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フルメタル・パニック!On your mark

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第五話 それぞれの日常、蠢く何か

 
前書き
何年ぶりに書きたくなったので書いてみました。
読んでくれると嬉しいですがなにぶん間が空きすぎて何とも言えない感じです。余裕があれば新しく書いていくのと昔のを書き直してみようと思います。 

 
 興味ない。
 どうでもいい。
 能路は日々を淡々と生きてきた。
 生きる事に固執している訳ではないが死にたい訳でもない。ただ、日々を過ごしているだけだ。
 だからこそ自分自身が考えて行動するのではなく、与えられた命令を実行して役割を果たすことに生を実感していた。
 そして今回、能路に与えられた任務は国外で開発された謎のASのデータ収集を可能とする人材、蟹瀬との接触だ。
 最初は適当にあしらって蟹瀬に職務を全うさせるつもりだったがオマケの方である新型開発プロジェクトの話をチラつかせた時に見せた表情が能路の何かを刺激した。
 なんてキラキラした目つき…まるで遊具を目の前にして遊びたい衝動を何とか抑えた子どもの様だった。
 だが、肝心な事を伝え忘れていた。
 今回の任務は謎のASのデータ収集が本題であり、これはあくまでついでに過ぎない。上層部もそれを踏まえて計画を練っているのだ。
 能路は残酷な真実を告げ、蟹瀬は絶望の表情を見せるが後日、蟹瀬の表情からは恐れは消えていた。何かが吹っ切れた…そんな様子だった。
 能路はそれが気になった。
 あそこまで絶望していた人間がどうやって立ち直ったのか?
 自暴自棄になった様子もない。ただ、それを受け入れて今を生きている蟹瀬の姿に興味が湧いた。
 だからこそだ。
 こうして渡す必要のない書類を準備して意味もなく立ち寄った。
 そして現在に至るのだが蟹瀬ノリノリである。
 目の前に現れた試作機の外見は奇抜であり、そのコンセントは奇想天外であった。
 ASの基礎的な知識を持つ能路は唖然とした。
 何故なら目の前の試作機はASの形をしているが、その実態はスーパーロボットのリアル版であり、可能な限り、スーパーロボットをリアルで再現したものだと。
 流石、鬼才と呼ばれる男…常軌を逸していた。
 これは所謂…アレだ。ロマンというヤツだ。
 こんなものが実用化するのは夢のまた夢だ。
 ナンセンス、非現実的だ。
 だが、逆を言えばこれほどの非現実をここまで具現化した彼は本物の天才なのであろう。
 何処か自慢げだが、それよりも楽しさが滲み出るその笑顔に能路は呆れつつもほんの少し笑みをこぼしていた。

 ゼェゼェぜぇ。
 息を切らし、椅子にもたれかかる蟹瀬。
 普段から身なりを整えるように心掛けているが、その姿は疲れきった中年サラリーマンのそれだが、それもその筈で普段の業務とは別に各保管庫から運ばれてきた物資の整備、更に突然やってきた来訪者の能路への対応…疲弊は積もり積もって限界を迎えようとしていたが、ASの話になると我を忘れるくらいに饒舌になってしまう悪癖が出てしまったのと今回の力作であるOmar セカンドを誰かに自慢したかったのは内緒である。それもあって満身創痍の状態だが、その表情は満足気だった。
 視界の先で格納されているOmar セカンドを見る。
 外見に大きな変化はないが、パラジウムリアクターは高出力モデルに変更、各部の関節も新型のマッスルパッケージに換装し、これにより基本性能の大幅な向上に成功した。
 更に目玉である変形機構に改良を加えた事で、既存のASとはある意味では別次元の機体性能を確立…夢の第五世代に一歩近付いたぜ。
 ふふふ…ふはははははは。
 遂にやったぜ。してやった。どんなもんだい!
 これで今度、行われる模擬戦も何とかなるだろう。
 肩の荷が少し軽くなった。
 今なら空高く舞い上がれそう。
 気持ちは翼を授けるレッドブルなのだ。
 舞い上がって有頂天、天真爛漫とはまさにこの事。
 まだ問題は山ずみで根本的な解決には至っていないが、この満足感は何事にも変えられない。
 あまりの出来栄えに早速、実働データをマオに送信してやったぜ。
 どんな反応が返ってくるか楽しみで仕方ない。
「楽しめそうですね、マスター」
 ハワワ…っと欠伸が倉庫内に響き渡る。
 スリープモードに入っている筈のLだ。
「L、この時間はスリープモードの筈だろ?
 なんで起きてんだよこんな時間に…」
 時刻は夜中の二時前、夜は更け、静まり返った空間に二人の会話がこだまする。
「そう言われましてもさっきからパパの変な声で起きちゃったんですよ。ブツブツうるさくて眠れませよ~」
 壁際に設置されたPCのディスプレイからブゥブゥと可愛い顔を覗かせるL。
 本来ならそんな機能なんてAIには必要ない。ましてや蟹瀬の独り言でスリープモードを解除するコマンドなんて入れてもいない。
 だが、彼女【L】は特殊なAIであるが故にこうった特殊な機能、生物が有している喜怒哀楽を感情を有しているのだ。
「色々あったんだよ、色々と。もう遅いから早く寝なさい」
 子供は寝る時間というか子供がこんな時間に起きてちゃいけません、そう付け加えようとした時だった。
「あれ?パパにお電話です」
 ポケットに入れていたスマホの着信よりも早く、Lは気付いた。
 遅れて鳴り響くスマホの着信音が響き渡る。
「げ、お前もしかして俺のスマホにも…」
 裏で何か細工したな??
「そ、そんなの今はどうでもいいじゃないですかっ!お電話はマオ社長からみたいですよ!さ、早く出ないとっ!」
 アハハっと何食わぬ顔。
 とはいえ確かにLの言う通りだ。
 あの人、三コール以内に出ないとうるさいからな…今はこっちを優先しよう。
「はい、蟹瀬です」
 どうせさっき送った実働データの件だろう。
 さて、どんな反応が━━━━━━━━━━━━。
「あ、コターさっき送ってきたデータ見たわよ。少しはマシになったじゃない」
 早速お褒めの言葉を頂いた。
 声のトーンからするに上機嫌のご様子だ。
「そりゃどうもです。
 マオ社長の指導の賜物ですよハイ」
「うむうむ分かればよろしい。
 課題は大方、解決したし、この調子なら模擬戦の方は何とかなりそうね」
 模擬戦、M9とOmarの対決だ。
 この戦いに勝つ為に蟹瀬とマオは夜な夜な討論を重ねて一つ一つ形にしてきた。その一つの集大成こそOmar セカンドなのだ。なのだが…。そう言えば大切な事を忘れていた。
 いや、これもしかして重大なミスなのでは?
「M9との模擬戦を想定してますから可能な限り改良を重ねてきましたけど…パイロットがいない事を失念してました」
「は?」
 電話越しから聴こえてきたパリンっと何かが割れる音。
 恐らく、マオが持っていたであろう飲み物の入ったカップが落ちて割れた音だろう。
「いや、機体本体の完成を優先したので操縦系は後回しにしちゃって、操作の方もLに協力してもらってパイロット無しでもそこそこ動かせましたからついうっかり…」
「……」
 呆れて声も出ない様子。
 あ、アハハハハハハ…と乾いた蟹瀬の笑い。
 そしてその状況を見てドン引きするL。
「ど、どうしましょ?」
 バカと天才は紙一重と言うがマヌケすぎる蟹瀬だった。

 それはとある放課後のことだ。
「千鳥くん助けてぇ」
 バイトまで時間があったので図書館で借りた本を読んで時間を潰している蒼太とそれを横目にダラダラとスマホいじりながらも世間話をしていた風志の前に誰かがやってきた。
「風志くん助けてぇ」
 ゲーム機片手に一人の女の子が蒼太の席にやってきた。
 彼女の名前は伊神 杏。
 蒼太のクラスメイトであり、たまにゲームの会話をするくらいの仲で知り合い以上、友達未満の関係だ。
「どったの杏ちゃん、そんな深刻そうな顔して」
 俺の机に座っていた風志も伊神の方を見る。
「これSwitchなんだけど動かなくなっちゃった」
 あたふたしながら差し出されたゲーム機『Switch』
 スリープ状態なのか電源が付いていないのかはたまた本当に壊れているのか画面は真っ暗だった。
 取り敢えず、差し出されたSwitchを受け取り、ボタンを操作したり、電源を入れてみるがうんともすんともいわない。バッテリ切れの可能性もあるが恐らく、そこは確認済みだろう。
 ということは内部に問題があるかもしれない。
「確かに動かないな…」
「でしょ?でしょ?」
「ちょい貸してみ…うーんこれは、」
「…何か分かったか?」
「いや、何にも。これは修理に出した方がいいと思うぜ。ネットで申し込んだら少し安くなるみたいだし」
 スマホでSwitchが故障した際の確認事項を一通り確認した風志は蒼太と伊神にも画面を見せる。
「じゃあ修理に出すしかなさそうだな」
「だな」
「そ、そんなー」
 そう言って崩れ落ちる伊神。
 そ、そんなに落ち込むことか…?
「修理に出したら返ってくるのはいつになるの…?」
 更に検索を進める風志。
「何とも言えないけど今日、申し込んで郵送すれば来週の週末には戻ってくるんじゃね?」
 妥当な回答だ。
 そして申し込みサイトのURLを伊神に転送するが。
「それじゃ間に合わないのっ!」
 教室に響き渡る声。
 突然の大声に身構える二人。
「あっ…ご、ごめん」
 そんな二人を見て冷静になったのか伊神はペコリと頭を下げてきた。
「いや、少しビックリしただけだ」
「そうそう~謝るほどの事じゃないない~」
 二人して宥める。
 どうやらただならぬ理由がありそうだ。
「間に合わないって言ってたけど何かあるのか?」
 ことの原因であるSwitchに指をさす。
 Switchが壊れて困っている→修理に出せば解決しそうだが難色を示すところ見ると恐らく、ゲーム内のイベント絡みor誰かと一緒に遊ぶ予定があるかその両方だろう。つまり修理に出したら間に合わない何かがあるのだ。
「実は、その…」
 要約するとこうだ。
 来週、ゲーム内で行われるイベントに友達と一緒に参加する予定だったが昨日からSwitchの調子が悪く、再起動したら直ると思ったが電源が付かなくなった…。
 時間を掛ければ素人でも直せるだろうが専門の人に任せた方が確実だし諦めてもらうしかなさそうだ。そう判断した蒼太は諦めるように促そうとしたその時だった。
「や、なんとかなるかもよ」
 遮るように風志のスマホが差し出される。
 その画面には駅近くで経営している家電製品を専門とする修理屋のサイトだった。どうやらゲーム機も対応しているらしい。
「これから帰ろうと思ってたし行ってみようぜー」
 そう言って自分と何故か蒼太の鞄を持って歩き出していく風志。
「え、いいの!?ありがとー」
 伊神はそれを追うように荷物をまとめて走り出す。
「いや、あの…俺は行くとは…」
「何してんだよー置いてくぞ蒼太ー」
「そうだよー蒼太くんー早く行こー」
 ……どうやら拒否権はないらしい。
 鞄を人質にとられてしまった以上ここは黙って付いて行くしか無さそうだ。
 そう判断した蒼太はため息を着きながらも二人の後を追うのだった。

 三人が向かった先は学校の帰り道。
 大通りの先にあるのはそこそこ栄えた商店街だ。
 以前は過疎化が進んでいたここら一帯も地域開発の影響で明るさを取り戻しつつあるそうで全盛期を知る人間からすると昔の街並みが戻ってきたと感じるそうだ。
「で、その店はどこなんだ?」
 鞄を取り戻した蒼太は周囲を見渡す。
 登下校以外にもこの辺を通るがネットのホームページを見るまで存在を知らなかった。最近できたのかそれとも隠れたところに店を構えているのか。
「この辺だよ、ほらGoogleマップだともうすぐ」
 風志のスマホに映し出された地図だと目的地は目と鼻の先のようだが向かった先はビルとビルの間にある細い抜け道だった。その先によく見ると店の看板らしきものが立っている。
「こんな所にお店があったんだ…知らなかった」
 そして更に向かった先、目的の店はビルの向かい側にポツンと佇んでいた。
 店の名前は『アトランティカ』
 カタカナでデカデカと記されており周囲は壊れた家電製品で囲われていた。本当にこんな所でSwitchの修理なんて出来るのか…?
「まぁ、取り敢えず入ってみようぜ」
 臆せず入っていく風志。
 こういう時は本当に頼りになるな…っと感心しつつも蒼太は後を追った。そしてその後ろをゆっくりと歩いていく伊神。
 店の外も外だが中はもっと凄い。
 目の前のテーブルにはブラウン管テレビが乱雑に放置されている。壁際の棚には昔のゲーム機らしきものが並べられていた。近付いて見ると値札が貼ってあったので値段を確認すると価格は…十五万円!?
 とてもそんな高価なものには見えないが値打ちのある商品なのだろう。見なかった事にしようとゆっくりと振り返りると何かを踏んでしまった。足元には何かの家電に使われていたであろうコードが蛇のように伸びていた。それを見た伊神は小さな悲鳴を上げるがすぐに両手で口を抑え込む。
 そしてこんな状況でもマイペースの風志は平然と楽しげに店の奥へと進んでいく。
 そんな時だった。
「頼んでたヤツは届いてる?」
 それは女性の声だった。
 どうやら蒼太達以外にも客がいるみたいだ。
 進んだ先には店主であろう小太りの青年とスーツ姿が決まっている女性がいた。
「そりゃあ勿論ありますよ届いてますよ。マオの姐さんの為ならたとえ火の中水の中ってね」
 そう言って足元から取り出したのは何やら怪しげな包み紙…中に何が入っているのかは分からないが店内の雰囲気と合わさりよくないものが連想される。
 ここにいてはマズイ気がする…そう感じた蒼太は先行していた風志の手を取ろうとした直後「すみませーんちょっといいですか~」そう言って怪しげな二人の間に入っていた。
「ここでSwitchの修理ができるってネットに書いてたんですけどお願いできますか??」
 普段と変わらぬ空気を読まない風志の行動に尊敬の念を抱くが今じゃない。今じゃないんだよ!
「あぁ、私以外にもお客がいたのね。珍しい」
 スーツ姿の女性は蒼太達の方に振り返る。
 黒いサングラスを掛けていて、短く整えられた髪に少し焼けた肌、流暢な日本語なので日本人だと思われるがどことなく外人特有の雰囲気を醸し出している。
 そして何よりもとても美人な人だ。
 蒼太の母親、千鳥かなめとは別のジャンルで洗練されたポテンシャルを感じさせる。
「あ、お話し中にすいません。お邪魔だったら適当に店内をぶらついてるんでお構いなくー」
 店主と女性の会話を遮ったことを謝罪しながらガハハと笑う。本当にそのメンタルが羨ましい。
「私の用事は済んだから大丈夫よ。気にしないで」
 彼女はそう言いつつも懐から取り出した小切手に何かを書いてそれを店主に渡す。受け取った店主はにこやかな表情で頭を下げた。とても深い深いお辞儀だった。
「毎度~また入用でしたらなんでも準備するんでー」
「はいはい、そん時はよろしくね」
 店を後にする女性。
 狭い店内なので道を譲ろうとした時、蒼太と目が合った…気がした。サングラスをかけているので視線は読めないが一瞬ほんの一瞬だけ見えた瞳は
 俺の目を顔を観察していたように見えた。
「あの、」
 何故か声が出た。
 不意に声が出てしまった。
「何か?」
 呼び止められたと勘違いをした女性は振り返る。
 ここは思った事をはっきりと言おう、そう決心した蒼太は。
「俺の顔に何か付いてますか?」
 特に深い意味は無い。
 ただ、疑問に思ったから口に出しただけ。
 相手にそのつもりがなかったのなら謝ればいいと開き直ったのだ。
「………」
 女性は少し驚いている様子だった。
 突然こんな事を言われたのだ、当然の反応だろう。
 すると女性はクスリとニヤけて蒼太の肩に手をやる。
「ごめんごめん、若い頃の友人とそっくりでね。気に触ったなら謝るわ」
 ごめんねっと片手で謝罪の姿勢を示す。
 若い頃の友人とそっくり…それってまさか。
 PPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPP
 突如、何かの電子音が鳴り響く。
 女性は内ポケットからスマホを取り出して内容を確認すると「ゲえっ」と声を出した。どうやら何かあったみたいだが。
「ごめん急用ができたからもう行かなきゃー!さっきはごめんね!」
 そう言って女性は走り去っていた。
「なんだったんだ…今のは、」
 店主との怪しいやり取りに視線の謎と昔の友人に似ていると言い残した謎の美女。
 謎は深まるばかりだが気にしても仕方ない、そう判断した…そういえば伊神さんは?
 先程まで後ろにいた伊神の姿は何処にもなかった。こんな狭い店内だ、迷子になるなんてそんなことは。
「ありゃ?」
 風志が店の入口まで戻ると変な声を出していた。
「どうした?」
 つられて蒼太も店の外に出てみると足がガクガク震えた少女が一人。そしてそれを見かねて笑いながらも手を貸してやる風志だった。
「こ、恐かったよォ」
 ウエェンと半泣きでなんとか立ち上がる伊神。
 確かに黒いやり取りに見えたけどまさか密かに抜け出していたとは。
 ゲーム機の修理に付き合わされた挙句、変な店で変な人と出会うわ…はてはて今日はなんて日だ。

 怪しげな店構えとは裏腹に店主は気前がいい人でSwitchの修理を快く引き受けてくれた。
 まぁ、さっきの女性…マオという名前だったか?
 その人との取引が上手くいってご機嫌だったのもあるかもしれない。オマケに劣化したバッテリーの交換は無料で対応してくれるそうだ。
 口止め料という感じはしなかったので本当に機嫌が良いだけなんだろう。
 怪しい店に見えるが実際のところは胡散臭いだけでネットの口コミを改めて確認したがそこそこ良かった。外観と店内の雰囲気で損はしているが店のサービスは一流…まさかこのコメントが本当だったとは事実は小説よりも奇なり、か。
「さて、バイトの時間だ」
 なんてことのない日常。
 今日も今日とて退屈な一日だった。
 でも、そうだな。
 蒼太の口角がほんの少しだけ緩んだ。
 退屈ばかりの人生だが今日はそこそこ楽しかったよ。
 そうして今日という日は過ぎていくのだった。

「あービックリした」
 一方その頃、コタァーの不始末に呆れつつも何故か何処と無く昔の若かれし頃を思い出していたマオはいてもたってもいられなくなり日本やってきた。
 本当に馬鹿でどうしようもないヤツで今回ばかりはみっちり説教をしてやろう。そして手助けしてやろう、そう思ったマオは知り合いがやっている店に『とある』パーツの発注をかけたところたまたま在庫があったらしく言い値で譲ってもらった訳だが…まさかそこでソウスケとそっくりな少年と出会うとは思いもしなかった。
 あのぶっきらぼうで朴念仁な顔つきと表情はまさにソウスケそのものだったのだ。
 ただ強いていえば少し丸い…輪郭ではなく、角がない。穏やかで優しげな雰囲気を感じた。
 といってもソウスケを知らない人からすればサイゼリヤに置いてある間違い探しの最高難易度レベルな違いな訳だが…確かに彼と似た何かを感じたのだ。
「ということは血縁者…息子とか」
 あの戦いの後、ソウスケとかなめは行方をくらまし、それ以降は連絡もとっていない。彼等なりのケジメなのだろうが…元気にしているのだろうか。
 生きているのか、死んでしまったのかさえ解らないまま時だけが過ぎていたが今日まさか日本でそれもあんなところでその息子と出会うとは…。
 いや、まだソウスケの息子と決まった訳ではない。だが、あの二人の子供ならあの容姿、この感覚ならほぼ間違いはないだろう。直感がそう言っている。
「でもなァー」
 あの時、鳴り出したスマホ。
 嫌な予感がして確認したら見事に的中していた。
 送り先は今回の事件の張本人であり内容はとある筋から運び込まれた厄介な『ブツ』についての相談だった。
 なんでも現代の技術では製造できない…つまりは存在する事が有り得ない何かがコタァーの元にやってくるとかなんとか。詳しくは会って直接、話したいとのことだが…心当たりがある。いや、心当たりしかない。そんなもの先の戦いの忘れ形見、産物しかないではないか。
「─────ラムダ・ドライバ」
 ロストテクノロジーにより未来からやってきた超技術。
 あの戦いで全てのラムダ・ドライバは失われたと思っていたがまだ現存していた…?
 それとも誰かが新たに造り出したか。
 どちらにせよ厄介極まりない。
 本当はあの少年の事が気になって仕方がないが今はそれどころではない。優先順位を切り替え、マオはコタァーの元へと向かった。
 その先に、その先で何が起きようとしている。
 言葉では表せない予感。
 一体、何が待ち受けているのか。
 そこに何があるのか。

 今は誰も何も知る由もない。 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。
感想などあれば書いてくれると嬉しいです。 
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