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『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師

作者:wood12
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鬼退治・二

「オラァッ!オラァッ!オラァッ!オラァッ!!」


 ドゴォッ! バギィッッ!!


「グガッ……!!調子コクでねぇっ!小僧ーーっっ!!」
「ハッハーーッ!調子こかして貰うぜっ!!」





 グォバギィィッッ!!


「……………………」
「…………こ、こいつ…オラの一撃をワザと……!!?」


 グァバァッ!!  ゴォンッッ!!


「ぐおおぉぉっ!!」




 キィンッ! キィンッ! キキィーンッ!!


「惜しいな……獲物がチンケで、オメェの技に着いてこれねぇようだ!」
「くっ……」


 突発的に戦闘が始まってから既に10分を過ぎようとしてるが、一向に納まる気配はない。寧ろ、ますます混迷を深めてると言った感じだ……


 シュッ! シュッ! ギィーンッ!!


「………やるなぁ、オメェ達の大将。鬼族きっての兵(ツワモノ)と言われるアニキをあそこまで…………」


 本当にノリノリだよな。伝わって来る霊波だけで、奴の感情が手に取る様に解る。


「なら、もう止めないか?こんな事に、何の意味がある?」
「逃げるは、恥と言ったべ!?死んだって、敵に頭を垂れる事なんかねぇ!!」


 また、それか……


「敵?俺達が何をした?」
「うあぁぁぁーーーっ!!」
「……聞く耳なしかよ…………」


 これは、頑迷と言えば良いのか?それとも、強固な意志とでも呼んでやれば良いのか?どっちにしろ、迷惑な話だぜ………


 ギィンッ!


 そんな事を考えながら、奴の鉈を霊手で止める。本当にウンザリしてきた……


「オメェ……やる気ねぇのか?」
「やる気なんて湧くかよ。下らねぇ……」


 俺がそう答えると、奴の双眸の怒りが更に強まる。

 俺が下らないと言ったのは雪之丞と違って闘争に喜びを見出すタイプじゃないし、そもそも何の為にやり合ってるか解らないからだが、目の前の女は別の風に解釈したらしい。


「下らねぇ?命のやり取りが、下らねぇだと!!?」
「その命のやり取りに、いつまで “手を抜く” 気だ……?」


 だけど、俺は誤解を解かず敢えてこいつの話に乗ってやる事にした。こういう思い込みの激しいタイプには、流れを修正するより逆に利用した方が良い気がした。


「あ……?」
「お前の本領は、接近戦じゃないんだろ?鬼の女は、自然現象を操る。早くそれを使えよ」


 鬼は、男は強靭な肉体と力を誇る反面、女は力が弱い分様々な自然現象操る。炎、風、水に土……個体によって操る力はそれぞれ違うが、いずれも脅威になり得る。

 目の前のこいつは、何を使う?


 だが、その返答の代わりに返って来たのは膝蹴りだった。


 バコッ!!


「っ……!」


 野郎……!?

 当たる寸前、何とか空いた左腕で防ぐが若干の痺れが腕に走る。

 追撃を恐れた俺は、その場で踏ん張る事は止めてバックステップで距離を取るが、ちょうど奴も同じ事をしていたので互いに数メートルの距離を開けて睨み合うことになる。


「ふんっ………流石に知ってるか。確かにオラ達、女には自然を操る力がある。ただ、オメェ如きにソレを使う理由が何処にある?オラにすら “敵わねぇ” オメェに……」
「……………………」


 …………加速。


 ヴァンッ!!


「なっ……!?」


 バゴォッ!


「ぐはぁおぅっっ!!」


 土手っ腹に、腕を組んだ俺のタックルを諸に食らった鬼女は、そのまま数メートル後ろにぶっ飛んだ。

 …………が、数回転がった後、鉈を地面に突き刺して何とか踏み留まる。


「ゴホッゴホッ…………」


 なんてこたぁない。俺は、瞬時に身を屈めると足裏に作った霊盾をブーストにして奴に突っ込んだだけ。要は、さっきの仕返しだ。不意を突かれた奴からすりゃ、かなり痛かったろうが……


「痛そうだなぁ……これで、使う理由は出来たか?」
「なるほどぅ………それを警戒してずっと “手を抜いて” やがった訳だな!!?」


 いや、別に警戒はしてたけど、手を抜いたわけじゃないんだけどな………

 だが、屈辱と憤怒に顔を歪ませる奴に言っても無駄そうなんで黙ってる。精神的には勿論、やられた部分を手で押さえてる辺り、思った以上にダメージが深かったらしい。


「もう、油断はしねぇ……そんなに望みなら、見せてやるだ!オラのとっておきっ!!」


 その掛け声と共にみるみる昂る奴の妖気…………これは……右手の鉈に妖気を集中してる?


「喰らえやっ!」


 バチバチバチッ!


「雷っ!?」


 そう……次の瞬間、振り被ったと同時にその場で凪いだ奴の鉈から飛んで来たのは雷撃………いや、正確には雷撃を伴った斬撃だった。

 それを咄嗟に横に跳んで躱す。そして、俺を襲った雷撃は、そのまま後ろの木の幹に……


 バシューッッ!!


「エゲツねぇな……」


 木の焼け焦げた匂いに嗅ぎながら、その威力に戦慄する。

 そんなに力を込めた一撃にも思えなかったが、人の胴ほどの太さを誇る幹は、その半ばまで無残に切り裂かれていた。


 厄介だな……雷も確かに鬼は操るが、その使い手は極めて少ない。それくらい制御が大変だからだ。

 雷は、その特性上少しでも制御を誤ると簡単に散らばって全く使い物にならない。だが、逆に収束させる事が出来れば、それは制御に要する妖力に比して、途轍もない威力になる。


 ここに来て、とんでもねぇジョーカーを引いちまったか………?



「まだまだぁっ!」


 バシュッ! バシュッ!!


「ちっ……」


 ………かと言って、嘆いてる暇はねぇ。

 俺は、跳んだ勢いのまま走り出し、奴の第二波、第三波をやり過ごす。幸いにも、ここは山奥の森の中。遮蔽物が沢山あって、逃げるのはそこまで難しくもない。


「はあぁぁ〜〜っ!!」


 ブシュッ! ブァシュッ!!


「………………」


 奴から一定の距離を保ちながら、雷撃……雷斬撃?いや、雷刃撃と言うべきだな。とにかくそれを走ってやり過ごす。

 出だしは、超高速でも一発撃つのに、どうしても秒近いタイムラグが発生するらしい。さっきは、面食らったが特性を理解しちまえば、そこまで怖くもないようだ。


 ザシュッ! ブシュッ! ブァシュッッ!!


「当たるかよ!」



 バシュッ! バシュッ!! ザシュッ! ブシュッ! ブァシュッッ!! バシュッ! ズァシュッ!

 
「だぁっ!ちょこまかと!!オメェは逃げるだけかっ!?」
「なら、当てて見せろよ!下手くそ」
「こなくそっ!!」


 全く当たらない事に業を煮やした奴は、今度は俺に向かって踏み出す姿勢を取る。

 距離を詰める気か?んた事したって、俺が逃げりゃ同じだろ?

 そう思った瞬間だった………


「迅雷瞬閃(じんらいしゅんせん)!!」


 ジジィ〜……バチバチバチバチバチッ!!


「なぁっ……!!?」


 奴と俺は、さっきまで10m近い距離があった。 

 だが、奴の体が帯電したと思った途端に、それを一瞬……いや、半瞬にも満たない短い時間で潰して来た。

 何だ……?何をした!?

 いや、そんな事より今は、奴の振り被った鉈を避けるのが先だ!!


「死ねやっ!!」
「くっ……」


 ザクッ……!! バチバチバチバチッ!!


 それをまたしても、前に転がるようにして躱す……!その直後、さっきまで俺の居た地面に帯電した刃が突き刺さる。自分に刺さったら、刺突のダメージだけでなく雷撃でそのまま体を焼かれてたろう。

 危ねえ……!!今のは、本気で肝が冷えた………


「糞っ……!これも避けるかっ!!」
「ちっ………」


 何やら悔しがっちゃいるが、そんな事に構ってる余裕は無い俺は跳んだ勢いのまま再び走り出す。

 だが、そんな俺を見て再び奴は、加速する姿勢を取る。それを確認した瞬間、俺は弾かれたように横に跳ぶ……!


 バチバチバチバチバチッ!!


 案の定、俺が跳んだ直後帯電した奴が突っ切って行った。その通り過ぎた地面には、鉈によって抉れた跡が……今度は、斬り付けながら突き進んだらしい。多分、移動しながら俺を引っ掛ける積りだったんだろう。


「またっ……!?オメェ、本当に避けるのは上手えな!」


 俺から数メートル先で、ようやく止まった奴が忌々しげに呟く。どうやら、この技には相当自信を持ってるようだ。


「ああっ!?お前の狙いが悪いだけだろ?」
「減らず口をっ……!迅雷瞬閃!!」


 そして、三度加速姿勢を取ると同じ様に突っ込んで来る。対する俺も、さっきと同じ様に横に跳んで避ける。タイミングは、もう掴んだ。

 何となく解って来たが……あれは、リニアモーターカーと同じ原理か?雷で体の中に特殊な磁場を発生させて、体を浮かせる様に移動してる。

 見事なもんだよ。技に関してはな……


「ふんっ!逃げんのは上手くても、それじゃオラは倒せねぇ。オメェは、いつまで保つかな?」
「それは、もう撃たない方がいいぞ」


 俺は服に付いた埃を払いながら、敢えてゆっくりと答える。

 奴に答える余裕を与える為だ。奴は、今自分が優位に立ったと思い込んでる。こっちが、動かなければそれに反応する筈。


「あっ……?」


 よし……乗ってきた。

 普段、人の話を聞かないタイプだが、幾分か精神的余裕が出来たお陰だな。こっちの思惑通りに進んでる。


「撃たない方が良いと言ったんだよ。自慢の技の割にさっきから、一発も当たらねぇじゃねぇか?お前は、普通に鉈を振ってる方が怖かったぞ」


 勿論、嘘……雷は脅威だ。だが………


「はっ……語るに落ちたな。そんな事言って、本当はオラにこの技を撃って欲しくないだけだべ?オメェは、どうやったってこの技に勝てねぇ。いい加減観念せぇ!」


 そう言って、お馴染みの姿勢を取る。

 俺の一言が、いい感じに奴のプライドを刺激したらしいな。怒ってるのは変わらずだが、その表情に更に自信が満ちて来た。

 こういうのを見ると、少し気が引けちまうが……戦いってのは、そう言うもんだからな。


「往生せぇっ!!」


 ジジジィ〜〜〜ッッ!!


 掛け声と同時に、4度目の高速移動が発動!

 それを横に避ける。さっきも言ったが、もう慣れた……と言うより、あんな馬鹿正直に技宣言してくれたら誰でも躱せる。

 まぁ、そうなるように仕向けたんだけどな…………そして……


 俺は、躱した直後 “ある地点” へ霊手を伸ばす。


「……な、何ぃ!!?」


 止まった瞬間に霊手で体をグルグル巻きにされて、戸惑う鬼女。俺が霊手を伸ばしたのは、奴の移動限界点だ。

 奴の移動距離は、大体10m前後。多分、技の特性上距離の調整が出来ないんだろう。何度も見せられりゃ、簡単に気づく。その止まった地点に、今みたいな攻撃を仕掛けりゃこんなもんだ。

 確かにこいつの技は凄い。だけど、使い所を完全に間違えたな。始めの不意打ちで失敗した時点で、後はフィニッシュ用に温存すべきだったんだ。少なくとも、多様するもんじゃない。弱点を晒すだけだからな。


「ぐっ……」


 奴は、絡み付いた霊手から何とか逃れようと藻掻くが無駄だ。霊手は、完全に奴の自由を奪ってる。


「勝負ありだ」

 
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