中二病サマナー魔法少女が、キモいモンスターを使役してる件
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1話 日常にモンスター侵入 ④使役
前書き
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普通に帰宅中 化け物を飼う女に拾われた: 中二病サマナーと巻き込まれ系女子の日常崩壊 中二病魔法少女
「見ぃつけた」
その声が落ちた瞬間。
モンスターの動きが止まった。
ピタッ、と。
さっきまであんなに暴れてたのに、
まるで“何かを恐れてる”みたいに。
「……」
久遠さん――闇乃は、ゆっくり前に出る。
足取りは遅い。
なのに。
逃げ場がなくなる感じがする。
「悪い子には、懲役よ」
くす、と笑う。
あの、いつものニヤニヤ。
でも今は――
全然、意味が違う。
モンスターが後ずさる。
ズルッ……ズルッ……
(え?)
さっき私に向かってきたのに。
今は逆に、
逃げてる。
闇乃が手を上げる。
細い指。
力なんてなさそうな腕。
なのに。
空気が、重くなる。
「逃げるの?」
優しい声。
でも中身は、全然優しくない。
「もうあなたの運命は書き換わった」
その瞬間。
地面から影が伸びた。
ヌルッ、と。
黒い手みたいなものが、いくつも。
モンスターの体に絡みつく。
ギチッ
「……ッ!!」
声にならない悲鳴。
モンスターが暴れる。
でも、
動けない。
「いい子」
闇乃が、近づく。
まるでペットに触るみたいに、
モンスターの頭(っぽい部分)に手を置く。
「怖かった?」
「大丈夫、大丈夫」
「もう、逃げなくていいよ」
(いや、逃げてたのそっちじゃないよね!?)
頭の中でツッコミが爆発する。
でも声は出ない。
闇乃の目が、細くなる。
「ね」
「私のものになろ?」
一瞬、静寂。
モンスターの体が、ビクッと震える。
そして――
ゆっくりと。
力を抜くみたいに、ぐにゃっと崩れた。
「……え」
暴れない。
抵抗しない。
ただ、
じっとしてる。
闇乃が手を離す。
「よし」
満足そうにうなずく。
「いい子ね」
モンスターが、動く。
でもさっきと違う。
ゆっくりと。
闇乃の後ろに回る。
まるで――
従ってるみたいに。
「……は?」
やっと声が出た。
意味が分からない。
何これ。
何が起きたの。
闇乃が振り返る。
私を見る。
「あ、生きてたんだ」
軽い一言。
「……いや、そりゃ生きてるけど!?」
思わずツッコむ。
闇乃は少しだけ首をかしげる。
「よかったね」
「食べられなくて」
(お前が言うな!!)
私は震える手で立ち上がる。
足、まだガクガクしてる。
「……あのさ」
なんとか言葉を出す。
「それ……何?」
闇乃、ニヤッと笑う。
いつもの顔。
でももう、意味が分かってしまった。
「ペット」
後ろのモンスターを、軽く叩く。
ぽん、と。
「ね?」
モンスターが、小さく動く。
まるで返事みたいに。
「……いやいやいやいや」
あり得ない。
そんなの、あり得ない。
「それって普通あり得ないよね?」
口が勝手に動く。
いつものセリフ。
「ないない、そんなのあり得ない」
闇乃は、くすっと笑う。
「あるよ?」
一瞬、目が合う。
ゾクッ
背筋が冷える。
「深淵はここにある」
闇乃が周囲を見渡す。
「危ないから」
「送ってあげる」
(いや、どっちが危ないんだよ……)
でも、断れる空気じゃない。
私は無言でうなずいた。
闇乃の後ろに、
モンスター。
そのさらに後ろに、
私。
(……これ、夢じゃないよね)
普通の帰り道。
のはずだった。
でももう、
普通じゃない。
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