『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師
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奇襲(魔族の依頼編)
《念話》
“見えるか?”
“ああ。神社の裏で大の字になって寝てる奴……あれが、ガルザだろ?”
次の日の朝方。森で一晩明かした俺達4人は、文珠の力で地上から約50メートルの高さで下を見おろしていた。
夜明けの薄明かりと朝霧、瘴気に覆われた廃村は、まだ全体がぼんやりとしていたが、神社の屋根やその周辺黒い靄が特に濃く淀んでいる場所の様子はハッキリと確認できた。
棘兵の影も、黒い塊のようにうごめいているのが見える……例の神社を中心にかなり密集しているな。ただ、こっちに気付いる様子はない。この距離なら霊気で気付かれる危険はあったが、予想通り周辺の濃すぎる瘴気がそれを妨げてるようだった。
◆◆◆
《昨日》
「これが、 “文珠” ……」
「………………」
俺は、渡されたビー玉大の茶色い球体をしげしげと眺める2人へ言葉を続ける。
「使い方は、簡単。ただ、それに “発動” と念じて後は飛ぶイメージをする。それだけです」
ここは廃村から少し離れた森の中でも開けた場所。
俺は、ここで氷雅さんと無骸に文珠のレクチャー……もっと言えば、空の飛び方をレクチャーしていた。
…………とは言っても、2人に『飛』と刻まれた文珠を渡してさっきの軽い説明をしただけなんだが……
「難しく考えることはねぇ。武威もすぐに慣れた。コツは確かにいるが、お前等なら簡単だ」
「大体、それ一つで15分程は飛べます。村の真ん中までなら余裕で行ける」
◆◆◆
今、4人全員が文珠の『飛』で飛行している。
雪之丞の言ったように、昨日数分程飛んだだけで2人共その感覚にはすぐに慣れた。そのまま実戦で使えるかと、問われたら微妙な所だが、今回の作戦なら飛べれば取り敢えずは十分だった。
空中から、一気に奇襲を掛けるだけだからな。
そう……今回の作戦は、空から直接ガルザを狙うことになった。この廃村の広さと雑魚の数を考慮すると地上から奴に近付くのは、ほぼ不可能だからだ。
ちなみに全員、文珠で姿も消している。互いに念話で話していたのは風が気になっていたのもあるが、実際は相手が何処にいるか不明瞭(霊気で傍に居るのは、大体わかる)なせいだ。
“さ〜て♪んじゃ、朝イチで奴に盛大なご挨拶かましてやるか!「おはよう!そして、さようなら!!」ってな!!お前等、準備はいいかっ?”
“ああ”
“いつでも行けますわ”
“………………”
無骸は、勿論答えない。だが、代わりに鎧を打つ金属音が聞こえて来た。OKということか?
そして、雪之丞も俺と同じような取ったらしい。次の瞬間、俺の頭に景気のいい奴の叫び声が響き渡る。
“よっしゃっ!行くぜっ!!”
その声を合図に俺達は姿勢を変えて、頭から一気に降下する。地べたに寝そべるガルザへ向かって。
水中に潜るような要領で風を切る。高度45メートル…40メートル…35メートル……数秒も掛からない内にガルザへ肉薄し、その距離が20メートル付近に下がった所で再び雪之丞が叫ぶ。
“今だっ!”
その合図に従い、俺は文珠による透明化を解除する。
透明化は隠れるには有効だが、互いが認識出来なくなる点から連係には完全に不向きだからだ。
そうして解除した瞬間、姿を露わにする俺達はそれぞれが違う獲物を構えてガルザへ突っ込む。
雪之丞は戦斧。俺は掌に溜めた霊盾。無骸は棍棒。氷雅さんは霊気の刃を纏った木刀。それら全てが、タイミング良くガルザ目掛けて………
ヴオグオウウオォォンッッッ!!!
……刺さらなかった。
4人の放った攻撃による衝撃で、その場に数メートル級の大穴が空いたが、本人には掠りもしない。
その上で当のガルザを穴の空いた衝撃で後ろに飛び退いた俺達の更に後ろから傲然と見下ろしていた。
「んだぁ〜〜??気持ち良く寝てる所に随分舐めた真似してくれるじゃねぇか?なぁ、人間ごときがよぉ〜……!!」
野獣の唸り声を思わせるような低く荒々しい声。それを不機嫌丸出しで放つこいつに、俺は軽い戦慄を覚えていた。
……こいつ。巨体の割に、思った以上に身軽で素早い。
さっきの攻撃の時、俺達が仕掛ける大分前から接近に気付いて速攻で横に飛び退きやがった。それまで、間違いなく熟睡してたのにだ。どうやら、見た目通りの野蛮で知識も無さそうだが、戦闘センスはピカイチなタイプらしい………
「何か喋れやっ!!ゴミ虫共がよぉっ!!!」
ヴオオゥッッ!!
「「「「!?」」」」
ガルザの怒声と共に、その体内の気が一気に膨れ上がりそれが衝撃波となって俺達を襲う。咄嗟に身構えたが、防ぎきれなかった俺達はその場から数メートルの後退を余儀なくされる。
「……失敗しちまったな。奴さん、大層ご立腹だぞ」
「クハハハハッ!上等!上等!面白くなって来たじゃねぇか♪」
「よく笑えますわね?周りの棘兵が迫って来ますわ!」
「………………」
本当だよ。頼もしいと言えるのかも知らんが、偶に状況読めてないんじゃないかと不安になって来る(まぁ、それでも悄気るよりはマシだが……)。
だが、俺がそんな杞憂を抱く中でも雪之丞は不敵に笑い、ガルザへ進む。
「プラン “B” に移行だ。お前達は、雑魚を頼む」
「あぁん!?逃げねぇのか?もっとも、逃がすつもりもねぇがなぁ!!」
自分に近づく雪之丞へガルザは呆れと嘲り混じりの言葉を吐くが、奴が言い終わるや否や戦斧を投げ付ける雪之丞。
「逃げるかよっ!喧嘩第2章!行くぜっ!!」
だが、勢い良く投げ付けられたそれを硬質の皮膚を纏った腕で簡単に弾くガルザ。それで腕に傷が着いた様子もない。あの甲殻も伊達じゃないらしいな……
「フンッ!いいだろう。なら、まずテメェからなぶり殺しにしてやるよっ!」
売り言葉に買い言葉……互いに似たもん同士のやり合いが始まるか。
巨体の魔族は、殆ど遊び。小柄な戦闘狂は、死ぬ気……でいいんだよな?何かコイツも面白がってるクサいけど………
ただ、俺も呑気に2人にばかり気を割いてもいられなかった。神社の周りを固めていた雑魚達が肉薄するのを確認した俺は、再び文珠を発動。黒い片翼を顕現させて、宙へ舞い上がる。
「鴉!?」
「上から援護します。2人は、連中が武威の邪魔にならないように防いで下さい」
「………………」
言いながら、数メートル程浮かんだ俺は連中のど真ん中へ霊盾を叩き込む。短時間で生成した、具現化未満の霊気の塊にそこまでの威力はない。現に直撃した雑魚も、後ろの連中を巻き込みながら吹っ飛んだが、死にはしないだろう。
だけど、それでいい。目的は殲滅じゃなく、連中の足並みを乱すこと。俺は、次々と連中の密集してる所へ霊盾をブチ込んで行く。
「はぁっ!」
「………………」
そして、そうこうしている間に下に居る2人も戦闘に突入して行く。
氷雅さんは、持ち前の素早く鋭い踏み込みと以前カオスの爺さんに調整して貰った木刀で、襲い掛かる雑魚達を次々と斬り払う。
※『魔族ビブロス編』参照
あれからも、自分なりに研鑽したんだろう。木刀を通じて具現化した霊気を通常の刀以上に伸ばし、一振りで数体纏めて斬り捌く様は、もはや剣術と言う枠を超越した独特の武芸と言っても差し支えなかった。
ドブァンッ!! ドグゥオォンッッ!!
………無骸の方は、もっと豪快だった。
雪之丞と同じように霊気で作り出した、身の丈以上もある巨大で漆黒と言うよりドス黒い棍棒。それを片手で力任せに振り回すスタイルは以前と同じだが、一撃一撃の威力が段違いに上がっている。
その棍で叩き潰された雑魚は、それこそ潰された林檎のように弾け飛び、横薙ぎで派手にぶっ叩かれた奴等は体を変な方向に捻じ曲げながら何メートルもブッ飛んで行った。
これは、単純な力に依る威力じゃないな。当たった瞬間に何か違ったエネルギーが棍棒から噴き出ている感じだ。
あれは…… “風” の力か?
天狗殿の元で修行を積んでる奴が風の力を使うのは自然な流れだが、こんな短期間で?それとも、これがあの “鎧” の力……?
※『天狗編』参照
……まぁ、何にしてもこの態勢で行けば数分くらいなら保たせられる。
後は、雪之丞だが………そう思った俺は、横目で連中の様子を覗う。
ボガァッ!! ボゴオォンッッ!!
「ハッハーーッ!!流石に強ぇなぁ♪当たれば、一溜りもねぇぜ♪♪」
「ったく!雑魚がちょこまかと……早く死ねやっ!!」
…………大丈夫だよな?
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