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エターナルトラベラー

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番外編 【ハイスクールD×D編 その④】

二学期も終わり、冬休みが始まる。

わたしは日中はアザゼル先生のラボで人工神滅具の研究をしつつ夜はグレモリー、シトリー眷属の訓練に付き合わされる日々。

そんな中、ようやく堕天したイリナ先輩を心配していた父親が駒王町にやって来たらしい。

そんなイリナ先輩のお父さんが昔の知り合いに襲われたとか。

しかもその人物はとうの昔に亡くなっているらしい。

幽世の聖杯(セフィロト・グラール)の一つをクリフォトが所持しているのだ、死者蘇生くらいやってのけるだろう。

とてもイリナ先輩の父に憎悪を感じるらしく、イリナ先輩もD×Dのメンバーなのでクリフォトにしてみれば丁度良い駒だろう。

その襲撃者はもと教会の人間で、悪魔と駆け落ちした後、教会と悪魔サイドの粛清にあったらしい。

正直わたしにしてみればどうでも良い事だ。

しかしその八重垣と言うらしい男性は邪龍を封じ込めた剣を持っているらしく、その襲撃で負傷したイリナ先輩の父親は今天界で治療を受けているらしい。

もと聖剣使いなので、当然の配慮なのだろう。

イリナ先輩は堕天していてその父親なんだけど、いいのかねぇ?

と言うか、天界が人間一人を優遇している時点でダメだと思う。

さて、その八重垣と言うその襲撃者の動機などを知ろうにも、当時の関係者は皆口をつぐんでいるようだ。

今、兵藤家のVIPルームにはサイラオーグ・バアルさんとその女王(クイーン)が来ている。

D×Dへの報告と、八重垣との因縁の調査結果を持ってきたらしい。

VIPルームにはグレモリー眷属が揃っていた。

そして何故かわたしも呼ばれている。

「クレーリア・ベリアルの件も分からずじまいで申し訳ない」

クレーリア・ベリアルとは八重垣の恋人だった悪魔の名前だそうだ。

なぜサイラオーグさんがここに来ているのかと言えば、もともとこの駒王町を含む日本の幾つかの地域はバアルの管轄だったらしい。

一時期その管理をクレーリア・ベリアルに委任していた時期が有るそうだ。

その地区がこの駒王町であり、どうやらクレーリアが無くなった原因のいくつかはバアル家にも有るだろうと調査していたのだと言う。

「いいのよ、サイラオーグ。仕方のない事だわ」

「すまん。なんせ初代バアルを含めお歴々の悪魔が皆滅されていてな、今我が家は過去を知る手段が少ない」

「なっ!?最近は政治の舞台にお出にならないと聞いていたけれど、滅されていたの?」

サイラオーグさんの告白に驚きを隠せないリアス先輩。

「恥ずかしい話だな。地上の管理地でイザコザが有って相手に滅されてしまったらしい」

「まさか神滅具使い…」

「と、最近まで俺も思っていたのだが…」

「違うのかしら?」

疑問を浮かべるリアス先輩。

サイラオーグさんの視線がこちらを向いた。

「まさか、ミライっ!?」

「あー、有りましたね。そんな事も」

「そんな事もってあなた…相手は大王家なのよ?」

「はい、だから徹底的にやりましたね。そう言えば今もバアル領の税収の一割がわたしの所に入ってきているはずです」

「はぁっ!?」

たまらずに大声を上がるリアス先輩。

「そうなんだ。それに気が付いた俺は今こうしてこの少女の前に来ていると言う訳だ」

「ちょっと、ミライ。説明して頂戴っ!」

「ヒステリー良くないよ」

おどけて返す。

「い・い・か・らっ!」

にっこりと笑顔に気迫を感じる。

「まぁ、事の顛末を語るとね…」

それは行き倒れの忍者集団を拾った頃に遡る。

忍者集団を拾ったわたしは、彼らに修行をつけつつ、何故か集って来る変人奇人をどうにか社会適合させて、さて集まった金でひと稼ぎと現在は東洋ようかいランドが有るあたりの土地を買ったんだけど、何故かそこがバアル家の管理だと言われたんだよね。

と言われてもさ、地上の人間には関係の無い話でしょ?だって知らないルールだったもの。

ヤクザよろしくみかじめ料を求められたので、知らないと突っぱねたら…

「襲ってくるようになってね。もうほんと脅す…いいえ殺すつもりで襲ってきましたからね。面倒くさくなったからこっちから乗り込んで滅して来ました。それが冥界で知られていないのはまぁ…外聞を気にするだろうなぁとは思ってましたし」

だから直径の子孫三代は残したのだ。

「生きててよかったですね。サイラオーグさん」

「そんな明るく言う事では…」

困った顔を浮かべるサイラオーグさん。

「わたしは正当に土地を買ったんですよ。文句を言われる筋合いはないっ!」

「それは…人間界のルールではそうでしょうけれど…」

「冥界のルールなど知りませんし。周知されていれば従いましたし?」

ねぇ?

「裏社会の人間なら知っている事でしょう」

「わたし表社会の人間なので」

「もう、あー言えばこう言う…」

リアス先輩が頭を抱える。

「それでか…今も和解金の名目で我が領のお金が支払われ続けているのは」

サイラオーグさんが言う。

「と言いますか、バアル領の大半はわたしの物ですよ?」

「ええっ?」

「同じ理論を展開してやったんです。もともとその土地はわたしの物ではなかったですか、と。借りているのだからお金を払ってください、とね」

「俺は先ず大王家の所領を取り戻すところから始めなければならないのだな…」

サイラオーグさんがショックを受けていた。

「あなた…悪魔より悪魔ね…」

リアス先輩が呆れている。

ほっといて。

「で、何でしたっけ、クレーリア・ベリアルの話でしたっけ」

「そうよ」

「当時敵対関係にあったバアル家の事は弟子たちが調べられる限りの事は調べたはずだから、そっちに聞いた方が良いかもね。わたし自身はあまり興味が湧かなかったけど、たぶん弟子の誰かが管理している、はず」

直ぐに資料が届けられる。

流石忍者仕事が早い。

昔の資料を調べてみると、八重垣とクレーリアは悪魔と教会双方がそれぞれの身内を外聞の為に討ち取ったらしい。相手ではない所がミソだ。

悪魔と教会の人間の恋愛なんて双方とも禁忌なのだろう。

そしてイリナ先輩の父親がその時の責任者であったようだ。

その後直ぐにイギリスに引っ越している。この町の教会が無人だったのはそのためだ。

クレーリアはバアル家の関係の悪魔が処理している。

「いやぁ、外聞の為に仲間を斬れるんだから、教会も悪魔染みているね。そりゃ怨まれるよ。仲間に恨まれても悪魔を切る所でしょう、普通」

と言うわたしの言葉に教会三人娘が俯いた。


天界にクリフォトが襲撃を仕掛けてきたらしい。

D×Dは要請に従い出動していったが、わたしは出禁だったようだ。

まぁ、堕天使製造機、なんて言われている存在は招きたくないだろう。

そして多分天界に行けば盛大にシステムに干渉してしまうだろうし。

行かないのが正解だ。

何より面倒。

その騒動でイッセーは透過なる新技を覚醒して来たらしい。

流石イッセー。

そしてアザゼル先生が興味本位で呟いた一言。

「で、その透過ってミライには効くのか?」

「どうでしょう?」

イッセーもそう答えた。興味はあるようだ。

そろそろイッセーやグレモリー眷属の共通認識としてヤベー奴だと知れ渡ってしまったようで悲しい。

イッセーの透過は防御や耐性を貫通する、という事らしい。

「で、貫通するとしてどこにダメージがあるの?」

「………わかりません」

だよねー。

まぁ、試してみた所わたしには効果無しだった。

わたしの耐性を抜けないからだ。

無効にしている訳じゃないんだから、どちらの後出しじゃんけんが有効かの問題だけだ。

結果はわたしの勝ち。終了、解散っ!

「まぁ、そうショックを受けないで。わたし以外なら多分けっこう強いよ」

『…………』

「ううう…慰めになってねーよ…ほら、ドライグもショックで返事をしなくなっちまったじゃんよ」

イッセーが滝のように涙を流していた。

ああ…心の弱いドラゴンなんですね…二天龍って。

「ほら、イッセーしっかりしなさい、おっぱいよ」

リアス先輩が慰めているようだ。

「はぅう…すびばぜん…俺…おれ…もっと強くなりますからっ!」

イッセーがリアス先輩の胸に顔を埋めて泣いていた。



冬休みも終わり、新学期。

ゼノヴィア先輩がまさか生徒会長に立候補するなんてっ!

今は忙しく広報活動に勤しんでいるよう。

とそんな時、教会の一部、主にエクソシストを生業にしていた戦士の一派が教会を離反したようだ。

と言うのをアザゼル先生のラボでルルから聞いた。

「まぁ、分からなくもないよね。実際」

「そうなの?」

何故かここにサボりに来ているルルが問い返した。

いや、この後シトリー眷属の練習を見るので連れに来たとも言える。

「天使と悪魔、堕天使が和睦して、悪魔を狩れなくなったでしょう?別に悪魔を擁護はしないよ。クソみたいな奴らや危険なはぐれ悪魔も居るわけだし」

「……そ、そうね」

ルルは転生悪魔なので消極的同意。

「悪魔を狩るのは天界に止められている。まぁ悪魔もはぐれ悪魔を裁いているけど、悪辣な悪魔は居なくなることは無いだろうし。今までの怨恨も有る。理解しろと言われても無理だろうね。人間ならさ」

だから今回離反したのだ。

自分たちは悪魔に屈しない、と。あるいは…まぁどうでも良いか。

「おーう、出来たか?」

のそりと正面の扉を開けて入ってくるアザゼル先生。

「そう言えばミライは何を作ってるの?」

ルルがそう言って覗き込んできた。

「うーん、人工神滅具?」

「ええっ!?」

ルルが目を見開いた。

「太極図か、そうなったか」

「ええ、まぁ…」

手元にあるのは小さな球体。それは赤と白の太極図を描いているようにも見える。

イッセーの赤龍帝の籠手からもいできた赤い宝玉と以前ヴァーリからもぎ取った白い宝玉を使っている。

未来から来たイクスの持っていた人工神滅具を参考に二つを融合させていた。

「制御は人工知能に任せました」

「人工知能っ!?」

「またとんでもねぇモノを作ったもんだ」

と言うか、スキニルを強化していったと言う方が正しい。

「スキニル、挨拶」

『はじめまして、皆さん。これからよろしくお願いしますね』

「しゃべったっ!?」

「そりゃね」

これで魔法関係が少し楽になるとホッとしている。

「ただ、これって核に元々持っていた白い龍の女王から簒奪した権能を使っちゃっているんですよね」

比較の理(カルンウェナン)の権能を核にする事で起動するエネルギーにしている。

元々似た能力なので一番適合できたと言っていい。

「へぇ…権能、ねぇ…俺でも持ってない物を当然と言ってのけるね」

とアザゼル先生。

「白い龍の女王って?」

ルルが質問する。

「そりゃウェールズの白い龍ですよ」

「アルビオンじゃねぇか…」

そうとも言う。

「え…え?」

ルルはよくわかってない様だ。

「赤いのは倒してないのか?」

「会った事ありませんでしたから」

そもそも神様ってそうそう会えるものじゃありませんって…この世界にはいっぱい居るみたいで辟易しそうだけど…

「とりあえず、起動ー」

「ノリ軽いねっ!」

別にいいじゃない、ルル。

『Drive ignition!』

太極図が起動すると左手に籠手のように現れた。

白銀を基調として赤のラインで色付けされている細身の籠手だ。

服装も動きやすいものに変わっている。スキニルが気を利かせてくれたらしい。

「それが…人工神滅具の完成系か」

感嘆の声を漏らすアザゼル先生。

「一応、赤龍帝の籠手と白龍皇の光翼の相乗を狙っています。と言うか元が権能なのでもとより劣化して無ければ良いんですけどね…」

「劣化って、お前は…」

「一応は倍加、譲渡、透過、半減、吸収、反射と使えるはずです」

「欲張りセットだな…」

だからもともと似た権能ですってばっ!

「名前はなんて付ける」

「まぁもともと比較の理(カルンウェナン)って呼んでいましたし、それでいいのでは?」

「鬼手化(バランス・アジャスト)は出来るのか?」

「先生、鬼手化って?」

ルルが手を上げていた。

「人工神器の禁手化の事だな。区別する為に名称を変えている」

「なるほど」

まぁ呼び名が違う程度の事だ。

「既に鬼手化状態ですね。鎧にならないのは必要ないからです」

10秒待たなくても即時倍加や半減が可能だ。

「あー…たしかにミライには鎧は必要ねーわな」

戦闘状態のわたしは傷を負う事すらまれだ。鎧を着こんでも重くなるだけだしね。

「籠手のこの部分は何だ?」

「あー、それは拡張スロットですね。弾丸に加工した呪力を込めるんです」

一応一発分の弾薬が入る様になっている。そこに色々な効果を持つ弾を込めて使う。

「なるほど、拡張か…そう言う考え方もアリだな」

お披露目が終了するとシトリー眷属の修行場へ連行される。

「あれ、皆いないなぁ」

携帯電話で確認すると、どうやらD×Dのメンバーに挑戦状が叩きつけられ、皆兵藤家に集る様に言われたようだ。どうやら厄介な事件に巻き込まれているらしい。

兵藤家のVIPルームに集ったD×Dのメンバー。

挑戦状と言うのはどうやら先ほど聞いた教会のエクソシスト達のようで、果し合いを希望しているのだと言う。

アザゼル先生は受けてやれ、と言っていた。

「逆指名で、お前さんは来るなだとよ」

「マジですか…」

「マジだ」

「楽でいいですけどね」

何でだろう?

「相手の首謀者に奇跡の子が居るからだな。お前の悪名は知れ渡っている」

悪名って…アザゼル先生が言ったんじゃん。

奇跡の子と言うのは人間と天使のハーフの事だ。肉欲を持たずに交わると授かる事が有るらしい。

まぁ、そうね。わたしが行ったら嫌味を言いそうね。で、ハーフであっても天使なので堕ちる。

なので出禁と言う事のようだ。

楽でいいけど、納得できない。

この教会内のクーデター。おそらくクリフォトが煽動したのだろうとアザゼル先生は考えているようだった。

ほんと嫌がらせに人生をかけているような腐った心根の悪魔だリゼヴィムは。

教会の戦士のトップと言うのは本当に人間離れしているようで、全盛期なら最上級悪魔さえ狩れたらしい。

齢80を超えているストラーダさんはもう本当化け物染みた強さだったよ。

惜しむならば年齢と、人間であると言う所だけだ。

結局このガス抜きで自身の心に決着を付けられたのか、反乱は鎮圧される。

とは言えエクソシストの人達も悪いようにはならないようにするとアザゼル先生が言っていた。

生徒会選挙は一騎打ちの末ゼノヴィア先輩が勝利、生徒会長に当選したようだ。

マジか…すごいね。教会の聖剣使いだったのがウソのように生き生きと人生…悪魔生を謳歌しているよね。

良いニュースが有れば悪いニュースも有るらしい。

レイヴェルが冥界で行われる自分の兄、ライザーのレーティングゲームにビショップとして参加していたのだが、途中ライザーと共に行方不明になってしまった。

どうやら対戦相手であるレーティンゲームランク一位である皇帝ディハウザー・ベリアルが何かしたようだが…

わたしにはその情報と共にすぐに魔王サーゼクスさんから動かないで欲しいと言われてしまった。

一応レイヴェルと、あとお兄さんは無事らしいと言う言伝を伝えにグレイフィアさんが単身でわたしの元に来ていた。

レイヴェルとお兄さんのライザーはどうやら悪魔の駒に関する知ってはいけない事を知ってしまったかもしれないのだと言う。

それを古い悪魔が知れば消されてしまうかもしれない、と。

「サーゼクスさん経由でこうお伝えください。赤龍帝の関係者に手を出せばバアルのようになるぞ、と」

「バアル……まさかっ!?バアル家の初代が滅んだのは……」

秘匿されていても知っている人は知っている。

「先に殺しに来たのはあっちですよ」

「当時あなたは5歳ほどではなかったですか?」

とても信じられないとグレイフィアさんが言う。

「そうですね」

それが?

「いいえ、何でもありません。サーゼクス様にお伝えします」

グレイフィアさんは目を閉じて一礼すると帰って行った。


それからすぐにレイヴェルは戻って来ることが出来た。

魔王の一人であるアジュカ・ベルゼブブがイッセー達にレイヴェルを届けたようだ。

そこでイッセー達は悪魔の駒に関する重要な隠し事を聞いたようだが…まぁわたしには関係ないよね。

その隠し事なのだが、時間を置かずにディハウザー・ベリアルが冥界全土へとバラしてしまったらしい。

悪魔の駒は人間界のチェスをモデルにしている。

それなのに、上級悪魔を王(キング)に見立て、眷属悪魔をチェスの駒に見立てて転生させている。

チェスであるなら当然キングも有るはずだが、貰える駒には入っていない。

だが、王の駒は存在していて、現在のレーティング上位の悪魔にはその王の駒を使っている者が多いそうだ。

王の駒は悪魔を強化するらしい。それも10倍から100倍以上、魔王クラスにまでその力を高められるのだそう。

制作者のアジュカ・ベルゼブブは余計な混乱を避けるため、それと力の強い者が使うと死に至る事が有ると言う事で制作を取り止めたようなのだが、初期生産分を古い悪魔に取り上げられてしまったらしい。

その古い悪魔たちは自分の利益になる存在にその王の駒を与え、レーティングゲームをも裏で操っていたそうだ。

王の駒使用者を調べ上げたディハウザーはその悪魔たちを実名公開もされていて冥界は今大混乱なのだとか。

後で聞いた話だが、なぜディハウザー・ベリアルがそんな事をしたのかと言えば、従妹であるクレーリア・ベリアルは偶然王の駒の存在を知りバアル家に消されたと言う事実が有るらしい。

クレーリアが噂だけは存在していた王の駒を探していた理由は自分が使用する為ではなく、王の駒の使用を疑われているディハウザー・ベリアルの無実を晴らす事だったようだ。

まぁ、悪魔の駒を知ったクレーリアを闇に葬ったそのバアル家のお歴々もわたしが(関係の無い理由で)粛清しているのだけど…

ディハウザー・ベリアルの反乱は政治的な膿を出すのにはちょうど良いだろう。

裏から手を回す事に悦を見出す古い悪魔は(わたしに迷惑をかけるなら)一掃されるべきだ。


ディハウザー・ベリアルはクリフォトと共にいると言う情報を得たD×D。

タイミングの良い事に強奪されていたアグレアスの居所が判明したらしい。

次元空間を入念に探索していたヴァーリのチームが見つけたそうだ。

敵の本拠地が見つかれば後は攻め込むだけ。

D×Dのメンバーは総力を持ってアグレアスに乗り込みクリフォトを制圧する作戦が始動する。

「お前の役目はあのリゼヴィムのヤローをどうにかする事だと言ったろう。なぜこんな所でお茶を飲んでいるんだよ」

アザゼル先生の怒声が響く。

先生は自分の役割が有ると言うのに動こうとしないわたしを叱咤しに来たようだ。

こんな所とはアグレアスの端っこだ。

リゼヴィムは神器に対して絶対的な優位が有る。それならば神器を必要としない者が対処するのは当然の話だ。

既に戦闘は始まっていて、大量の邪龍とD×Dのメンバーが戦っている。

時折巨大な砲撃音が響いている所を見ると、イッセーもヤンチャしているらしい。

「まぁ、落ち着いてください」

「落ち着いているつもりだがよ…」

王の財宝の中からクリスタルキーを導越の羅針盤を取り出すと準備完了。

「それは何だよ…鍵と…羅針盤か?」

「そうですね。で、これを…」

クリスタルキーを捻るとどこかと空間が繋がった。

「これは……」

「なんだろう。転位門?なぜこんな所に?」

「お前何を言って…」

「おや、誰も出てこないぞ?うーむ、こちらから行ってみようか?でも罠だったりしたら困るしなぁ。でも気になる。よーし、取り合えず腕でも入れてみようかな」

「だから……」

「ほら」

ゲートに視線を向けると誰かの手が見えてくる。

「おい、まさか…」

すぐさま天の鎖で拘束し、半分だけ引っ張り出す。

「おい、こいつはどういう事だよ、力が入らねーじゃねぇか」

釣った魚のようにつり出したのはリゼヴィム・リヴァン・ルシファーことリリンだ。

「おいおい、何の冗談だ?」

「好奇心旺盛なおじいちゃんですね」

アザゼル先生が呆気にとられ、わたしは呆れていた。

カチっとクリスルキーを捻りゲートを閉じるとリゼヴィムの上半身と下半身が分断された。

「お前…これはグロいぞ」

「わたしならあからさまな罠は避けますよ」

バカなのかな。まぁ他世界に喧嘩を売るバカだ。しかも引っ掛けたのがULと呼ばれる災厄なのだから性質が悪い。

「次はどうすると思います?」

「あー…聖杯を使うだろうな…」

「でしょうね…だから…」

奪った聖杯なら下半身を即時再生させることくらい可能だろう。

「そんなぁっ……」

取り出された聖杯を天の鎖で縛ると鎖の効果で断絶されリゼヴィムの操作を受け付けない。

「ひでぇな…」

アザゼル先生が引いていた。

「あー…助けてくれない?」

チャラケた口調で懇願するリゼヴィム。

「さよならです」

金色のゲートが開くと王の財宝から聖剣魔剣が飛び出しリゼヴィムを刺し貫いた。

「くっ…ごほっ…バカな…このルシファーが…」

「まだ生きてるとは流石にルシファーとリリスの息子ですね」

再び剣が刺さると今度こそ絶命したようだ。

「うぉえ…ちょっと夢に見そうだ…」

「グロ耐性低いんですね。…まぁ、これで第二目標の聖杯の回収も完了ですね」

わざわざリゼヴィムを生かして重傷を負わせてのは聖杯を使わせるためだ。

普段は異空間へと収納しているので取り出してもらわなければ回収が面倒だったのだ。

まぁあのまま殺しても、出来なくはなかったのだけれど。

「あのリゼヴィムがこうも簡単に……」

アザゼル先生はショックを受けたようだ。

今までリゼヴィムに散々良いようにされてきたからなぁ。

「リゼヴィムがULと対抗できると思いますか?」

「………思わないな」

「でしょ」

所詮その程度の男だ。

その後アザゼル先生は自分の役目に戻り、わたしは後方指揮を担当。

しかし不測の事態が起こり、なんとリゼヴィムは既に黙示録の皇獣、666(トライヘキサ)を探し当てていたらしい。

多数のケーブルに繋がれ、蘇生作業がこのアグレアスで行われていたのだ。

トライヘキサを発見したものの再生邪龍であるアポプスとアジ・ダハーカの横入れで持ち逃げされたらしい。

ついでに大量の赤龍帝のクローンも有ったそうだ。

リゼヴィムの置き土産は最悪の事態を招いてしまうだろう。

もっと早くわたしが動いていれば…とも思うが、遅きに失した。

わたしの油断だ。

探そうにも強力な追跡避けの魔法が使われていて導越の羅針盤でも探し出せない。

これがわたしがアグレアスを見つけられなかった理由の一つだ。

………まぁ心のどこかに面倒だと思ったことも理由の一つだろう。

トライヘキサの復活と、古い悪魔の醜聞に冥界は揺れている。

他の神話もトライヘキサには気が気では無い様で、つい先日は北欧に現れ蹂躙の限りをつくして撤退したらしい。

神々も当然抵抗したのだが硬い表皮にてこずり、さらに目を見張る再生能力に劣勢を余儀なくされたようだ。

観測の結果、トライヘキサは塵ほどの欠片が有れば復活するのでは、と言う計算が出ていると言う。

後日、オーフィスの双子の妹みたいな存在が家に居候しはじめた。

どうやらアザゼル先生が連れてきたらしい。

その娘はオーフィスのサマエルによって奪われた魔力から作られたのだそう。

名前はリリスと言うらしい。

まったく…また女子寮に一人加わったようだ。

え?兵藤家じゃ無いの?

もう女子寮で良いんじゃないかな。

お父さんはきっと管理人のオジサンだよ…はぁ…



ここは冥界、堕天使領にあるアザゼル先生のラボに籠ってデータの参照を続けているわたし。

「どうだ、この間のブラックバレルならこいつを倒せそうか?」

天寿の概念礼装。

「やってみないと分かりませんが……難しいかもしれません」

「あいつの再生能力か」

アザゼル先生も神妙に頷く。

「ですね。塵一粒からでも再生される怪物なんてね…悪夢ですよ」

噂に聞くORT…One Radiance Thing(ワン・ラディアンス・シング)に迫ろうかと言う再生能力だろう。

「仮にブラックバレルが効いたとして、無限に再生するような化け物の存在規模ってどれほどのものになりますかね…倒せてもその衝撃で地球が無くなってしまっては意味が有りませんよ」

「そりゃなぁ…」

「たぶん地道に削り切るしかないかもしれませんね…」

死の概念を押し付けた上で直死の魔眼で線を斬れば流石に削れるだろう。

「お前にそこまで言わせるのか…これは本当にプランBも視野に入れないといけないかもなぁ…」

「プランB?」

何か作戦があるようだ。

「まぁ、まだ内緒だ」

苦笑するアザゼル先生を見るとあまり良い作戦ではなさそうだ。

このラボに居るのは二人だけ。

わたしとアザゼル先生だけだ。

何故そんな所にいるのか。


ドゴーンドゴーン

爆裂音が響き渡る。

「やっこさん方がおいでなすったぞ」

とアザゼル先生がモニターに映った量産型の偽赤龍帝の大群を見て言った。

ラボの外には大量の赤いゴキブリ…もとい偽赤龍帝に囲まれていた。

「トライヘキサは連れてきていないようだな」

「聖杯を壊されでもしたら事だと思っているのでしょうね」

「だろうな。そしてこの期に及んでもこちらは神滅具を破棄しないとも思っているのだろう」

アポプスとアジ・ダカーハの狙いは幽世の聖杯(セフィロト・グラール)だろう。

これをわたしがアザゼルから取り返したせいで邪龍はこれ以上復活出来ず、また自身も生き返れない上、おそらくだがトライヘキサの使役も難しくなっているだろう。

「大事の前の小事ってか」

わたしは邪龍たちをおびき寄せるためにわざとこんな僻地に居る訳だ。

「こっちは二人だけだと言うのに大げさすぎませんか?」

「それほどこちらを警戒しているのだろう。お前の事を知らない裏の存在はいないさ」

「嫌な知名度ですね…」

まったく。でもまぁ…

「それなら期待に応えないとですね。結界、お願いしますよ」

「しょうがねぇ、やっこさんが逃げれないような強力なやつを張ってやるさ」

ドドーン、遂に直上の壁も壊れたらしい。瓦礫が降り注ぐ。

それを防御魔法を展開し防いだ後破裂させて瓦礫を吹き飛ばした。

「あーあ、ラボが全壊だな」

「その程度、諦めてくださいよ。その代わり…とっておきを見せてあげます」

『Drive ignition!』

スキニルが起動し左手に籠手が現れる。

「須佐能乎」

「おいおい…何の冗談だ…」

巨大な烏天狗が現れた。

『BoostBoostBoost!!!』

倍加三回。

須佐能乎は左手に剣を握ると銀色に輝きだす。

それをおもむろに横に薙いだ。

剣からは衝撃波を伴った銀光が迸り、偽赤龍帝軍団を屠る。

「おいおい…一撃で壊滅状態じゃねぇかよ…」

『おいおい、こいつはどういう事だ?』

『ぎゃはは、人間にもこれ程ツエーやつが居るんだっ!』

アポプスとアジ・ダカーハが現れた。

どうやら邪龍の思考はぶっ飛んでいるらしい。

目の前の惨状にむしろ喜んでいるようだ。普通の精神ならまず生を模索するか逃げるところだ。

「さて、このまま続けても良いんですが…まぁ新技のお披露目もかねて」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』

「力屠る祝福の呪い(ブレッシング&カーズ)」

足元の影が伸び、その中から歪な天使が現れた。

「サマエルだとっ!?」

『ぎゃははははっ!今さら龍喰いなんて』

『僕たちに弱点何て存在しないよっ』

幽世の聖杯の効果で龍殺しに対しては耐性を得ているらしい。

「でも、あなた達はドラゴンですよね?」

『はぁ?当たり前だろっ』

『邪龍には邪龍のほこりがあるのだっ!』

なら結局ドラゴンでしょう。

『Transfer』

倍加した呪力でサマエルを強化。

次の瞬間、籠手(ギア)で強化されたサマエルから複数の蛇が伸びた。

『効かないって…て何でっ!?』

『い、痛い、痛い、痛いっ!?』

蛇はドラゴンを抉り、噛みちぎり、毒す。

「竜滅者(ドラゴンマーダー)サマエル。この権能は龍蛇における絶対的な殺害権を有しているんですよ」

この権能の前ではドラゴンは絶対に太刀打ちできない。つまり…

「どれだけ耐性が有ろうと竜である事が罪。サマエルからは逃れられない」

「あー…一応聞くんだがな」

アポプスとアジ・ダカーハが殲滅されたころ恐る恐るアザゼル先生が問いかけた。

「オーフィスやグレートレッドも殺せるのか?」

「籠手(これ)も有りますし、たぶん殺せますね」

相手は龍蛇の類なのだしね。そもそもオーフィスはサマエルに半分にされたらしいし。

「あー…マジかぁ…マジだなこいつは…もうヤダこの娘」

アザゼル先生がげんなりとした表情を浮かべている。

「ちょっと現実逃避しないで下さいよアザゼル先生。まだ倒し切れていないモブ龍帝が居るんですからっ!」

「モブ龍帝…言い得て妙だな…だがそんなのそいつ(サマエル)が居れば余裕だろ…」

「まぁ…そうですね。モブ龍帝(アレ)はドラゴン判定ですので、罪有りきですね」

邪竜だろうが偽赤龍帝の大群だろうが、メタを張ればこんなもんよっ!




さて、問題のトライヘキサだが冥界に転位してきているらしい。

適当に暴れては前進を繰り返しているようだ。

トライヘキサは全長百メートルほどの巨躯を誇り、七つの頭と七つの尻尾を持つ。

驚異的な攻撃力と再生能力を持ち、トライヘキサを殲滅するのは難しい。

今はまだ堕天使領ではあるが、悪魔側に行くのも時間の問題だろう。

冥界が破壊されつくされれば各神話の冥府にも影響が出る。

そうなれば人間の魂の管理が難しくなり、結果として神話は終わりを告げるだろう。

そうならない為にも協力して事に当たらなければならない。

D×Dのメンバーも戦力として前線へと赴いているのだが…

乱戦過ぎてわたしは大技が使えない。

直死の魔眼で視ても死の線は薄い。

相当気合を入れないとすぐにあやふやになってしまって殺せないだろう。

フェニックスの涙はこの際だと大量に作って大盤振る舞いしているのだが、体力だけは回復できない。

次第に集中力も欠いて行き劣勢になるのも時間の問題だった。

イッセーも、アーシアもリアス先輩も他のグレモリー眷属、ソーナ会長、ルルやシトリー眷属も限界だった。

「これはプランBだなぁ…」

アザゼル先生がヤレヤレと言う。

「この前も言っていましたね。なんです、それは?」

近くに居たアザゼル先生に問いかけた。

「結界を張るのさ。トライヘキサに特化したな。それに奴を閉じ込める」

「おお、良いですねっ!でも出てきませんか?」

一度縛した術式には耐性が出来るのか二度目は効かないようなのだ。

「だから内側から押し留めながら殺し切るまで誰かが中に残るのさ」

「へぇ」

アザゼル先生が覚悟を決めた表情をしていた。

一度新しい結界術式でトライヘキサの動きを止めた後、本格的に隔離結界へと吸い込んでいく。

それを各神話の主神クラスや魔王、アザゼル先生らが追っていく。

「先生…」

我が身を犠牲にした封印に涙が浮かんだ。

イッセーや若い悪魔を守るために自身を犠牲にしようと言うのだ、涙も流れる。

彼らの了承は得ていないだろう。内密に計画を練ったに違いない。

「次に会うのは何千年後か…」

それほどまでの覚悟でっ!!

「すまん…」

何も謝る事なんてないですよ。アザゼル先生はカッコイイですっ!!

もう少しで結界が閉じる。あれ、まだアザゼル先生はここに居ますよ?アザゼル先生も行くような口ぶりでしたよねっ!!

「本当にすまん…お前はこっち側だ」

「へ?」

呆けた声が出た。

結界が閉じる瞬間わたしを抱えてアザゼル先生が結界に飛び込んだ。

「えええええっ!?ちょっとぉおおおおおおおおっ!!」

そして結界が閉じる。










私、仁村留流子は体力の限界を感じ膝をつく。

トライヘキサの攻撃は凄まじく。足自慢の私だけど流石に一息つきたい所。

戦局は不利。

攻撃しても攻撃しても回復しちゃう敵をどうやって倒せと言うのだろうか。

総力戦だった。

ミライが用意したフェニックスの涙が潤沢に有るので即死しなければ戦線に復帰できるのだけど、いつ終わるとも知れない戦いに精神が消耗していく。

アザゼル先生達がトライヘキサを結界内に封じ、各神話のトップがトライヘキサと永劫の戦いに赴いて行くのを私はただボケっと眺めていた。

心の中ではやっと終わるんだと言う嫌な感情が浮かんでいて、そんな事を考えた私自身を振り返ればすごく後悔するのだけれど、この時ばかりは心の底から安堵していたのも事実。

だけど、最後にやっぱりあの時の私を殺してしまいたいほどに後悔する出来事が起こった。

「えええええっ!?ちょっとぉおおおおおおおおっ!!」

奇声を上げてアザゼル先生に抱えられて結界に入って行くのは…

「み…ミライ……?」

嘘…

他のD×Dのメンバーは皆いる。…アザゼル先生は居ないけど。

でもソーナ会長もリアス先輩もその眷属達も皆いる。

なのに…

「ミライ……ミライーーーーっ!!」

イッセー先輩が絶叫している。

わたしはこの時理解が出来なかった。

「ミライ…?」

喧騒が静まり、皆が戦後処理に追われ、もう何を考えていたのかも分からないが、どうやら私は無事に家に戻れたらしい。

数日、ゆっくりと休養を取り、学校だったなと思い登校する。

HRが始まってもミライは登校してこなかった。

当り前だ…彼女は……

昼休み、彼女といつも昼ご飯を食べていた屋上に来ていた。

「ルルコ」「留流子さん」

小猫ちゃんとレイヴェルが声を掛けてくれた。

「ねえ、ミライは?」

彼女達は兵藤家で一緒に暮らしている。

だけど…

「……っ」

小猫ちゃんが言葉に詰まった。

「帰ってきていませんわ」

レイヴェルが辛いそうな表情を浮かべつつ答えてくれた。

「………そうなんだ」

「アザゼル先生達はトライヘキサを殺し切るまで出てこれないそうです」

「そっか…ならまた会えるよね?」

その言葉にさらにレイヴェルは辛そうな表情を浮かべていた。

小猫ちゃんは泣いているかもしれない。

「計算ですと数千年から一万年はかかるそうです」

「…でも私は悪魔だもの…何千年でも待てるよ」

そうだ。悪魔の寿命はとてつもなく長いんだって。

だったら…

「だけどっ!ミライは人間なんですよっ!」

小猫ちゃん、何を言っているの?そんなの当り前じゃん。

あれ?急に心がギューってなってくるのはなんで?

「人間の寿命は長くて百年程度ですわ…生きて会えることは…もうっ…」

レイヴェル、何を言っているの…そんなの…そんな訳…

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴った。

だけど教室に戻る気も起きなくて…

学校で見かけたイッセー先輩もいつもの快活さが欠けていた。

ミライの不在による心の不調は一緒に生活していた分グレモリー眷属は顕著で、私たちシトリー眷属ですらまだ立ち直れていない。

放課後、どこをどう歩いて来たのか、自分は駅近くの商店街に居るらしい。

タイ焼き屋が目についたので、意味もなく二個づつ全種類買ってみた。

お金の事なんて気にもしない。

タイ焼きを袋から出して口に運ぶ。

甘くない。

味が全くしなかった。

一週間もすればミライの居ない生活にも流石に慣れてくる。

教室でボーっと窓ガラスから外を見る時間が増えた。

そうやって過ごしていると、ドドドと勢いよく教室に入って来た女性徒二人組。

その二人は私の方へ駆け寄り…

「行きますわよっ!」

手をつかんで私を立たせた。

「どこに…」

無気力に答えた。

「ミライが帰って来たんですっ!」

小猫ちゃんのその言葉が信じられなかった。

「ウソ…」

「ウソではありませんわっ!冥界から正式に連絡がありましたものっ!」

ウソ…信じられない……でも本当に?

授業を早退し、兵藤家に駆ける。

招かれたそこには…

「あれ、ルル?レイヴェルに小猫ちゃんも」

いつもと変わらないミライが存在していた。

「ほ、本物!?」

ガっと抱きしめてその存在を確かめる。

「ある…感触が…ちゃんと」

「ギブギブ…」

「まぁ、ミライさんならあるいはとは思ってましたけど…」

「心配しました」

レイヴェルと小猫ちゃんもミライを抱きしめた。

「ごめんね、ただいま」

彼女のその言葉でようやく久しぶりに笑える気がした。







兵藤家のVIPルームに集っているグレモリー眷属とシトリー眷属の視線がこちらに向いている。

「で、どうしてあなたは帰ってこれたの?」

代表してリアス先輩が質問するようだ。

「尋問みたいですね」

「ふざけないでっ!こっちは心配してたのよ」

ふわっとリアス先輩に抱きしめられた。

愛情深いグレモリーは夫(予定)の妹にも及ぶらしい。

イッセーの嫁にするにはもったいない悪魔だ。

「ていうか、ミライはどうやって帰って来たんだ?」

我慢できなくなったのかイッセーが声を上げる。

「そりゃ、トライヘキサを倒したから出てきたに決まってるじゃないですか」

「「「「…………………」」」」

「倒したの?…トライヘキサを?」

信じられないとソーナ会長。

「倒しましたよ…わたしがっ!!!」


話は結界に閉じ込められた後に遡る。

「ほら、悪かったって。機嫌なおせ、な?」

しばらく光弾を降らせていたアザゼル先生が休憩がてら近寄って来た。

わたしは封印結界の端っこで体育座りをして背を向けていた。

「アザゼル先生、ちょっとかっこいいなって見直したらこれですよ」

フィールドの中央で爆裂音が響き渡っていた。どうやらどこぞの神がトライヘキサに一撃喰らわせているらしい。

「だが実際冥界にこれ以上被害を出さないためにはこれしかなかったんだ。そこは理解してくれ。じゃないとたぶんイッセー達の誰かが死んでいたはずだ」

それは分かるけどさっ!

まぁと続けるアザゼル先生。

「ミライが本気を出せば冥界でも打倒できたかもな」

だから、と続ける。

「出来れば手を貸してくれ。皆覚悟はしているが、数千年は精神が摩耗する。皆最後は正気じゃいられなくなっちまうだろう」

数千年も戦い続けるとか正気で出来るはずない。狂った方がいくらかマシだ。

この結界内には最愛の人物に別れを告げてきたものが多い。

サーゼクスさんもそうだ。眷属悪魔のうち女王であるグレイフィアさんだけは冥界に置いて来ていた。

ソーナ会長の姉である魔王のセラフォルーさんもそう。

大事な者を守る覚悟でこの場に居る。

きっとリアス先輩やソーナ会長は泣いているだろう。

イッセーも泣いてくれていると良いけれど。

「と言うかですね。ULの事も有るじゃないですか。てっきりわたしはあちらに残るものと思ってましたよ」

トライヘキサとUL、どちらも脅威なら殺せる目途が立っている方にはわたしは居ないと思っていたのだ。

「バカだな逆だ。お前が居れば、トライヘキサを倒した後でも間に合うと思っているのさ」

どちらも絶対に倒して見せる、とアザゼル先生が言う。

「はぁ…仕方ありませんね…今回だけですよ」

いじけていても仕方ないと立ち上がる。

気合を入れ直すと車輪眼を発動させる。

車輪眼。金の法輪の模様が瞳に浮かぶこの瞳術は全ての瞳術が切り替えずに使えるのだがその分消費が激しく使い物にならなかった。

しかし、この世界に来て状況が変わった。

何故か。

『Boost』

スキニルの声で力が倍加する。

いくら消費が高かろうが、今のわたしにはこの籠手(ギア)が有る。

体力は削られるが、それでも呪力切れを起こす事はない。

「なんだ、その眼は…法輪…?」

驚くアザゼル先生を他所に歩を進める。

「さぁ、殺し切りに行きましょう。出来れば夕飯までには帰りたいですねぇ」

「お前が言うと本当に出来てしまいそうで怖いよ」

トライヘキサの巨体をギリギリその視界に収まる程で止まると、瞳術を発動。

「輪墓、辺獄」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!』

さらに呪力を上げ直死の魔眼を使いつつ、輪墓辺獄を使い、更に須佐能乎を使わせ異次元から斬りかかる。

籠手(ギア)の効果か薄かった死の線もはっきりと見えていた。

「のわっ!!?いきなり首が四つズンバラリンと吹き飛んだわよ」

攻撃を加えていたソーナ会長の姉であるセラフォルーさんが驚いていた。

「こんな事が出来るのはたぶん…ああ、やはり彼女だ」

サーゼクスさんが可笑しそうに笑っていた。

「これは…再生されない?何故だ」

アザゼル先生も流石にこれには驚いているよう。

「わたしは不死すら殺せます。ですが…」

首は再生されなかったが首の付け根から新しい首が生えてきていた。

トライヘキサの体がとても不格好になっている。

「再生、ではない?」

「確かめてみますか」

「どうやって確かめるよ」

「まぁ、こうやってです」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!』

呪力が瞬間的に高まる。

「我がもとに来たれ、勝利のために。不死の太陽よ、我がために輝ける駿馬を遣わしたまえ」

聖句を口にする。

「なんだ…結界内に太陽が昇るだと…?」

東の方角から太陽が昇っていた。

「駿足にして霊妙たる馬よ、汝の主たる光輪を疾く運べ!」

太陽から光線が撃ちおろされる。

それは白馬に先導されトライヘキサを焼く。

閃光はトライヘキサの巨体を飲み込みその巨体を消し飛ばした。

「おっかねぇな…お前本当に人間か?」

「もう、こういう事を期待して連れてきたんでしょっ!!」

「それはそうなんだがよ。実際目の前でやられるとクるものが有るな…ありていに言えばショックだ…」

何を今さら。それよりも…

「ちっダメかぁ」

跡形も無く消し飛ばしたはずだが、再生されてしまった。

「だけど、歪な形ですね」

首は付け根から生えていて、元の有った場所は再生されていない様だ。

わたしの白馬の化身の攻撃前と変わらない、とも言う。

「もう一発やってみたらどうだ」

「今の攻撃はしばらくインターバルが必要ですから使えません」

「魔力以外の何かがあるって訳だ。時間か?一日に撃てる回数が決まってるとかか?」

魔力…呪力なら籠手で回復できるしね。

「あまり詮索しないで欲しいんですけどね」

とは言え…

「これは地道に切り刻むしかないですね」

流石のわたしも体力には限界が有る訳で、トライヘキサを斬り刻んでは交代して体力の回復の間を受け持ってもらい、だんだんとその体が歪にさらに小さくなっていく。

一週間かけてようやく死の点が見える位には削った時には流石に涙が出そうになったよ。

「つ…疲れた…」

ようやく終わった。

「一週間か…」

とサーゼクスさん。

「当初の予定だとどれくらいだったっけ?」

そうセラフォルーさんが呟く。

「あー…俺はミライを連れてきた場合この結果になるような気がしていたぜ?」

アザゼル先生が頷いていた。あなたの手柄じゃありませんからっ!

「って言うかミライちゃん強すぎっ!!神様を殺したと言う話は嘘じゃなかったんだね」

あ、セラフォルーさん…今は疲れていて抱き返せないのでじゃれつくのは勘弁してほしいのですが…

「儂、あのお嬢ちゃんがいくら美人でもセクハラはできんのう」

「しかり。アレに手を出すくらいならヘラの尻に敷かれていた方がマシかもしれん。それに何故かあやつからはメティスの気配がして落ち着かん」

こらこらオーディンの爺さんもゼウスのスケベオヤジも言い過ぎだと思うよ。

盛大に大見えを切って死地に赴いたのにほとんどの手柄を小娘に持っていかれた神様達はしばらく世界を回って姿を隠すらしい。

魔王様方もしばらくお忍びで慰安旅行に行くようだが、まぁすぐに自分の女王(クイーン)に連れ戻されると思うよ?



「まぁなんやかんやあってね。予定より早くトライヘキサを倒せたのよね」

「お兄様…」

「お姉さま…よくご無事で…」

身内の安否にホッと胸を撫でおろすリアス先輩とソーナ会長。

トライヘキサは何とかなったとして、ULの襲来までどれほど時間が有るだろうか。

最大で30年。もっと早いかもしれない。

それまでに戦力の強化は急務。

アザゼル先生が何かを考えているらしいが、少しくらいはゆっくりしてもいいのではなかろうか。





激動の一年を過ごしたイッセーはこの間中級悪魔になったばかりだと言うのに上級悪魔への昇級が決まった。

家族を代表してその式典に参加した訳だけど、なかなか感慨深いものが有ったよ。

魔王から悪魔の駒を手渡され、何かの石碑に触れると名前が刻まれるらしい。

こうしてイッセーの悪魔稼業は独立を見せた。

眷属悪魔についてだが、アーシア、ゼノヴィア先輩、ロスヴァイセさんをリアス先輩から、レイヴェルをレイヴェルのお母さんからそれぞれトレードしたようだ。

着実にハーレムへの道を昇り詰めているねぇ、イッセーは。



三年生はそろそろ自由登校で、年度末が近づいている頃。

最近アザゼル先生の隠しラボに居る事が多い気がしてくるよ。

何をしているかと言えばUL対策。

取り合えず神滅具の解析とかしている。

神滅具の実物は手元には幽世の聖杯(セフィロト・グラール)と蒼炎の茨の冠(インシネレート・アンセム)の二つが有る。

「おいおい、それは何だよ」

とアザゼル先生がわたしの手元で転がしている杯をみて眉根を寄せた。

「幽世の聖杯の劣化コピーですね。と言いますか、本物ほどの効果の持つ物は流石に再現できませんでした。死者の蘇生や耐性の獲得は出来なくなった代わりに使用者の精神汚染を抑えています。これだけでも四肢を復活させる程度の力は有りますよ。とは言え、相性も有りますからわたし以外だと使える者も限られると思いますけどね」

「そっちの方はどうなんだ」

アザゼル先生が視線を向けたのはカンテラに入った蒼い炎、蒼炎の茨の冠(インシネレート・アンセム)に向けた。

「天界から譲渡してほしいと言われているんだがな」

「ヴァルブルガでしたっけ?あんな魔女に渡るのを阻止できなかった天界が何を言っているやら」

蒼炎の茨の冠が紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)だった頃、祭主の名の通り神器が意思を持ち使い手を選んでいた。

そこに人格は考慮されていないらしい。いやむしろ悪辣な人間を選んでいたとさえ言える。

「まぁ、お前さんが渡すとは思ってないが、一応な」

それと、とアザゼル先生が続ける。

「それはなんだ」

と言ったアザゼル先生の視線を辿れば蒼炎が灯る燭台が有った。

「ああ、研究の際に分けた蒼炎の茨の冠(インシネレート・アンセム)の種火ですね。魔力…まぁ光力でも良いのですが、込めれば込めただけ燃え上がります。もともとの神滅具よりも使いやすくなっているんじゃないですかね」

「使いやすいとは?」

「制御にコピーした幽世の聖杯を燭台に使っていますし。幽世の聖杯と蒼炎の茨の冠(インシネレート・アンセム)の融合と言った所ですか?蒼炎の茨の冠(インシネレート・アンセム)の方の効果が強すぎて四肢欠損を治せるほどの効果は望めませんが」

「はぁ…とりあえずそれは俺が買い取る」

「ええ!?何に使うんですか?」

「天界との付き合いに使うんだよ。あっちはイッセーに色々便宜を図ってくれてるだろ?アスカロンとかアスカロンⅡだとかな」

そう言えば、そうだったかも。

イッセーの籠手には天界から譲られた聖剣が融合されている。

「あー…確かに…そうですね。じゃあそれはお譲りしますよ」

貰いっぱなしは良くないしね。いやわたしじゃ無いんだけど。まぁ良いか。


お茶を飲み終わるとアザゼル先生が世界を巻き込んだ企画が有ると言う。

「レーティングゲームの国際大会を開くことにした」

「何ですか、それ」

「今までのテロやトライヘキサ騒動の払拭、まぁガス抜きだな」

へぇ。

「それとULに備えての戦闘技術の向上と、埋もれていた人材の発掘を兼ねている」

全ての人種、勢力入り乱れて行うレーティングゲームらしい。

神や魔物も参加する一大イベント。

それに乗じての戦闘技術のレベルアップ。確かに良い案かもしれない。

報酬が大きければ今まで潜んでいた強者も参加してくるだろう。

そうなればULに対しての戦力増強にもなろう。

「良いと思います」

さて、卒業式を手前についにイッセーがリアス先輩に告白。結婚を前提に将来を誓ったらしい。

良い返事を貰えたらしいのだが、さてあと何回するのかね?

ハーレム王への道は険しく長いよ、イッセー。

 

レーティングゲームの国際大会…誰が決めたのか「アザゼル杯」にイッセーはリアス先輩の眷属としてではなく自分が王(キング)として参加する事に決めたらしい。

まぁ男の子だもんね。ライバル達(ヴァーリ)が続々と自分のチームを率いて参加すると言われれば自分もチームを率いたいと思うだろう。

リアス先輩も参加するつもりの様だが、互いに眷属が揃っていない。

国際大会のルールでは他種族の参加もOKな為、悪魔に転生させなくても駒価値に見合った持ち駒として登録できるようだ。

ゲーム会場では参加者は駒に見合った能力が付加されるらしい。

そんな事が出来るのならソーナ先輩のレーティングゲームの学校と言う夢は大きく膨らむだろう。

眷属にならなくても駒能力を駆使したゲームが出来るのだからね。

それはそれで楽しそうだ。

戦力の減った、またそろってないチームは勧誘やその他で力の差を埋めなければならない。

リアス先輩も幽世の聖杯に目を付けて居たらしくレプリカを譲ってくれと言っていた。

レーティングゲームの国際大会に向けての準備はやはりどのチームも順調とは言えないようで…

昼休みの教室。いつものようにルル、小猫ちゃんとレイヴェルと一緒に食べていたのだが、そこでぷりぷりと怒っているルル。

「ちょっと、聞いてよっ!国際大会の事なんだけどさ」

「お、落ち着いてください…その皆様の目もありますから」

「うっ…」

レイヴェルの声で上がったテンションと共に立ち上がったルルが着席。

「で何、ルルコ」

少しは落ち着いたルルに小猫ちゃんが律儀に聞き返してくれた。

「選手の駒価値についてなんだけどさっ」

ああ、他種族が参加するにあたり悪魔が用意した機械で駒価値の暫定的な判定がされるようになった。

「低かったんですの?」

とレイヴェル。

低いも何もルルの駒価値は兵士一個分だ。

「高すぎたのよっ!!」

「あー…」「なるほど、そう言う事ですのね」

騎士、僧侶、戦車には多少のブレ幅を容認しているが、兵士の駒価値は厳しく設定されている。

強い人を兵士に配置され女王にプロモーションされれば強者がさらにパワーアップして蹂躙されるのが火を見るよりも明らか。

それでは面白くない。

「幾つなの?」

「………6」

匙先輩の駒価値の裁定は分からないが元の駒価値は4だ。

「これでは匙先輩と一緒には出場できませんわね」

レイヴェルが納得したと呟く。

「でも、私は妥当だと思いますよ。ニア神滅具、それも禁手化出来ていますもの。留流子さんの速度は騎士(ナイト)の速度でも追いつけない。騎士の駒二つ分と言われれば違和感ないのではないでしょうか」

そう言う事だ。

「どうにかならないのっ!?」

とは言っても今回のルールでは確か…

「国際大会ではポジションチェンジが出来たはずです。留流子さんと戦車か、騎士と駒替えすれば問題ないと思いますわ」

「そっかっ!でも…それって先輩方はどう思うんだろう…」

「ルルは兵士が弱いと思ってるの?」

率直に問いかけてみた。

「思ってないよっ!プロモーションした時の全能感。アレは病みつきになりそうだよ」

「そう言う事ですわ。戦略によっては兵士を増やせるんです。ソーナ元会長がその程度の事を考えてない訳ありませんわ。留流子さんは何も心配する必要はないと思います」

「そっか。私は私で頑張ればいいだけ、だよね」

レイヴェルの励ましにようやくルルも調子を取り戻したようだ。



さて、イッセーのチームはと言えば…

「どうしよう、どうする……くぅ…」

「イッセーさま落ち着いてください」

家のリビングで頭を抱えているイッセー。その隣で眷属でマネージャーであるレイヴェルがイッセーの肩を抱いていた。

「だって、クイーンが決まらないんだよっ!」

なるほど、ハーレム王を目指すイッセーは眷属は皆女の子にすると言う野望を持っている。

そして自分ではまだ一人もリクルートしていなかった。

自分の女王だ、妥協したくも無いだろう。

とは言え、今回のレーティングゲームの国際大会では押し掛け家来であるボーヴァ・タンニーンと言うドラゴンを眷属ではないがポーンに据えるつもりでいるらしい。

タンニーンと言う名前で分かる通り、ロキ戦(一回目)の時に居たでかいドラゴンの子供だ。

ボーヴァも巨体なので兵藤家の中に居る時は小さくなってもらっていた。

現在のイッセーのチームは、

戦車 ロスヴァイセ

僧侶 アーシア レイヴェル

騎士 ゼノヴィア イリナ

兵士 ボーヴァ(駒価値3)

となっている。

イリナ先輩はイッセーのチームに参加する事に決めたらしい。

兵士が五枠、戦車も一枠空いているのも問題だが、一番重要な女王の枠が空いているの大問題だった。

「実は女王の駒についてですが、私に心当たりが有りますっ」

「おお。流石俺のマネージャーだぜっ」

「そんな、イッセー様ここはリビングですわ、あ…でもでも」

イッセーが感動のあまりがばっとレイヴェルを抱きしめてしまったのだろう。

レイヴェルは真っ赤になりつつも拒否をしていない。

そう言う事は家でやれ。………間違えた、自分の部屋でやってよ。

「で、誰なんだ」

イッセーは抱きしめていた両腕を放し、正面からレイヴェルを見つめている。

「ミライさんですわ」

ん?

何やらおかしい話が聞こえてきたぞ?

「誰だって…?」

「だからミライさんです。彼女以上のクイーンは居ませんわっ!」

リビングでテレビを見ていたわたしに注がれる二組の視線。

「それは…大丈夫なのか?ルール的に…」

ちょっとイッセー、妹に対して失礼じゃない?

「問題ないはずですわ。他の神話の神様達も参加しますし、その場合、騎士、僧侶、戦車は二つ消費、女王は誰でも参加できると言う事のようです」

闘神武神を人間の駒価値に合わせる事がそもそも不可能。

苦肉の策と言う事なのだろう。

「相手は神クラス…いいえ神そのものが出場する大会なのです。こちらもそれ相応のレベルの者をスカウトしなければ厳しい戦いになります」

「そうか…神様…だものな」

イッセーが神妙に頷く。

「はい。リアス様達ミライさんの近くに居る参加者の皆さまが皆女王の駒を使ってらして幸いでしたわ。自分の女王を蔑ろにはできませんもの」

そりゃそうだろう。

女王と言えば常に王のそばに居る存在。長年連れ添った相手を大会の為に抜けてくれなどと言うような王なら下は誰も付いて来ないだろう。

「ミライ」

「ミライさん」

「うっ…」

その先は言われなくても分かっている。レーティングゲームの国際大会に参加してほしいと言う事なのだろう。

二人の期待に満ちた目が眩しい…め…めがぁ…

と言う事でわたしもイッセーチームの女王(クイーン)としてレーティングゲームの国際大会に参加する事になったのだった。








とは言え…

「全力は出さないよ。人間が出来る程度の事しかしないからね」

「人間が出来る程度の事って?」

イッセーが聞き返した。

「徒手空手と忍術、あとはまぁ…最低ラインの瞳術かな」

万華鏡写輪眼以上は使わないから白眼と写輪眼くらいは使わせて欲しい。

「剣術は使いませんの?」

とレイヴェルが問いかけた。

「木刀でも相手を切断できるけど良いの?」

「それは……困りますわね…」

「でしょう」

出来ないだろうとは言わないレイヴェルだった。

「後は耐性系スキルを使わないと言った所かな。素の耐性までは切れないけれど」

「素の耐性……まぁ流石にあの炎状態は無敵すぎますわね。でも素の状態ってどれほどですの?」

「大体の魔法はまぁ…効かないかな。イッセーの砲撃は流石にヤバそうだけど、即死はしないと思う」

イッセーの赤龍帝の籠手の龍神化してのブラスターは島一つを消し飛ばせる威力だ。

素の耐性なら死ぬかもしれない。

神滅具は伊達じゃないと言う事だ。

「一度イッセーさまと模擬戦してみましょう」

「え、俺とか?」

いきなりレイヴェルにふられて驚くイッセー。

「イッセーさまは一度もミライさんと戦った事ありませんでしたわね」

「そう言えば、そうかも。なんでだ?」

イッセー、才能無いからね。教える事が無かった。

「そうですね…レーティングゲームのフィールドを…少々ズルイ手を使いますが用意しますわ」

レイヴェルが言ったズルイ手と言うのはサーゼクスさん達魔王さまの観覧を理由にしたらしい。


駒王学園を模したフィールドにはわたしとイッセーしかいないが、カメラが設置されオンラインで観戦している。

グレモリー眷属とシトリー眷属は兵藤家に集っていた。そこで観戦するのだろう。

グラウンドで二人が対峙している。

「あんまりミライとは戦いたくは無いけど。一度くらいは俺も戦ってみたかったよ。兄ちゃんとしては失格だなぁ」

ライバルの白龍皇のバトルを見ていた。

あの時よりもイッセーは何倍も強くなっているが、今のイッセーがわたしのどれ程通じるか知りたいのだろう。

「手加減はしないぜ」


我、目覚めるは

王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり!

無限の希望と不滅の夢を抱いて、王道を往く!

我、紅き龍の帝王と成りて

汝を真紅に光り輝く天道へ導こう----ッ!


イッセーが聖句を呟いた。


『真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)』



龍人化の一つ前。

真紅の鎧がイッセーを包み込んだ。

真クイーンとも言うべき状態で、パワー、スピード、頑丈さ、全ての性能を引き出せる形態だ。

「ミライはそのままでいいのか?」

「フェニックスの涙も有るからね。まぁそもそも傷を負うつもりは無いよ」

「……ミライが言うと冗談に聞こえないぜ…」

冗談を言ったつもりは無いからね。

「それじゃあ…」

「いつでも」

「いくぜっ!兄ちゃんもやるもんだってなぁっ!!」

イッセーが背中のバーニアを噴かせて距離を詰める。

速い。

写輪眼が発動し、瞬動を発動。

サイドステップで避ける。

避ける瞬間に背中に肘を打ち付けると吹っ飛んで行くイッセー。

そのまま地面を転がっていく。

進行方向に打ち付けたので威力も弱く、ダメージも低いが…

「が、がはっ…」

打撃により肺の空気が絞り出されたので呼吸がしたいだろう。

ヒュン

カキィン

「まだまだっ」

投げたクナイをイッセーは籠手で弾いたようだ。

今度は避けられるような愚は犯さないと、速度を抑えて突撃してくるイッセー、

瞬動で距離を取っても良いけれど、乱打戦に応じた。

相手を殴る、原始的な乱打。

イッセーが拳を打ち付けてくると弾いて一撃。

反対の拳も避けると蹴りを喰らわす。

「くそっ」

すぐさま下がった勢いを足を使って前にでて、握った拳…だが今度のは途中でそれを開く。

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!』

開いた拳から魔力弾が撃ちだされ、小さな魔力球が巨大な魔力砲へと様変わり。

わたしは避けずに前に出ると右手に螺旋丸を作りイッセーの肘に打ち付ける。

発動直前の魔力砲は撃ち出す方向を上方へと変えられ、反対の手に出した螺旋丸でイッセーを吹き飛ばす。

ふっ飛ばされたイッセーは体育館の外壁に当たって止まった。

「がはっ…つぅ…はぁ……」

膝をつきつつ、どうにか立ち上がるイッセー。

「くっ…妹に使うのもどうかとは思っているが……だがっ、負けられねぇ」

何かを決意したような表情を浮かべていた。

「行くぜっ!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!』

「乳語翻訳(パイリンガルっ)!」

イッセーから不思議な空間が広がって行く…ように感じた。

「へいっ!ミライのおっぱいちゃん、俺の質問に答えておくれ」

パイリンガル。

女性のおっぱいに問いかける事で嘘偽りなく心の内が聞こえる能力らしい。

イッセーお得意のスケベ技である。

素の耐性も高い私だけれど、アホ程高めた魔力で使われては耐性も抜くかもしれない。

「聞こえたぜっ!……………え!?」

だが、無意味だ。

「そうだよね。混乱するよね」

攻略法なぞとうの昔に確立されているのだ。

「いやいや、おっぱいは嘘を吐かないっ!」

だろうね。

だってわたしがやろうとしている事はただ右ストレートでぶっ飛ばす、だ。

地面を蹴って瞬動でイッセーの目の前まで移動して殴る。

「速いっ…ぐはっ!?」

「イッセーが、泣くまで殴るのをやめないっ!」

連打連打連打。

「オラオラオラオラオラオラァっ!」

わたしの拳打に吹っ飛んでいくイッセー。

「これに懲りたらエロ技は禁止です」

「ふぁい…」

鎧の中から情けない声が聞こえた。おそらく涙も出ているだろう。

「洋服破砕(ドレスブレイク)も無しです。そもそもわたしは服を破壊されても殴るのを止めませんよ」

「わっ…わかりましたっ!」

どうやら身に染みたらしい。

さて仕切り直しだ。

ひゅっひゅっひゅと印を組む。

イッセーが駆けだそうとする前に…

「土遁・土流壁」

バンと地面についた両手。

四方から土の壁が盛り上がるとイッセーの視界を塞いだ。

「この程度の壁でっ!」

イッセーは拳で粉砕して抜けてくるが当然、そこにわたしは居ない。

「火遁・豪火球の術」

ボウと巨大な火の玉を口から吹き出し、イッセーを襲う。

「あっちあっち」

鎧で守られているからか、直撃なのにほぼダメージが無いらしい。

炎を吐くドラゴンだから炎耐性が高いのかな?

イッセーは構わずと背後に四門ある砲塔に魔力をチャージしている。

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!!』

「このタイミングならっ!」

ゴウとまず一発。

すぐさま瞬動で逃げる。

「まだまだっ!」

二発、三発、四発と時間差で撃って来た。

考えたねっ!

わざと逃げたであろう先より少し多めに外して二発目を撃つことで回避する方向を限定させている。

三発目でチェックをかけて四発目で止めを刺す気だろう。

地面を蹴って移動しているのならだんだん回避する場所が無くなっていくのだから。

だが…

「まだまだだよ」

四発目が撃たれる前にわたしは空へと瞬動で避けた。

「そうすると思ってたぜっ!」

イッセーから五発目が放たれた。

時間差で撃つことで最初の一発目を再チャージしたのだ。

「空中なら避けようが無いだろうっミライ!」

「虚空瞬動」

わたしは空中を蹴って瞬動を使う。

「なっ!?」

次の瞬間驚いているイッセーに肉薄する。

懐に入れば魔力砲は使えないでしょっ!

ドンと拳手がイッセーの体を貫く…前に…

「これは…」

「ディバイディング・ワイバーン・フェアリーだぜ」

無数に出された小型のドラゴンのような飛行物体がトライアングルを作りわたしの拳の威力を半減していた。

「そしてこの距離ならっ!」

二門の砲塔がこちらを向いていた。

「しまっ…!!」

ドンとブラスターが襲ってくる。これは回避できない…

「これならミライもさすがにだろっ」

グラウンドが抉れていた。普通にくらえばチリ一つ残らないのではないだろうか。

「やるね、イッセー」

「どこからだ」

イッセーはわたしの声を探しているようだ。

「いやぁ、油断したとはいえやられちゃったよ」

「その割には無傷だな」

「まぁ、影分身だったからね。本体なら耐えれたかもしれないけれど、影分身はもたなかったか」

土遁で視界を塞いだ時には既に影分身と入れ替わっていたのだ。

「影分身…だと…え、本当に?」

信じられないとイッセー。

「さんざん忍術使ってるじゃん。ほら」

十字を組むとポワンと一体の影分身が現れた。

影分身を消してからイッセーに駆けていく。

「イッセーの弱点はパワー型のそれだよね」

「くっ…」

わたしの拳をギリギリで避けているイッセー。

「一発一発の威力が大きいから当たれば必殺だけど、わたしみたいなタイプには翻弄されてしまう」

「くそっ…」

イッセーの拳は当たらず、わたしの拳は当たっていた。

練度の差が如実に出ていた。

「速さにしてもそう。直線的過ぎて読みやすい」

背面からのジェットバーニアを吹かしての推進は速さだけならば瞬動に追いつけるが、避けられた後の修正が難しい。

瞬動で下がったわたしに追いつこうとしたイッセーを虚空瞬動で方向を変えてやり過ごす。

「後ろががら空きだね」

再び虚空瞬動でイッセーの真後ろに迫るとそのまま蹴飛ばした。

「ぐはっ…」

しかし悪魔になって一年経ってないくらいでこの強さ。

エロスのパワーは無限大、かぁ…スケベって強いんだ…

まぁ、それはそれてとして。

「イッセー、ストーーープ」

「な、なんだ終わりか?」

んな訳ないない。

王の財宝からPICを取り出す。

「なんだ、その丸いの」

「パッシブ・イナーシャル・キャンセラー」

「ええっと…俺でも分かる様に言ってくれると…」

「うーんと、慣性制御装置?かな」

「つ…つまり…?」

「まぁ…ブレーキだね」

「それがどうしたんだ?」

「アスカロンみたいにギアに格納してみて」

イッセーの両手にはアスカロンが収納されている。

「えーっと…」

『相棒、胸の装甲を開けてみろ』

ドライグがそう言うと、胸の装甲が空き、PICが入るくらいの隙間が出来た。

「ここに嵌めれば良いのか?」

『そう言う事だな。そしてアスカロンの時のように収納できるように念じろ』

「わ、分かった…」

無事赤龍帝の籠手と繋がり収納できたらしい。

「で、これがどうしたんだ?」

「さっきみたいに動いてみて」

イッセーに背面ブーストを使えと言う。

「それじゃあっ!」

ゴウと瞬時に加速して…

「止まってっ!」

「おっ…おおっ!!」

すっとまるで慣性を感じさせない停止。

「ど、どうなってんのっ!?」

イッセーが驚いていた。

「宇宙船のブレーキシステムを組み込んだ状態。これなら瞬時に減速して再加速が出来るよ」

「宇宙船って…まぁミライだしな」

それで納得しないで欲しいんだけど…

だが、このPICを搭載した事は凄まじい。

「はぁっ!」

加速と減速を繰り返して攻めてくるイッセー。

「むぅ…」

こっちの瞬動に対応し始めたみたい。

目が良いのか…目を強化したのか。

マズイな、強いぞ。

「風遁・螺旋手裏剣」

ブゥンと螺旋手裏剣を投擲すれば…

『DivideDivideDivideDivideDivide』

イッセーのフェアリ―がすぐさま半減させていき効果を得ず。

ドゥウン

お返しとばかりブラスターが放たれる。

瞬動で避けつつクナイを投げるが、それを弾きつつ器用に距離を詰めてきた。

くぅ…PICをあげなきゃよかった…

ちょっと後悔しそう。

「火遁・豪火滅却」

ボウボウボウと火の玉を吹き出す。

『炎のブレスでドラゴンが負けて堪るかっ!いけ、相棒』

「行くぜっ!」

ゴウとイッセーも炎を吐き出した。

イッセーの炎がわたしの炎を燃やしていく。

うそん。

燚焱(いつえき)の炎火(えんか)だ。それは対象を燃やし尽くすまで消えない炎。

「風遁・大突破っ!」

口から吐き出した突風で跳ね返し、わたしの炎弾ごと燃え上がりイッセーに押し付けた。

「ば、バカバカバカっ!あぶねー…まじあぶねー…」

すぐさま距離を取ったらしい。

まぁ当たれば焼き尽くすまで燃えるらしいからね。

まぁ、当たっても燃えている鎧部分を一度消すと言う対処法もあるので必ず必殺かと言われれば相手に寄るだろう。

遮蔽物の少ないここはイッセーに有利か。

ならフィールドを変えてみよう。

「木遁秘術・樹界降誕」

「はぁあああっ!?」

『これほどの事をいとも容易く…』

フィールド全体を覆う樹海。

イッセーがドラゴンの翼を出して空を飛ぶ。

「嵐遁・励挫鎖荷素(レイザーサーカス)

閃光が一斉に向かって迸る。

レーザーなので着弾速度が速い、事前に目標を決めていれば多少の湾曲も可能と言う便利な忍術だ。

ドドドドドーンとイッセーに着弾する。

「くっ…」

『このまま空中に居るのはまずいかもしれん』

ドライグが冷静に呟いた。

木々に苛まれ相手からはこちらが見えず、こちらは相手を視認している。

「だが、撃って来た方向が分かればっ!」

イッセーがブラスターで狙い撃つが、当然そこにわたしは居ない。

樹海が禿げ上がっているが、この樹海を全て吹き飛ばそうとすればそれなりのチャージ時間と威力が必要だろう。

その隙を見逃すほど優しくないよ。

戦闘の最初の方に投げていたクナイ。

あれには当然飛雷神の術のマーキングが施されている。

樹海に埋もれてしまったが、当然クナイは存在していた。

「嵐遁・励挫鎖荷素(レイザーサーカス)

背後からの着弾にイッセーがよろける。

「くそ…このままじゃやられるっ!」

直ぐに樹海に身を隠したイッセー。

それも良手とは言い難い。イッセーは遮蔽物のある戦いをした事あるかな?

さて、忍者の恐ろしさを教えてあげよう。

「水遁・霧隠れの術」

すぅと樹海の中を霧が覆っていく。

こう遮蔽物が有れば半減、反射をつかうワイバーン。フェアリーは使えなくなるだろう。

我ながら悪辣だ。だけど…

こう言う戦い方も知らなくちゃだよ、イッセー。



兵藤家のVIPルームにある巨大なスクリーンに今イッセーさまとミライさんの姿が映し出されていた。

私が言い出した事だけれど、二人の模擬戦に心配になる。

そしてそれを見守るのはグレモリー眷属とシトリー眷属にアザゼル先生。

あとはゲームフィールドを設定してもらった為にお呼びしたサーゼクス様となぜか付いて来られたセラフォルー様がいらっしゃる。

それと最近は兵藤家に居候しているヴァーリチームのルフェイ・ペンドラゴンさんと黒歌さんが興味津々と言った所だ。

試合開始を前にしてヴァーリ様と美候さんも到着したようだ。

このカードに皆注目していると言う事なのだろう。

「この試合、ミライちゃんは本気を出さないんだよね?」

サーゼクス様がこちらを見ておっしゃった。

「はい。レーティングゲームの国際大会に向けた調整をと思いまして」

「うんうん。ミライちゃんが本気を出したらイッセーくん死んじゃうもんね」

セラフォルー様がうんうんと頷いていた。

「し、死ぬのは確定なのかしら…」

リアス様が緊張の面持ちで呟く。

「死ぬ。神滅具とは言っても未だに神を滅した存在は居ない。しかし…彼女はロキを殺している。とは言え、彼女は神滅具を使ってなかったが」

サーゼクス様の言葉に皆神妙に頷く。

そうなのだ。

神滅具とは言われてはいるが過去に神滅具で一柱も滅されてはいない。

スペック上は出来るだろう、と言われているだけだ。

「そもそもあのトライヘキサを殺し切る存在なんだよ?しかもどうやったか分からないのに四本の首が一瞬でズンバラリンよ」

セラフォルー様にそう言われて改めてミライさんのでたらめさを再認識する事が出来た。

チリ一つからでも再生されるあのトライヘキサを殺し切った存在なのだ。

「はじまるぞ」

「イッセーくん、頑張って」

ゼノヴィアさんとイリナさんが開始を見つめる。

「イッセーさん」「イッセー」「イッセーくん」「イッセー先輩」

……皆イッセーの応援の様だ。

ミライさんを心配する人は一人も居なかった。

み…ミライさんは…まぁ、過去の所業が有りますものね。

自分に言い訳をしてモニターを見つめる。


イッセー様は紅の鎧を着込み準備完了。ミライさんは…特に変わった所はありませんわね。

模擬戦が始まる。

高速でミライさんに突っ込んでいくイッセー様。

「速いっ!!」

消えた、と思う程の速度でイッセー様はミライさまに肉薄する。

しかし、ミライさんは容易にかわしただけでなく、イッセー様の無防備な背中に向けて一撃。

「瞬動かぁ。俺もあそこまではなぁ」

匙先輩がうんうん唸っている。

「避けざまに一撃までいれてますよ」

留流子さんがそう言っていた。

何とか持ち直したイッセー様はミライさんとの拳打の応酬。

「ミライが何枚も上手だな」

匙先輩がおっしゃる通り、イッセー様の拳は当たらず、ミライさんはイッセー様の拳をいなしつつ、確実にイッセー様に掌手を当てていく。

「兵藤の拳はあれで良いんだよ。がむしゃらに、まっすぐにそれでいて強力な一撃を相手に与える」

だけどと言った匙先輩の言葉を留流子さんが続ける。

「ミライはねぇ、培われた経験から最適解を返せるみたい。そりゃイッセー先輩じゃこうなるよ」

そう、それがイッセー様の拳が届かない理由だ。

距離を取ったイッセー様がドラゴンショットの構えを取る。

「兵藤のやつ、どれだけ倍加させてんだよ…」

もうかなりの回数倍加しているので当たればミライも痛いじゃすまないだろう。

「前にっ!」

「ああ、前に!」

留流子さんと匙先輩が呟いた通りミライさんは距離を取るでも避けるでもなく前に踏み出しイッセー様の肘を打ち付けてドラゴンショットの軌道を変えてしまった。

「乳語翻訳(パイリンガルっ)!」

「妹でも女性、と言う事?」

「あらあら、うふふ」

リアス様と朱乃さんが少し怖い。

でもイッセー様の乳語翻訳は女性なら逃れられませんわ。最低ですけどもっ!

「…………」「…………」「…………」

「…………」「…………」「…………」「…………」

「…………」「…………」「…………」「…………」「…………」

皆言葉がありませんわ…

でも仕方のない事です。

イッセー様のパイリンガルは胸の内を読める能力ですわ。それを…

「あはははは、まさか右ストレートでぶっ飛ばす、とはね」

サーゼクス様が笑っておられますわ。

「心が読めても関係ないってね。やっぱミライちゃんが最強?」

セラフォルー様もお笑いになってるっ!

でも確かに攻略法としては単純で一番の正解かもしれませんわね…

心が読めても対処できなければ一緒ですもの…

「むむ、確かにあれなら私もマネできるかもっ!」

確かに留流子さんの速度があれば同じことが出来るかもしれませんわね。

「いま空中を蹴ってなかったか?」

とゼノヴィア先輩。

「あれ、お前らは虚空瞬動使えないのか?」

「なんだそれは」

匙先輩の言葉にゼノヴィア先輩が眉根を寄せた。

「あー…兵藤妹のやつ騎士のクラスは素で瞬動ほどの速度が出せるから教えてないのか…?」

ミライさんは今空中を蹴って瞬動をしていましたわよね?スロー映像を確認すると確かに空中を蹴っている。

空気って蹴れるのですわね…

「に、忍術っ!?」

「土遁にゃっ!」

小猫さんと黒歌さんが驚きの声を上げていた。

「しかも影分身にゃ、本体は学校の屋上に居るにゃ」

カメラを回してみると確かにミライさんが二人いるっ!?

「影分身とは何なんですのっ!?」

「映像…ではなさそうですね。完全に質量を持った分身です」

と小猫さん。

「火を吐いたにゃ」

「殿の妹御はドラゴンなのでしょうか」

ボーヴァさんがそう呟きますが、ミライさんは人間…のはずですわ。自分でも自信無くなってしまいますが。

「えぇ…」

「火遁ですね」

と、言いますか…

「分身が忍術?を使ってますわっ!」

「どうやら生命力の塊を分離させている、とかそう言う事なのだろうね。エネルギーが有るから当然忍術も使える、と」

解説ありがとうございますわ、サーゼクス様。

「非常識よっ!」

リアス様が叫んだようにあの分身でもイッセー様は手玉に取られていますわね…

どうにか影分身は倒したようですけれど。

「なんか出したぞ、なんだありゃ」

アザゼル先生が一度戦闘を止めた二人の言葉に耳を寄せていた。

「かー…宇宙船のブレーキシステムとはなぁ…あいつSF世界を旅した事が有るのかよ」

慣性制御を可能にする装置らしい。

それをイッセー様のギアに収納し連結する事で制御が可能になったようだ。

その効果はあったようで、ミライさんに食いついていけるようになったイッセー様はどうにか善戦しているよう。

「なるほど、慣性制御か。オケアノスも使ってるって言ってたっけ」

留流子さんの神器は流れを操る。その能力は慣性すら操れるらしい。

これで何とか良い勝負に…とはならなかった。

「何なんですの何なんですのっ!」

フィールドが全て樹木で埋まってしまった。

「木遁秘術って言っているみたいですね」

ミライの傍のカメラが音声を拾っていたらしい。それを聞いたギャスパーくんがそう口にした。

これも忍術なんですのっ!?

「忍術とはいったい…」

「ニア神滅具ほどの規模の攻撃をポンポンつかうよな、ミライは」

本当です。アザゼル先生も苦笑いしていらっしゃるじゃないですか。

「だが一番厄介なのは、これは忍術らしいと言う事じゃねーかなぁ」

忍術…つまり術なのだ。超能力ではなく確立された技と言う事になる。

「ただまぁ、神には届かない程度だろうな。だからミライは使った事ないだろう?」

た、確かにっ!信じられませんわっ、この規模でっ!

空中に逃げていたイッセー様ですが、空中では狙い撃ちにされると樹海に下りてしまいましたわ。

「あーダメだな。今のイッセーにこの地形は有利にはならん」

アザゼル先生があちゃあと手で頭を覆った。

「さすが忍者、きたない…」

誰が言ったのか。

樹海の中での戦いはもはや一方的でしたわ。

ありとあらゆるいやらしい手が使われて、イッセー様は良いところが有りませんでしたもの。

イッセー様はその豪胆さとパワーが持ち味。その持ち味が発揮できない状況では途端に苦しい戦いになってしまうのです。

ですがこれはイッセー様もそして私もとても勉強になりましたし、この訓練は結果的に見れば大成功なのでしょうけれど、ミライさん…あなたはいったいどうなってますの?



さて、新学期が始まると、二年の超常関係者はみな同じクラスに集められていた。

昨今の情勢を考えての事だろう。

小猫ちゃんとルル、ギャスパーくんはもちろんの事、日本の呪術組織の関係者で、五大宗家の一つ百鬼家の百鬼勾陳黄龍(なきりこうちんおうりゅう)くんと吸血鬼の留学生であるミラーカも同じクラスだ。

吸血鬼と言えば家にいつの間にか吸血鬼のエルメンヒルデと言う女性も兵藤家に居候している。

イッセーの嫁候補だ。

彼女自身はクリフォトによって壊された故郷の復興にと頑張っているようで、政治的なつながりを求めて赤龍帝であるイッセーを頼ったらしい。


レーティングゲームの国際大会については、予選を三戦し、どうにか勝ちを拾えていた。

予選はレートを稼ぎ、自身の得点を上げていく。

予選の試合数はチームに任せられていて、試合数と得点は必ずしもイコールではない。

その為予選後半に多く戦うのも一つの戦略だろうが、一度負けても敗退ではないので、慣れるまでは試合をした方がいいんじゃないかな。まぁ決めるのはリーダーであるイッセーだけど。


レーティングゲームの国際大会の事はこれ以上語る事はよそう。 
 

 
後書き
と言う訳でハイスクールD×D編でした。インフレが酷い作品ですよね。まぁ、ミライのインフレも酷いのですが。今回遂に倍加能力をゲットしてしまった蒼とミライ。どうしよう…まぁ、いいか。いざとなれば忘れてしまえば…
次はいつになる事か。またお会いできれば幸いです。 
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