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『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師

作者:wood12
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「 “落ちたら” 上がって、来れねぇな……」


 前を歩く雪之丞に、ふざけ半分の脅しを込めて呟く。

 歩くスペースは1人分ギリギリで、掴まる所もない。少しバランスを崩しただけで、奈落の底へ真っ逆さまだ。

  
「押すなよ!マジで……」


 若干、恐れの混じった声を聞き流しながら、横目を下に向ける。視線の先にあるのは、自分達の歩く断崖絶壁の下だが、岩肌が続くだけで底は全く見えない。

 “あそこ” へ行くのに、この道は毎回通るんだが、未だに見えたことが無い。

 
 そんな危険極まりない場所を歩いてるにも関わらずお互い軽口なのは、それで恐怖を紛らわそうとしてるんじゃない。単に暇だからだ。

 ここを通る時は、岩しか見えない代わり映えのしない景色を見ながら、ただただ険しいだけの道程をひたすら進み続けなきゃならない。

 本当に退屈だ……マジで何か話してないと、やってられない。

 初めて歩いた頃は恐怖でそれどころじゃなかったが、何回も続ける内に恐怖は残しつつも、そんな感覚が芽生えるんだから、人の慣れと言う物は不思議だよ。

 

「なぁ……」
「ん?」


 そんな感慨を抱いていると、雪之丞が再び口を開いた。

 何だ?急に改まって……
 

「鴉、これは別に急かしたい訳じゃないんだが……」
「ああ」


 んだよ……珍しく、歯切れ悪いな。
 

「絹への手紙って……今、どうなってんだ?」
「…………そのことか。あれなら、もう出したよ」


 書き上げるのに、かなりの紙を無駄にした。書いた内容にも、正直迷いが残ってる。

 ただ、キッチリ書こうとしても俺の場合ズルズル時間だけが過ぎるのが目に見えてたんで、伝えるべき事を簡潔に書いて出すことにした。

 褒められた考えじゃないかもしれないが、ずっとあの娘を悩ませせるよりはマシだろ。多分……
 

「本当か!?」
「本当だよ。帰ったら、マリアに聞いてみるといい」

「マリアに届けさせたのか?」
「郵便にしたら、先生が開けちまうかもしれねぇだろ?だから、1人になったのを見計らって渡すよう頼んだんだよ」

「なら、シロ(わん娘)にでも渡せば良かったじゃねぇか。良く来るんだし」
「途中で腹減らして喰っちまったら、どうすんだよ?」

「喰わねぇだろ、山羊じゃねぇんだから……」


 勿論、それは冗談だけどな。

 でも、あいつじゃ口止めしても喋っちまう恐れ “大” だし…………既に俺達の所に来てるのも、バレてんじゃねぇかな?


「……返事とかは?」
「来るわけないだろ」


 正直、来て欲しくない。恐くて読めねぇし……


「そうか……」
「ああ……」


 これで……俺のことなんて、忘れてくれるといいんだけどな。


 そうして、その後も喋りながら歩き続けること数時間……何事もなく目的の場所まで辿り着いた。




    ◇◇◇


「おう!また、来たぜ」


 鬼門達の近くまで来ると、雪之丞が軽く手を上げた。

 そう……今回の目的地は妙神山。

 俺のGS試験突破の報告も兼ねて、武神様に一稽古付けて貰うのが目的だ。
  

「また、お前等か……」
「毎回歩いて来るとは、物好きだな。文珠なら一瞬で来れるだろうに」


 口々と言う鬼達に、今度は俺が答える。
 

「鍛錬も兼ねてるから、これでいいんだよ。何でも、かんでも文珠に頼ってちゃ、先はねぇからな」


 お陰で来るたびに掛かる時間は、短くなってる気がする。これは、良い兆候だぜ。
 
 
「言うようになったな……」
「美神令子の荷物持ちだった、男の言葉とは思えん」
「放っとけ……!」


 そんな感じで、いつも通り(?)漫才みたいなやり取りをしつつ中へ。



 
    ◇◇◇


「2人とも、数カ月振りですね!」
「ああ、ご無沙汰だったな!」
「今回も宜しくお願いします」


 門を潜ると、既に屋敷から出てきていた武神様が出迎えてくれた。ずっと前から、気配で感づいてたんだろうな。

 位の高い神様なんだから、そんなことわざわざ(・・・・)しなくてもいいと思うんだが、そういう飾らないところがこの人(?)の美徳なのかもしれない。

 そんな武神様の隣に、もう1人。予想外……でもないんだが、予定外の奴が…………


「私も、居るのね〜♪」
「なんだ、お前も居たのか?」
「暇なのか……?」

「なんなの!!?そのテンションの差は!??」
「あはは……」


 神界の調査官にして、千里眼の持ち主。サ◯ーちゃんのパパみたいに変な髪型してて、どうでもいい事は、よく見抜く癖に肝心なとこでは役に立たない。

 それでいて、なんでか解らないが小竜姫様の親友になってる糞女神ヒャクメが立っていた。そして、喚いていた。


「今、また失礼なこと考えてるのね〜〜!!」
「勝手に人の心読まないでくれるか」
 

 本当にプライバシーがねぇな。こいつは……


「読んでないのね!顔で、何となく解るのね!!」
「生まれつきの顔なんだ。決めつけないでくれ、傷付くぞ」

「さっきは、否定しなかったのね!!」
「まぁまぁ……それよりも、横島さんGS試験をトップで合格したんですってね!おめでとうございます♪」

「え……なんで?い…いえ、これも武神様のご指導の賜物です。ありがとうございます」


 武神様に言われて、慌てて頭を下げる。多分、これもヒャクメが見てて知ってたんだな。
 
 糞っ……また、先こされちまった。こっちから挨拶に出向いてんのに、気を使われっぱなしじゃねぇか。


 その後、立ち話もなんだと言うことで、全員で屋敷に上がった。

 部屋に入ると、待ち構えていたとばかりに斉天大聖様が入って来たんだが、頼まれてたゲームを渡すと速攻で引っ込んじまった。

 どんだけ、ゲーム好きなんだよ……



「猿も相変わらずだな……」
「その荷物、全部斉天大聖様のゲームだったのね〜……」
「と…取り敢えず、どうぞ……」


 気を取り直して、武神様にも土産を渡す。まぁ、ただの煎餅だけど……


「まぁ、ご丁寧にありがとう♪」
 

 正直、偉い神様達への貢ぎ物(?)が、これでいいのかと不安になってくるが、本人達が喜んでるからいいのか……?

 俺が気にし過ぎな気もするが、世間一般のイメージからすれば、俺の感覚はそうズレたもんじゃない筈。

 初めて会った頃は、馬鹿で理解出来てなかったが、本格的に仕事を始めた今なら解る。この方々の存在は、業界人にとって当に天より上の人だ。

 神様なんだから当然と言えば当然なんだが、そんなとんでもない存在と、ちゃぶ台で茶飲みながら雑談なんて今の俺達の立場って…………

 もぅ、言葉に出来ん……


 そして、俺が土産を渡すと今度は雪之丞が、気を取り直したように口を開く。
 

「それは、そうとヒャクメ。今回、本当に何も無いのか?アシュタロス一派に動きがあったとかは?」


 …………アシュタロスか……去年、月でメドゥーサを倒してから、もう半年だな。あれから、どうなってんだろ?

 
「連中は、今のところ大人しいのね……そもそも、動きがあったら、こんな所でのんびりしてないのね!」
「やっぱ、暇なんじゃねぇか」
 
「暇じゃないのね!細かい動きも見逃さないよう、こっちも大変なのね!!たまたま、合間の息抜きに来ただけなのね!!あんた達にも情報があったのに、そんなこと言うなら教えてあげないのね!」


 俺達にも、情報……?

 でも、アシュタロスは大人しいんだよな?どういうこった?
 

「まぁまぁ、ヒャクメ……」
「俺達に情報って何だよ?何か、あるのか?」


 俺がヒャクメに食いつくと、雪之丞もそれに同調する。
 
 
「そうだ!勿体ぶってねぇで喋れ」


 いや、流石にその言い方じゃ…………


「嫌なのね!!もぅ、勝手にすればいいのね!!!」


 ほら、糞女神がそっぽ向いちゃったじゃねぇか………


「2人とも、いい加減にして下さい!ヒャクメは、私の親友です。悪く言うなら、私が許しませんよ!!」


 ってか、俺もかよ……でも、それに突っ込んだら。目の前の可愛らしい神様が、何時ぞやの夜叉モードに突入しちまいそうなんで黙ってた。

※『月編』参照

  

「「お願い致します。知ってる事を、お教え下さい。ヒャクメ様!」」


 2人で正座した上で、ちゃぶ台に手をついて頭を下げる。仕方なくだ。

 あの後、何とか宥めようとしたけども無理そうだったんで、ひたすら下手に出続けると、ようやく自尊心を満たされた感じのヒャクメが口を開いた。


「始めから、そういう殊勝な態度を忘れないで貰いたいのね。あんた達の力は認めるけど、神に対して敬う心が少なすぎるのね」
 
(だったら、ちゃんと神らしく導けよ!駄女神が……!)
(我慢しろ、もう少しだ……)

「何か言ったのね?」
「いやいや、それで私達に情報と言うのは?」


 そう言うと、ヒャクメはフンスッと鼻息を鳴らすと、仰々しく口を開く。こいつがピノキオなら、絶対鼻が伸びてる状況だな……


「聞いて驚くのね!悪魔、『ムルムラー』が人間界に行ったようなのね!!」
「「……………………」」

「アシュタロス一派を監視してる流れで、掴んだのね!」
「「……………………」」


 ………………何?そのザックリとした情報……全然、解んねぇんだけど…………


「あ、悪魔『ムルムラー』って??」
「アシュタロスの “元” 部下なのね!と言っても、かなり下っ端だけど」


 アシュタロスの元部下か……確かに、気になる情報ではあるけど。


「どんな悪魔?どうして、アシュタロスから離れたんだ?」
「よく解らないのね!」

 
 ヒャクメが答えると、今度は雪之丞が口を開いた。


「でも、アシュタロスと関係ないんだろ?人間界に来て、何する気なんだ?」
「解らないのね!」

「…………じゃあ、人間界の何処に来てるんだ?」


 人間界って一言で言っても、それ全世界含む訳だよな?本当、俺達に関係あんの?
  

「解らないのね!」
「解んねぇのばっかじゃねぇか!」
「逆に、何を知ってんの?」


 …………それで、あんな偉そうに言ったのかよ?


「だからぁ〜、ムラムラーって悪魔が人間界に行ったから、気を付けて欲しいのね♪」


 だから、何をだよ……?



 
    ◇◇◇


 “はぁっ!とおっ!!”

 “ぐはっ……!”

 “やるでは、ないか!”

 “うおぉぉぉ〜〜っ!!”

 “まだまだぁ!!”


 カチャカチャカチャカチャ!

 

「おい、武威……」

 
 ゲームをしながら、横で寝そべってる奴に話しかける。

 ロープレとかなら兎も角、格ゲーでそんなことしようもんなら、即ダウン→ハメ殺しの極悪コンボに陥りそうだが、そんなことで俺の集中は乱れない。
 
 目線は常に画面から動かさず、コントローラーを操作する指にも乱れはない。意識を別に向けたところで、俺の動じることはない。最早、考えるまでもなく勝手に体が反応する領域まで達しているからだ。
 

 これも、神界屈指の実力者と言われる、斉天大聖様の指導の賜物よ……!!!


“K.O!!”


「……………………」


 …………なんて、自己陶酔してる間に負けた。やっぱ、対戦に集中しなきゃ駄目だよね。


「なんだよ?声掛けて来て、無視すんなよ!」
「ん…!?ああ……」


 いつの間にか体を起こしてる、雪之丞が横に居た。死んだら、交代だったな。ってか、返事してたのか……


「いや…ヒャクメの話、どう思うかなと……」


 コントローラを奴に渡しながら、答える。あの糞女神、結局最後までハッキリさせないまま帰りやがった。


「ああ、ムラムラーだっけか……」
「ムラムルーだ」

 
※ムルムラーです

 
 ぶっちゃけ、どっかに何かが来るから気を付けろなんて言われても、どうしようもねぇんだけど気にはなるからな……


「んなこと言われても、目的もどんな魔族かも解らねぇのに対応しようがねぇじゃねぇか」
「まぁな……」


 結局、こいつも同意見か……ジークの奴がここに居れば、何か知ってたかもしれないけど、タイミング悪く魔界に帰ってる。

 
「下っ端って話だから、蛇女やウンコ蝿よりは弱いんじゃねぇか?」
「そうだな……」


 今は、それで満足するしかないか?

 それで諦めようとした時、ゲーム中は殆ど喋らない老師様が珍しく口を開いた。


「死者を操る魔族……それと、ムルムルーじゃ」


※全員間違ってます……


「……知ってるんですか?」


 老師様の言葉に、思わず身を乗り出して答える。

 期待してないところから来る情報は、割と嬉しい。武神様に聞いても心当たりが無いと言ってたから、神界の人間じゃ解らないと思ってた。


「噂で少し、聞いただけじゃがな……」


 答える老師様の動きに乱れはない、意識をこっちに向けながらも的確に雪之丞の動きに対応してる。いつか、俺もこの領域に……って違う!


「死者を操るってことは、ネクロマンサーの上位互換とかか?あっ……糞!」
「戯け者が!喋りながら、儂に勝とうなんて300年早いわ!!」


 “隙だらけだっ!!”
 
 
「ろ、老師様……」
「奴は、ネクロマンサーのような “上等” なことなんかせん。彼等は迷える死者と交信して自ら昇天を促すが、奴は単に使役するだけじゃ。死者の意思に関わらず、それこそ使い捨ての駒のようにな」

  
“K.O!!”


「だぁっ!行けると思ったのに!!」
「バカモンが……身の程を知れ!」


 死者を使役か……妖怪や怨霊の力に雑魚霊が引き寄せられるのは、今まで何度も見たけど、使役だと話が変わってくるな。それこそ、軍団のように霊達を動かしてくるとか?…………軍団?

 それって、もしかして……


「………… “霊団” を作れるって、事ですか?」


 だとしたら、かなりヤバくないか?

 小規模な霊団だって、鎮めるのにかなり苦労するんだぞ。それを意図的に作れるなんて、とんでもない魔族なんじゃないか?

 話を聞いて、不安が一気に大きくなったが、幸いにも老師は俺の懸念を否定してくれた。
 
 
「見たわけじゃないが、少し違うかのぉ……霊達を手足のように動かすと言う意味なら霊団と変わらんだろうが、連中が親玉の意思に呼応して集まってくるのと違って、奴は強引に従わせるだけじゃ。本人の力量以上に規模は大きくならないし、力を削がれれば霊達は自然に散ってしまう」
「なるほど……」


 霊団の脅威は親玉を中心にして、時間経過と共に際限なくデカくなること。親玉を倒せば霊達は散るが、一気に仕留めないと、周りの霊を取り込んで直ぐに回復しちまう。

 だから、ネクロマンサーのように一気に霊を飛ばさないと(浄霊)鎮めるのが困難な訳だが、今の話を聞く限りそこまでではないらしい。


「それでも人間からすれば、脅威だろうがな。やり合うなら、大勢で協力して当たるのが無難じゃろ」
「そうですね……」


 もし、偶然俺達が遭遇しても、速攻で協会に駆け込むしかないだろう。まぁ、何処に居るかも解らねぇだし、その可能性も低いか…………


「おい、交代だぜ」
「え、ああ……」
「いや、遅いからお前等は、もう寝ろ。明日も、早いんじゃろう?」


 言われて、時計を見ると既に23時を回ろうとしていた。


「もぅ、こんな時間かよ」
「3時間くらいやってたな……」
「小竜姫も、お前達が来て張り切っておる。覚悟しておけよ」


 なら、明日も地獄だな……嬉しいような、嬉しくねぇような…………
 

「へっ、上等じゃねぇか!じゃあな、猿」
「解りました……おやすみなさいませ、老師様」
「うむ」




    ◇◇◇

 
「ここまでにしましょう。2人共、お疲れ様でしたね」
「へっ……まだまだ、行けるぜ!」
「嘘つけ……」


 霊気も体力も尽きて、立ってんのがやっとじゃねぇか(俺もだけど)……それでも、両眼に灯る闘志が衰えてないのは流石と言うべきか…………


 ここに来てから3日間……俺達は、特殊空間(特別な効果はない)の闘技場を使い、ぶっ通しで武神様相手に実戦形式の鍛錬をやっていた。

 と言っても、彼女は木刀で、俺達は魔装術も文珠も無し。ひたすら、身体能力と霊力で殴りあった感じだ。

 それでも、霊波砲や霊盾は普通に使えるから、それなりに激しい物にはなったけどな……

 
 そして、基本1対2でやるわけだが、毎回一本取るどころか、まともな一撃すら入れれずにズタボロにされる。

 雪之丞の攻撃は簡単に跳ね返され、俺が複数の霊盾を投げても、あっさり突破して接近されちまう。
 
 
 …………ただ、それでも俺達は立っていた。 “立てて” いた。

 
 疲労困憊でボロボロになりながらも、最後まで立っていられるようになったのは、成長してると捉えて良いのだろうか……?

 以前は、寝転んだまま立ち上がれない事だってあった。いや、ここで修行し始めた頃は、毎日がそんな状態だった。


「ふふっ……2人共、動きが更に良くなりましたね♪連携に無駄が、無くなっています」
「はんっ……全部、余裕で躱し捲る癖に良く言うぜ!いつか、その澄まし顔に一発ブチ込んでやるからな……!」
「………………」


 …………修行を付けてくれる相手に、なんつー言い草だよ。こいつは……

 負けん気の強さから来てる発言だろうけど、もっと何とかならねぇのか?老師様の事も未だに、『猿』呼ばわりだし……
 

「本当ですかぁ?じゃあ、私も負けていられませんねぇ♪」
「ちっ……」


 対する武神様は、武神様で全く気にする様子がない…………そんな様子に雪之丞は更に顔を歪ませるが、全く意に返す様子がない。
 

 やっぱりこの人達からすれば、簡単に老いて死んでく俺達が何を言った所で気にもならないってことか?


「うふふふふ♪」

 
 ………………いや、多分そんな大きな目線で見てるんじゃないな。 

 単に物を知らないガキンチョの言葉を、お婆ちゃんが微笑ましく見守ってる……そんな、感じだ。

 お婆ちゃんか…………

 見た目は高校生くらいの美少女でも、内面はやっぱり老成してんのかな?

 口にした瞬間、真っ二つにされそうだから言わね__


「横島さん」
「はいぃ!」


 やべっ!声が、上ずった……考え読まれたか!?


「あなたは、どうですか?」
「えっ……!?」


 …………考えが、バレた訳じゃない?
 
 
「あなたも大分出来るようになった思いますが、自分が成長してる実感とかはありませんか?」


 …………そういう事か。
 
 
「え……ええ、以前に比べれば、大分余裕は出てきたかと思います」


 …………と言っても、さっき言ったように寝なくて済むようになっただけだけどな。

 雪之丞は当てるなんて息巻いてるが、俺達はまず “当てられない” ようにすべきかもしれない。

 
 そんな感じで、俺は彼女の問いに無難に返したつもりたったが、武神様の反応は余り芳しい物じゃなかった。


「……そうですか。それは、何よりです」


 そう言う彼女の顔は、いつも通りの優しい笑顔だった。だが、俺はその表情の裏に何か “陰り” のような物があるのを感じた。勿論、それは微々たるもんだが……

 
 何か不味い事言ったか?

 あんな、無礼極まり無い雪之丞の言葉には嬉しそうに返したのに、俺の返答は駄目なのか?


 その時は、モヤッとした俺だったが、時間が経つと次第に忘れて行った。俺が、この時の武神様の考えに気づくのは、大分後になってからだ。

 


    ◇◇◇


「ちっ……体中がバキバキだぜ…………」
「ズキズキじゃなくてか……?」


 隣でボヤく雪之丞に、俺も顔を顰めながら返す。
 

「ズキズキもある。バキバキで、ズキズキだ……」
「…………そうか」


 どうでもいい…………とにかく、全身筋肉痛と軽い打撲痛で歩くのがしんどい。正直、言葉を返す事すら億劫に感じる。
 

 俺達は、今帰りの道中にいる。あれから一晩経って、武神様達に別れを告げ妙神山を降りてる最中だ。


「でも……」
「ん……?」


 まだ、何かあんのか?


「良い鍛錬にはなったよ……小竜姫の余裕綽々の態度は、癇に触るけどな」
「そうか……」


 まぁ……街に居たんじゃ、あそこまで全力にはなれないからな。それに、何も出来なくても、武神様の動きを目に焼き付けるだけでも、成長出来る気はする。

 
『静時之間』を使い切って、もう数カ月か……ここんとこ、ご無沙汰になってたけど、妙神山には定期的に行っても良いかもしれない。武神様も「修行は終わりじゃない」って言ってたし。


「だから__」
「ん?」

「来週も行くぞ!」
「無理だ!来月にしろ」


 俺は、学校もあんだよ……!
 
 
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