、以前お前の学校で言霊に霊波を乗せたんだろう?今回もそれって事はないか?」
「流石に規模がデカ過ぎるだろ……?費用対効果を考えりゃ、普通に美味いラーメン作った方が安上がりだぜ」


 オカルトアイテムには、普通の製品の何倍から何十倍もの値が着くんだ。校内放送でやるのとは訳が違う。


「そうか……………豚バラ♪豚バラ♪」
「?」

「豚バラ♪豚バラ♪」
「…………どうした?」

「豚バラ♪豚バラ♪」
「………………俺にもやれと?」

「豚バラ♪豚バラ♪」
「……いや、やらねぇよ」

「豚バラ♪豚バラ♪」
「…………………………」

「豚バラ豚バラ豚バラ豚バラ豚バラ豚バラ」
「いや、しつけぇ!!」



 …………そこまで話す(?)と、互いに話す事がなくなりフロアにはTVの音だけが流れる。まぁ、一緒に居るのが当たり前(キモッ……)になってる関係上、多少の沈黙なんて “いちいち” 気にも止めない。

 そして、どちらかが何か思い付けば、唐突にその思い付いた方が喋り出す。それが、これまでの日常だ。

 こんな風に……


「そういや、お前の隣に住んでるあの三つ編みの娘……」
「小鳩ちゃんか?」


 この野郎……振るなら、もっと面白い話題にしろよ。


「そうそう。結局、どうなったんだ?」
「別にどうもなってない。毎日、一緒に学校に行ってる」


 だから、ヤバい……こんな欺瞞だらけの時間は、早く終わらせないといけない。


想い(・・)には、応えれないんだろ?」
「ああ……」

「………どうする気なんだ?」
「今月中に何とかするよ」


 何ともならんかも知らんが……貧の奴に相談しても、何の役にも立ちゃしねぇ。死ね疫病神!←八つ当たり


「……何か、考えてるのか?」
「何も……ただ、期限を切っただけだ」


 正確に言うなら、何度考えても何も思い浮かばないんだけどな。


 そこまで話し切ると、会話が途切れTVの音声が再びフロアを支配する。

 時刻は、夜の10時過ぎ。日課の鍛錬は、おろか夕飯やシャワーまで既にお互い済ましており、後は寝るだけ。
 ただ、それをするには少し早い。普段は、大体11時過ぎに寝る流れなんで、それまではソファーでTVを見ながら適当に駄弁る……駄弁る事が無くても、TVだけは何となく着けて時間まで見続ける。

 一見すると無駄に思えるが、俺は1日の終わりを楽しむ余韻的な時間だと思ってるんで、何も考えずいつも “まったり” と浸っている。
 

 そうして数十分が過ぎ、そろそろ寝ることも考え出した頃…………


 ガタガタッ……


 ブラインドを閉め切ってる窓ガラスが、少し揺れた。


「荒ぶってるな……」


 雪之丞が荒ぶってると呟いたのは、外に漂う悪霊達の事だ。

 結界が張っているんで、建物には基本的に近寄らない。だけど、数が限界まで膨れ上がっていたり、何かしらの事情でイキり立ってたりすると、たまに外の壁や窓ガラスを叩く事はある。今回の場合は、後者だ……


「今日は、十五夜だからな」
「そういや、そうだったな……」


 そう……今日は満月。所謂、 “中秋の名月” って奴だ。今日に限らず、月の満ちる晩は星の影響からか、妖怪や怨霊達の気が昂る。要は、奴等の脅威度が増す訳だ。

 …………と、そんな風に言うと何かヤバそうに聞こえるんだが、ウチの事務所では、さっきみたいに窓を叩かれる程度なんで今更気にもしない。

 ただ、今回の十五夜は違った意味で特別な物だった気がする……


「腹は、少し落ち着いたか?」
「いや、まだ……お前は?」


 若干顔を顰めながら聞いて来る雪之丞に、俺もつられるように顔を顰めながら返す。


「苦しい……餅は、腹に来る」
「マリアに、来年はもっと減らすように頼もう……」


 今日は、十五夜……お月見をする晩だ。

 …………っても、それで何かする気は誰にもなかったんだが、何を思ったんだかマリアが月見団子を大量に(こさ)えてくれた。もう、大皿に山が出来るくらいに………


「10人前は、あったぞ……」
「良く、食い切れたな………」

「何で、あんな作ったんだ?」
「沢山食うと思ったからだろ?」

「いや、だからって……」
「実際、全部食ったじゃねぇか………」


 それが今から、2時間くらい前……味は、店に出しても遜色無いくらい美味かったんだが、夕食をガッツリ食った上でのあれは、キツいなんてもんじゃなかった。もぅ、暫く団子は要らん………


「……ロボ娘の奴、あんな作って自分では、殆ど食わなかったな」
「そりゃ、食わねぇだろ……?俺達の為に作ったんだから」


 ちなみに “お月見” なんで、ブラインドを全開にして月を見ながら、団子を食った。

 満月は綺麗でも、宙には悪霊達が意気揚々と舞ってるんで風情もへったくれも無かったが、それを口にする勇気は誰にも無かった……

 んな、意味不明な状況で、ただ黙々と団子を腹に詰め込む単純作業………間違い無く、忘れられない十五夜になりそうだ。



「そりゃ、そうか……そういや爺さんは、先に休んだみたいだな……」
「ダウンしたって、言った方が的確だろ」


 敷居で区切った就寝スペースから、たまに小さな唸り声が聞こえて来る……ったく、年も考えずに無理に詰め込むからそうなんだよ。


「しゃーねぇな。寝込むくらいなら残しゃいいのに……」
「マリアの機嫌を、損ねたく無かったんだろ。気持ちは、わからなくもない」

「じゃあ、お前もロボ娘に遠慮して、無理やり食ったのか?」
「それも、ある……」


 遠慮だけじゃなく、ちゃんと感謝もしてるぞ。あの娘が、気を利かしてくれたんだからな……


「他には、何があんだ?」
「目の前に食べ物があったら、取り敢えず食い切らなきゃだろ?」


 もぅ、条件反射レベルだよ。


「貧乏人か♪」
「おいっ……!!」

「食いもんに困窮するくれぇの?」
「そうだよ!悪いか!?」


 いや、違うけど……染み付いた性(悲しい)には、未だ贖えん………


「はっは〜♪怒んなよ。俺もだ♪」
「全く嬉しくねぇ……」


 糞ったれが……


「………………そろそろ、寝るか?」
「……ああ、そうだな」


 ふと時計を見ると、11時を過ぎてる。良い時間だ。


 ガタガタガタッ……


「………まだ、寝るなってか?」
「見てみるか……」


 雪之丞にそう言うと、俺はソファーから立って窓へ足を運ぶ。

 わざわざ見ようと思った事に理由は無い。さっき言ったように、こんな事は日常茶飯事……本当に何となくだった。

 そして、前まで来ると俺はブラインドの紐を一気に引いた。



 ブラインドを上げた瞬間真っ先に見えたのは、迫り来る巨大な光の奔流……それが、俺の見た “最後” の記憶………


 凄まじいエネルギーだった。

 その光の発する衝撃……灼熱………それらによって俺の体は、瞬く間に吹き飛び、炭化し、粉々……いや、体が炭化してから吹きとんだのだろうか?

 とにかく、一瞬の出来事………だが、死にゆく俺にとって、そんな事はどうでもいい事だったんだろう。


 物語……完…………











 …………………なんて事になるわけもなく、ブラインドを上げた窓ガラスの先には、いつも通りの光景が広がっていた。

 暗闇に無数の青白い影(悪霊)……そいつらが、何をするでも無く漂うだけ……


 すると、窓から外を覗く俺に気付いたんだろう。周辺に居た数体が俺に向かって突っ込んで来るが、案の定結界によって弾かれる。

 弾かれるはするが、俺と言う標的が諦めきれないらしい。忌々しそうに、窓の周りを漂い始める。
 なんだが、そんな連中をこうしてガラス越しに見ると、こいつらが主人に餌を求める、水槽の中の金魚に見えて来るから不思議だ。

 いや、そんな事考えるのは俺だけなのか?正直、どうでもいいが……


「明日、相手(除霊)してやるよ。じゃあな……」

 
 奴等にそう言って(聞こえやしねぇだろうが……)、ブラインドを閉じて振り返る。

 …………雪之丞の奴は、既に居なかった。いつの間にかTVも消えてる。


「寝るか……」


 そう呟くと、俺もベッドへ向かう。

 …………後ろで、ガラス戸がまた “ガタガタ” と音を鳴らしたが、今度は俺の鼓膜にも響かなかった。

 
 

 
後書き
豚キム豚キム♪ 
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