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『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師

作者:wood12
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黒牙(魔族の依頼編)


 俺は、赤い目をギラつかせながら周囲を伺う黒色の魔族達を見て思った。

 ………魔族の拠点……別に舐めてたわけじゃないが、やはり一筋縄ではいかないらしい。


 そんな中、俺は息を殺し氷雅さんに目で合図を送る。

 彼女も小さく頷くと、ゆっくりと体を低くして左側へ迂回するルートを示した。


 そうして、俺達は草むらを這うように移動を再開する。

 幸いにも棘兵は、村の外周近辺に居ただけでそれ以降遭遇することはなかったが、長い蔓や草が茂る中をゆっくりと掻き分けて、一歩ごと音を立てないよう進む。
 その極限の一歩手前まで注意を払い続けなければならない道中は、俺にとって想像以上にキツかった。


 そんな状態で進み続けて、どれくらい時間が経っただろうか。

 ようやく、村の中心部に近づいたのか木々の密度が少しだけ緩み、古びた神社の輪郭が木々の隙間から見えてきた。それを廃屋の陰に身を潜めながら覗う。

 鳥居は半壊し、本殿は屋根が大きく傾き、壁の一部が崩れ落ちている。
 そして、その周辺の木々だけが特に黒ずみ、不気味に葉が枯れかかっていた。冰織(彼女)の言っていた、瘴気の影響だろう。現に少し離れたこの辺の空気も一段と重く、甘ったるい瘴気の臭いが濃くなっている。

 だが、それ以上に驚いたのは……


《念話》

“数十……百体に届きそうですわね”
“始めのあれは、氷山の一角だったんでしょう”


 そう……神社周辺には、黒ずんだ木々以上にあの黒い魔族で埋め尽くされていた。それも、絶対に何者通さないと言わんばかりに隙間なく。その中の一部は、神社の屋根や木の枝に登って遠くまで見渡すような徹底振りだ。
 ここから見えるのは前方半分だけだが、後ろも似たようなもんだろう。氷雅さんの言うように、百体くらい居るかもしれない。


“ここまで警戒されたら、もう近寄れませんわ。何かあるのは、確実でしょうが”
“でしょうね。霊脈の乱れも、あそこから感じる……”


 始めは全く分からなかったが、ここまで近付けば俺でも地面から感じ取れる乱れが分かった。

 そして、俺がそう返すと彼女は思い付いたように思念を飛ばす。


“霊脈の乱れ……地下を通る霊脈に細工をして、瘴気を発生させてる?”
“………スジは、通ってますね”


 言われてみりゃ、確かにそうだな。

 廃村になったとは言え、ここは普通に人間の住める土地だったんだ。自然にこんな瘴気が湧き出るわけない。
 魔族の関与は端からわかってたが、蓋を開けてみれば思った以上にシンプルだったか。だとすると、敵の目的は………


 ガラララッ!!


 突如、辺りに響き渡る乾いた倒壊音……なんてこたぁない。神社の一部が崩れ落ちたんだ。屋根に乗っていた魔族達の重みで。
 元から傾いていたんだから、当然と言えば当然なんだが、そんな所に複数人で上がっていた事を考えると、何とも間抜けな光景だった。それを証明するかのように、乗っていた内の2体がバランスを崩して無様に地面を転げ落ちていた。


“……余り知能は高くなさそうですわね”
“少し、安心出来ましたよ”


 呆れたように(思念で)呟く氷雅さんに、俺も同意する。まぁ、それでもあの数でゴリ押しされたら、苦戦は必至だろうが。

 そんな事を思っている時だった……


「こんっの馬鹿共がぁっっ!!」


 不気味に静まり返るその森に、突如響き渡る凶悪な怒声。

 神社の裏から、慌てたように出て来た筋骨隆々とした黒色の肌をした巨体の魔族。おそらく2メートル半ばはあるだろうソイツが、床に転がっていた2体の魔族を乱暴に踏み潰す。
 硬そうな甲殻に覆われてたであろう、その体は大木を思わせるような剛脚でトマトのようにアッサリと潰されちまった。


“雑魚と比較にならないような禍々しい気……あれがガルザ?”
「………………」


 ワルキューレから聞いてた通りだな。

 まるで、岩でもを重ねたような重厚な体躯。全身を覆う硬質で漆黒の甲殻、そこから突き出る無数の鋭い棘。
 顔は鬼に近い凶悪な形相で、額に生える太い2本の角、赤くギラつく双眸に口元の牙。
 周りに居る雑魚達の強化版と言った所か?いや、雑魚がコイツの劣化コピーなんだろう。

 とにかく、そんな野生感丸出しの見た目に部下を容赦なく踏み潰す残忍さ………氷雅さんの言うよりにガルザで間違いないな。


 俺達が、そんな感慨を抱いてる間にも崩れかけの神社では奴が喚き散らしていた。


「オラァッ!見てねぇで、早く(瓦礫を)片付けろ!装置が壊れる!!」


 その怒声に周りに居た連中が一気に動き出す。その様は非常に従順ではあったが、仲間が目の前で踏み潰された事をまるで意に介してない様子は異常その物だった。


 そんな連中のやり取りを暫く見ていた俺達だったが、やがて氷雅さんが思念で俺に呟く。


“もう、行きましょう”




    ◇◇◇


「なるほど……瘴気の正体は、霊脈に細工した結果か」
「ええ。神社の地下にその装置を設置したのは、そこが霊脈の要所だったからですわ。あそこには、この地の霊脈が集中してます」


 文珠(転移)で雪之丞達の元へ帰還した俺達は、その場で情報共有をしていた。

 ちなみに彼女は地下と言ったが、それほど深い物じゃなく小さな神社の本殿の下を数メートル掘って設置した感じだった。
 雑魚達が瓦礫を撤去した時に、黒い金属製の立方体が頭を地上に覗かせていた。多分、あれで霊気を瘴気に変換してるんだろう。


「そうか。あと、あの辺だけやたら濃かったけど、それは結界でも張ってたのか?」
「その通りです。神社の四方囲む様な支柱が立っていました。あれが、結界でしょう。まぁ……割と漏れ出してましたけど………」
「色々と杜撰だったよ。隠そうとする意思は、強かったけどな」

「ふ〜ん…とすると、奴さんの目的は人間界(ここ)を魔界と同じようにする為なのか?」
「まぁ、それで合ってると思う。少なくとも自分の領域(テリトリー)は、魔界化してフルパワーで動けるようにしたいんだろう」


 本来、瘴気の薄い人間界では、魔族はその出力を制限される。雑魚はそうでもないが、上級になるに従ってその傾向は強くなる。
 

「……で、どうするよ?取り敢えず、ここまで分かれば奴も納得すると思うが?」
「へっ……♪」


 俺達が受けた依頼は、敵の規模と目的の調査。殲滅に関しては、こっちの任意だ。俺がそう聞くと、雪之丞は一瞬不敵に笑いながら口を開く。


「奴の応援は、期待出来ないんだぜ」
「でも、いつかは寄越すだろ?」

「その間にここは、もっと魔界化する。ガルザって奴は、大悦びだな♪」
「じゃあ、協会に応援を頼むか?魔族が巣食ってると言えば、動かざる得ないだろ?」

「何て言って頼む?「僕達じゃ勝てませんから、助けて下さい」ってか♪」
「業腹だな……」

「ガルザって奴は、そんなに強いのか?鴉。お前の見立ては、どうなんだ?」
「大体※ムルムラーの倍くらい魔力を感じた。あれと違って如何にも徒手空拳の剛力自慢。だけど、複数で連係すれば何とかなるだろ」

※『はぐれ魔族編』参照

「じゃあ、何でやるって言わないんだよ?」
「雑魚が多すぎる。大体100〜150体。一体一体は弱いが、ゴリ押されるとヤバい」


 連中は、知能も低いし感情も感じられない。その代わりにガルザの手足の様に動く。


「んなもん、奇襲でも掛けりゃどうとでもなるだろ?」
「失敗しても、文珠で逃げられるか?」

「そうだ」
「そんなリスク冒す必要が何処にある?下手に突きゃ、守りを固められるぞ」

「目的はわからねぇが、奴が今しようとしてるのはこの地の完全拠点化だ。時間を置けば、それだけ手に負えなくなる」
「だから、そうなる前に協会に報告しろってんだよ」

「それじゃ、時間が掛かり過ぎる。そもそも、連中は俺達の話を信じるか?」
「………………」

「俺は、魔族と契約までした男だぞ。お前も側に居たんだからわかるだろ?連中が、俺にどんな目を向けて来たか」
「……どちらにしろリスキーなら、自分達でやっちまおうってか?」

「そう言うこった。それに守りが固まりきってない、今がチャンスだ。最悪、失敗してもお前達の見た雑魚の残骸でも回収出来りゃ、協会(糞共)を説得出来るかもしれない」
「ちっ……いけしゃあしゃあと………」


 本当は、ガルザとやり合いたくて仕方ねぇんだろうが、それでいて一理あるから、始末が悪い……


「それでも、俺達2人(・・)じゃキツい……」


 ドバギィッ!!


 俺が言い終わらない内に真横で響く激しい打突音……無骸が傍に立つ木の幹を殴り付けたからだ。


「………………」
「クハハッ!俺を勝手に省くんじゃねぇって、言ってるぞ♪」
「フンッ……」


 まぁ、いい……正直、この展開は予測済みだ。後は…


「何故、私は不参加前提ですの?」
「参加する気ですか?あなたが、無理にリスクを取る必要は無いと思いますが」

「報酬は、別途出るんでしょ?それに……」
「それに……?」

「ここで逃げてるようじゃ、(あなた)をぶった斬ることなんて永遠に出来なくてよ♪」
「ハハハハッ!大分、冰織に気に入られたなぁ♪鴉」
「………………」←無骸


 この女……その設定、ここでも擦るのかよ。


「フフフフフッ……殺意も愛情も結局は、一つの執着に過ぎない。冰織。あなたは、そう仰っしゃりたいわけだ?」
「ウフフフ…鴉。あなたは、本当に察しが良くて嬉しいですわ♪」


 「嬉しいですわ」じゃねぇよ!もう、意味がわからん………


「まぁ、でも鴉……」
「あ?」


 もぅ、既にどうでも良くなり掛かってた俺に雪之丞が勿体付けたように口を開く。


「お前がどうしてもってんなら、俺は協会に行ってもいい」
「何だ急に?」


 そんな訝しむ俺に構わず雪之丞は、ニヤつきながら(こういう時は、大抵ロクでもないことを考えてる)続ける。


「でもよぉ。協会に行きゃあ、連中は誰かを寄越さなきゃならないだろうが、誰を寄越す?魔族相手なら相当(・・)な凄腕が必要だぞ」
「………………」

「真っ先に声を掛けるのがS級スイーパー《美神玲子》なんじゃねぇか?」
「………………」

「クククッ♪2人で姐さんに頭下げに行くか?」
「ふざけろっ!奴に頼むくらいなら、ここで死ぬわっ……!!」


 糞ったれがっ……!!

 
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