| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師

作者:wood12
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

断首(魔族の依頼編)



 ドゴォンッ!! ガガガガッ!!


「アンタ、あの装置使って、ここで何してんだよ!?」
「ああ!?丁度いい寝蔵にすんに決まってんだろうがっ!」

「んなもん、見りゃわかる!なんで、んな事すんだよ!?」
「力を蓄えんだよっ!ここの霊脈は、俺様に良く馴染む!」


 ドバァンッ!! ブオンッ!!


「はっ!力蓄えて、いずれ自分が魔王ってか!?」
「そうだっ!俺様が唯一絶対。神も魔も関係ねぇ!!」

「なら、魔界でやれやっ!」
「うるせぇっ!!魔界じゃ、周りが強くて出来ねぇんだよっ!!」


 …………それは、開き直ってんのか?

 後ろの方で罵り合うガルザと雪之丞のやり取りを聞き流しながら、そんな事を思う。

 こういう力とか強さだけに依存する奴は、自分の弱さなんて認めらんねぇもんだけど珍しいタイプだな。それとも単にアホなだけか……?


 とにかく勢い良く始まった両者やり合いは、今の所膠着している。ガルザの攻撃は、見た目通り自分の手足を使った突きや蹴りが中心。
 それらを滅茶苦茶にブン回してるようにしか見えないが、その一撃一撃は、巨躯を思わせない程速くて重い。まともに喰らえば巨岩も一発で粉砕されるだろう。雪之丞は、それを小回り活かした立ち回りでスイスイと躱しちゃいるが、いつまで保つか?

 ガルザは、遊び半分。そして、人間の霊力に当たる魔力は雪之丞の10倍以上……長引けば、長引くだけジリ貧だ。
 雪之丞も、奴の長い手足を上手く掻い潜っては空いた胴に突きや霊波砲を放つも、奴の分厚い装甲には殆ど効果が無い。せいぜい、掠り傷がいい所だろう。


 さ〜て、どうする雪之丞?こういう単純で原始的な奴は、特別な攻撃して来ない分、明確な弱点もないぞ。

 ……ただ、繰り返すが俺も地上の2人と共に戦闘中。奴の心配ばかりしていられなかった。



 ブブゥ゙ゥ゙ッッ!!


「チッ……」


 そんな事を考えながら、俺は左手で霊盾を展開する。いつもの爆弾じゃない。文字通り盾として半身を覆うように平面に霊気の壁を展開する。


 グァグァグァッ……!!


 その盾に弾かれる無数の黒い針(鉛筆大)。それが、慣性の力を失いそのまま下へ落ちる。もう少しタイミングが遅ければ、俺はハリネズミのようになっていたかもしれない。

 これは、棘兵(連中)が肩や背に生えるそれを、一斉に射出した物だ。どうやら、一発限定らしいがあの数でやれると不味い。そう思っている間にも別の個体達が前屈みになって射出体勢を取る。


「ふっ……」


 ブゥ゙ブゥ゙ブッ……!! ヴォンッ! ヴヴォンッッ!!


 それを察知した俺は、今度は防がず横へ滑空して飛んでくる針をやり過ごす。そして、躱すと同時に霊盾を撃ち返す。そのまま、飛びながら撃ち続ける。
 防戦一方になるのも不味い。こっちは常に動いて攻撃態勢を取らないと、辛うじて保っている戦線が崩れちまう。


 ブブゥ゙ゥ゙ッッ!! ブゥ゙ッッ!!


 現に下の2人も、連中の射出攻撃には手を焼いていた。


 キィンッ! キンキンッ!


 無骸は、その重装と巨大な棍を組み合わせて上手くガードしている。斥候では完全に戦力外だったが、今は最も理に適った装いと言えるだろ。


「ごめんあそばせっ!」
「………………」


 キキキキィンッッ!!


 逆に軽装の氷雅さんは、俺と同じように動き回って狙いを絞らせないようにしていた。時折、無骸の陰に回って(無骸がどう思ってるかは知らん……)針をやり過ごしたりもしている。

 ………まぁ、今の所は3人共上手く立ち回れてるが、始めの勢いはこれで削がれちまった。


“ギシャァ……”   “キギ……”   “シャァ〜………”

※棘兵の鳴き声


 戦闘が始まって、まだ1〜2分くらい。

 ここまで、ざっと30体くらいは仕留めただろう。だが、後続から続々と黒い影が集まって来るのを見ると、ある意味で絶望的な気分になってくる。ここ一帯に響く、奴等の歯軋りの様な唸り声がそれを助長してくれた。

 ……敵の立て直しが予想以上に早い。連中には、感情が無い分動揺もない所為だ。


 迷ってる場合じゃねぇな………


「無骸!冰織!」


 そう自分の中で決心した俺は、下にいる2人文珠を投げる。そして、戸惑いながら受け取る2人へ説明なしにそのまま発動。


 ボワァッ!!


「こ、これはっ……!?」
「………………!?」
「2人の霊気回路にブーストを掛けました。それで、普段は倍は動ける」


 今、2人に投げたのは『倍』の文珠。上手く使えばパワー、スピード、技の威力、全てが倍化(実際は、そんな単純でもないが……)する。
 これも飛行と同じように、本来ぶっつけ本番でするようなもんじゃない。だけど、この2人ならコントロール出来るだろう。

 ただ、これでも焼け石に水……連中に飲まれる時間が僅かに増えるだけだぞ。




    ◇◇◇


 ガギィンッ! ゴギィンッ!


「糞がっ!本当に硬ぇなぁ!!」
「オラァッ!オラァッ!んなもんかぁ?チビスケェ!!」


 ブオンッ! ゴバァンッ!!


「やべぇ、やべぇ……こりゃ死ぬかもな」
「 “かもな” じゃなくて死ぬんだよ!お前も、お前の仲間もなぁっ!」

「はっ……確かにアンタ強ぇよ。だけど、俺達を倒した所で、また人間が来るぜ。アンタ、その辺のこと分かってんのか?」
「ああ?ついに、負け惜しみかぁ?んなもん、全部返り討ちにしてやるに決まってんだろがぁ!!」


 ゴギッ! ドゴォンッ!


「……それだけか?先の展望とかねぇのかよ!?」
「ああっ!?人間が、ゴチャゴチャうるせぇんだよっ!!」

「そんなんだから、魔界から追い出されんじゃねぇか!?」
「だから、グダグダウゼェんだよっっ!!」


 ドグオオォォォーーンッ!!


 武威のその一言は、かなり効いたらしい。

 そのガルザは、合わせた両手を振り上げるとそのまま力任せに地面に叩きつける。物凄い轟音と衝撃で地面に大穴が空くも、これは雪之丞を狙ったと言うよりも、自分の中で抱え切れない怒りをそのまま地面にぶつけた感じ……要は八つ当たりだ。

 だが、それでも奴の怒りは収まらない。全身から初めて対峙した時と同じ…いや、それ以上の衝撃波を撒き散らしながら喚き散らす。


「どいつも、こいつも面倒くせぇんだよっ!!俺達ゃ魔族だ!力こそ全てっ!!何で魔界でコソコソしてなきゃいけねぇんだぁっ!!?神族も人間も関係ねぇ!力ずくで追い出しゃいいんだよ!!なのに、他の連中と来たら “今は、その時じゃねぇ” とか “被害がデカくなり過ぎる” とか、最もらしい言い訳並べやがって!!被害がなんだっ!?上等だろっ!?混沌こそ、俺達の性分だろうがぁっ!!!」


《念話》

“………おい、武威。なんか、やたら激ってるが、こっちはもう限界だぞ。行けるか?それとも、逃げるか?”
“ん……ああ。行ける。やってくれ!”


 頭に響くその言葉に従い、俺は雪之丞の持ってる3個の文珠に念を送る。刻んだ文字は__


 『超』『加』『速』………


 《超加速》……韋駄天族の奥義を基にした超高速移動・加速術。

 厳密には “周囲の時間の流れを遅くする” ことで、自分だけが相対的に高速で動ける技。本来、龍神族の神具でやるこの技を文珠で強引(・・)に再現した。

 だから、制御が不安定で消耗も激しい(もっと言えば、持続時間も短い)。だが、上手く使えば俺達の “切札(ジョーカー)” になるはず……


「はぁっ!!」
「なっ!?」


 その掛け声と共に消える雪之丞。そして、それを見て呆気に取られるガルザ……だが、次の瞬間………


 ザシュ……!


「ぐおっ……???」


 今度は、戸惑いの声を上げるガルザ………それも、そうだろう。いきなり、自分の首の右半分(・・・)が斬られたんだから。
 だけど、それも一瞬……


 ザシュッッ!!


「…………!!?」


 間髪入れず、今度は繋がった左半分を見事に両断され宙を飛ぶガルザの首……

 横目で追ってるだけなんで良くわからないが、きっと奴の表情には驚愕が張り付いているだろう。何が起こったのか、まるで理解出来てないだろうからな。


 ………姿を消してから、首を両断するまで約3秒か。初実戦投入だったが、上出来もいいとこだ。



「な……何が………?」


 そして、当のガルザだが、地面に落ちてゴロンと転がりながらも、掠れながらも戸惑いの声を上げていた。そこへ、再び姿を現した雪之丞が、戦斧を片手に淡々と告げる。


「簡単だ。お前の首を切り落としたんだよ。首が、一番柔そうだったからな」
「お……俺様が、神魔じゃなくて……に…人間に………」

「人間だって、色々考える。弱いからって、黙って殺られるわけには行かねぇんだよ」
「……………………」
「……って、もう聞こえてねぇか」


《念話》

“終わったみたいだな”
“おおっと、悪い!すぐ加勢するっ!!”

“焦らなくていい。お前が奴の首が飛ばした瞬間、連中の動きが変わった”
“変わった……?”

“ああ。ガルザの統制が切れた途端、同士討ちを始めたよ。中には死体を喰ってる奴までいる。ああなると、無様なもんだ”
“…………そうか”

“元気ねぇな。お前の提案がバチッとハマったんだぞ”
“そうだな……いや、いい。とにかく、全部殺っちまおう”


 ………同じ脳筋同士、何か感じるもんでもあったのか?

 そう考えながら、俺は雪之丞と残った雑魚の殲滅に向かうのだった。

 
 

 
後書き
次回、後処理……エピローグです。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧