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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第34話 時の庭園の決戦

 侵略者ゴース星人の地球侵略計画はウルトラセブンとウルトラ警備隊、そしてガーディアンズの共同攻撃の前に潰える事となった。
 しかし、その過程で失った物は余りにも大きかった。
 ウルトラマン、そして、ウルトラセブン。
 幾多の侵略者から地球を守ってきた二人の勇敢な光の巨人がこの地球から姿を消してしまった。
 そして、ガーディアンズも度重なる激闘の中で傷つき倒れる寸前となっていた。しかし、彼等は立ち上がる。
 その胸に平和へと向う闘志がある限り、正義の炎は不滅なのだ!。




     ***




「そうなんだ、やっぱりダンさんがセブンだったんだ」
「なのはは予想してたの?」

 フェイトは現状報告の為なのはの居る科学特捜隊に来ていた。そして、フェイトはハヤタの正体がウルトラマンである事を知ると同時に、モロボシ・ダンがウルトラセブンであった事を告げた。そして…そのセブンもまた地球を去った事も。

「なのは、体の方は大丈夫?」
「大丈夫! もう完全回復したよ。それどころか前以上に力がわきあがってくるみたいなんだ」

 両腕を振り上げるポーズをとってなのはが自身の元気っぷりをアピールした。いかにも子供っぽい仕草だがそれがまた見ている者を安心させる要因ともなった。そして、なのはの言い分も強ち間違ってはいない。
 あの時ゼットンを倒した収束魔力砲。あの威力は明らかに従来の魔力砲の常識を覆す結果となった。しかし、それを発射した為に彼女の中にあった限界の壁が崩壊し、彼女の更なるレベルアップへと繋がったとも言える。

(本当に凄いな。なのはは…最初に会った頃は全然戦い方を知らない子だったのに、何時の間にか怪獣を倒せるようになるなんて)

 心の底からフェイトはそう思った。なのはとの出会いは余りにも突然の事でもあった。動物が憑依したロストロギアに苦戦するなのはを結果的にとは言え助けた事が出会いの切欠となったのだ。
 それから、今度は逆に彼女に助けられっぱなしであった。彼女はその素質だけでなく心も強い子だったのだ。彼女が居なければ今でもフェイトの心は暗黒の中に有ったであろう。

「フェイト、今話せるか?」

 デバイスから通信が聞こえてきた。声の主はクロノだった。14歳位の声変わり前位の男子の声と言えば彼しか居ない。すぐに理解出来た。

「何? クロノ君」
「たった今確認出来た事なんだ。ようやく地球全土を覆っていたレーダー撹乱膜が消失した。これで転移魔法も使えるようになる。一度ウルトラ警備隊本部へ戻ってきてくれ」
「分かった」

 通信を終える傍ら、フェイトは小さな喜びを感じた。ジュエルシードの全発動に際し起こった地球全土を覆うレーダー撹乱膜。これの発生により地球はレーダーが使えなくなり結果的に後手に回る事となり窮地に立たされていた。
 しかし、全てのジュエルシードを封印したお陰でその影響も消え去り、同時に転移魔法も復活した事となる。これによりなのは達はまたアースラに戻る事が出来るし、自分もまた時の庭園に戻れる。
 苦労が実った瞬間でもあった。

「今の、クロノ君から?」
「そうだけど…なのはは会った事あるの?」
「うん、前に一回だけね」

 それは甲児と共に光子力研究所へマジンガー強化の為に向かった際の事だ。あの時は彼が追っていたドロシー・アンダーソンがまさかぺダン星人のロボットだとは気づかず互いにぶつかりあってしまったが、すぐに和解した。
 その後は何も告げず何処かへ行ってしまったので行く先が分からなかったのだが、まさかフェイトと知り合っていたとは以外であった。

「それより、レーダーや転移魔法が使えるようになったんでしょ?」
「うん、これで帰れるよ……」

 そう言った後、フェイトの顔が暗くなった。帰れる、それは即ち二人の別れを意味している。もうジュエルシードを集め終わった。これでもうこの地球に留まる必要はない。となれば後はなのはとはお別れしなければならない事になる。
 そう思うと何処か寂しさを感じてきた。

「そっか、フェイトちゃん帰っちゃうんだね…でも、また何時か会えるよね」
「……勿論だよ、絶対にまた来るからね!」

 互いに手を硬く握り合って再会を誓う二人の少女。例え離れ離れになっても永遠に合えない訳ではない。きっと何時か会える。
 その想いが二人を繋いでいたのだ。




     ***




 地球の何処かにあるエーゲ海に浮かぶ絶海の孤島。バードス島。その地下にある研究施設の中で幾体、嫌、幾十体、幾百体もの機械獣達が並べられていた。

「Dr.ヘル! 遂にこれだけの機械獣を揃えられた事をこのブロッケン伯爵、誠に嬉しく思います」
「うむ、あの時、貴様が取り逃がした魔導師の居た地点を調査した結果ワシは奴等が逃げ出した場所を見つけ出した。そしてワシはこれだけの大軍勢を引き連れていける大型転移装置を完成させた! これを使えばこのバードス島ごと転移させる事が出来る」
「しかしDr.ヘルそんな事をすればこのバードス島は使い物にならなくなる危険性が…」

 隣で跪いていたあしゅら男爵が危険性を訴える。しかしそれに対しDr.ヘルは鼻で笑っていた。

「フン、もうこの様な島などに用はない。転移したと同時にバードス島を例の場所にぶつけるのじゃ、その後に機械獣全軍を結集してでの総攻撃を開始する」
「総攻撃…それは一体何処なのですか?」
「以前二人の魔導師が逃げ延びた場所。その場所の名は……時の庭園」




     ***




 ウルトラ警備隊本部に戻ってきたなのはとフェイト、その二人の前には警備隊のメンバーの他に本郷、一文字、そして甲児が揃っていた。

「よっ、二人共元気そうだな」
「甲児さんの方こそ、もう大丈夫なんですか?」
「あぁ、俺もマジンガーもまだ動ける。だけどゲッターは暫くは無理だな。変形機構やウィング、果てはゲッタービーム発射口までぶっ壊されちまって、今分解修理中らしい」

 甲児が項垂れながら言う。以前恐竜帝国との最終決戦の際にゲッターは深手を負ってしまいそのまま早乙女研究所へ搬送されたのだ。幸い三人の怪我は軽いようで三人とも元気である。が、残念ながら此処には来られないようだった。

「そうだったんですか、最後に一目会えればと思ったんですけど」
「あぁ、そっか…」

 フェイトのその言葉を聴き、甲児も何処かしんみりとなった面持ちになった。ジュエルシードを全て集めた以上、もう地球に居る必要はなくなった。
 後はフェイトは時の庭園に帰るだけとなったのだ。
 あの鬼の様なプレシアもジュエルシードを全て集めたのだからきっと笑顔になってくれるだろう。そう信じているのだ。
 その為、此処に居るメンバーは彼女とアルフの見送りに来たような物だったのだ。

「しっかし、フェイトちゃんと一緒に戦った日々も長いようで短かったなぁ~、俺何だか寂しく感じちまうよぉ」
「一文字、その言葉を言うと親父臭いぞ」

 頷きながら呟く一文字に本郷が笑って言った。その途端に回りからドッと笑い声が響き渡った。すると、モニターが突如映りだす。映りだしたモニターにはアースラ艦長のリンディが映っていた。

「これで全員揃ってるかしら? これから転移を行います。なるべく一塊になってて下さいね」

 言われた通りメンバー全員が一箇所に集まる。するとそんな彼等を突如眩い閃光が包み込む。視界が一瞬ホワイトアウトしていく。
 そして、視界が回復した時、其処には今までのウルトラ警備隊の場所ではなく、アースラのブリッジが目の前に広がっていた。
 此処に戻って来るのも実に久しぶりである。

「お久しぶりですね。皆様……と、言っても全員じゃ……なかったのね」

 渋り顔でリンディは言う。かつて居たガーディアンズのメンバーもかなり減ってしまっていた。
 ハヤタ、ダン、ゲッターチーム。心強い仲間がその中には居なかった。

「……だけどさぁ、闘いは終わったんだぜ。それにハヤタやダンも死んだ訳じゃないし、ゲッターチームも皆元気だ! 何も悲しむ事ないじゃねぇか!」

 場を無理やり盛り上げようと甲児が話題を変える。それを聞いた場の一同が無理やりにも笑みを浮かべた。彼の言う通りだ。ジュエルシードは全て集まり地球全体を覆っていたレーダー妨害は消え去った。となればフェイトがこれ以上地球に留まっている理由は無くなった事になる。
 後は彼女を無事時の庭園に送り返せば事は片付く。

「そっかぁ、今日でフェイトともお別れかぁ…何か寂しく感じるなぁ……これでアルフちゃんの見納めかと思うとなぁ…」

 チラリと回りを見ると、全員の冷たい視線が言った本人である甲児に降り注いでいた。
 あれ? 俺何か変な事言った?
 そう思っていた辺り、甲児自身全く悪気が無いようだがその辺がまた性質が悪い。

「やっぱり、甲児の頭の中ってスケベな事ばっかなんだね」
「うん、前になのはが言ってた通りだったね」

 最早甲児がスケベである事は定着済みとなったようだ。今更弁解しようが無駄でしかない。それは甲児自身が一番良く理解している。

「口は災いの元と言うんだよ。甲児君」
「そう言うのはもっと早めに言って下さいよ本郷さん」

 今更手遅れであった。本郷の隣では一文字が笑いながら落ち込む甲児に向かいシャッターを切っている。カメラマンの性分らしいがこちらから見たら質の悪い嫌がらせにしか思えない。
 反論したかったがそんな気分にもなれなかった。

「あらあら、一足先にお別れの送別会? なら私達も混ぜて欲しいわよねぇ」

 いかにも面白半分的な顔でその場を見ているリンディとアースラクルー。明らかに甲児を助ける気などゼロに等しいのは明白な事でもある。

「ま、まぁ甲児さん…人間大人になればそういった感情に目覚めるって物ですし。そんなに落ち込む事はないですよ」
「ぞ、ぞうが~~~。おまえはいいやづだなぁ~~~」

 目から鼻から雫を垂らしながら情けない顔になった甲児がクロノに主室に抱きつこうとする。しかし彼が抱きつこうとした少年は其処にはおらず甲児の両手が空しく空を切るだけであった。
 その後は甲児の顔面が無様に地面に激突する。見てるとかなり笑える光景でもあった。

「な、なんで逃げるんだよてめぇ~~~」
「い、嫌…服が汚れると困りますし…」

 見上げた時、クロノは甲児から目線を逸らし苦笑いを浮かべていた。避けた理由を知ると甲児の中に沸々と怒りが湧き上がるのを感じられた。このまま放ってはおけない。

「上等じゃぁゴラァ! だったらお前のその黒い服を俺の鼻水と涙でグシャグシャにしてやるよゴラァァ!」
「ギャアァァァ! 何するんですかぁぁぁ! これ支給された制服なんですから止めて下さいよぉぉぉぉ!」

 嫌がるクロノを無理やり引き寄せて制服に顔を摺り寄せる甲児。年齢不相応とも言える光景であった。既に16歳となった青少年がまだ14歳の少年を苛めてる。
 ハッキリ言ってかなりの問題的な光景でもあった。そんな光景を見ていたリンディはとても嬉しそうに口元を押さえて笑う。何故かその笑みはとても嬉しそうだった。

「おんやぁ? 今日のリンディさんは実に言い笑顔で笑うねぇ。思わずシャッターを切っちゃったよ」
「あら、こんな叔母さんを撮っても仕方ないんじゃない?」
「嫌、おばさんって…」

 隼人は困惑した。目の前に居るリンディはまだ20代って言っても通用しそうな程の若く美しい顔や肌の持ち主だ。それを叔母さんなどと言い張ったら世の奥様方はかなり嫉妬する事間違いなしである。

「しっかしクロノ君も羨ましいねぇ。こんな別嬪さんが母親だなんて。俺嫉妬しちまいそう」
「おいおい…」

 その発言が冗談半分だという事は本郷には明らかに分かった。一文字は普段からジョークと笑いを絶やさない好青年だ。自分とは対照的な存在とも言える。
 案外、一文字の方がタフなのかもしれない。同じ改造人間なのに…

「そうだ! フェイトちゃん達が時の庭園に帰る前に皆で何かパァッとやろうよ!」
「え? でも良いよ。何か迷惑そうだし…」
「良いねぇ、ついでに平和になった記念って事で皆で馬鹿騒ぎするのも悪くねぇ」

 皆ノリノリであった。まだ敵が完全に居なくなった訳ではないが。とりあえず大きな山が片付いた。それだけでも十分祝う気持ちになれる。

「ねぇ、フェイト。折角だし皆でパァッと騒ごうよ。良い思い出にもなるよ」
「そっか…そうだよね」

 アルフの言う通りでもあった。今生の別れではないとしてもせめて思い出作りはしたい。そう思えた。

「艦長、言われた通り資料を持ってきました…って、皆さん何時の間に!」
「あ、ユーノ君!」

 今まで何処に行っていたのか分からなかったユーノだったが、どうやら一人アースラに取り残されていたようだ。かなり不憫な事でもある。

「よ、久しぶりだなぁユーノ。その様子だとかなり暇だったみたいだな」
「言わないで下さいよ甲児さん。レーダーも転移魔法も仕えなくて出来る事と言ったらプレシア・テスタロッサについての調査だけでしたからねぇ」
「母さんの?」

 その言葉にフェイトは反応した。かと思うとユーノもまたフェイト達を見て驚いた顔をする。

「あれ? 何で君達が此処に?」
「彼女達は今まで僕達に協力してくれたからね。その労いも込めて呼んだのさ」
「あぁ、成る程…って、君も誰?」

 最早一から言うのは面倒なので仕方なく説明する事になった。一通り説明し終えた時、ユーノは自分がかなり忘れられていた事を知り愕然とする。

「だ、大丈夫だよユーノ君。私ちゃんと覚えてたからね」
「ハハハッ、有難うなのは…でも今はなのはのそんな優しい心が凄く痛く感じるよ…」

 乾いた笑いを浮かべるユーノ。相等辛いのだろう。まぁ、分からない訳ではないが彼もまた悲しい男と言う事になるのだろう。

「ユーノ、お前の気持ち…俺は痛い程良く分かるぞ」
「甲児さん……でも、あんまり甲児さんに慰められたくないんですけど」

 世の中には余計な一言と言うのが存在している。ユーノが言い放った一言が正にそれであった。
 その一言が甲児の逆鱗に触れ、甲児を激情させる要因となってしまった。
 完全に切れた甲児はユーノの首根っこと腰を掴み上げて関節技を決めた。
 見るからにこれは【アルゼンチンバックブリーカー】であった。

「てめぇ、折角人が同情してやってんのにその態度はなんだ! 生意気にも程があるぞゴラァ!」
「いだだだだぁっ! 痛いですよぉ甲児さぁん! 関節決まっちゃってますからぁぁぁ!」

 幾らもがこうが9歳の少年が16歳の青少年に力で勝てる筈がなく、ただただ甲児の気が晴れるまでこのままと言う事になった。




     ***




 プレシア・テスタロッサの前には総勢15個のジュエルシードが浮かんでいた。本来は21個ある筈のジュエルシード。
 その内、6個は無残にも砕かれてしまいこの世から姿を消してしまった。

「無能な人形のせいで貴重な6個が失われてしまったわね…でも、これだけでも充分出来る筈」

 そう言いながら、プレシアはふと、視線をジュエルシードから別の方向に向けた。丁度右の方向。其処には一つの小さなカプセルがあり、その中には一人の少女が浮かんでいた。金色の髪をした…フェイトに良く似た少女であった。

「待っててね、アリシア…もうすぐ貴方を元に戻してあげるから…」

 酔いしれるような目線でその少女を見つめるプレシア。その視線と顔からして明らかに正気とは思えない。

「このジュエルシードを使って、私は行く…神秘の都【アルハザード】へ…」

 その時、突如激しい振動が起こり出した。その振動の余りよろけだす。

「こんな時に…まさか、管理局?」

 不安に想い外の映像を映し出す。其処にあったのはプレシアの予想とは全く違った者達が居た。一面不気味な姿をした機械の怪物達が其処に居る。
 Dr.ヘルの機械獣軍団である。

「あれは…確か機械獣とか言う機械の怪物達…まさか此処を落とすつもりで?」

 そう確信した後、プレシアの口元に歪な笑みが浮かび上がった。持っていた杖の穂先が光り輝きだす。
 その頃、外ではバードス島の突撃により時の庭園の結界を崩壊させたDr.ヘルの軍勢は総攻撃を始めようとしていた。

「素晴らしいですよDr.ヘル! バードス島の突撃により堅牢を誇った時の庭園の魔力結界は崩壊し、裸同然となっております!」
「うむ、直ちに機械獣軍団を用いて時の庭園を制圧、その後にジュエルシードを回収するのだ! その為にもお前達専用の機械獣を用意したのだ。しっかりと働くのだぞ」

 邪悪に満ちたDr.ヘルの前にあしゅら男爵とブロッケン伯爵の二人は跪いた。
 その時、時の庭園の壁が盛り上がってきた。盛り上がりは徐々に形を成し、やがて巨大な人の姿を成していった。
 嫌、只の人じゃない。分厚い鎧甲冑を纏った西洋の騎士を思わせる風貌をしていた。手にはそれぞれ武器を持っておりその大きさは皆機械獣と同じ位はある。

「Dr.ヘル! 時の庭園から多数の敵が出て来ました!」
「ふん、このワシに挑むと言うのか? 愚かしい。機械獣軍団よ、邪魔する者は一人残らず破壊しろ! 草の根一本残さず蹴散らすのだぁ!」

 Dr.ヘルがバードスの杖を掲げて叫ぶ。杖の先端が輝き外に居た全機械獣軍団がその命令を受け取ると即座に攻撃が開始された。
 飛行要塞ブードを中心に夥しい数の機械獣軍団と時の庭園を中心にした騎士甲冑軍団の激しい抗争が勃発した。





     ***




「それじゃ、ジュエルシードを全部集めきった記念とフェイトちゃん達のこれからの幸せを祝ってぇ…乾杯!」

 ジュースの入ったカップを片手に甲児が音頭を取る。それに合わせて皆が持っていたカップを掲げ上げる。真ん中には大きなテーブルが用意されておりその上には簡素だが食べ物も用意されている。それを皆で囲み摘みながら楽しくワイワイ騒ごうと言う事らしい。

「あ~あ~、どうせなら俺は酒の方が良いんだけどなぁ」
「文句を言うなよ一文字。今回はちょっとした思い出作りなんだ。それに俺達はまた地球で戦いが待っているんだ。本当に平和になった時には一杯付き合ってやるよ」

 ジュースに不満を漏らす一文字とそんな一文字の肩を叩きながら同じようにジュースを飲む本郷。

「よぉユーノォ、折角久しぶりに彼女に会えたんだしよぉ、この際一思いにアタックしてみたらどうだぁ?」
「こ、甲児さん! ぼぼぼ、僕は別になのはと其処まで行ってる訳じゃ…」
「う~~~ん? 誰も一言もなのはとは言ってねぇだろう? なのに何でなのはって名前が出るんだぁ~~? もしかして意識してるんじゃないのかぁ~~~」

 ジト目でユーノを見ながら首根っこを掴んでる甲児。巧みな心理戦に追い込まれた為にユーノはどうやら墓穴を掘ってしまったようだ。すっかり顔を真っ赤にして硬直しているユーノを見て楽しそうに微笑んでいる甲児。
 その横ではなのはとフェイトが楽しそうに話していた。

「これで暫くのお別れだね。フェイトちゃん」
「うん、でもずっと会えない訳じゃないよ。手紙も書くよ、絶対に書く!」
「私も書くよ! それで、また何時か会って、今度は私の友達も一杯紹介するね」

 何とも女の子らしい会話をしている。見てて微笑ましい風景でもあった。

「いやぁ、本当にあんた達には世話になったよねぇ。まさかあの管理局と手を組むなんて考えてもなかった事だよぉ」
「本来なら貴方達は拘束対象なんでしょうけど、この状況だとそうは言ってられないからね。それに、証拠が2,3点紛失する事は良く有る事だし…ねっ」

 アルフとリンディが楽しそうに会話している。しかし、内容は上層部に聞かれたら明らかに不味そうな内容でもあった。
 本来フェイトとアルフはどうやら管理局の法律に引っ掛かっているらしく拘束しなければならないようだ。しかし地球で起こっていた超常現象鎮圧に一役買ってくれた礼としてその件はリンディ自身が不問としてくれたのだ。よって二人が罪に問われる心配はなくなった事になる。
 まぁ、罪と言える事を大してしてないので当たり前なのだが。
 
「それにしても…クロノ~~~! 本当に良く無事に帰って来てくれたわねぇ~~~。お母さん本当に嬉しいわぁ~~」
「か、母さん……見てる! 皆が見てるから!」

 回りの視線などガン無視で今度はリンディがクロノを思いっきり抱き締めた。顔を胸元に押し込んで目一杯愛情を込めて抱き締めてる辺り親子を感じさせられる。
 クロノ自身は凄く恥ずかしそうだが、何故か引き剥がそうとはしない。彼自身もまた母親に再会出来たのが余程嬉しかったようだ。

「あ~~~、良いなぁ~~。クロノの奴ぅ。俺もリンディさんの胸の中に抱かれたいなぁぁ~~~」

 ふと、甲児がそんな言葉を漏らす。そして再び冷めた目線で見られる甲児。最早これは御馴染みと言った光景でもあった。
 そんな楽しい送別会を打ち破るかの如く、突如けたたましい警報が鳴り響いた。

「艦長! 大変です。時の庭園が何者かに襲撃されています!」
「え……」

 局員のその言葉を聞いた途端、フェイトは青ざめて持っていたコップを落としてしまった。落としたコップは床に激突し、粉々に砕け散った。




     ***




 時の庭園の周囲を機械獣軍団と鎧騎士の軍勢が激しい抗争を繰り広げていた。その闘いは熾烈であり、両者とも激しい激闘を繰り広げていた。両者の力はほぼ互角であり中々決着が見えない状態でもあった。
 その場所に今、アースラは転移してきた。

「な、あれは機械獣! でも、何でこんな所に奴等が!」

 全く予想外であった。まさかDrヘル一味が時の庭園の場所を嗅ぎつける事が出来るだなんて。しかし一体何故?

「もしかして、私達が転移した時の余波を探知して…」

 フェイトはあの時咄嗟にとは言え時の庭園に転移したのは失敗だったと正直後悔していた。そのせいで今目の前の結果を招いていしまったのだから。

「今更後悔してても仕方ない。このままでは時の庭園が危険だ!」
「そうだった。あそこにゃフェイトのおっかさんが居るんだ! すぐに助け出さねぇとやばいぜ!」

 甲児の言う通りだった。既に時の庭園は機械獣達の攻撃を受けてかなりダメージを負っている。このままでは崩壊も時間の問題である。

「すぐに助けに行かなきゃ!」
「って、なのは…あんたそれ本気で言ってるのかぃ?」

 アルフに言われ、なのはは黙ってしまった。彼女は一度会っているからだ。フェイトの母、プレシア・テスタロッサに…
 その時の記憶が蘇る。痛く、怖く、辛い記憶であった。その場所にまた行こうと言うのだから。

「何か…君達の身にあったのかい?」
「なのは、一体どうしたの?」
「私…前に一度、あそこに行った事があるんです」

 震える声で言った。その言葉に皆が驚く。

「行ったって…何時だよ?」
「バードス島から逃げる時…回りを空飛ぶ機械獣に囲まれてどうしようもなかった時にです」

 状況が状況だけに仕方ないと言えばそうなる。が、結果としてそのお陰でなのははフェイトの母プレシアと出会ってしまったのだ。

「その様子だと…余程怖い目にあったんだな?」

 甲児の問いになのはは黙って頷いた。今でも思い出す。あの狂気に満ちたプレシアの顔、そして鞭で打たれた時の背中の痛み。今でも鮮明に思い出せる。

「なのは…辛いんだったら行く必要はないよ…皆もそうだよ」
「え?」
「おいおい、どう言う意味だよ?」

 突然フェイトがそう言いだす。それには皆も疑問に思っていた。いきなり何を言い出すんだ。この状況でフェイト一人で何が出来ると言うのだろうか。

「だって、あそこは私の家みたいな物だもん。只、家に帰るだけだよ…私とアルフだけで良い」
「家に帰ると言ってる人間の割りには、随分暗く沈んだ顔をするんだな。君は」

 クロノの言葉にフェイトは俯いた。顔を見られたくないからだ。だが、それでも皆は知っていた。フェイトは恐らく無茶をする気なのだ。それを知ってて黙って見送るような人間は生憎この中には居ない。

「悪いけどなぁ、そう言う事ならお前一人で行かせる訳にゃぁいかねぇな」
「その通りだ。俺達は今まで共に戦ってきた仲間だ。その仲間を見捨てることなどできる筈がない!」

 甲児と本郷がそう言う。その言葉に偽りなどはない。その強い瞳がそう告げている。

「俺としても行きたいに一票だなぁ。時の庭園ってのを是非カメラに収めたい」

 カメラを片手に一文字が言う。本心はどうかは知らないが付いていきたいと言っているようだ。

「私も行きます! 確かに怖かったけど…でも、あの人はフェイトちゃんのお母さんだもん。絶対に助けないと」
「僕も行く。今まで皆と共に戦えなかった分、戦いたいんだ!」
「当然僕も行くよ。執務官としては君達だけを危険な場所に送り込むなんて事は出来ないんでね」

 皆気持ちは同じであった。時の庭園に乗り込む。その気持ちで一杯だったのだ。

「皆……有難う……本当に有難う……」
「おいおい、これから最後の戦いに挑もうってのに泣き顔じゃ締まらないよぉ。此処はビシッと決めなくちゃ。女の子は泣き顔より笑顔の方が映りが良いからね」

 言いながらシャッターを切る一文字。彼なりの励まし方なのだろう。少々屈折してはいるが。

「うん、御免なさい……私、母さんを助けたい。皆の力を貸して下さい!」
『喜んで!』

 フェイトの頼みに全員が一斉に答える。それを見届けていたリンディも頷く。

「話は纏まったみたいね。それじゃ早速突入作戦を開始するわ。甲児君はマジンガーZに乗って周囲の敵を迎撃して頂戴。なるだけ時の庭園のダメージを抑えるようにね。その間に残りのメンバーが庭園内に突入してプレシア・テスタロッサを確保して脱出。それと同時にジュエルシードの封印もして貰います」

 うっかり忘れる所であったがあの中には15個のジュエルシードが存在している。もしそれが全て暴走しよう物なら次元崩壊は間違いない。その前に全て封印しなければならないのだ。
 何とも大変な作戦でもあった。

「なぁに、これだけヒーローが揃ってるんだ。楽勝だろう?」
「楽観的なのは良くないが、それも一理有るな」

 相変わらず一文字のノリは軽い。しかしこの緊迫した状況で彼の発言は有り難い所がある。皆の緊張を解してくれるからだ。

「そう言えばよぉ、マジンガーであの空間の中って戦えるのか?」
「魔導師では戦えないけど、質量兵器であるマジンガーなら問題ないわ。安心して戦って大丈夫よ」
「それを聞いて安心したぜ。見てろよDr.ヘル! 今日こそてめぇに引導を渡してやるぜ!」

 甲児が何時になく燃えていた。彼にとってもこれが因縁の決着だったのだ。
 Dr.ヘルと機械獣軍団。まさか此処に来て彼等と決着を付ける事になるとは夢にも思ってなかった。だが、目の前に居る以上決着をつけるべきである。

「直ちに作戦開始! マジンガー出撃と同時に皆を庭園内に転送。その後艦砲射撃を開始します。但し、時の庭園に当てないようにね」

 こうして、作戦が開始された。一人格納庫に向った甲児はマジンガーに乗りアースラから飛び立った。目の前にはまだ数多くの機械獣が居る。更にそれと同じ位の鎧甲冑の敵が居る。始めてみる敵だった。

「な、何じゃぁあの敵は?」
「それは傀儡兵と言うわ。それら全ては時の庭園の魔力を使って動いているの」
「つまり操り人形って訳か、だったら話は早い!」

 そう言うなりまず目の前に居た傀儡兵の一体を殴り倒し、その手に持っていた両刃の剣を奪い取る。それを両手に持ち猛然と切り込んでいった。

「退け退け退けぇぇ! マジンガーZと兜甲児様のお通りでぇい!」

 奪った剣を使い次々と機械獣と傀儡兵を蹴散らしていくZ。両者はZをも攻撃対象と定めて攻撃を行う。しかし所詮は人形の攻撃。人が操っているマジンガーに当たる筈もなく回避された返しにと斬り返されて倒されていく。
 有る程度切った辺りで持っていた剣は根元からポッキリと折れてしまった。

「あり? 案外脆いんだなぁ…そんじゃこっからが本番だぜ!」

 折れた剣を捨てて、今度は内臓武器で戦う事となった。
周囲に無数のミサイルやビーム砲、果ては突風や熱線や鉄拳を叩き込んでいく。
 その光景は正しくマジンガー無双そのものでもあった。襲い来る敵を次々と薙ぎ倒していく様は正しく魔神と呼ぶに相応しい光景でもあった。

「さぁ、僕達も行こう」

 転送ポートに乗った皆に向かいクロノが言う。それに皆は頷く。装置を起動させると目の前が一瞬フラッシュアウトする。
 視界が戻ると其処は無数の光が交差しあう転送空間内であった。その中を渡り時の庭園へと向かう事になるのだ。

「全員一緒の地点に転移するから一固まりになるんだ」
「離れるとどうなっちゃうんですか?」
「全く違う場所に転移してしまう。下手すると何処へ行くか分からない」

 恐ろしい事をサラリと言うクロノであった。その時、突如目の前から光球の様な物がやってきた。それは真っ直ぐになのはに向かってきており、彼女に当たるとその球は弾けてなのはだけを押し出してしまった。

「なのはちゃん!」
「しまった!」
「えぇ!? み、皆ぁぁぁぁ!」

 転送空間内では自由が利かない。まるで自由落下しているかの様に自分だけがドンドン皆から引き離されていく。

「本郷!」
「おう!」

 なのはを助けようと本郷と一文字もまた飛び出した。しかし、その空間内では落下速度が同じな為追いつく事が出来ない。
 気がつけば三つのグループに分かれた状態で転移が終わってしまった。再び閃光により視界がフラッシュバックしていく。
 果たして、あの光球は一体なんだったのか? そして、弾かれたなのはとダブルライダー。そしてフェイト達は無事に時の庭園に辿り着けるのだろうか。
 また、外で戦っているマジンガーZとアースラの運命や如何に!




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

時の庭園にたどり着いたフェイト達。しかし其処で待っていたのは恐るべき罠であった。

次回「張り巡らされた罠」お楽しみに 
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