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『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師

作者:wood12
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妨害(はぐれ魔族編)



「このアマ!誰が、お前を護ってきたと思ってんだ!!?」
「結界を探してるのは、誰だと思ってるんですの!!?」
「止めろっ、本当に!武威、オメェはいちいち突っ掛かんじゃねぇよ!!」
「………………」


 こんなこと言い合ってる間にも新手がどんどん攻めて来て、それを全員で蹴散らしてる状況だ。それで喧嘩するなんて、普通はあり得ねぇ。

 たけど、逆に言えば喧嘩するだけの余裕があると捉えることと出来るのか?お陰で、やれやれとは思っても悲観しなくて済んでる。

 まぁ、今はそんなことより……
 

「ちっ……」
「それで、氷。結界の位置は、解ったんですか?」
「え、ええ……さっきあなたが、大量(悪霊)に消してくれたお陰で何とか解りましたわ」
「………………」

 
 そして、彼女は右腕である一点を指し示す。


「あそこ……!ここから、10メートル程先に浮かんでいます。見えなくなっていますが、あそこから霊的な歪みを感じますわ。多分、全部で同じ物が数本ありますけど、あれ1本でも壊せれば結界を解除出来る筈っ!!」


 俺達も彼女の示した方向を凝視するが、確かに何も見えない。無数の悪霊の先に何の変哲もない森が広がってるだけだ。

 ……だが、そんなことはどうでも良かった。

 

「そうか!なら、全員で突破するぞ!!」
「……命令しないで、欲しいですわね」

「そうか、じゃあそこで寝てていいぞ!今日は、助かったぜ♪」
「寝れるか、こんな所で!!」
「「………………」」


 いいコンビだな。そして、遂にお嬢様(そもそも忍者なのに、何でお嬢様言葉?)言葉が崩れた……


 …………と、なんだかんだ色々ありながらも、俺達は雪之丞を先頭にして彼女の示した地点に進み始める。


「無知なる者たちが、軽々しく思索を弄し、知恵を求めることは、時に真理を見失う原因となろう」
「はっ!ちゃんと解るように喋れや!下っ端魔族!だから、テメェはアシュタロスに捨てられるんだよ!!」


 もう、何度目になるか解らない応酬………意味不明な言葉でケムを巻く魔族と、それに悪態をつく雪之丞。

 互いに言いたい事を言い合ってスッキリはするが、永遠に噛み合うことのない不毛なやり取り。少なくとも俺にはそう見えていて、今回も同じように感じていた。

 だが…………
 
 
「…………………………」
「どうしたぁ!?また、意味の解んねぇこと喋ってみろよ!糞魔族!お前は、自分で俺達を倒す力も無きゃ、やり合おうとする度胸もねぇ!出来る事っつったら、悪霊掻き集めて解き放つくらい」

「…………………………」
「それでいて、見た目だけは立派に見せようとする中身の無い見栄っ張り!人形(鎧)担いでたのも、自分の見た目に自信がねぇからだろ?その分じゃ、ダミアンや蝿野郎にも馬鹿にされてたんじゃねぇか!?ええっ!?違うなら、何か喋れよ!役立たずの能無しがっ!!」

「……よく舌が回ること…………」
「大分、ストレスが溜まってたんでしょ」
「………………」


 雪之丞が何も考えず勢いだけで喋ってるのは、誰が見ても明らかだった。ただ、不思議と説得力があるのは、案外当たらずとも遠からずだ___

 


「ん゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぉーーーーーーーーーっっ!!!」




 …………前言撤回。

 それは、もう言葉じゃなかった。ただ、力と勢いに任せただけの怒鳴り声とも、唸り声とも取れるような……一言で言えば、耳障りな雑音でしかなかった。

 けれども、こいつが何を考えてるかは良く解った。寧ろ、喋り出してから一番解り易かったかもしれない。


「んだよっ!うっせぇな!!」
「……図星だったんだよ!お前、触れて欲しくないとこ触れちまったみたいだな」


 そう………こいつは、怒り狂ってるんだ。それも、尋常じゃないくらいに。
 

 俺達がヒャクメから聞いたのは、アシュタロスの “元” 部下ってことくらい。 “捨てられた” なんて知らないし、知りようもなかった。

 当てずっぽうで言ってるのは奴だって解ってるはずなのに、あそこまで激昂するってことは、相当冷遇されてたのかもな………この分じゃ『俺達の首を手土産にアシュの元に帰参したい』って言う、爺さんの推論も当たってる可能性が高そうだぞ。


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーーーーーっ!!!許さん!!許さんぞぉ!!虫けら共!今直ぐ、圧し潰してくれるわぁ!!」
「ああっ!?ちゃんと喋れんじゃねぇか!!っても、自分じゃ来れねぇんだろ!?ヘタレ魔族!!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!」


 大丈夫か?んな、煽って……ってか、こんな乱戦状態で良く喋れんな。




    ◇◇◇

 
 ……………………あれから、何分経った?

 全員で必死に、悪霊を蹴散らしてるのに一向に前に進めねぇ……


 目指す先は数メートルまで迫ってるのに、ここに来てまさかの停滞だ。

 理由は主に2つ………

 1つは、俺達の意図に気付いたムルムラーが、結界の防御を厚くしたこと。

 もう、1つは…………この馬鹿(雪之丞)がムルムラーを煽りまくったこと……

 さっきの舌戦は、雪之丞の完勝だった。

 それは良いんだが、そのせいで悪霊達の動きが今までにないくらい激しくなってやがる。

 まるで、奴の怒り……ここまで来ると憎しみと表現した方が妥当かもしれねぇな。とにかく、奴の激情が連中に乗り移っているかのような猛攻で、にっちもさっちも行かなくなっちまった。


「糞がっ……あと、少しだってのに」
「言っても仕方ねぇ」

 
 仕方ねぇが……このままじゃ不味い。実際、さっきから防戦一方で、全く攻めに転じれない。

 目指す地点は、数メートル先。だが、そこに悪霊達が幾重にも壁に作って、今はその先すら見えなくなってる。
 前に進めないならと、今までに雪之丞や無骸、そして俺もそこへ何回か霊波砲(俺は霊盾)を撃ったんだが、散発的な攻撃しか出来なくて、いずれも悪霊の壁に阻まれて消滅した。
 
 3人の火力を一点集中出来れば、まだ可能性はあったかもしれない。ただ、そんなことをしたら今度は後ろを取られる。俺達は、この狭い空間の中で何重にも包囲されてるんだ。
 
 …………今は、まだ防戦が間に合ってるが、このままじゃ結局奴の言うように圧し潰されるぞ。

 
 どうする……?

 以前、霊団を討伐した《肢体爆弾》なら、ある程度殲滅出来るだろうが、それをやると他の3人を巻き込む。

※『肢体爆弾』参照

 だったら、単体使用の『浄』で今ある文珠を全部ばら撒けば何とかなるか?

 …………でも、これは本当に最後の手段だ。これで、失敗したら本当に二の手が無くなる。雪之丞には強気は言ったが、この状況で文珠を生成するなんて殆ど不可能に近い。

 ……かと言って、他に何が出来る?迷ってる間にも、戦況は悪くなる一方だ。無駄に躊躇してたら、その最後の手段だって使えなくなるかもしれない………

 
 ………………やるしか無いのか?


  

 ……そんな、分の悪い博打に身を委ねようか迷っていた時、たまたま隣に居た氷雅さんが呟いた苦し紛れの一言が耳に入って来た。



「くっ……他の結界に回れれば」



 …………他の結界か。

 目先の前の敵を処理しながら、彼女の一言について考える。
 
 そう言えば、数本あって1本でも壊せれば、壁は消えるんだよな。目の前にあるものが攻略不可能なら、他に回るのも1つの手かもしれない。

 彼女に他は何処にあるか確認したいとこだが、こんな乱戦状態じゃ無理だな。


 …………でも、何となく想像は出来る。

 まず、この結界の壁。基本的には、透明で全く視認出来ない。

 だから、どの程度の広さと形をしているのか、始めは解らなかった。だが、悪霊が外から侵入してくる度に水面に広がるような波紋が起きるんで、それのお陰では段々と判別する事が出来るようになって来た。

 この空間は、縦横約30メートルで高さは約10メートルの綺麗な四角体。

 そして、今俺達が目指してるのは、4つある角の一角。つまり、結界の発生装置は、四隅にそれぞれ1本ずつ配置されてることになる。


(行けるんじゃないか……?)


 絶望感に圧迫されていた心に、僅かだが希望が芽生えて来る。

 悪霊達に霊手を振りながら、ここから2番目に近い装置のあるかも知れない地点を見る。


 …………壁は作られてない。無数の霊体が居ることに違いはないが、壁にはなってない。多分、一番近い所をガードしてるから。その分、別の所は薄くなってるんだ。

 ただ、今から方向転換したところで駄目だろう。俺達の向かう箇所の護りが厚くなって、結局今と同じになる。こっちが突貫するより、奴等が護りを固める方が絶対に速い。


 だが…………


 
 
   ◇◇◇

 
 知性の欠片もない、忌々しい蛆虫共が……

 ここに来るまで少々手こずったが、それも直に終わる。始めこそ威勢の良いことを言っていたが、奴等は身動きも出来ずカス共(悪霊達)に追い詰められて行くではないか。

 このまま行けば、いずれ連中に飲み込まれて押し潰されよう。

 
「ふふん……」


 ………カスに飲まれて朽ち果てるか。下等生物に相応しい最後よ。
 

 メドゥーサ、ダミアン、ベルゼブブ…………お前達を倒した連中は、私の手で消えようとしているぞ。
 
 この光景、お前達にも見せてやりたいわ。そして、聞いてやりたい。「いつも、見下していた私に出し抜かれる気分はどんなものだ?」とな。

 ふふ……自然と笑みが、こぼれるわ。

 アシュ様も連中をやった奴等の首を持って行けば、私のことも見直して下さるだろう。「お前は、口だけで中身が無い」と言われたことも、取り消して下さる筈だ。

 

 ………………しかし、あの下等生物の片割れのチビ……あいつだけは、ただ殺すだけだと気が済まんな。
 
 下種の分際で、この私を愚弄したのだ。それ相応の報いを与えてやらんと。死んだのを確認した後、体をバラバラに引き裂いてやろうか?

 しかし、頭だけは無傷で回収しておかないとアシュ様の手土産にならんからな……業腹だが、首から下だけで我慢__



 ヴァガアァァァーーーンッ!!



「!!?」



 な、何が起きた!?
 

 ………………しまった!!結か__
 


「死ねやっ!コラァ!!」


 ゴギャッッッ!!!


「グェッッ…………!!」


 な……なんだ?何かが、せ…背中に…………力が……入らない…………

 
 
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