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FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-

作者:joker@k
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第七話 歓迎戦

 
前書き
自分で書いた話なのに覚えていないとはこれ如何に。
す、数ヶ月前に書いたから仕方ないよね(チラチラ 

 
 俺は今、フェアリーテイルのギルドの外にいる。理由は勿論グレイと戦うため。ちなみにこのグレイ、年齢は俺の三つ下で10歳だ。……この年齢の三歳差は身体能力に大きく関わるだろう。手加減を間違えないようにしないと。あぁ、それとこの十歳という情報はグレイに直接聞いたわけではない。

 透視のDBドーブレビスタは周囲を遠くまで見ることができ、尚且つその間の弊害物までも透視することができるが、このDBはもう一つ便利な能力を持っている。それは見た相手のステータスを閲覧することができるということだ。

 今俺の眼にはグレイ・フルバスターの詳細をはっきりと見ることができる。ただこれを使うと相手が行使してくる魔法もわかってしまうため、俺としてはあまりに面白味に欠けるため使いたくなかったのだが。一番初めの実験台にグレイを使わせてもらった。

 ただ、これから先この使い方をすることはあまりないだろう。相手の情報を得るのは大事なことだが、それ以上に面白味がなくなってしまう……例えそれによって自身が危険な目になったとしても。


 しかし、あれだな。ギルドの連中は暇なのだろか。対決と聞きつけ大勢の人が周りを囲っている。まるでこれからお祭りでも始まるかのように騒がしい。賑やかなものだ。

 ふとギルドの入り口付近を見ると数人の人達がお金を握り締めながら列をなしていた。なるほど、俺とグレイの勝敗で賭けごとか。俺は口元を歪めながら、グレイに一言告げそこへ向かう。そこではリーゼントの髪型をした若葉柄の服が特徴的な男が椅子に座りながら賭け事の場を仕切っている。そいつの背後から覗き込むように声を掛ける。


「よう、オッズはどうなってる?」

 そのリーゼントは俺に目を向けず、客を捌いている。手馴れたものだな、恐らくこういうことがあればいつも開催しているのだろう。ここは一つ俺も参加するとしよう。

「あぁ、中々良い勝負だがやっぱりグレイのほうが人気だな。確かに新人君のほうが年も上で厳つい顔つきだが力は未知数だしな。実績のある将来有望なグレイに……って、ぐもっ!」

 何やらどこかで聞いた擬音を発しながら、その男は話をしている相手が新人君だということに気がつき、驚きのあまり椅子から落ちてしまった。しかし、オッズは俺のほうが高いのか……気にいらねぇな。ならばと、俺は持ち金を全て取り出す。

「ほら、これを全部俺に賭けといてくれ」

「え? ……あぁわかった。しかし、凄い自信だな。相手はちっこくてもフェアリーテイルの有望株だぜ?」

「なら、俺がそれ以上の有望株だったということだ」

 男は返事代わりとばかりにヒュ~と綺麗に口笛を吹いて返した。すると、突然俺のズボンが引っ張られ、横を向くとまだ幼い顔立ちの小さな女の子がいた。

「新人くんは強いの?」

「新人君じゃない。ルシア・レアグローブだ。きみは?」

「わたし、カナ・アルベローナ。ルシアが強いんだったら、わたしルシアに賭けるわ!」

 まだグレイと同じ歳ぐらいであろう女の子が賭け事に参加するとは、日本では考えられないな。カナは手に握り締めた少ないお金をリーゼントに渡す。微笑ましいな、内容はともかく。

 カナがワカバと呼んだリーゼントの男は苦笑いしながらも、きちんとメモに記していた。……そういえばワカバから名前を直接聞いてなかったが、もう覚えたのでいいか。それにあまりグレイを待たせるのも悪いしな。あとで自己紹介すればいいだろう。


 俺が戻るとグレイは待ちわびたぞとばかりに腕を組みながら好戦的な視線を送ってきた。先ほどのギルド内での挑発は良い具合にグレイの燃料へとなっていた。……評価を修正だな。熱くなったまま挑んでくるかと思ってたが思いのほか冷静な雰囲気だ。内心は燃え上がっているだろうが。俺はそのまま一言も喋らず戦闘モードへと切り替える。グレイもそれを感じ取ったのか真剣な表情で構えをとる。

 周囲も戦闘の予兆を感じとったのか静かになっていた。まるで荒野で決闘する西部劇の映画ようにヒューと風がなびく。その風に乗ってきた木の葉が両者の丁度真ん中にヒラリと舞い降りた。


 瞬間、グレイは勢いよく地を蹴り、腕に氷を纏わせまっすぐ攻撃してきた。腕には棘状の氷がついており、そのまま防御してもダメージを喰らうことは必然。……普通ならな。

「避けると思ったか? ならその後に考えていたプランは修正したほうがいいぜ? 【フルメタル】」

 俺はあの時とは違い全身を鋼鉄に変えて、グレイの攻撃を腕を上げるだけで容易に防いだ。俺の身体は今鋼鉄だ。その程度の錬度の氷ならば簡単に砕ける。氷がクッションになったとはいえ多少のダメージを手に与えたはずだ。現にグレイは手を押さえ込んでいる。

「ッッてぇぇ! 何だよそれっ!」

「何と言われたら俺の能力としか言えないな。ほら、とどめの一撃だ。【アングリーブリッツ】」

 手を押さえ込んでいるグレイのお腹に雷のDB【アングリーブリッツ】を発動させながら蹴り上げた。このDBは衝撃に連動させて雷を発生させる技だ。もちろんDBの威力は手加減してある。……あ、蹴りは割りと本気だしちまった。さすがにヤバイかっ!

「ッッガハ!」

 グレイは俺の蹴りの勢いで、五メートルほど飛ばされていった。明らかに気絶、肋骨も何本かやられているだろう。やってしまった。完全にやりすぎた。周囲の観戦者たちもざわつき始め、俺は急いでグレイの元へ駆けつけようとしたとき、ピクっと震えるようにグレイの身体が反応した。

 まさか意識があるのか?あれほどの攻撃だぞ。俺が言うのもなんだが十歳やそこらの子供があの威力の蹴りで気絶せずに意識があるというのか。
 グレイはそこから何とか立ち上がろうとするも俺の雷の効果もあり、身体が痺れて動けないのだろう。当然だ、威力の違いはあれ、以前襲ってきた盗賊たちもこの雷で動けなかったんだ。だがしばらくすると、グレイは何とか立ち上がりこちらを見返していた。

「凄いな。DBは手加減したとはいえ、かなり強力な雷撃だったぞ。それに蹴りも本気だった。……いや、俺がグレイを見誤ったのか。まだまだだな俺も」

「へ…へ…へっへっ。これで手加減って、はぁはぁ、ルシアどんだけ…強ぇんだよ。滅茶苦茶…悔しい、けど俺の……負けだ。でも次は、絶対に勝つ!」

 グレイはそう言い切ったあと笑顔で前のめりで倒れこんだ。瞬間周囲の観客は一斉に沸いた。耳を劈くほどの歓声。聞こえる歓声は両者に対するものだった。確かにグレイの最後の立ち上がりは凄かった。誰もがあれで起き上がれないと思っていたのだから。戦う者に組する者なら最後の立ち上がりの凄さがよりわかるだろう。技量の問題ではない、精神力の問題だ。



 そのまま倒れこんでいるグレイを介抱しようとしたところで、俺の目の前に電撃が走る。飛んできた方向を見ると、さっきギルド内で俺に好戦的な視線をとばしていた奴だった。今の技を見るに雷を得意とするのだろう。いや、固定概念は捨てるべきか。雷はこいつの扱う武器の内の一つとして考えた方がいいな。そう思考してる間にそいつは俺の目の前に降り立った。

「よう、強いな。グレイを圧倒してたじゃねぇか。新人くんよ」

「ルシア、ルシア・レアグローブだ。おまえは?」

「俺はラクサス。ギルド最強候補の内の一人だ、よく覚えておけよ? し・ん・じ・ん・くんよ」

「……個人の名前も覚えられないような脳筋野郎が最強候補じゃ、俺もすぐに最強候補に仲間入りになっちまうな? えぇ?脳・筋・先・輩さんよ」

「あ゛ぁ!?」

 ラクサスの額の血管が浮かび上がり、怒りを浮かべたことがすぐにわかる。挑発には挑発を。黙って穏便に済ませるほど人間できてないんでな。それに久方ぶりに、いやもしかしたらこの世界では初めてか。全力で戦うことができるのは。面白くなってきた。

 途端、グレイが吹き飛ばされたときにできた瓦礫が崩れ落ちる音がした。

 その音と同時にラクサスは躊躇なくその怒気を雷撃に変えて俺に放ってきた。すかさず冷静に後方に跳び回避するが、眼前にはすでにラクサスの雷を纏った豪腕が空気を切り裂くかのように俺の顔面に迫っていた。回避は不可能、ならばと俺は防御と回避を捨てクロスカウンターを狙うかのように相手の顔面に円を描くような軌道で上段蹴りを放った。

「「ぐっ!」」

 俺とラクサスの攻撃は相打ちになり、その衝撃で両者共に真逆の方向に吹き飛んだ。この世界に来て初めてのまともなダメージ。立ち上がるとき一瞬フラついてしまいクラっとした頭をすぐに回復させ、意識を何とか保つ。電撃つきのストレートがこんなにもきついとは思わなかった。何よりあの豪腕から繰り出されるストレートの威力が桁違いに凄まじい。この世界に来なければこんな攻撃味わえなかったぜ、やっぱり来て正解だった。俺は今だかつてないほど高揚し、これからの戦闘に興奮を覚えていた。

「クソがっ!! なんだこの炎は!」

「炎のDB【ヴァルツァーフレイム】 貴様の身体に死ぬまで纏わり踊り続ける炎だ。さて、どうする?」

 ラクサスの身体を炎が轟々と燃え上がり、まるで踊っているかのようにしつこく纏わり続けている。
 俺はあの瞬間、蹴りと同時にDBを発動させていた。さすがに、雷付きの攻撃にただの蹴りだけじゃ割に合わないからな。するとラクサスは身体全体から雷を放出させていき、その魔力を含んだ雷と俺の炎を引火させ爆発させた。そこにはラクサスを中心に小さなクレータが作られていた。

「おいおい、思考回路ぶっ飛びすぎだろ」

「ふぅ、これで鬱陶しい炎は解決したぜ? さぁラウンド2だ」

「上等」

 俺は地面に手を添えてDBニードルペインを発動させた。通称、針地獄。地面から巨大な針のような槍が突き出しラクサスに襲わせる。急な技にラクサスは多少動揺しながらも、小さい切り傷を負いながら、全て避ける。やはり身体能力にしろ、戦闘経験値にしろラクサスの野郎の方が俺より格段に上だな。初見の技をこうも軽々と避けているのが何よりの証拠。だが、回避されることは想定済みだ。針地獄を陽動に気配を消しながら相手に近づいた。再びヴァルツァーフレイムを手に纏いながら側面から拳をぶち込む…はずだった。

「悪いが、二度も喰らうほど俺も馬鹿じゃねぇ」

 ラクサスは手に纏った炎に触れぬよう、俺の手首を掴み攻撃を無効化した。奴の口元を見るとまるで最初から準備していたかのように雷を溜め込み竜の咆哮のように放出しようとしている。咄嗟に掴まれていないほうの拳で阻止しようとしたがそれも掴まれ両手首を離すまいと強靭な握力阻止される。

「受け取れ、クソガキ」

 口から巨大な魔力の塊である雷が顔を覗かせていた。それを見た瞬間ゾクりと背筋が凍るような悪寒が俺の身体を駆け巡る。これを喰らえば重症は必須、ヘタすれば生死に関わる。ヤバイ!
 俺は咄嗟にサマーソルトの要領でラクサスの顎を鋼鉄に変えた脚で全力で蹴り上げる。すると、突然の攻撃で行き場を失った雷が暴発したかのようにその場で爆発した。

 今まで体感しことがない速さで吹き飛ばされギルドの壁を突き破った。俺の身体は雷の爆発で火傷やその時の瓦礫の破片が突き刺さっていた。すげぇ痛い。爆発による煙が晴れ、そこに現れたのは俺以上に重症を負ったラクサスだった。

 ただ、凄まじいのはあの爆発の衝撃で倒れず立ち尽くしていることだ。額から腕から身体全体から血が流れ出しており、誰がどう見てもすぐに手当てしなければならないほどの傷。…だが、ラクサスはそんな状態の中で楽しくて仕方がないと言わんばかりに笑っていた。そしてすぐに俺を見つめ直す。

「まさか俺がここまで手こずるとは思わなかったぜ――ルシア」

「名前覚えてんじゃねぇか――ラクサス」

 この会話がまるで合図だったかのように同時に地を蹴った。繰り出されるは拳。真っ直ぐで何のフェイントもない俺達二人の拳がぶつかり合ったとき凄まじい衝撃が周囲を突き抜けた。そして身体を地に伏せたのは……

「あの時点で限界だったんじゃねぇか。バーカ」

 ラクサスだった。ラクサスの身体は俺の炎や爆発の時の影響で全身に火傷を負っており流血もしていたが、その満身創痍な状態とは裏腹に満足そうな顔で気絶している。珍しいんだろうな、この顔は。俺も久しぶりのダメージに地面に腰を下ろした。

 疲れた。滅茶苦茶強かった、手首を掴まれ、口から雷撃のようなモノが見えたときは冷や汗モノだったがあそこで命運を分けたな。忌々しいことに正直ラクサスの野郎に勝てたのは運がよかったと言わざる得ない。DBPはあまり減ってはないが、体力がヤバイ。DBに目を向けすぎて基本となる体力強化を疎かにした罰か。俺はため息をつき、その場に寝転がる。すると

「やれやれ、こんなことになると思ったわい。この戦闘バカ共めが」

 声の聞こえた方へ顔を向けようとすると、ガシッと両頬を掴まれ顔を固定された。眼前に見えるのは綺麗な右眼がついたエルザだった。

「よう、右眼よかったじゃねぇか。義眼とは思えねぇな」

「うっ、右眼を失っていたことを気づいていたのか。ってそうじゃない!話を逸らすな! これはどういうことだ。ギルドに入った初日から問題を起こすんじゃない」

「あぁ、歓迎会らしいぜ」

「そんな歓迎会あるわけないだろっ!」

 もっともだ。俺は今だ騒いでいるエルザの声を子守唄にしながら襲ってきた眠気に身を任せ、心地よい疲労感と共に静かに眠りについた。




「ていっ!寝るな。話は終わってないぞ」

 まさかの鋭いチョップで俺は再び目を覚ました。普通これで綺麗に終わるんだけどな、いや何でもない。酷いメタ発言をしてしまった。俺は未だに説明を求めるエルザに今回の事をごく簡単に説明した。そしてエルザはその場で眉間に皺を寄せながら深く考え込んでしまった。これは長そうだな。

 俺は一旦グレイとの戦いの報酬を貰いに行こうと重い身体を引きずってワカバのところへ赴いた。その途中まだ倒れているであろうラクサスの方を見てみるとフラつきながらもしっかりとした足取りでギルドへ帰っていった。……もう動いてやがる。ありえねぇ、化け物だな。あれは。

「凄かったな! お前とラクサスの戦い。久しぶりに俺もウズウズしてきたぜ!」

「歳を考えろ、ワカバ」

 まだ若いわっ!と俺にツッコミながら、まだ若いよなと自問自答しつつも、さすがと言える速さで俺が賭けて儲けた分の金額を差し出してくれた。もはや職人芸だ。渡された金額を見ると倍以上に膨れ上がっていた。こりゃあ多少の贅沢もできそうだな。すると急にひんやりと冷たいものが頬に当たった。ビクッとしてしまった、ヘタしたら今日一番の驚きかもしれない。横を向くと笑顔のカナがジョッキ程の大きさのタルを俺の頬に当てていた。

「お疲れ、ルシア。凄い試合だったね、思わず見惚れちゃった。はい、これは奢りだから気にしなくてもいいよ」

「あぁ、さんきゅ」

 俺は丁度乾いていた喉を潤すためにカナから奢ってもらった飲み物を一気に呷り一気に噴出した。カナがうわっ!と驚いていたがそれは俺のセリフならぬリアクションだ。

「酒じゃねぇーか!」

「だって大人ってこれが好きなんでしょ?」

 カナから見たら俺はどうやら大人に分類されるらしい。まだ十三歳なんだが。まぁ折角奢ってもらったんだ飲まなきゃ悪いよなと自身でも分かる言い訳をして酒を飲み干した。ご馳走さん、とカナに告げると笑顔でお粗末様でしたと返してくれた。普通に子供が言うと微笑ましいな。

「まさか、ルシアがラクサス倒しちゃうぐらい強いとは思わなかったなぁ。もしかしたらグレイ倒せちゃうかもってぐらいで思ってたから」

「さすがに、ガキには負けねぇーよ。ってかグレイはどうだった? 大丈夫か?」

「うん、身体の痺れは今日中にとれるだろうって。それに打撲程度だったし」

「ありえねぇ。その程度の怪我で済んだのかよ……なるほど確かに将来有望だな」

「それはルシアもでしょ? 皆驚いてたよ、もちろんわたしも! あっこれから用事があるんだった」

カナはまたねと一言俺に告げギルドへ走り去っていった。忙しい奴だな。でも俺に物怖じしない気の良い子だ。すると、俺に影が覆いかぶさるように誰かが現れた。


「随分と仲が良さそうだったな」

 振り返ると、腕を組みながら睨みつけるように俺を見ているエルザがいた。

「ん? あぁ、エルザか。いや、中々に気の良い子だったからな。つい話込んでしまった」

 ふん、と拗ねるように俺から顔を背けた。嫉妬か?……いやたぶんエルザは不安なのだ。まだ、このギルドで話せるような仲間がエルザにはできておらず、唯一共にいた俺が他のギルドメンバーと仲良くしているのを見ると恐くなるのだろう。

「エルザも早く友達ができると良いな」

「…………いや、私は」

 急に顔を強張らせ、何か思いつめるように俯いた。もしかしたら思い出しているのかもしれない。楽園の塔のときの出来事を。あの惨劇を。目の前で仲間が死んでいくその恐怖を。だから、仲間を再び作りたくないのかもしれない。失ったことへの悲しみは、未だ拭えずエルザは夜になると辛そうに涙を流していた。俺がその時出来ることは傍にいてやることだけだった。けれど……


「仲間が傍に居るだけでも、人は楽になれる。その仲間を失うことは恐怖だが、仲間を作らないことも恐怖になる。人は孤独には耐えられない。そう、俺は思うぜ。少しずつでいい、ゆっくり前に進もう。転びそうになったら俺が助けてやるよ」

「……あぁ、ありがとう。ルシア」

 エルザの零れ落ちる涙を背に夕暮れに照らされているギルドが、まるで俺たちを歓迎しているかのように綺麗にそして暖かく輝いているように見えた。


 
 

 
後書き
ルシア君も孤独やら裏切りやら仲間というものに一家言持っていそうですね。

ちなみに、今回ラクサス君はドラゴンスレイヤーは隠しなさいとお爺ちゃんに言われていたにも関わらず咆哮を放とうとしちゃうくらいヤンチャな年頃です。 
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