『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師
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隠蔽(GS試験編)
(タイガー……)
医務室のベッドの傍らに立つ俺は、そのベッドに横たわるタイガーを眺めていた。その全身は包帯でグルグル巻きにされている……
さっきまで、冥子ちゃんの招杜羅や他の心霊医師によって治療を受けていたんだ。周りの話じゃあ、全身大火傷で災害事故レベルの重症だったらしい。
GSの世界は死と隣り合わせ……六道に入ってから耳タコになってたけど、今その現実をまざまざと見せ付けられてる感じだ。
「で………オタクは、タイガーの修行に付き合った関係で今日もわざわざ応援に来たワケ?」
そんな俺に、ベッドの傍らにある椅子に腰掛ける若い……つっても、俺より歳上の女が問い掛けて来る。
褐色の肌に、黒のパーマを掛けたロングヘアー。端正で、エキゾチックな顔立ちの美人。
この人、学校で顔を見たことがある。確か何かの講師として来ていた、呪術のエキスパートって言われる『小笠原エミ』さんだ。
…………呪術のエキスパートなんだから、呪術の講師だよな。正直内容が理解出来なくて、忘れてた……
と、とにかく……タイガーの奴、「エミさん」とかしか言わねぇから解らなかったけど、この人の弟子だったのかよ。
ちなみにさっき、お互い自己紹介は済ませてある。医務室に来た時に、偶然彼女達と鉢合わせしたんだ。
そう……彼女 “達” と…………
彼女の後ろにはタイガーと同じミリタリー服を着た3人の屈強な外人達が立っていた。彼女を引っ括めて見ると、女ボスと彼女を守るボディーガードって感じだ。実際、そうなのかも………
「付き合うって程じゃ……あの森で偶然会って、それから何回か自分もその森に顔を出すようになっただけっス。今日来たのは、彼が気になったのと……自分もいずれ試験を受ける積もり(学校がサボれる)なんで…………」
「ふ〜ん……じゃあ、今日のタイガーの変わりようについても知らなかったワケね?」
そんなエミさんは、俺に確認するように聞いてきた。口振りからすると、この人もタイガーの変身については知らなかったみたいだ。
「ええ………でも、今日の試合中に知りました。タイガーの友達……伊達さんって人に聞いたんです。なんでも、強力な自己暗示を掛けて虎になる技だって。そのせいで強くはなるけど、理性も失うらしいっス」
「雪之丞の奴か…………まぁ、見てて大体解ってたけど、そういう事だったワケね」
呻くように言いながら、エミさんは形のいい指をこめかみに当てて顔を顰める。
どういう事なんだ?
伊達の事を知ってる……?でも、この様子じゃ余り良い印象を抱いてない感じだな。
……………いい奴だとは、思ったけど。
◇◇◇
「そこまで!勝者、九能市!!」
“パチパチパチ……”
「また、速攻で決まりましたね。決勝進出おめでとうございます」
俺は控え室へ続く廊下で、軽く拍手をしながら外套に刀を持った女を出迎えた。ぶっちゃけ、ただの社交辞令だ。
だけど、無視したら無視したで何か面倒くさくなりそうなんで、わざわざこんな事してる。
そして、その反応もある意味で予想通りだった……
形の良い切れ長の双眸を細めると、こっちを疑るように口を開く。
「白々しい……余り私を甘く見ないで、頂きたいですわね」
別に見てねぇよ……!
何で、いちいちそういう発想なるんだよ?本当、面倒くせぇ女だな………
「別に甘くなんか、見ていませんよ……と言うより、あなたが “見せてくれません” からね」
だけど、それを言ったところで話が進まないんで、話題を逸らす。今は、こいつの態度以上に気になる物がある…………
「気になりますか?この刀が……」
そう言って氷雅は、左手に持っている刀を示すように上げる。
この前の浜で持っていた刀とは違う。
……と言っても、特別な感じはしない………俺が感じ取れないだけかもしれないが、黒塗りの鞘におさめられたごく普通の刀だ。
だが、異様なのは鞘の外側。複雑な印が記された巻紙が、幾重にも厳重に巻かれてる。
印には詳しくないが、何が書き込まれているかは何となく解る。対象の霊的な力を安定させ、内部に閉じ込める意味…………要は封印だ。
あの刀には、どれ程の力があるってんだ?
ずっと、観てるが封印以外は普通の刀にしか見えない。でも、それが逆に不気味だった。
そして、更に不可解な事もある。
この女は、ここに至るまで一度もその刀を “抜いてない” ……
鞘に納めたまま棒、或いは木刀のように使い、己の体術と合わせて相手を圧倒して来ている。
何故だ…………?
「ええ……とても…………」
だから、これに関しては、かけ引き抜きで本心を言った。
どうせ、答えやしねぇだろうけど……
「それは良かった!では、決勝で楽しみにしていて下さい…………と、言いたいところですが……」
「見せてくれないんですか?」
「あなたは、試験中 “本気” が出せないんでしょう?文珠が使えれば、先程の方にあそこまで苦戦することも無かったでしょうに」
「……バレてましたか」
取り敢えず、知らばっくれてみるけど……そりゃ解るよな。
試合中は、ずっと片腕でやってたのが今は完治。しかも、俺の試合だけ専属の審判員が3人も張り付いてりゃ、氷雅でなくても不自然に思う。
※霊視に優れた審判員。鴉の試合中は、常に主審と別の場所で待機
そんな、俺に氷雅は “やれやれ” と言った感じで続ける。
「あなたが、全てを見せて下さらないのに私だけ見せるのも……ね」
おいおいおい…………「文珠なら、この前見せたじゃねぇか!」……と、声を大にして言ってやりたい。
だが、言ってどうする?
この女がテメェの優位を簡単に崩すわけねぇし、言ったら、言ったで俺の器の小ささを曝け出す結果にしかならねぇ。
………………諦めるか?変に食い下がった所で相手に精神的優位を与えるだけだ。かと言って、何も無しで引き下がれない。関係ない話でもして、何でも良いから情報を引き出すか?
そう逡巡する俺だったが、それは予期せぬ第三者によって強制中断させられる………
「あぁっ……!?」
「「!?」」
いきなり、廊下に響く脱力した声。場の雰囲気に全くそぐわない思わぬ人物の登場に、俺も氷雅も戸惑いながらその方向を向く。
そこには………
「おやおや……また、お会いしましたね」
「あ……あわわ………」
そう発する俺に、おっかなびっくりした顔と声で返すナイチンゲールみたいな格好(コス?)をした彼女が居た。去年と全く同じ格好(良く似合ってるけど)してんな……気に入ってんのか?
……彼女は、救護班としてこの会場に詰めてる六道冥子女史だった。このリアクションじゃ、相変わらず俺=横島と気づいてないらしい。
しかし、参ったな。こんな時に………
どうする……?
一瞬カミングアウトしちまおうか、なんて考えたが氷雅も居る手前そうも行かず、仕方なくこの前と同じ調子で話掛けた。
※『山彦編』参照
「そう、身構えないで下さい何もしない。あなたに手を出したら、武威の奴が発狂してしまう」
「あ…あなた、そんなに強いのに何で彼に従ってるの〜??」
強いか………俺が、そんな風に言われる日が来るなんてな。
ただ……
「そんな事は簡単です。奴の方が、もっと強いからだ。何も難しい事なんかない。きっと、女史もご満足頂ける筈です」
俺がそうに言うと、この前の事が頭によぎったのか彼女の顔が更に歪む。
「な、何言ってるの〜〜?私が最強とか、変な事言わないでよぉ〜〜……」
…………まぁ、そうだよな(最強と言うより、最凶だし)。だが、このまま押し切る。
「私は、事実を端的に述べたに過ぎませんよ。それでは女史、次にお会いする時を楽しみにしています」
「ちょ、ちょっとぉ〜〜………」
俺は、怯える彼女の声を聞こえないフリをしながらその場を後にした。場の状況を読み切れなかったのか、氷雅は最後まで黙りっぱなしだった。
……………まぁ、それはそうと流石に可哀想になってきたな……てか、いつまで続けんだよ?この茶番。氷雅からは何も引き出せなかったし、踏んだり蹴ったりだぜ………
◇◇◇
“これより、準決勝第2試合 鴉選手対蛮選手の試合を開始します!”
「はじめ!」
会場内に響き渡る、審判の宣告。だが、試合開始の合図があったにも関わらず俺の相手は動かなかった。
ただ、俺の数メートル前で仁王立ちして、微動だにしない。傍目には、物凄く威圧感のある光景に見えたろう。
歳は、20代後半あたりか……ステルスには劣るが、190センチ近い長身。アメリカの映画俳優を思わせるような肉体美。それをミリタリーズボンとタンクトップで包んでいる。
同じ日本人だが、東洋人離れした彫りの深い顔立ち。そこに色の薄いサングラス(バイザー?)を掛けて、頭は焦げ茶色の髪をオールバックにしている。
とにかく “厳つい” ……だが、絵にはなる…………
その厳つい男が、俺を見下ろすように立っている。そして、野太いながらも落ち着いた声で語り掛けて来た。
「……俺が言う事じゃないんだが、大丈夫なのか?前の試合、手酷くやられたように見えたが…………」
「心配ご無用……私の力なら、傷の回復も出来ますから」
そう言って、手をひらひりと動かして見せる。
何を考えてる?この男も、あいつみたいに何かあるのか……?
「フッ……どんな力か知らんが、凄い物だな。運営がお前を特別扱いにしたのも解る」
「……………………」
「かつて、俺は……自分の力を過信して、全力を出す前に敗れてしまった…………」
「……………………」
去年、先生にやられた話か…………
「その日以来、俺は心を入れ替え厳しい鍛錬に明け暮れた。自分の力に酔いしれて、相手を侮った不甲斐ない自分を変える為に!」
「……立派な心掛けだと思います」
だから、なんだよ…………?
「もう、俺は油断はしない!常に一戦必勝で戦い、始めから全力で勝負して来た!!後悔しない為にな……!」
「拝見していました。力強くて、立派な戦いぶりでしたね……」
一言で言やぁ、ステルス(変身前)の下位互換だ。
でも、こいつの場合あいつと違って見た目が映えてるから、そんな戦い振りでも悲壮感がない。寧ろ、雄々しくて、魅力的にすら映る。
…………本当、見た目って大事だな。
「…………………………」
何も言わないけど、審判の視線が痛い…………これ、いつまで続くんだよ……?
そんな、俺の困惑を他所に男は更に鷹揚に続ける。
「観ていたんなら、解るよな……?」
「ガス欠ですね」
もぅ、はっきり言ってやった。早く終わりにしたい……
「うん……もぅ、すっからかん。デコピンでも倒れそう」
「ご愁傷様です」
そう………目の前の男からは、まるで霊気を感じない。これじゃ、いくら俺を殴ったところで、どうにもならない。結界の中で物理攻撃なんか、いくらしても意味がない。まぁ、霊気の枯渇は前の試合で、既に解ってたけど…………
こいつ、見た目は立派なんだけど霊力も霊気量もそこそこ。それでも、受験者の中では真ん中より先に居るか……
…………まぁ、何が言いたいかと言うと、こいつは端から飛ばし過ぎた。もう、行き過ぎなくらいに……そりゃ自分の霊気量も弁えずにぶっ放しゃ、最後は尽きて当然だよな。
油断しないとか全力を尽くすってのは、別にペース配分無視しろって話じゃねぇだろ?
脳筋か?いや、間違いなくこいつは脳筋だ。
「だ、だからさ……」
「はい?」
「その右手に持ってる眼玉……しまってくんない?そんなん無くても、俺倒せるから。いや、寧ろ死ねるかもしんないし」
「じゃあ、逃げれたらあなたの勝ちでいいですよ」
そう言って、俺は作った霊盾を、無造作に上に放り投げてやった。
「えっ!?ちょっ……」
「拡散爆弾……『波及眼』」
バァンッ!
俺の頭上4〜5メートルの所で弾ける霊盾……そして…………
ヴォンッ! ヴォンッ! ヴォンッ! ヴォンッ! ヴォンッ! ヴォンッ! ヴォンッ! ヴォンッ!
「うわ゙ぁ〜〜〜〜〜〜っ!!」
バレーボール大だった、眼玉がゴルフボール大になって俺の周りに降り注ぐ。
狙いは………特に付けてない。と言うか特性上付けれない。作っちゃあ、みたけど……大体、牽制か雑魚散らしにくらいにしか使えないだろうな
まぁ、霊気切れ起こしてる奴には十分脅威だろうが…………現にマットを所狭しに逃げ回る奴を見てると、憐れみすら覚える。
「無理無理無理無理!こんなん避けれ “ゴンッ!” へぶっ!!」
おおっ……結構頑張ってたけど、最後は後頭部にヒットしたぞ。
…………まぁ、威力は絞ったから死にゃしなぇよ。俺は、そのまま大の字にぶっ倒れた奴に言ってやった。
「今度は、しっかり配分を考えましょう」
「…………うん……そうする」
生きてたか……取り敢えず、これでお互いGSだ。
共闘すること…………多分ねぇと思うけど、そんな時はよろしくな。蛮さん。
「そこまで!勝者、鴉!!」
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