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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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罪とは人が作り出す物、だが人は罪からは生まれない

「………アルル、有り金を全部くれ!」
お父様が普段ではあり得ない程真面目な声で、アルル様にお金をせびる…
「カンダタ、一緒に来い!他のみんなは此処で怪我人の看病を…」
そしてアルル様からお金を受け取ると、カンダタを連れて出て行ってしまった。
幾ら何でも遊びに行った訳では無いだろうから、残された私達はお父様の指示通りに、怪我人や病人の看病をする事に…

お母様が荷物の中から薬や包帯を取り出し、怪我人達の看病を始める。
ハツキ様が怪我人に近付き、ベホイミで傷を癒す。
それを見たウルフ様もハツキ様に習い、憶えたてのベホイミで怪我人を癒す。
私は回復系魔法を使えないので、軽く濡らしたタオルで彼等の体を拭う事に…

何だか涙が出てくる…こんな事しか出来ないなんて…
ゲームでは、ただ戦って悪者を倒せば、世界が救われ皆が幸せになっていくのに…
これが現実なのか!?
こんなに苦しい物なのか!?
実際、身を持って体験すると分かる事がある…
ゲームでは深く語られていない部分がある事を…
現実として経験すると、こんなにも辛く苦しく悲しい事が起きているのだ。

お父様はどんな人生を送ってきたのだろう?
DQ5の主人公は、シリーズ中で最も悲惨な幼少期を過ごしているのに…
何であんなに明るく優しいのだろうか?
ゲームをプレイしていた時は感じる事は無かったが、目の前で父親を惨殺されたのだ…
10年間も鞭で打たれ奴隷として過ごしたのだ…
私は舐めていたのかもしれない…
所詮はゲームの世界だと、安易に考えていたのかもしれない…


私が涙を流しながら、浮浪児さん達の体を拭いていると、両手に大量の食料を抱えたお父様が戻ってきた。
「どうしたんだよ、それ!?」
フィービーが大量の食料に驚き質問する。
「買ってきた。ビアンカ、軽くで良いから料理してくれる?」
お父様は軽く答えると、お母様に指示を出し、そしてお母様もそれに従う。
そしてお父様は、調理しなくても良い食材でサンドイッチを作り、浮浪児さん達に配っていく。

「か、買ってきたって…何処で!?この国には碌に食料なんてないだろう!」
「僕はルーラを使えるからね!アリアハンに行ってきた。その後でロマリアとイシスにも…」
大した事ではないと言う様な口調で言い切ると、質問者のフィービーを手繰り寄せ、素早く服を脱がすと、即座に真新しい服に着替えさせるという凄ワザを見せつけてくれた。
何あの手際の良さ…
女の服、脱がし慣れてるわねぇ…

「ちょ……勝手にレディーを裸にして、今度は服を無理矢理着せるって………何なんだよアンタ!」
「うるさい、その服臭いんだよ!何時までも着てるなよ!」
あぁ…臭いは感じてたんだ…私てっきり…
「あ!それまだ使うんだよ!…アンタも言っただろ!その悪臭のお陰で、スリが成功するんだよ…それにその臭いで奴等も近付かないし…」
お父様が脱がした臭い服を、焚き火の中に放り投げるのを見て、文句を言うフィービー。

「もうスリをする必要は無い!もう脅えて暮らす必要は無い!…こんな国は僕が修正する!」
だが何時になく真面目な目をしたお父様が、力強い口調で彼女等を助ける事を宣言する!
そうよ!
こんな酷い状況のままで良い訳ないわ!


みんなに食べ物を手渡したお父様は、決意の篭もった表情で立ち上がると、この隠れ家から出て行く。
私達もお父様の後に続き、隠れ家から出てお城へと歩みを進める。
もう黙っている事何て出来ない…
何かをしなければ、頭がおかしくなりそうなのだ。




よほど怒り心頭な様で、スタコラサッサと私達を無視してお城を目指すお父様…
私はそのスピードに付いていず、1人だけ遅れてしまう。
見かねたウルフ様が私を抱っこしてくれたので、何とかお父様とはぐれずにすみました。
うん。ウルフ様格好いいッス!

「止まれ!これ以上は陛下の許しがある者のみが進入出来る。お前達の事は聞いていない!引き返して帰りなさい!」
少しだけ先にお城へ着いたお父様が、兵士さんに通せんぼされている。
よし、悪い兵隊さんはぶっ殺しちゃえば良いんです!
フィービー達に酷い事をした報いを受けるべきです!
「悪いけど通してほしい…この国の現状に文句を言いたいからね!」
そんなヌルい事を言ってないで、ともかくぶっ殺しちゃえばスッキリするんですよ!

「悪い事は言わん…命が惜しかったら、諦めるのだ。不平を言っても何も変わらんし、そんな事すれば後ろの女性達が酷い目に遭う…」
ほら。どうせ退かないのだから、お父様のバギクロスで細切れにしちゃえば良いのに…ってか、お父様がこちらに振り向き驚いている?
何故?
「早々にこの国から出て行くが良い…それがお前等の為だぞ!」

兵士さんの言葉を聞き、私達を連れその場から離れるお父様…
そして人目を避ける様にお城の物陰まで移動する。
何かしら?…あの兵士さんへ不意打ちでもかますのかしら?
私達の実力なら、そんなことしなくても瞬殺だと思うけど…

「お父様、あの兵士さんもぶっ飛ばしちゃいましょうよ!」
自分が弱いつもりでいるからって、私達まで同じだと思うのはやめてもらいたいわ!
「ダメだよマリー…彼は善人だ………彼もこの国の惨状を憂いでいるんだ。でも、彼には力がない…目を瞑り、自分を守るしか出来ない…そんな彼に罪はない」

「う~………じゃぁどうするんですか、お父様!折角此処まで来たのに!?」
う゛……じゃぁどうすんのよ!
い、いいじゃない…お城に勤めている奴等は、みんな悪いヤツ認定で!
………でも、悪い人じゃ無いって聞いちゃうと……
「まぁ……裏口でも探すよ………つーか、何でみんな付いてきてるの?これから王様と喧嘩しようとしてるんだよ!正気の沙汰じゃないんだよ!?」
今更かよ!
私達に気付いて無かったのかよ!

「父さんが正気の沙汰じゃないのは何時もの事でしょう!むしろ今回は普段よりまともだと思ってるのですが!?」
「そうよリュカ!珍しくまともな行動をしてるんだから、家族として…仲間として、それについて行くに決まってるじゃない!」
凄い事言われる父親ねぇ…
「うわぁ…お父様、家族に愛されてますぅ!普段の行いが良いと、こうも家族愛に満ち溢れるのですねぇ…」
「君達の言葉は、嫌味にしか聞こえないのですが!はぁ、まぁいい…付いて来るのならば、僕の指示には従ってもらうよ。勝手な行動は慎んでくれ!」
ダメと言われても行くもんね~!
「「「は~い」」」



 
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