| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

エターナルトラベラー

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

番外編 【ハイスクールD×D編】

 
前書き
今回は作品的に一人称になっています。 

 
どうやらまた生まれ変わったようだ。

兵藤みらい。

それが今のわたしの名前だ。

その名前は、本来子供を無事に生むことが難しかった母が、奇跡的にも第二子を無事に出産できた両親が兵藤家に明るい未来が訪れたと言う事で付けられたらしい。

一般的な核家族の家庭。

両親と、一歳上の兄が一人。

兵藤一誠と言い、わたしは兄の事をイッセーと呼んでいる。

「うーん…なんだかなぁ…」

五歳を過ぎ、体を自由に動かせるようになってミライは自身の能力を確認する。

左手に刻まれた◆模様。楔(カーマ)だ。

発動させれば、ミライまたは蒼が身に付けた技術が戦闘経験値を伴って反映されるのだが。

忍術、仙術、六道仙術。

瞳術は写輪眼、万華鏡写輪眼に輪廻写輪眼。

また白眼、転生眼、直死の魔眼に覚醒はしていないがその能力だけを盗み取った黒眼と過去視の千里眼。

「チート度が増えてる…」

権能に至っては色々増えてるしね。

「幾つか無くなっているけれど…」

・形無きモノ(イミテーション)

これはアオが比較的新しく得た権能だ。

蛭児(ひるこ)から簒奪したその権能は、相手の能力をコピーし、一時的にストックして使用でき、また同程度の器が有れば上書きできる権能なのだ。

今回の場合所持していた権能に上書きしたのだろう。


使わない儀式系の権能が幾つか無くなっている。

代わりに…

「これは酷い…」

黄金の炎(カヴァーチャ)、迦楼羅(カルラ)、邪龍の因果応報(インスタント・カーマ)、武芸百般(ガンダールヴ)、兵主神(ブラックスミス)、神の献身(ザ・ブリーズ)、未来福音(クロース・コール)など他にもいろいろと増えていた。


さらに今回はミイタが作った王律剣・バヴ=イルを所持し王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中身も持っている。

中には小聖杯も有るようだ。

「神代魔法も問題なく使えるし…新しく覚えた剣術は少し練習しないとかな」

神鳴流は型ではなく技なので御神流とも競合しないね。

ソルは眠っているが、スキニルは起きていた。

まぁ、もともとこの子はわたしが作ったものだけれど。

その他、幾つか魔法も増えている。

黄金の魔法(マギア・アウルム)とかは色々出来そうだ。

持った力の強大さに色々トラブルを抱えつつ時が過ぎ、わたしももう15。

春からは駒王学園の一年生だ。

何故駒王学園を選んだかと言えばイッセーが去年から通っているからだ。

両親がちょっとエッチなイッセーを不安がっていたのでお目付けを兼ねて同じ高校に進学したんだ。

ようやく高校生活に慣れてきた頃、兄である兵藤一誠のオーラの質が変わった事に気が付いた。

そして数日後、兵藤家に招かれざる客が来訪する。

わたしが台所で朝食の準備をしていると母がイッセーの部屋から大声を出して駆け下りて来る。

どうやら若い女の子がイッセーのベッドで一緒に寝ていたらしい。しかも全裸で。

そりゃ母も驚くと言うもの。

紅髪の少女、名をリアス・グレモリーと言うらしい。

駒王学園の三年生だ。

そのリアス先輩を含めて兵藤家では皆で朝食を取っていると言う異様な光景。

「あら、おいしいわね。あなたが作ったのかしら」

とリアス先輩がわたしを見て言った。

その彼女の隣に座るイッセーが冷汗を流しているのが見える。

リアス先輩のもっともらしいようなそうでもないような会話で両親は何故か納得しかけていが、まるで催眠にでもかかったよう。

「どうかしましたか、ミライさん」

とリアス・グレモリー先輩が言う。

それをわたしはうっとうしく振り払った。

「そう言うの、わたし効かないんで」

「へぇ」

リアス先輩の瞳が怪しく光った。

「何が何やら…」

戸惑うイッセー。彼自身にもまだ何も説明されていないらしい。

結局詳しい話は放課後、オカルト研究部でと言う事になり、登校。

そして放課後…

駒王学園高等部の敷地内にある旧校舎。そこにオカルト研究部はあった。

オカルト研究部の扉を開けて中に入ると、わたしが最後だったようで、部屋の中には既にイッセーが来ていて他の部員も集まっているらしい。

三年生で部長であるリアス・グレモリー。

同じく三年生で副部長の姫島朱乃。

二年生の木場裕斗と一年生で隣のクラスの塔城小猫だ。

わたしが部室に入ると突然朱乃先輩はリアス先輩の前に立ち、その前に小猫ちゃん、さらに木場先輩はいつの間にか西洋剣を手に持って一番手前でわたしにそれを突きつけていた。

「へぇ」

わたしを警戒したのかな。

「お、おい。木場、おまえそれ真剣かよっ!」

イッセーが驚きつつもすぐさまわたしの前に立つって後ろに隠した。

イッセーのこう言う所をわたしは気に入っている。

普段は性欲の権化と学園での噂は良いものが無いが、昔からミライを守ろうとしてくれているのだ。

「いったい何が何やら…」

いっそう混乱するイッセー。

「どうしたの、皆…」

「ですが、部長…彼女はあまりにも…」

危険だと木場先輩が言う。朱乃先輩も小猫ちゃんも嫌な汗が流れていた。

「大丈夫よ下がりなさい」

リアス先輩がそう言うと皆しぶしぶと警戒を一段階下げ、木場先輩は剣をどこかに消した。

そんな彼女達の説明を聞くと、どうやらイッセーは堕天使と呼ばれる存在に二度殺されそうになったらしい。

もしかしたら一度目は本当に死んでいたかもしれない。

そこを悪魔の駒…イーヴィル・ピースと呼ばれるもので偶然イッセーが持っていた召喚陣で召喚されたリアス先輩が悪魔に転生させて生まれ変わらせたのだ。

悪魔の駒は上級悪魔が魔王から貰う物で、悪魔もしくは他種族を自身の眷属悪魔にするアーティファクトで、チェスを模していて駒の数はキングを除いた15個。

朱乃先輩が女王クイーンで木場が騎士ナイト。小猫ちゃんが戦車ルークらしい。

最大で15人の眷属を作れるらしい。

訝しむイッセーにオカルト研究部の部員全員が悪魔の羽を生やす。

イッセーが堕天使に狙われた理由は神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれるアーティファクトをその身に宿しているからだと言う。

リアス先輩が切っ掛けを与るとイッセーの左手に現れる赤い籠手。

それが彼の神器らしいが、詳しい能力は未だ分からず。

悪魔に転生してしまったイッセーはリアスの下僕悪魔として生きるしか道が無いようだ。

寿命も長く、病気にもなりにくい。聖なるものや光などには弱いらしいが体は人間の何倍も頑丈なのだと言う。

しかしイッセーは上級悪魔に昇級出来れば自身も悪魔の駒を貰え、自分のハーレムが作れるかもとテンションを上げていた。

まぁ、自分の下僕悪魔を女の子で固めたいと言う願いは分からなくもないけれど…

「さて、私達の事は大方説明したと思うのだけれど」

といったリアス先輩はこちらを向いた。

「どうしてあなたには暗示の類の魔力が効かないのかしら」

魔力とは悪魔が使う技の事だ。この世界の魔法とは悪魔の使うそれらを解析して人間が使えるようにした物の事を言うらしい。

魔力は素質や遺伝に寄る所も大きいらしく、一族で同じ魔力の傾向にあるらしい。

一種の血継限界とでも捉えれば理解が簡単だろうか。

「そう言えば、そうだな。どうしてだ?」

イッセーが今更ながらな視線をわたしに送った。

「まぁイッセーが悪魔なんてものになったから言うけど、わたし前世の記憶持ちなの」

嘆息して答える。

「な、なんだってっ!?」

驚くイッセー。それはそうだろう。今まで妹だと思っていた存在が一瞬遠くなったようで…

「まぁ、ミライの料理の腕はそれくらいの過去が無いと無理だろうしな」

となぜか変な方向で納得された。

イッセーのこう言う所には本当に救われる。

だから…

「だから戦う手段も結構持ってて…」

瞬動を発動した次の瞬間、リアス先輩の背後から長物の刃を突きつけている。

長物は一瞬の間に兵主神(ブラックスミス)で作り出した短刀だ。

「なっ!?」

反応できなかった木場先輩が驚きの声を上げる。

「くっ…」

リアス先輩も息を飲んでいた。

木場先輩と朱乃先輩と小猫ちゃんはリアス先輩を守るために動きたいのだが、今のわたしに隙を見いだせず動けない。

「おい、ミライ。冗談はやめろっ!お兄ちゃんはそう言う事は許しませんよっ!!」

「はぁ…」

兄には弱いのだ。

再び瞬動を発動させイッセーの横に移動すると同時に短刀も消していた。

「う、うわっ!!」

驚くイッセー。

「まぁ、これくらいは出来ます」

さて。

「それで、ここからはお願いなんですが」

「聞きましょう…」

一連のやり取りでわたしが強者だと理解したリアス先輩が若干緊張した面持ちで返した。

「イッセーが悪魔になった事は仕方が無いだろうし、その神器(せイクリッド・ギア)?のせいで狙われる事も有るでしょう。リアス先輩の眷属悪魔で下僕だと言う事も仕方ないだろうし…だけど…」

と一拍おいて続ける。

「イッセーの尊厳を踏みにじるような事だけはしないと約束してください。その約束を守ってくれるなら三回だけわたしがリアス先輩の力になりますよ」

「もともと私は眷属悪魔を大事にしているつもりよ。イッセーにも酷い事をするつもりは無いわ。グレモリー公爵の名にかけて誓うわ」

「ちょっとリアス」

朱乃先輩がリアスを窘めた。

「いえ、もしかすると…」

木場先輩がこそっとリアスに耳打ち。それを聞いて朱乃先輩も反対を取り下げたようだ。

悪魔に転生したイッセーは、夜な夜な悪魔の仕事に行っている。

基本的に魔方陣を使った人間の元に召喚されて願いを叶え、その対価に金品や物品を貰うらしい。

自ら調べて魔方陣を用意すると言う現代人は居るはずもなく、今は欲深そうな人にチラシを配り、そのチラシに書かれている魔方陣を使い召喚されるとかなんとか。

まぁ悪魔の仕事はわたしには関係のない事だ。

イッセーは忙しそうだがとりあえず日常が戻って来たと思っていたら、兵藤家に金髪の外国人が居候する事に。

イッセーが助けた女の子で最近悪魔に転生したシスターらしい。

名前はアーシア・アルジェント。

身よりはないらしく見かねたリアス先輩が兵藤家にホームステイと言う感じで押し付けたようだ。

まぁ、家がにぎやかになるのはいい事だけど…イッセーのエロパワーで家族がもう一人増えやしないか心配だ。

「あの…よろしくお願いします」

おどおどと頭を下げるアーシア。

実の娘が居ると言うのに父も母もデレデレだった。

アーシアは数日もしない内に預かっている娘と言うより家族の扱いになっていた。

わたしも裏表なく、優しいアーシアは気に入っている。

彼女も神器を持っていて、そのせいで大変な事件に巻き込まれたらしい。それをイッセーが助けたようだ。

彼女自身はまだ自分の心に気が付いていないかもしれないが、たぶんイッセーに惚れているのだろう。

まぁ、イッセーの方がそのアーシアの好意に気が付いていない様だが…

そんなでハーレム王を目指すとか大丈夫なのだろうか…


「は?山籠もり?」

「明日からちょっくら修行してくるわ」

イッセーが突拍子もない事を言ってくる。

それじゃ、とアーシアを伴って出かけていくイッセー。

「まていっ!」

アーシアと一緒何てアーシアが危ないじゃないかっ!

わたしもすぐにイッセーを追った。

勝手に付いてきたわたしをリアス先輩は意外にも受け入れてくれたのだった。

本当に10日ほど山にこもって修行をするらしい。

大きなリュックに荷物を詰め込んだイッセーが息を切らしながら山道を登っている。

オカルト研究部、オカ研皆でリアス部長の持っている別荘で籠って修行するのだとか。

「レーティングゲーム、ねぇ」

「あらあら、悪魔のゲームに興味が有るのですか?」

横を歩いていた朱乃先輩がわたしの呟きを聞いて問いかけた。

「まぁ、多少はね。…イッセーも出るんでしょ?」

「それはイッセーくんもリアス部長の眷属ですし」

そう言う事らしい。

レーティングゲーム。

悪魔同士が自身と自分の眷属を用いて戦うゲームらしい。

様々なルール形式の試合が有り、基本的には眷属同士の派手目のバトルになるそうだ。

ルールによっては戦いの実力では勝っていても負けてしまう事も有るらしい。

しかし基本的に弱くても良いと言う事にはならないだろう。

リアス・グレモリー眷属は今度レーティングゲームをする事になったのだと言う。

本来ならまだゲームを許されている年齢では無いのだそうだが、身内のいざこざにレーティングゲームで決着をつかる事も有るらしい。

身内同士の非公式の戦いなので未成年だから参加できないと言う事もないようだったが…今回リアスがレーティングゲームをする切っ掛けとなったのが婚約者との婚約破棄を賭けてと言う事のようだが…

リアス先輩は若い悪魔で、婚約者は居るが恋愛結婚に憧れているのだろう。

対戦相手はもちろんその婚約者。

イッセーに対戦相手を聞けば嫌味なキザヤローだと言う。

横から木場先輩が眷属は皆かわいい女性悪魔だったよと言っていた。

「あー」

イッセーの夢であるハーレムの野望を叶えていたのか。それはイッセーも複雑だろう。

山での修行は体力づくりに始まり、魔力の基本、体術、神器の扱いと多岐に渡っている。

イッセーも悪魔になった事で肉体のスペックは人間を越えているようだ。

だが悲しいかな、イッセーの才能はあまりないのだろう。

魔力の扱いも苦手で、そもそもイッセーの魔力量は普通の悪魔の子供以下らしい。

それは多少の魔力があれば自前で飛べるはずの転位魔方陣すら発動せず、今イッセーはチャリで客の所まで訪問すると言う前代未聞の事をしているのだと言う。

それでも腐らず一生懸命な所は好ましい。

体術ですら年下の小猫に負けているが、この間まで前一般人だったのだこれが普通だろう。

「そんな物陰から見てないでもっと近くに行けば良いのに」

そう木場先輩がわたしの背後から声を掛けた。

わたしの視線の先でイッセーはぼろぼろになって地面に倒れていた。

「カッコ悪いところを妹に見せたい兄などいないよ」

とは言えのぞき見はしている訳だけれど。

「へぇ、なるほどね」

と木場先輩。

「何か用ですか?」

「そうだね。僕と手合わせしてもらえるかな」

最初の顔合わせで何か感じるものが有ったらしい。

イッセーの修行場から少し離れ、木場先輩と対峙する。

手には互いに木刀が握られている。

木場先輩もわたしもどこからともなく手元に呼び寄せたものだ。

「それじゃぁ、行くよっ」

そう言った木場先輩の姿が消える。

悪魔の駒の騎士(ナイト)の効果は俊敏性の向上なのだと言う。

木場先輩のスタイルにも合うらしく、その速度は常人では姿すら追えないほどだ。

その速度を視ようとすれば写輪眼が発動してしまうのは仕方のない事だろう。

バシと互いの木刀が打ち合わされる。

「なっ…魔眼!?」

受け止められた事よりもそちらの方が木場先輩のには衝撃だったようだ。

すぐさまその足を活かし距離を取る木場先輩。

再び打ち込んでくるが…

「見えているのか…?」

再び木刀が打ち合わされる。

「ええ、まぁ…」

二合三合と打ち合う。

良い師に巡り合ったのだろう。良い剣筋をしている。

ただ彼からはその身に刻んだ型と言う物を感じない。

師が教えなかったのだろう。その方が木場先輩には良い、と。

それから何合も打ち合うが、木場先輩はわたしを攻め崩せず。

再び距離を取る。

「どうしたものかな…僕はナイトの力も使っているのにね」

そう木場先輩は自嘲する。

「木場先輩は騎士のクラスに合っているから特に違和感を感じないかもしれませんが」

そう言ってほんの少しだけオーラを解放する。

「まさか、闘気が使えるのか」

木場先輩が声を上げた。

闘気とは魔力とは違い身体エネルギーを扱う者が操ることが出来るモノのようだ。

気や仙術と呼ばれるものを極めた先で使えると言う代物と言う認識らしい。

わたしはオーラを脚部に集め瞬動で一気に距離を詰める。

ナイトの特性もかくやと言う程の速度だったろう。

振り上げた木刀を木場先輩に向けて振り下ろす。

「くっ!!重い…っ!なぜっ!?」

木場先輩に合わせて速度重視のテクニカルな戦いから、剛健一刀に振り下ろされた木刀に驚いたようだ。

「脚部に使った闘気?を腕部に集めればこういう事もできます」

再び距離を取る。

「イーヴィル・ピースの弱点…って事だね」

と木場先輩。

「どう言う事、朱乃」

リアス先輩が隣に居た朱乃先輩に問いかけていた。

いつの間にかギャラリーに他のオカ研メンバーが揃っていた。

「そうですわね…裕斗くんの悪魔の駒は騎士。そしてその特性はその速度にありますわね」

「そうね」

騎士の駒は悪魔に目にも留まらない速度を与える。

「でもそれって魔力による強化をその一点に集中しているとも言えますわ」

「それって…」

「今の裕斗先輩では腕力を魔力で底上げすると言う器用な事は出来ません。力と頑丈さはわたしの…戦車の特性です」

小猫ちゃんが答えた。

「まさか彼女、刹那の間に切り替えていると言うの?」

リアス先輩が驚きの声を上げていた。

「化け物…ね…」

「まいったね…剣術に関しては君の方が何枚も上手のようだ…だけど…」

木場先輩の雰囲気が変わる。

「木場のヤツ、まさか神器を使う気か!!ヤメロっこのっ…ミライに向かって何てことしやがる」

イッセーが木刀を手放した木場先輩に向かって声を張り上げた。

「ここまでのようだね」

イッセーの声で出鼻をくじかれ頬をかく木場先輩。

「そうですね」

わたしも木刀を下した。

「ねぇ、もし…もし僕が神器(セイクリッド・ギア)を使ったとして…」

「どう言う能力かは分かりませんが、…負けないですよ」

それは絶対の自信。

「そ…そうか…はぁ」

木場先輩がため息を吐く。

そんなこんなで再びみなそれぞれの修行に戻っていった。

夕飯はオカ研メンバーほど修行に時間を取られないわたしが作っていた。

皆美味しいと食べてくれているが…リアス先輩や朱乃先輩、アーシアなどは複雑な表情。

「負けたわ…」

「あらあら…うふふ…」

「はぅ…私もいつかはこの味をモノにして見せますっ!」


そうして数日。

肝心のイッセーの修行はと言えば、イッセー本人はただ自信を無くすばかりだ。

それを心配したリアス先輩がイッセーに神器(セイクリッド・ギア)を出すように言う。

左手に現れた赤い籠手。

赤龍帝の籠手(ブーステッドギア)と言うらしい。

世界で13個確認されている神滅具(ロンギヌス)の一種であるらしい。

とは言え過去に一度も神殺しは成された事は無いようではあるのだが。

その仰々しい名前にふさわしく、イッセーの神器の能力は10秒ごとに自身の力を倍加すると言う桁違いの物。

イッセーの魔力量が少ない為一見弱く感じてしまうが…

イッセーの嵌めた左手の籠手にある宝玉から10秒ごとにBoostと音が鳴る。

繰り返す事二十回。

およそ百万倍になった頃、リアス先輩がイッセーにブーステッドギアを止めるように言う。

『Explosion』

宝玉から音声が流れた後、イッセーの体に強烈な魔力が宿る。

その状態で木場先輩と戦ったイッセーは今までがウソのように善戦し、試しにと撃ち出した魔力弾(ドラゴンショット)と言うらしいそれは遠くの小山を抉り飛ばした。

「どう、あなたのお兄さんは。すごいでしょう」

とリアス先輩。

「すごいです」

彼女がイッセーに体力づくりをメインに体作りをさせていたのはこのバカげた威力に壊れない器を作っていたと言う事なのだろう。

「確かに、これなら神を殺せると言う謳い文句も現実味を帯びますね」

「あらあら、ビビっちゃったのかしら?」

かわいいわね、と朱乃先輩。

「いいえ。だけどまだまだですよ。これじゃ神になんて到底届かない」

弱点は倍加にかかる時間か。まぁ、倒れる寸前まで倍加されても今のイッセーを倒すのに一秒も要らないか。

「まるで神を知っているような口ぶりね」

「さて、どうでしょうね」

10日間に及ぶ合宿が終了し、レーティングゲーム当日。

わたしは人間で部外者なので家でお留守番だ。

過去視の千里眼で彼らのレーティングゲームを視ていたが、駒の揃っていないリアス先輩は最初から不利だったし、相手のキングはフェニックス家の三男で不死鳥…つまり不死身であり精神を削る以外の勝利は無い。

そんな状況で一人、また一人と倒されて行き…イッセーも頑張ったがなぶられ続けるイッセーにリアス先輩が投了(リザイン)して終了。

リアス先輩はそのまま婚約式の準備に入るらしい。

イッセーの傷はアーシアが治したが疲労困憊で家に帰って来て三日間寝込んでいた。

夕飯を作っていると濃密な魔の気配を感じイッセーの部屋へと行くと、泣いているアーシアと見慣れない銀髪のメイド服を着た女性だけが居る。

どうやらイッセーは意識を取り戻してすぐどこかに行ってしまったらしい。

どうせリアス先輩の婚約パーティに乗り込んでいたのだろう。

我が兄ながら諦めが悪く、しかし漢気のある行動だ。

銀髪のメイドを見る。

「勝手にお邪魔してしまい申し訳ありません。グレモリー家に仕えます、メイドのグレイフィア・ルキグフスと申します」

そう言って目を瞑り頭を下げるグレイフィアさん。

グレイフィアさんの強さは今まで見てきた悪魔(グレモリー眷属や駒王学園に居る異質なオーラを放っている人たち)の中では断トツに強そうだ。

「イッセーは行きましたか」

「申し訳ありません」

頭を下げるグレイフィアさん。

イッセーをけしかけた事を謝ったのだろうか?

「まあイッセーも男の子ですからね。美人の先輩を助ける為に命の一つや二つくらいかけるくらいの気概が無いと困ります」

なんせハーレム王になる男なのだから。

まぁ、レーティングゲームで見せたイッセーのオリジナル魔力である洋服破壊(ドレス・ブレイク)なんて変態技も開発しているみたいだけれど…

あれ女の子限定と言う制約で魔力強度を上げているんだろうね。

「心配じゃないのですか?」

「悪魔にもメンツと言うものが有るだろうし、婚約相手の眷属を殺す、なんて事にはならないでしょう。まぁ腕の一本や二本無くなるかもしれませんが」

「はい。ライザー様もそこまで慮外者ではありません。これからリアスお嬢様の伴侶となるのでしたら相手の眷属を受け入れる度量が必要でしょう」

ライザーと言うのがリアス先輩の婚約者の名前なのだろう。入り婿だろうし殺してリアス先輩と不和を齎すほど愚かではないと言う事か。

「ああ、でも今回の事を企んだ誰かに伝言を」

「何でしょうか」

そうグレイフィアさんが返す。

「もしイッセーが今回の事で死ぬような事になればそのフェニックス家?を潰します」

「は…?いえ申し訳ありません…あまりにも荒唐無稽なものでしたから」

「そうでしょうか」

グレイフィアは済まなそうに答える。

「はい。相手はフェニックス。不死身の一族なのですよ。あなた様がどれほど腕に覚えがありましょうが、不死には勝てないかと」

あー、なるほど。

「知ってますか?不死って殺せるんですよ?」

不死を殺す手段なんてそれこそいくつも持っている。

「……はい?」

美人メイドさんが結構間抜けな顔をしていた。



どうやらイッセーはリアス先輩の婚約者であるライザーをぶっ飛ばして無事にお姫様を救出して帰って来たようだ。

ただ…

「どうぞよろしくお願いしますわ。お父さま、お母さま、みらいさん」

リビングの椅子に座ってイッセーの隣に陣取っているリアス先輩。

その反対側はむくれた表情のアーシアが座っている。

真ん中のイッセーは困り顔だった。

今日からリアス先輩もうちにホームステイするらしい。

イッセーの漢気に惚れたらしい。

いつもはスケベな情けない兄だが、ここぞと言う所では引かずにしっかりと決めるのだ。

カッコいい兄だ。

今までは気づく女性が居なかったが、ここ最近の事件でついに気づかれたらしい。

そしてリアス先輩とアーシアと言う上玉を引っ掛けてくるあたりうちの兄は豪運だ。

毎晩リアス先輩と彼女に対抗したアーシアと一緒に寝ているようだが合体まで行かないあたり本当に意気地がない。

「ヘタレ」

と言ったらイッセーは「ぐはっ」とショックを受けていたが、スケベの癖に誠実とかどうよ。

イッセーの左手が何となくやばい事になっていることに気が付いてはいるのだが、対処法をリアス先輩達が講じてるらしく急場は問題ないだろう。

駒王学園はこれから球技大会の練習期間に入る。

とは言えわたしのクラスの大半はやる気がない。球技大会なんてかっこ悪いとでも言いたげな雰囲気だ。

逆にオカルト研究部の面々はやる気に満ち溢れているようだ。

リアス先輩ってそう言うの好きそうだものね。

最近頻繁にイッセーが自分の左手と会話しているのを見かける。

どうやら赤龍帝の籠手にはウェールズの赤い竜が封印されているらしく、その意識が最近覚醒したとか何とか。

イッセーがドライグと呼び掛けているので恐らくそれがその竜の名前だろう。

しかしトラブルはどこからともなくやってくるもので…

家に帰るとフード付きのローブに身を包んだ高校生ほどの少女が二人家に上がっていた。

その姿はこの現代日本では異様の一言に尽きるのだが、彼女達にしてみれば当然の格好なのだろう。

母さんがリビングにあげたのだろう異国の少女が二名リビングに入ったわたしを見つめる。

「こちら紫藤イリナちゃんとお友達のゼノヴィアさん。イリナちゃんとは子供のころイッセーとよく遊んでいたのよ。覚えてない?」

と母が言う。

「うーん、覚えてないかな。子供のころだったんでしょ?」

知らない人と覚えてない思い出話に付き合わされるのは面倒なので自室へと引っ込む。

まぁ、覚えてない訳じゃないのだけれど、彼女の親が熱心な宗教家だったため面倒で近づかなかったのだ。

彼女の父親は一般人と言う訳でも無さそうだったし、何よりわたしは神殺しだからね。反りが合うはずもないのだ。

…神とは相性が悪いのだ。大抵殺し合いの戦いに発展してしまう。

遅れて帰って来たリアス先輩に話を聞くと昼間の二人は教会の戦士で悪魔払いのプロらしい。

うわー…相性最悪だわ。うん。経験上大抵そう言う人種って狂信者だからね。

次の日オカルト研究部の部室で更に話を聞く。

木場先輩は今日は休みなのか姿が見えない。

話をまとめるとどうやら教会に保管されていたエクスカリバーを二本盗まれたらしく、その犯人がこの駒王町周辺に逃げてきたようで、それを追って二人のエージェントが追って来たと言う事のようだ。

敵対関係にあるとはいえ、他人の縄張りでドンパチするのだから要らぬ波風を立てぬよう前もってこの駒王町を縄張りにしている上級悪魔であるリアス先輩に話を通しておこうと言う事になったらしい。

「と言うか、エクスカリバーを二本盗まれたって言うのがもう意味が分からないんですが」

エクスカリバーは一本でしょ?

話を聞くともともと一本だったエクスカリバーは大昔に折られ七つに分かたれた欠片から新たに七本の聖剣に打ち直されたらしい。

マジかぁ…

「エクスカリバーって折れるんですね…」

「そりゃそうよ。アーサー王伝説を読みなさい」

常識でしょうとリアス先輩。その横で朱乃先輩もあらあらと笑っていた。

「いやぁ…わたしの常識じゃないって言うね…てっきり湖に返されたものと思ってたから」

「あ、それ私知ってます。異説では確かに湖に投げ入れられたことになっていますよね」

とアーシアがよく知っていますねと呟く。この世界では異説扱いなのっ!?

「しかしエクスカリバーが存在すると言うのなら、本体も存在するって事?」

「本体?エクスカリバーは七つに折られたのよ」

馬鹿な事を言わないでとリアス先輩。

「いやぁ…エクスカリバーの本体って鞘の事でしょ」

常識じゃん。

「え?」「はぁ?」

「どう言う事?」

えー…本当に分からないのかな?

「なぁミライ、どういう事なんだ?」

イッセーもわたしに問いかけてくる。

アーシアも小猫ちゃんも朱乃先輩も分からない様だ。

「エクスカリバーの鞘は装備者を不死にする。傷を負っても死ぬことは無く、傷自体治ってしまう。それに比べたら剣の部分何てオマケでしょ、オマケ。エクスカリバーを盗んだ人が鞘を盗っていかなかったと言うのならただのマヌケ。そうでないのなら見つかってないのかな。ほら、アーサー王伝説で鞘を盗まれたってあるでしょ?」

有るよね?

「確かに、エクスカリバーの鞘は盗まれてますわね」

と朱乃先輩。

「………」

「鞘ってスゲーのな」

小猫ちゃんが閉口しイッセーが率直な感想を漏らす。

「そ、そう言われると必死に取り返そうとしている教会の人達が滑稽に感じるわね…」

リアス先輩もどう反応していいのか困った表情を浮かべていた。

オマケだものね。

「剣と鞘なら断然鞘ですね」

しかしエクスカリバーの鞘が有るのなら探してみるのもいいかもしれない。

と言う事でオカルト研究部の部員と言う訳じゃないわたしはエクスカリバーの鞘を探してみる事に。

とは言え、探し物ってよほどの事が無い限り本気で探せば一瞬なんだけどね。

宝物庫から導越の羅針盤を取り出すと確かに反応が有るようだ。

とりあえず確認してみよう。

誰の物でも無いのなら貰ってしまってもいいよね。


夜。

ざらつく殺気に目を覚ます。

どうやらそれはわたしに向けられたものじゃ無く、イッセーたちに向けられたもののようで、リアス先輩、イッセー、アーシアの三人が駆けだして行った。

それから駒王学園の方からただらなる気配を感じる。

「ふぁ…」

あくびを一つ。さて…

流石に心配だからね。それにこの町はわたしが住んでいる町だ。

気配を殺しつつ玄関で靴を履いてイッセー達を追う。

夜の町は人の通りはほとんどない。学校となれば明かりも少なく本来なら人気は無いだろう。

「結界…」

近づくわたしに空から誰かが降りてくる。

悪魔の羽をはためかせ着地するのを見るにリアス先輩同様悪魔と言う事なのだろう。

「生徒会長」

向こうは知らなくても自分の学園の生徒会長くらいは知っていて当然だ。

支取蒼那(しとり そうな)生徒会長。

その後ろに遅れて降りてきたのは真羅椿姫(しんら つばき)副会長だ。

気配を辿れば他の生徒会のメンバーもそれぞれこの結界の周辺を囲っているようだ。

と言うか同じクラスの二村留流子(にむら るるこ)ちゃんも居るね…

まぁ一年生で急に生徒会に入った後、悪魔の気配がするようになっていたからもしかしたらとは思ってたけど…

つまりこの学園には二人の上級悪魔が居るって事ね。

「あなたは…」

誰何する支取会長の言葉にかぶせる。

「ここ、通してくれないかな」

「は?」

「力技で壊せるけれど、壊したら結界張り直すのが手間だしね」

「会長っ!」

そう言って濃密なオーラを滾らせると、真羅副会長が必死の形相で支取会長の前に出た。

支取会長をかばう様に生徒会長が上級悪魔と言う事なのだろう。

「…あなた、兵藤一誠さんの妹さんですね」

「イッセーはわたしの兄だね」

支取会長は一瞬逡巡したようだが…

「分かりました。椿姫」

「……わかりました。会長がおっしゃるのであれば」

そう言うと人一人入れるだけの隙間ができる。

「ありがとう」

「一つだけお聞きしたいのですが」

と支取会長が視線を向けた。

「……?」

「あなたは人間…ですよね?」

「さて…人間のつもりだけれどね。悪魔になった覚えは無いよ」

「そうですか…」

そう言うともう支取会長は何も言わず見送ってくれた。


結界の中に入ると上空に浮かぶ黒い羽の天使が見える。堕天使の勢力も有るみたいなのでそれだろう。

その堕天使を取り囲むようにオカルト研究部の部員達とゼノヴィアと呼ばれていた少女が居た。

その堕天使、コカビエルだと後で聞いたが、その彼が聖書の神が死んでいるという事実をあざける様に言っていた。

彼の目的はどうやら再び聖書に記された三勢力で戦争がしたいらしい。

教会からエクスカリバーを盗み出し、結合させると言う目的もあったらしいのだが、根底にあるのはただ戦争の続きを望んでいたようだ。

熱心な信徒であったゼノヴィアはあまりのショックに膝を付いていた。

それはそうだろう。今まで信じてきたモノの根幹を否定されたのだから。

わたしは兵主神を使い丈の長い黒塗りの野太刀、極夜を手に持った。

極夜とはキュプイオトをベースに白夜の能力を受け継いだ至高の一振りだ。

「どう言う状況?」

地面にへばっていたリアス先輩に問いかけた。

「あなた…」

「簡潔に」

「くっ…あのコカビエルを倒さないとこの町が消し飛ぶわ。時間はもうそう無い…」

「へぇ…」

怪しい気配が地脈の方から感じると思えばそんな切羽詰まった状況になっていたとは…

余りの事に殺気が漏れてしまった。

そのせいか結界内に居る人たちは呼吸を忘れる程。

「な、何者だ…たかが人間一人が加勢しに来たところで…」

精一杯四肢に力を入れ直して叫んでいるコカビエルへ舞空術で近づいて行く。

「だ、ダメだミライ。今兄ちゃんがそいつをぶん殴るからっ…」

イッセーが恐怖を振り払い何とか立ち上がる。

だけど今のイッセーじゃまだこのコカビエルは倒せないかな…

フルフルと首を振るとコカビエルと対峙する。

「この町で事を起こさなければもしかしたらうまく行ったかもしれないのにね」

「人間風情がっ」

ギリと奥歯を噛んだコカビエルは光で出来た槍を握りしめるとこちらへと放ってくる。

「別に斬らなくてもダメージは無いんだけれど」

軽く極夜で切り払っただけで霧散する。

相手が堕天使である以上権能・黄金の炎を抜くことは無い。この権能は神仏魔に対して無敵なのだ。

まぁ、今回は使うまでもないが…

「な…どうやって…」

「ただ斬っただけだね」

コカビエルの視線がわたしの左腕に向いていた。

久しぶりに力んだことで権能・大体なんでも斬れる魔法(レイルザイデン)が発動し腕が銀色に光ってしまっていた。

「ありゃりゃ…これじゃ極夜じゃなくても良かったかな」

「そんなバカな事が…」

コカビエルは十重二十重と光の槍を投げつけてきたがその全てを斬り裂き霧散させた。

コカビエルも長く戦争を生き抜いてきた将だ。彼我の実力差は感じ取っているだろう。

久しく感じた事の無かった恐怖に顔が歪む。

「ひぃっ!」

転移で逃げようにも今この中は結界で閉じられているためすぐには転位出来ない。

その為コカビエルは結界の境界へと向かって駆ける。結界を強引に突破するつもりなのだろう。

「神鳴流・斬鉄閃 弐の太刀」

振り下ろされた刀から飛び出した衝撃はコカビエルだけを真っ二つに斬り裂き、しかし結界には何一つダメージを与える事無く霧散する。

「馬鹿な…」

袈裟斬りで肩から胴へと真っ二つに斬り裂かれたコカビエルは肺に残された最後の空気でそう呟いた後絶命する。

初めて弐の太刀を実戦で使ったけれどこれは良いものだね。結界を壊さなかったのがいっそう評価が高いわ。


「なんと嘆かわしい事だ」

空から男の声が聞こえる。

「まさかコカビエルがやられてしまっているとはな」

現れたのは白い全身鎧を着込んだ誰か。

鎧とは言ったが全身のいたる所にある宝玉からか、どちらかと言えば騎士をモチーフにしたロボットのような見た目をしている。

背中には竜のような機械の翼が付いていた。

「誰?」

「まさか白い龍(バニシング・ドラゴン)…目覚めていたと言うの」

地上の誰かが呟いた。

白い龍…白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)と呼ばれる神器(セイクリッド・ギア)と言い、神滅具(ロンギヌス)の一種でイッセーの赤龍帝の籠手のライバルなのだと後で聞いた。

「ヴァーリだ。ヴァーリ・ルシファー。今代の白龍皇にして魔王ルシファーの血を受け継ぎし最強のドラゴンだ」

ヤバイ…中二なヤツが出てきちゃった…

設定モリモリ過ぎるでしょ…

あぁ…頭痛で眩暈が…

「それでそのルシドラくんはいったい何の用事かな?」

「ルシドラと言うなっ!く…俺を馬鹿にするやつはみなそのあだ名を…」

過去にも呼ばれたことがあったんだ…だったらその名乗りをやめればいいのに…

「で…本当に何の用なのよ」

はぁとため息を吐く。

「本来の目的はコカビエルの回収だったのだがな。それはお前がぶっ殺してしまったようだから」

手間が省けたでしょう?

「今代の赤龍帝を見に来たと言うのも有るが」

赤龍帝ってイッセーの事だよね?

「それよりも俺はお前に興味が湧いた」

構えを取るヴァーリ。

「俺と戦ってもらおう」

闘志がヴァーリを包み込む。

「あー…分かった。バトルジャンキーなんだ…邪気が無い分わたしもどう対応したらいいか分からないよ」

ちょっと待ってと言うとヴァーリは律儀に待ってくれている。

殺しに来るなら殺し返すだろう。町を破壊すると言うのなら殺してでも止めるだろう。

だが相手はただのバトルジャンキー…

最強を証明したいお年頃なのだろう。

「つまりただ戦いだけ、相手を倒したいだけと言う事…?」

「ああ」

即座に肯定するヴァーリ。ちょっとは悩んでほしかったよ…

こういうタイプは一度ぶつからないと納得しない。

「しょうがない…相手になってあげるよ」

ため息を吐くと極夜を消す。

「む…刀は良いのか?」

手加減されたと思ったのだろう。

その通りだが。

だってうっかり極夜で斬っちゃうと再生すら出来なくなるしね。

「無手も魔法も得意だよ、わたしは…」

オーラを解放する。

ビリビリと空気が震えた。

『ヴァーリ、相手は神クラスだぞ』

宝玉からドライグみたいな声がした。

なるほどあの神器にも何者かが封印されていると言う事なのだろう。

「神か…いつかは越えたいと思っていた」

むしろヴァーリのヤル気が余計に膨らんでしまったらしい。

ヴァーリがまず様子見と空中で距離を詰める。

インファイトかっ!

写輪眼を発動させて迎え撃つ。

騎士のクラスの悪魔ほどの速力は無く、打撃も洗練されているがまだまだだね。

ヴァーリの拳を避けて掌手で吹き飛ばす刹那に胸の宝玉を掴んで引きちぎってみる。

「ぐはっ!!」

ヴァーリは地面に大穴を開けて落下。

手元の宝玉を眺めてみるが、これが本体と言う事ではなさそう。

眼下のヴァーリの胸元はその宝玉まで修復されていた。

とりあえずその宝玉は宝物庫にしまっておくとして。

ヴァーリが再び空中に上がり眼前へと迫る。

打ち出される拳打を見切ってかわすと再び剛拳でヴァーリを吹き飛ばす。

このままクレーターを作り続けるのもなんなので地面に降りて自然体に構えると起き上がったヴァーリが再び攻めてくる。

今度は背後に魔方陣が浮かび上がった所を見ると魔法も使ってくるようだ。

「まぁ、無駄だけどね」

右手を突き出して捻る様に拳を閉じるとヴァーリからすべての魔法の制御がわたしに移った。

権能・魔術王(ゲーティア)だ。

「なっ!?」

驚くのも無理も無いだろう。

わたしに向かっていたヴァーリは背面から自分が用意した魔法をくらってしまう。

魔法の衝撃はすさまじく砂埃が舞った。





私、リアス・グレモリーは今信じられない光景を目撃している。

私達が手も足も出なかった堕天使グレゴリの幹部であるコカビエルを、まるで虫けらのように惨殺したのはイッセーの妹である兵藤みらいだった。

それだけでも驚きだと言うのに、その後に現れた現白龍皇がまるで相手にもなっていない。

「裕斗はどう思うかしら」

信じられない物を見てつい自身のナイトに問いかけていた。

「信じられません…神滅具(ロンギヌス)を相手にあれほど一方的な戦いになるなんて。剣術にしても僕ではいまだあの高みには追いつけないでしょう」

それは私もみた。コカビエルを斬り飛ばした一撃。あの威力であれば結界にダメージが入るはずなのにあの斬撃は結界になにもダメージを与えずにコカビエルだけを斬った。

信じられないけれど、現実に起こった事なので認めるしかなかった。

『あの白いのが手も足も出ないとは…』

イッセーの左手から声がした。彼の手に宿るドライグの声だ。

『あいつは神クラスだと言ったが訂正が必要だな。そこらの神なぞ相手にもならん。各神話の主神か戦闘神クラスでようやく勝負が出来るだろう』

「それはマジかよドライグ」

余りの事にイッセーが驚いて聞き返したようだ。

主神クラス…それは爵位持ちの悪魔なんかよりも圧倒的な存在だった。

そしてミライの戦いは圧倒的で、苦し紛れに放とうとした白龍皇の魔法を右手を突き出すだけことごとく掌握してしまい、逆に白龍皇自身がその魔法をくらってしまうと言う信じられない展開になってしまっていた。

もうもうと土埃を舞う中、白龍皇はミライに接近し、その拳を振るう。

バシとミライは事も無げに弾くが…

『ついに触れたか』

ドライグが関心する。

「触れた?」

確かに弾かれたようだが触れたと言えば触れたのだろう。

『オレが10秒ごとに力を倍加させるように白いのは相手の力を10秒ごとに半減させる』

「まさかっ!」

確かにそんな能力なら神滅具なのも頷ける。

『Divide!』

白龍皇の宝玉から音声が流れた。

つまりミライの力が半分になったと言う事だ。だが…

「変わってない…わよね」

眷属達を見渡すと皆頷く。

『そうかー…効かないかー…相手は主神クラスだもんなぁ…』

「ドライグ…おい、ドライグ…どうしたっ!」

『すまないイッセー…ライバルがあまりにも不憫で…うぅ…』

ライバルだからこそ受ける衝撃も大きかったのだろう。

白龍皇のショックも大きかったようだが、遂に切り札を切る事にしたようだ。

白龍皇が呪文のような物を唱えると鎧の質量が増していきまるで白いドラゴンのように変貌していく。

『覇龍(ジャガーノートドライブ)か。これなら…』

覇龍…禁手化(バランス・ブレイク)の先に有る白龍皇の切り札のようね。

二天龍と称されているのならおそらくイッセーも覇龍が使えるようになるはず。

だけど…

目の前の白龍皇はとても荒々しいオーラを放っていた。

あんな物…イッセーは制御できるのかしら?

いいえ、あんなものにならなくても良いくらい鍛えないとね。

その究極形態である覇龍だがその大きさが仇となったのだろう。

ミライは自然体に立っているだけだったが白龍皇の周りに金色の波紋が広がって行き幾つかの孔が開く、そこから鎖のようなものが飛び出したかと思うとすべての逃げ場を塞ぐように展開されたその鎖に白龍皇は捕まってしまう。

ジャラジャラと音を立てて鎖が引かれると空中で両手両足を縛られた白龍皇の姿が鎧に戻りさらにはその鎧すらなくなり本体が顔を見せた。

「どうなっているのっ!」

「おそらくあの鎖に強化を無効にする能力が有るんじゃないかしら。獣をつなぎ留める鎖、縄、そう言った伝説は幾つか有りますわ」

そう朱乃が言うが、確かにそう遠くないだろう。

『ドラゴンまでも縛り上げるか…すまんイッセー…二天龍などともてはやされているがもしかしたら我らなどそう特別なもんじゃ無いのかもしれん…』

「大丈夫だドライグ、お前は特別だっ!特別で良いんだっ!」

『すまん…すまんなイッセー…おーいおいおい』

「ドラーーーイグっ!!」

ついには泣き始めてしまう赤龍帝。

イッセーは慰めているけれど、永遠のライバルである白龍皇。しかも当代の白龍皇は覇龍と言う極大な力を使いこなしてなおミライに手も足も出ていない。

泣きたくなるのも分かるわ…

そして無防備な体にミライの掌手が決まった。

あれではもう起き上がれないだろう。勝負はミライの完勝に終わった。

「今回の戦いは大きいですわね」

と朱乃が言う。

「ええ」

「一番の収穫はミライちゃんは敵対しなければ牙を剥かないと言う事が一番の収穫でしょうか」

そう、コカビエルはこの町を吹き飛ばそうとしたから殺された。

白龍皇はただ勝負を挑んだから生かされた。

この違いは大きい。

「お兄様に報告しなきゃね。藪を突いて蛇を出さないように、と」

「下手に逆鱗に触れるよりは面識を持った方が良い事もあるかもしれませんわね」

朱乃の言葉にコクリと頷く。

どうするかはお兄様達魔王様方次第だろうけれど、白龍皇すら圧倒するミライに下手な事をしないでと祈るしかないわ。




ジャラジャラと天の鎖からヴァーリを下す。

意識を刈り取るつもりで打ち込んだのにどうにか意識を保っているようだ。

倒れ込むヴァーリを左右から支える存在が割り込んできた。

古代の中華風の軽鎧を着た青年と着物を着崩した猫耳の女性だ。

「美候…黒歌…」

すまないと言うヴァーリ。

「あんましゃべんなや」

男の方がヴァーリを気遣う。それなりに慕われているらしい。

「悪いんだけど見逃してもらえないかにゃ?」

に…にゃ…だと…?

語尾に驚きを隠せない。

まさかこんな逸材が居たなんて。

二人はヴァーリがやられた以上、自分たちの実力ではわたしに敵わない事を悟っている。しかしわたしがヴァーリを殺さなかった事実が殺害の意思が無い事を理解しているようだ。

「あんまり粋がって誰かれ構わず喧嘩を吹っかけないようにね。わたしみたいに優しい人ばかりじゃないんだから」

「この状況が優しいだぁ?」

確かにヴァーリの状況はボロボロだった。だが命のかかわる傷は無い。五体も満足だ。

「いい?必ず殺す技と書いて必殺技と言うわよね?」

「あんた何をいって…?」

「わたしは初手で必殺技を出す事も厭わない女よ」

それを聞いて男…美候は苦虫を噛んだような表情を浮かべた。

「あー…ダメだは…ヴァーリ、お前かなり手加減されてたな」

「くっ…」

だいぶ手加減されたと知ってヴァーリは悔しそうな表情を浮かべた。

「ヴァーリ、これを飲むにゃ」

小瓶を取り出した黒歌がヴァーリに何かを飲ませるとたちまちヴァーリの傷が言えていく。

「フェニックスの涙。実物は初めて見た」

レーティンゲームを覗き見た時にあったやつだ。

「良いものが見れたからさっさと帰れば?」

「にゃんのことにゃ?」

フェニックスの涙。

その実物を見れたことは大きい。

流体であるのなら流体万化(ミダスタッチ)で複製は容易だしね。

「ほら、他の奴らが来る前に、ね。わたしは庇わないわよ?」

と言うとすぐに転位の準備に入ったようだ。

チラッとヴァーリがイッセーの方を向く。

イッセーの禁手化(バランス・ブレイカー)はリアス先輩の婚約パーティの時に千里眼で見ている。

それとそっくりな神器。因縁めいたものが有るのだろう。

「いつかまた戦いたいものだ」

「嫌よ。それと」

と一拍置いた続ける。

「イッセーを余りいじめないでね」

「ふむ…だが奴は現赤龍帝なのだろう?我が白龍皇とは戦うのが定め」

うわー…またそんな中二病的な…まぁいい。

「戦うのは良い。男は負けて強くなるものだからね。ただ、殺しは無し」

ふむ、とヴァーリ。

「その理論で行くと俺はもっと強くなれると言う事だな」

だーかーらー。そっちじゃなくて、ね?

「了解した。赤龍帝の命までは取らないと約束しよう」

「それで十分よ」

そしてヴァーリはリアス先輩達が到着する前にどこかへと消えた。

「ミライさん…あなた…」

これは少しビビらせ過ぎたかもしれない…人間関係…悪魔だけど…それにひびが入っちゃうのは仕方ない、か…

だが…

「ミライ、大丈夫なのか?体にどこかケガはないか!?」

イッセーがそんなの関係ないとわたしの安否を確認する姿に皆雰囲気が緩んだ。

「ん、大丈夫」

「ミライって本当に強かったんだな。今度修行つけてもらおうかな、なんて。俺、兄ちゃんなのにかっこ悪いな…」

「そんなことないよ。イッセーはかっこいいと思う」

「本当か?」

「はい、イッセーさんはかっこいいですっ」

わたしの言葉にアーシアが同意して、さらに雰囲気が軟化。

うやむやの内に今回の事件は終わりを告げ、また日常へ。

そう言えばあのゼノヴィアと言う女騎士はどういう経緯があったのか分からないがリアス先輩の眷属悪魔になったらしい。

まぁ聖書の神が死んでいると言われれば自暴自棄にもなるか。

とは言え極端だともおもうけどね。




しかし平和と言うものは長くは続かないもので…

授業参観を控えた有る日、リアス先輩の兄が兵藤家を訪ねてきた。

目的は色々あるらしい。

一つ目はリアス先輩の授業参観。

二つ目はなんか聖書の三大勢力の会合がこの町で行われるらしいのでその下準備。

寝耳に水なんだけど…と言うか迷惑なんだけど…

昨今の状況を鑑みてここらで和平を結ぼうとか何とか。

そして三つ目。

兵藤家の一室…わたしの部屋にリアス先輩の兄であり魔王であるサーゼクス・ルシファーさんとその女王(クイーン)であるグレイフィアさんが居た。

リアス先輩もこの地を任せられた上級悪魔と言う事で同席している。

と言うか狭い…

わたしは勉強机に備えられた椅子に腰かけ、サーゼクスさんにはベッドに座ってもらった。

グレイフィアさんはサーゼクスさんの隣に立って控えている。

リアス先輩にはクッションに座ってもらった。

「それで、何か用ですか?」

「ちょっとあなたっ!」

リアス先輩が窘めるように声を上げた。

相手はリアス先輩の兄だが冥界の魔王だからだろう。

「いいんだよ、リアス。彼女には悪魔の序列など関係の無い存在なのだかね」

「ですが…」

サーゼクスさんは理解のある方らしい。

魔王と言われてもわたしに何の理も無い遠い異国ですらない冥界での事。認知されていない人間界でその勝手な序列に従えと言われても困る。

イッセーやアーシアなら転生悪魔なのでその序列に従わなければならないとは思うけど、わたしには関係の無い事だ。

「一つ目はこの間のコカビエルの件だ」

「あー、あれですか。何か面倒な事になってます?」

「コカビエルの事で堕天使サイドから直接的な反発は無い。トップのアザゼルは穏健派だからね。それに今さら三勢力で昔みたいに戦争をしたい奴なんて居ないさ」

コカビエルが例外だったようだ。

だから配下に他の堕天使はおらず人間の神父が付いていたのか。

「二つ目はそのコカビエルを倒したと言う人間に会ってみたくてね」

「へぇ…それで、どうでしたか?」

サーゼクスを見つめ返す。

「いやぁ、面白い人だね。普通の人間なら委縮する所だよ」

「今さら魔王程度に委縮するほどヤワじゃないつもりですね」

恐らくサーゼクスさんは強い。これ程の悪魔が冥界にゴロゴロいるとは考えたくないが、三勢力で争っていた時の堕天使の幹部がコカビエル程度だった事を考えるとサーゼクスさんが抜けているのだろう。

グレイフィアさんも強そうに感じるが戦闘機七機分くらいかな。

サーゼクスさんは一撃で勝敗を決める戦略兵器と言ったところか。

「魔王程度って…」

リアス先輩がお願いだからもう少し敬意を持ってと視線を飛ばしてきた。

グレイフィアさんは眉をピクピクさせている。

「はっはっは、本当に面白い。魔王になんてなるとね、こう言う存在は貴重なんだよ。どうだろう。私と友達になってはくれないだろうか」

「ちょっとお兄様っ!!」
 
「はぁ、まぁ良いですけどね」

「それは良かった」

そう言ったサーゼクスさんはベッドから立ち上がってぎゅっとわたしの手を握る。

「それと…問題が無ければ一つお願いを聞いて欲しいのだけど」

い、いきなりっ!?

「あの夕飯の時に出たジュース、どこで売っているか教えてもらえないかい?」

あー…

「お母上に聞いたところミライちゃんが買ってくるからどこから買ってきているのか分からないと申されてね」

いきなりちゃん付けなんですけどっ!!

「サーゼクス様」

さっとわたしの手を放して距離を取るサーゼクスさん。

「おっと、グレイフィア、怖い顔をしてはいけないよ」

「そう言えば私も気になっていたのよね。この家の冷蔵庫の飲み物類ってどこで仕入れているのかしら。あのジュースは私もお気に入りだわ」

リアス先輩の視線が向く。

「リアスも知らないとなるとがぜん興味が湧くね」

とサーゼクスさんが無邪気な笑顔を浮かべた。

「私は料理で使われていた油が気になりますね」

「おっとグレイフィアが気になるとは珍しい事だね」

「あー…そうですね。こちらのお願いも聞いてもらえればお教えしますよ」

「悪魔と取引かい。懐かしいね」

そう言ってサーゼクスさんが笑う。

魔王業などやっているとリアス先輩のしているような人間の願いを叶えるなんて仕事は出来ないのだろう。

「そんな難しい事じゃないです」

そう言ってわたしは宝物庫からペットボトルに入ったミネラルウォーターとガラスコップを取り出すとキャップを開けて中身を注ぐ。

「これは水かな」

「水ですね」

「水よ」

サーゼクスさん、グレイフィアさん、リアス先輩と同じことを言った。

まぁラベルにも漢字で水と書かれているしね。

コップを触った次の瞬間、部屋の中に甘い匂いが充満する。

「これは…」

「虹の実のジュースの原液ですね。一滴で50mプール一杯分の果実水ができますよ」

「何という…」

「え、もしかしてミライさんが作っていたの?魔法で?」

リアス先輩の問いに頷いて答える。

「そうですね」

大体うちにある飲み物はわたしが買ってきたことにして作り出していた。

メロウコーラとかね。

次の瞬間、コップの中身は透明の油へと変わる。

「これは揚げ物の時の」

とグレイフィアさん。

変化させた油はモルス油だ。

「液体を変化させているのか。すごい魔法だ」

サーゼクスさんが感心していた。

「魔法…なのかしら」

グレイフィアさんはどこか納得がいかないよう。

「もしかして液体ならなんでも変化させられるのかい」

サーゼクスさん、鋭いっ!

「もう確信しているようなのでね。見た事の有るものならガソリンでもヒュドラの毒でも変化させれますよ」

フェニックスの涙は今薬箱の常備薬にまぎれさせて、お母さんのあかぎれの薬として重宝しています。

「ヒュドラの毒って…さすがに冗談でしょう」

人間界に居るはずがないとリアス先輩。

「で、ここからが取引なのですが」

「おっとそうだったね」

ボソリとまさかフェニックスの涙も?と言っていたサーゼクスさんがにっこりと笑った。

「これをサーゼクスさんからと言う事でお父さんに渡してもらえませんか?」

宝物庫から取り出したのは虹の実のワインだ。

「さすがに未成年のわたしでは買って家に入れたら怪しまれますから」

酒類はまだ買える年齢じゃないのだ。

「これは、ワインかな」

サーゼクスさんはそのワイン瓶をもて中身を確認する。

「お父さんとお母さんに日頃の感謝を込めて」

「なるほど、承ろう。取引は成立だな。…ただ」

「ただ?」

「これを私にも貰えないだろうか。もちろん対価は十分に支払おう」

ですよねー…

虹の実ジュースを気に入っていたのだから当然ワインは欲しいよね。

「サーゼクス様」

「おっとグレイフィア、君も飲みたくはないのかい?それとあの油の事も交渉しようと思うのだが」

「それをおっしゃるのは卑怯です」

グレイフィアさんはサーゼクスさんを窘めようとして逆に丸め込まれたようだ。

「そう言えばそこに立てかけられている…」

サーゼクスさんの目に留まったのは古めかしいがきらびやかなデザインの鞘に納められた剣だ。

「これですか」

ひょいっとその剣を手に持った。

「いやぁ…何やら強力な力を感じるのだけれど」

とサーゼクスさん。

「あー…これはエクスカリバーの鞘です」

「なっ!?どうしてあなたが持っているのっ!」

驚きの声を上げるリアス先輩。しかし声には出さないがサーゼクスさんとグレイフィアさんも驚いている。

「えっと、エクスカリバーが存在するならと鞘も有るはずと探したから?」

「探したからって…」

リアス先輩が呆れていた。

「まぁ、もの探しは得意です」

探査妨害されたものでないのなら導越の羅針盤で一発です。

「得意にもほどが有るでしょうに…」

発掘には多少手間だったが何とか手に入れることが出来た。

一応盗み出した訳じゃないよ?

拾得物を勝手に持ってきただけだよ。

え?犯罪?知らないなぁ。

鞘の中には擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)と言う紫藤イリナが使っていた物を兵主神で複製して入れてある。

エクスカリバーとは言え、折られた後人の手で修復されたものであり、剣の格が大分下がっていたので問題なく複製できた。

「それがどれほどのものか分かっているかい?」

「調べた所、所有者に限定的な不死を与えると言った所ですかね。傷を負ってもすぐに治るけど体力までは戻らず、たぶん欠損は治せない」

それと…

「鞘に聖属性は付いてないみたいですね。いえ、エクスカリバーが聖剣としての側面を持つのは後世の後付けの設定でしょう。エクスカリバーの欠片を回収した教会が聖剣に改造した、とかもあるかもしれません。成した事で聖剣と魔剣を区別するなら後者でしょう。エクスカリバーは人を斬りすぎている」

「それをどうするつもりだい?」

「んー…もう少し改造したらアーシアにでも持たせようかなと思ってます。彼女、自分の傷は治せないみたいなので」

「アーシアにっ!?」

自分で使うんじゃないの!?とリアス先輩。

「ミライちゃんは使わないのかな?」

「ええまぁ、必要ありませんし。あ、そうだ。エクスカリバーが有るのならロンゴミニアドやカルンウェナンも有るのかな?」

今度探してみようか。

「…三勢力の会合が近い昨今あまり刺激するような物を発掘してほしくは無いのだがね」

サーゼクスさんが苦笑している。

「なるほど。多少は自重しますね」

「多少なのか」

多少です。

取り合えずエクスカリバーの鞘は後日擬態の聖剣でミサンガに変身させアーシアの左腕に収まった。

聖剣を扱えるだけの素質がアーシアには無い為驚異的な回復力は見込めないが、瀕死の重傷を負っても時間を掛ければ完治されるだろう。

「もう一つお願いがあるのだが」

ぐいぐい来すぎじゃないですかねっ!?サーゼクスさん。

「とても重要な事だ」

そう言ったサーゼクスさんに転位魔法で連れてこられたのはレーティングゲームで一度使用したと言う駒王学園を再現した空間。

「何故こんなところにっ!?」

リアス先輩、それはわたしのセリフだと思いますよ。

この空間に居るのはわたし、サーゼクスさん、グレイフィアさん、リアス先輩の四人。

「グレイフィア、リーアたんにはまだ早いと思うのだが…」

あ、サーゼクスさん普段はリアス先輩をリーアたんって言ってるのか…冥界の魔王大丈夫?

「リアス様はグレモリ家次期当主。いつかは知ってもらわなければならない事です」

そう言ってグレイフィアさんは名目する。

「はぁ…あまり見せたくは無いのだけれどね」

「いったい何が…」

「リアス様、こちらに」

「ちょっとグレイフィアっ」

リアス先輩はグレイフィアさんに連れられて強固な結界の中へと連れていかれた。

「すまないね。少し付き合ってもらえるかな。君の力を確認したくてね」

「どの程度の回答ならベストなんですかね」

善戦して負ける、ギリギリ勝利する、ボロ負けする…もしくは。

わたしのその言葉にサーゼクスさんは目を見開いたあと笑った。

「ははは、出来れば圧倒的な力を見せてくれると良い。悪魔は爵位とか家柄とかあるが、結局は力こそ正義だからね」

「全力は見せれませんよ。サーゼクスさんが死んでしまいますからね」

と言うわたしの言葉でサーゼクスさんが静かに闘志を燃やし始める。

「ほう…言ってくれるね…私が挑戦者と言う立場なのかな」

濃密な魔力を纏っていくサーゼクスさん。

わたしは手に白夜を持ち黄金の炎を纏った。

極夜では無く白夜なのは極夜ではうっかりサーゼクスさんを殺しかねないからだ。

そして開始の合図は必要ない。互いの呼吸が揃ったタイミングで戦闘が開始された。

サーゼクスさんが魔力弾を放ってくる。

万華鏡写輪眼・桜守姫で見ればそれは周囲の物を削る様に消滅させている。

後で聞いたのだが、グレモリー兄弟の母親はバアル家の出身らしく、母親から滅びの魔力を受け継いだらしい。

しかし魔力である以上、白夜で斬って捨てる。

サーゼクスさんからは規模の増した同様の攻撃が続いた。

「いやぁ…参ったね。効かないみたいだ。撃ち出した数、速度、威力的にも上級悪魔でも塵一つ残らない威力だったんだけどなね」

「まぁ、確かに普通の人間なら百回は死んでますね…そんな攻撃を躊躇なく出してきたのは誰ですか」

「とは言え、近接戦では勝てそうもないしね」

サーゼクスさんも近接戦が不得意と言う訳じゃないだろう。体の動かし方で達人の域に達しているのは見て取れる。

「刀は卑怯でしたか?」

「いいや、そんな事を言われては魔王の名が泣くと言うものだろう」

「でもやられっぱなしなのもかっこ悪いですからね」

白夜を地面に刺すと、両の手にメラとヒャドを発動させ両手を合わせて合一して右手を引く。

「避けれません。防いでくださいね?」

「なにっ!?」

忠告してから魔法を放つ。

「メドローアっ!」

必中の権能を加味して真正面から撃ち出したメドローア。

サーゼクスさんは滅びの魔力を前面に押し出して耐える。

弾かれて分裂したメドーアは背後の建物を消滅させていく。

「これはっ!?まさかっ!」

「滅びの魔力…ですか」

「そんなっ!グレイフィアっ!」

リアス先輩とグレイフィアさんの驚きの声。

「ミライはバアルの血が混ざっていると言うの?」

「そうではないでしょう。彼女が撃ち出す前、炎と冷気の魔力を感じました。つまり反属性による対消滅を形にした魔法と言った所ですが…人間とはここまで出来るものなのですね」

二人が人類を勘違いしている中、メドローアは収束していき…

湾曲して放たれたであろう滅びの魔力が白夜を消し飛ばす。

光が止むと無傷のサーゼクスさんが居る。

しかしその体は紅のオーラに包まれていた。

「グレイフィアっ!」

リアス先輩が驚きの表情を浮かべている。

「あれがあなたのお兄様があなたに見せたくなかったものです」

グレイフィアさんは悲しそうに目を瞑り…

「お兄様はどうしたのよっ」

「あの状態のサーゼクス様は滅びの魔力そのもの、人の形をした滅びなのですよ」

人の形をした滅び…悪魔を越えた何か。

「すまないね、私はこれでも超越者と呼ばれていてね」

まいったね…藪を突いて蛇を出してしまったようだ。

彼の周りをまわる幾つもの小さな球体。

それ一つ一つに強大な魔力を感じる。

直死の魔眼に切り替える。

死の線が見えにくい。滅びそのものの為普通の武器なら刃すら通さないだろう。

「何か視えたかい?」

「教えてあげません」

直死の魔眼から再び写輪眼へ。

「君はいくつの瞳術が使えるのだろうね」

さて、魔王を一段階変身させたしギアを上げなければならないか。

「君ならこれも防いでくれるんだろうねっ」

滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクスティンクト)と呼ばれるサーゼクスさんの必殺技だ。

必殺技の名に恥じない能力を持っている。

再び手に現した白夜で襲い掛かる滅殺の魔弾を斬る。

「武器創造系の魔法だとっ」

少しサーゼクスさんも驚いたようだ。

そりゃ壊したと思った刀が再び現れればね。

一つ一つが山をも消し飛ばすほどの濃密な魔力の塊とこの弾の特性が厄介だ。

振った白夜が消せずに逆に消滅し瞬動で距離を取る。

球は高速に回転し時間を巻き戻しているようだ。

「時間逆行による虚無への到達…故の滅び…」

「こんな短時間でそこまで見抜くのかい?」

再び白夜を手にすると今度は左手を銀に光らせた。

再び襲い来る滅殺の魔弾を今度は全て叩き斬る。

「驚いたよ、これも斬ってしまうのか」

「ばかなっ!サーゼクス様の滅殺の魔弾が斬られたっ!?」

驚きはサーゼクスさんよりグレイフィアさんの方が大きいようだ。

「このくらいにしませんか?」

「いいや、まだだよ。圧倒的に倒してもらわねばね」

何が楽しいのかサーゼクスさんは笑う。

飛んでくる滅殺の魔弾を今度は斬りも避けもしなかった。

「避けたまえっ!」

まさか避けないとは思わなかったのだろうサーゼクスさんが叫ぶ。

が、しかしその魔弾はわたしに触れると効果をなさずに消滅した。

「なっ…まさかこれを何もせずに防ぐとは…その炎だね」

流石のサーゼクス様も笑顔が消えた。

「わたしは神仏魔に対しては無敵なんです。もしサーゼクスさんが人間やその他の生物であったなら…消滅していたかもしれませんね」

「最初から避ける必要も斬る必要も無かったわけだ」

「はい。そしてわたしは悪魔を滅ぼせるんですよ」

振り上げた白夜を振り下ろす。

「斬魔剣 二の太刀」

伸びた切っ先がサーゼクス様を一刀で両断。髪の毛だけを斬り飛ばす。

滅びの形態ですら斬り裂いて空中に舞う真紅の髪。

「君がその気なら今ので私は死んでいたな」

勝負は決着しサーゼクスさんは滅びの形態を解いた。

「なっ…お兄様が…」

「サーゼクス様が…負けた?」

ショックを隠し切れないリアス先輩とグレイフィアさん。

「いやー、負けた負けた。こんな気持ちは何百年ぶりだろうか」

サーゼクスさんは参ったと笑う。

「と言う事なんで。わたしの家族を人質にしたとなれば冥界は滅ぶでしょう。基本的にわたしは人質を取るような相手との交渉には応じません。父母が死ぬのは悲しいですけどね」

まぁ、と続ける。

「イッセーは悪魔に転生していますし、自分から無茶に突っ込んでいくと思うのでイッセーはノーカウントにしておきます。男の子ですしね」

彼はこれからとんでもないトラブルに巻き込まれる気がする。

「さて、圧倒的にと言われましたので」

おまけとばかりにわたしは須佐能乎を顕現させる。

「おいおい、ここまでの事が出来るのかい」

見上げるサーゼクスさま。

「この方が報告しやすいでしょう?」

十拳剣でこのフィールドを斬り裂いた。


模擬戦が終わると、サーゼクスさん達は一泊した後帰って行った。

まだ駒王町には居るらしいのだが、魔王自ら会談の安全確認とは頭が下がる。

イッセーはプール開きの為の清掃をオカルト研究部が請け負ったようで朝から出かけていた。

わたしは家族も増えた事で食材を買い出しに行っていた所…

ばさりと買い物袋を地面に落とす。

「悪夢だ…」

帰ってきたら家が増築…いや改築…いやいやもはや新築されていた。

近所にあった家はどこかに立ち退いたようで、一区画全てが我が家となているようだ。

そこに地上部分だけで六階(あとで地下に三階あると知った)の大豪邸になっている。

玄関にはグレイフィアさんが待っていたようで。

「ミライさま。こちらが虹の実ワインの報酬です」

家の中は家具も一そろい揃っていて、リビングのテレビは100型の巨大スクリーン。音響設備も完璧だ。

大きめのアイランドキッチンに業務用の冷蔵庫を完備。

自室はまるでロイヤルスイートのようだ。

部屋を出なくても一通り生活が出来てしまう。

父さんと母さんにはモデルルームのリフォーム事業の一環とか何とか丸め込んだらしい。

地下には大浴場や温水プール、訓練場もあるようだ。

部屋の数も多く、今の所使われてない部屋の方が多い。

いつか本当にイッセーのハーレム要員が入居してくるんじゃないかな…

「何をしているのですか?」

クルリと建物を外側から一周しているとグレイフィアさんが興味深そうに尋ねてきた。

「なんかイッセーが悪魔に転生してから不法侵入者とか多くなったので」

その一人であるグレイフィアさんはバツが悪そう。

「結界くらい張っておかないと…むかし我が物顔で上がり込む妖怪とかが来たことも有りましたし。しかも勝手に物は食うは酒はのむは…」

「…………」

「まぁ、さすがに迷惑だったので滅しましたが…なんかその後妖怪達に恐れられているんですよねぇ」

あとなんやかんやでここらの妖怪に頼み事をすると皆聞いてくれるようにもなったりと良い事もあるのだが。

「ちなみにどんな効果が有るのでしょうか」

「この家に敵意を持ってたどり着けない効果、招かれなければ入れない効果ですね。あとは忘却の効果も有ります」

うーん…

「グレイフィアさんとサーゼクスさんは適用外にしておきましょうか?」

何だかんだで家を新築してくれたし、リアス先輩の家族だしね。

「是非ともお願いします…」

プール掃除から帰って来たイッセー達も驚いていたが、元には戻らないのでどうにか順応するしかない。

まぁ、イッセーの部屋のベッドはキングサイズをさらに超えているようだったので三人で寝るには良いんじゃない?

未だに合体まではいっていないようだが…ほんとうにヘタレな兄だ。

授業参観は両親揃って来てくれていた。

目的はもしかしたらわたしやイッセーよりもアーシアだったりしないかな?

え、気のせい?

夜はリアス先輩の父親とサーゼクスさん、グレイフィアさんと夕食に招待したようだ。

父よ、そこで拝むようにわたしに夕飯の支度を頼むのは流石にカッコ悪いぞ。

まぁ料理は好きだから良いけど。

母さんは別に料理下手ではないが、一般的な家庭料理の域を出ない。

料理は和洋中と用意した。

「そう言えば俺、回らない寿司って行ったことないな」

そう言いつつイッセーの手は寿司桶に伸びている。

「あら、イッセー。作ってもらってそう言う事を言うものでは無いわ」

リアス先輩のがイッセーを窘めた。

「100円回転寿司なんかとは比べようもなく美味しいのは分かるんだよ」

イッセーもそのくらいは分かると反論。

「え、お寿司が回るんですか?」

アーシアがかわいく首を傾げる。

「アーシアは今度私と一緒に回転寿司に行ってみましょうか。たぶんアーシアが考えているような事では無いわよ」

「はい、わかりました。リアス部長」

アーシアも笑顔で頷いた。

「ただ、うちじゃお寿司と言えば昔からこうだからさ。子供のころに回転寿司に行った記憶しかないわ」

そう言ってイッセーは寿司をつまむ。

「イッセーくん。そう言うのなら今度私が銀座の寿司屋にでも連れて行こう」

とサーゼクスさんがイッセーを誘った。

「え、本当ですか?」

イッセーが声を上げた。喜んでいると言うより驚いている。

「ちょっとお兄様、イッセー」

「ただ、あまり期待はしないでくれよ」

「ど、どういう事ですか?」

「米やネタのレベルが違うから高級寿司店の方が美味しい。あぁ、これは別にミライちゃんやお父様をを貶している訳じゃないよ。分かってくれたまえ」

一般家庭ですからね。

「だが、君は家庭でこれほどのお寿司を食べれることに感謝するべきだ」

そう言ったサーゼクスさんの言葉に父と母が頷いていた。

「サーゼクス様…俺…」

「お寿司だけじゃありませんな。これ程のもてなしをしてもらって恐縮の限りです」

そうリアス先輩のお父上も言った。

他の食べ物も次々に無くなっていく。そろそろデザートでも用意しようか。

大人組は虹の実ワインを開けていた。

わたしも後でこっそり飲もう。

「そう言えばイッセーってナイフやフォーク、スプーンなんかの使い方も上手よね」

とリアス先輩。

「ミライが使っているのを見て自然と覚えました。両親も同じなんじゃないかな」

「スケベな所は諦めるとして、テーブルマナーくらいしっかりしてないとモテませんからね」

兄の矯正できるところはしてきたつもりだ。

テーブルマナーは慣れだよ、慣れ。

「だなぁ、会社の会食でも褒められるからな」

とお父さんが言う。

役に立ったようで何より。

年に何回か、誕生日や記念日などにコース料理を出してきたのも無駄ではなかったらしい。

デザートを運んでくる。

「そう言えば俺、ケーキ屋で…」

「はいはい、買ったことないのよね」

「ぶ、部長…」

イッセーが情けない声を上げた。

今回はイチゴのホールケーキだ。

「ですが、本当に美味しくて…太っちゃいそうです」

アーシアはそうは言うがケーキから目が離せないようだ。

さっと切り分けておくとすぐに無くなってしまった。

8ピースに切り分けたので人数分あるはずなのだが…うん、2ホール作っておいて良かった。

危うく自分の分が無くなる所だったわ。

「ですが…イッセーさんはこの味で育ってきたんですよね」

とアーシア。

「そうね。イッセーを胃袋から掌握するのはなかなか難しいわね」

リアス先輩も苦い顔をしていた。

「ですがっ!イッセーさんの為ですっ。必ず兵藤家の味を覚えて見せますっ!」

「良い心がけよアーシア。でもまずは幾つか分担しましょう。…ちょっと…いえかなりミライの調理技術は並大抵のことではないわね」

ぐっとアーシアとリアス先輩が拳を握った。

そこらの下手な料亭、レストラン、パティシエよりも上手だよ、わたしは。

おもてなしは無事に終了。

皆上機嫌で帰って行った。


久しぶりにオカルト研究部に顔を出した所、一人部員が増えていた。

いや、今までも居たようだが何やら外出禁止だったらしい。

封印されていたと聞いている。

ギャスパー・ヴラディ

リアス先輩の僧侶の眷属悪魔で同学年の美少年だ。

金髪の髪に線の細いコーカソイドの吸血鬼のハーフでデイライトウォーカー。そして女装男子だった。

今も女子の制服を着ているようだ。

イッセーがボールを投げ、それを空中で静止させる練習をしていた。

ギャスパーくんは神器・停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)を持ち、簡単に言えば視界に収めた物体の時を止める能力らしい。

しかし本人は使いこなせておらず、失敗しては視界に収めたもの全ての時間を止め、いたたまれないのか何故かダンボールへと隠れてしまう。

しかしその時間停止に巻き込まれない人物が今日は居た。

間違えてイッセーを止めてしまい、わたしの目の前でコソコソと段ボールへと隠れようとしていくギャスパー。

しかしわたしと視線が合うとビクと震えてあうあうとし始めた。

「な…なんで止まってないんですかっ!」

あー…

「時間停止系の能力って同じ能力を持っている者には効きづらいんだよ」

「へっ?」

「こらギャー助、また…て…どうしたよ」

イッセーの時間停止が解除されるとギャスパーくんと見つめ合っているわたしを不思議そうに眺めた。

「だ、だってイッセー先輩っ!あの…ミライさんが時間停止系能力者どうしは効かないってっ!」

言ってましたとギャスパーくん。

「はぁ!?え、ミライって時間止めれるの?マジ?」

「出来る出来る。チョーできる」

意外と余裕よ、と言ってみた。

落ちていたボールを拾い上へと投げると時間停止の魔眼(パラスキュライト)を使う。

空中で静止するボール。

「なっ」「ええっ!?」

驚くイッセーとギャスパーくん。

「わたしくらいになると視線を切っても止まってるよ」

そう言って視線を二人に向けたが、上空のボールは止まったままだ。

パチンと指をスナップするとボールが落下する。

「で、時間停止能力者同士は止められない。能力に介入されるからね」

時間停止の魔眼でイッセーとギャスパーくんの動きを止めるが、ギャスパーくんは動いたまま混乱していた。

「え、え…?イッセー先輩?」

イッセーは固まったまま動かない。

「とは言え、わたしのとギャスパーくんのは似てるようで違うけどね」

「ど、どういう事ですか?」

「わたしのは完全に時間から隔絶している。だから…」

イッセーに近づくとどこからともなく現した刀で斬りかかる。

「い、イッセー先輩っ!!」

しかし刃は通らす弾かれた。

「ダメージは通らない。でもね」

パチンと指をスナップさせて解除。

「おい、ミライはいつの間に刀なんて…」

「ギャスパーくん、イッセーを止めてみて」

「は、はいっ!」

ギャスパーが停止世界の邪眼を使いイッセーの時が止まる。

「でもギャスパーくんのは物体の活動を止めているんだ。だから…」

わたしはイッセーの額をデコピンする。

するとその衝撃でイッセーは倒れ込んでしまった。

「イッセー先輩っ!」

驚いて停止世界の邪眼が解除されたらしい。

「なっ…イタッ!イッテーっ!!!!」

額を抑えてイッセーは地面を転がっていた。

「この違いは重要だよ。ちゃんと使えるようになればリアス先輩の力になれる。ガンバレ」

「は…はいぃ…がんばりますぅ…」

覇気のない答えがギャスパーから帰ってくる。

ダメそうだ。






そうこうしている内に聖書の三勢力の同盟の為の会談が駒王学園で始まる。

何故駒王学園?

と言うか。

「何故わたしもここに居ますかね…」

会談場所には魔王であるサーゼクスさん、ソーナ会長の姉で魔王のセラフォルー・レヴィアタンさん。

堕天使からはアザゼルと言うちょい悪おやじが居て、天使からはミカエルが来ていた。

その他にはアザゼルの護衛にはあのヴァーリが居て、悪魔側にはサーゼクスさんの女王であるグレイフィアさん、リアス先輩とその眷属(ギャスパーは神器の暴走も有るため旧校舎でお留守番)、ソーナ会長と真羅副会長が居た。

円卓のように並べられたテーブルに何故かわたしも座っている。

リアス先輩よりもVIPな扱いだ。

「ほう、そいつが」

アザゼルが呟く。

「あのコカビエルを葬ったと言う人間ですか」

ミカエルも興味津々に見つめてくる。

「何故わたしが呼ばれましたかね」

「すまないね。アザゼルがコカビエルとヴァーリをものともしなかった人間に会わせろと言うのでね。この場なら皆の目も有るし、よっぽどのことは起きないだろうと思ったまでだ」

サーゼクスさんがすまなそうに説明してくれた。

「別に俺はお前の事を怨んじゃいねーぜ、コカビエルのヤローは仕方なかったさ。まぁこれでも長い付き合いだったからさみしい気持ちも有るけどよ」

とアザゼルが言う。

「本当にこんなかわいい娘がコカビエルを倒しちゃったの?」

身を乗り出して声を上げたのはセラフォルーさんだ。

「そして彼女にはここに居る誰も敵わないだろう」

サーゼクスさんが爆弾を落とす。

「はぁ!?それはお前やアジュカ・ベルゼブブでもか?」

余りの発言にアザゼルが問い返した。

アジュカ・ベルゼブブも魔王と言う事らしい。

今の冥界には四人の魔王で政治を行っているのだと言う。

アザゼルの発言的にサーゼクスさんと同等の強さと言う事なのだろう。

「悪い事は言わない。彼女の機嫌を損ねるな。彼女の逆鱗に触れれば冥界も天界も滅ぼされると思った方が良い」

「それほどかよ…」

アザゼルの表情に少し緊張の色が伺えた。

サーゼクスさんがこの場で幼稚な嘘など吐かないと信用しているのだろう。

「彼女は人類代表と言う事ですか?」

とミカエル。

「え、嫌ですよ。面倒くさいです。わたしのモットーは君臨すれど統治せず、です」

ただ…

「一つ言えることは、わたしは神との相性は最悪です。なので天使との相性も当然良くありません。本来悪魔や堕天使とも良くないですね。今世では兄が悪魔に転生してしまったので多少は譲歩しますが」

他世界では名付きの悪魔や堕天使は神と同等だった。

当然殺し合いだ。

「これは先手を打たれましたか」

とミカエル。

「当然です。狂信者や狂信者を生み出す組織は嫌いです。それを是正しないのなら当然好きになれるはずは無いでしょう?」

ミカエルが苦い顔をする。

正しい事をしているはずの自分たちが一番わたしに嫌われている事実に困り果てているのだろう。

地上に神が…その使いが干渉できないのならおかしい人がいるなぁと思う程度だが、干渉できる超常の存在が居るのなら話は別だ。

むすっとして机に肘を乗せると頬をのせる。

あとは勝手にやってくれと態度で示した。


和平会談はそれなりに順調に進む。

途中アザゼルが和平ならリアス先輩と子造り出来るぞと言うとテンションが爆上がりする恥ずかしい兄を見てしまったが…まぁいつもの事か。

が、やはり和平を結ぼうとすれば反発する勢力が有るもので。

時が止められていた。

当然わたしは効かないので、窓から外を見ると、人間だろうか、ローブを着た魔法使いのような人たちが転位魔法で転位してきている。

遅れてサーゼクスさん、セラフォルーさん、グレイフィアさん、アザゼル、ミカエルと動き出し、ヴァーリも動けるようになったようだ。

「くそ…これは確かに全滅するかもな」

とはアザゼル。

状況的に時が止められたのは感じ取っている。その上で自分よりもはるかに速く窓際に移動していたわたしに驚愕したのだ。

イッセー達はまだ止まっていた。

状況はこちらに不利だろう。

向こうはギャスパーを手中にしたに違いなく、外の護衛はことごとくを止められ、一方的に倒されていく。

「くそがっそんなに戦争がしたいのかよ」

アザゼルが部屋の中から外の魔法使いたちに光の槍を降らせて魔法使い達を蹂躙するが、分母が多いのか再びいくつもの転位門が現れる。

「お前なら何とかできないのかよ」

とアザゼル。

「あまりわたしが干渉するのも何なのですが…じゃあ一回だけ」

ガラスに映った瞳が緑色に光る。

旧校舎に居るギャスパーとその周りに居た魔法使い達を塩へと変える。

途端に停止が解除され喧騒が復活する。

「後は好きにしてください」

ギャスパーくんは後で元に戻しておくよ。

護衛であるヴァーリやオカルト研究部が外へと出て迎撃し始め、アザゼルも加勢に動く。

相手は『禍の団(カオス・ブリゲート)』と呼ばれるテロ組織のようで、最終的には冥界の現政府に反発する旧魔王の血を引く悪魔が出てくる始末。

途中ヴァーリが裏切り、それを止めようとイッセーが戦いに身を投じた。

ヴァーリめ、あまりイッセーをいじめるなと言っておいたのに…

イッセーの赤龍帝の籠手とヴァーリの白龍皇の光翼は二天龍と呼ばれ、ライバルなのだと言う。

まぁ片方は倍加させ、もう片方は減少させるのだから確かにライバルだろう。

ライバルが弱いままと言うのは納得できないお年頃なのかな?

セイクリッド・ギアは思いの力に答える。土壇場でイッセーが再び禁手化(バランス・ブレイク)して赤い鎧に身を纏うとようやく同じ土俵にたったようだ。

まぁヴァーリには勝てないだろうな…

なんて思っていたのだが…

意外と善戦している?

旧魔王派の魔族はアザゼルが討ち取り、ヴァーリは結局逃げて行った。

途中イッセーが無理にヴァーリから引っこ抜いた白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)に付いていた宝玉を右腕に融合させようとしていたみたいだけど…

相当体に無茶をして寿命を縮めたようだ。

大丈夫かな?イッセー早死にしそうだなぁ…

せめて両親よりは長く生きて欲しいよ。

一応三勢力は和平を結ぶことにして、他勢力…この場合は多系統の神話なのだが、それとなく今回のカオス・ブリゲートの事を報告するらしい。

そっちの世界も色々あるのだろう。

それよりもなぜアザゼルが駒王学園の教師として赴任して来たのか。

そしてどうやらオカルト研究部の顧問になったらしい。


さて、夏休みが始まる。


始まったのだが…

どうしてわたしはこんな空が紫色の所に居るのでしょうか…

ここは冥界。グレモリー領にあるグレモリーの屋敷だ。

だらけるぞ、と意気込んでいたら何故かリアス先輩に捕まり駒王町にある駅から、まるでハリー・ポッターの9と3/4番線のようにエレベーターに存在しない地下へのボタンを押して普通の人間では到達できないはずの地下のホームへ到着する。

そこでリニアのような新幹線のような列車に乗せられたかと思うとグレモリー領へと拉致られたわたし。

イッセーはグレモりー眷属だし、他のオカ研メンバーも勢ぞろいしているのは良い。

なんでわたしを拉致ったっ!

付いて早々歓迎されるが、豪華な食事を前にテーブルマナーのおぼつかないメンバーもちらほら。

ゼノヴィアとか今まで粗食だったろうし難しいだろう。

紹介されたリアス先輩のお母さん、ヴェネラネさんはリアス先輩の髪を亜麻色に染めた程度で、まるで姉妹のようだった。

ヴェネラネさんはイッセーをグレモリーの婿にと考えているようで、鈍感なイッセーをそれとなくどこに出しても恥ずかしくない紳士に鍛えたい様子がうかがえる。

「あら、基本は出来ていますわね」

「あはは…そうですか?」

「食器を迷いなく使ってらっしゃるもの。ご両親の教育の賜物かしら」

とヴェネラネさんがイッセーと会話している。

イッセーのエロスに対する情熱以外はわたしの努力のたまものだっ!


リアス先輩には弟がいるみたいで、ミリキャスくんはリアス先輩の帰郷を喜んでいた。

普段人間界に居る姉が実家に居る事がうれしいのだろう。

「で、わたしがここに居る意味は?」

と食事の後にリアス先輩に問えば一度冥界に正規ルートで入国してほしいとサーゼクスさんに言われたらしい。

なんでもセキュリティの問題が有るらしい。

一度きちんと審査を通せば後は転位等で移動しても構わない様だ。

リアス先輩達は若手悪魔同士の親睦会が有るらしく手持無沙汰になったわたしをミリキャスくんがグレモリー領を案内してくれた。

初めての所ばかりで結構楽しめたかな。

「今度は人間界に遊びに行きたいです」

「今度はわたしが案内する番だね」

ミリキャスくんとの楽しい時間が終わり、城に戻るとイッセー達が帰って来た。

どうやら若手同士がレーティングゲームをする事になったらしい。

そして今度も山籠もりだとか。

アザゼル先生の指導の元、皆それぞれの特訓を開始する。

「で、なんでわたしもここに居るのでしょう」

「なんだよ、付き合い悪りーな。お前の兄貴たちだろっちったー付き合え」

と言ってのけるアザゼル先生に連れてこられたのだ。

まぁ確かにアザゼル先生の特訓はそれぞれを伸ばすには最適なアドバイスをしている。

イッセーは…なんかでかいドラゴンに連れていかれたけど…

偶に遠くの山から絶叫がやまびこになって聞こえてきている気がする。

「あまり心配しないのな」

とアザゼル先生が問いかける。

「まぁ、あれでイッセーはサバイバルの技量も高いですからね」

と、それよりも。

「帰って良い?」

「まてまて、出来ればお前には騎士(ナイト)組の修行を見てやって欲しい」

「まぁ、それくらいならば…」


木場先輩とゼノヴィアと対峙している。

ゼノヴィアはデュランダルとイッセーから借りたと言うアスカロンを構えている。

まずはゼノヴィアからと言う事なのだろう。

「実は一度戦ってみたかった」

とゼノヴィアが真剣な表情を浮かべた。

「ゼノヴィア、油断しないで。彼女、相当強いよ…と言うか、全力を出しても勝てないから安心して」

木場先輩、何を安心しろと?

「それは良い事を聞いた」

ゼノヴィアも嬉しそうにしないっ!

聖剣を構えるゼノヴィアに対しこちらは木刀だ。

「だが、それは流石に馬鹿にし過ぎだっ!」

二刀を持って迫るゼノヴィアはしかしナイトの速度を十分に使いこなしてはいない様だ。

「はぁっ!」

デュランダルを気合を入れて振り下ろすゼノヴィア。

十分な破壊のエネルギーを込められた一発は、しかし空を切りゼノヴィアの頭に木刀を振り下ろす。

「あいたっ!?」

「まだナイトの速度に慣れてないみたいだね。もう一回」

「ううっ痛いぞ」

「木刀だから痛いで済んでいるんだよっ!真剣なら大惨事だからねっ!」

ゼノヴィアは根っからのパワーファイターで、一撃の攻撃力は大きいが、それだけに隙も大きい。

数分後、頭にいくつものタンコブを作ったゼノヴィアが地面に倒れていた。

「うぅ…頭が真っ二つになっていないだろうか…」

「だからもう少しテクニックを覚えようと言っているんだよ」

先輩ナイトの木場先輩の言葉だ。

「じゃあ僕の番だね」

対して木場先輩は前回と同様速度を持っての攻撃が得意で、フェイントも織り交ぜてくる。

「くはっ!」

だが、その分力が弱く、力押しを跳ね返すほどの腕力も無い。

なので、剣を弾いた後に胴を薙ぎ払った。

口からいやな唾が出てとても痛そうだ。

「逆に木場先輩は爆発力が問題ですね」

「身に染みているよ…」

だけど、と木場先輩。

「君の場合はどうやっているんだい」

「そうだぞ。ナイトだったりビショップだったりまるでクイーンだ」

ゼノヴィアも追随する。

「それは単純ですよ。魔力の使う部分を瞬時に切り替えているんです」

「前の時に少し見えたけど、言う程簡単じゃないだろう?」

と木場先輩。

「簡単じゃなくても出来る人と出来ない人には雲泥の差があるんですよ。攻防力の移動は神ならざる者の必須技能です」

「神、か」

「とは言え、今は時間も有りませんし、結局剣技を磨くしかないですかね」

一朝一夕には難しいだろうし、レーティングゲームまでそう時間は無かった。

出来ない事を覚えさせるよりも今の二人には長所を伸ばし、苦手を克服する程度しか時間がないだろう。

そうしてわたしの夏休みは冥界旅行で終わったのだった。

一戦目のリアス先輩とソーナ会長の試合はリアス先輩の勝利で終わったが、辛勝だった。

イッセーがいつでも禁手化出来るようになったのは大きな進歩だなぁ。

あとイッセーが新しく乳語翻訳(パイリンガル)なるエロ技を開発し、女性のおっぱいの声が聞こえる何という魔力を開発していた…

女性限定だが思考が読めるなんてすごい魔法だ…最低だけど。

それと何がどうなったのかついに小猫ちゃんまでイッセーに落とされてしまったようで、帰りの列車で彼女はずっとイッセーの膝の上に乗っていた。

それは誰が見ても甘えた小猫そのもの。

いったい何があったの?マジでっ!!

いや、イッセーは漢気があってカッコイイのは知ってるけど、見えづらいから周りの評価は低かったのに…

まぁ気が付く人は気づくよね。

ともあれこれでまた一歩ハーレム王に近づいたようで何よりだ。

それとオカルト研究部の女子がなぜか全員なぜか兵藤家に居候する事になったらしい。

うちのエンゲル係数大丈夫だろうか…



夏休みが終わって新学期が始まると、イッセーのクラスに紫藤イリナが転校して来たらしい。

それも転生天使とか言う存在になったようだとオカルト研究部に顔を出した時に聞いた話だ。

転生天使とは聖書の神の不在で新しく天使が生まれなくなった天界に、悪魔とグリゴリの協力で悪魔の駒を元にして他種族を天使に転生させるシステムである。

「そう言えば、ミライさんってイッセーさんはともかくアーシアちゃんやゼノヴィアちゃんも呼び捨てですよね」

と朱乃先輩が言った。

「そう言えば、そうね」

リアス先輩も不思議そうに見つめ返す。

「そう言えばなんでだ?」

とイッセー。

「うーん、アーシアはもう家族みたいなものだし、ゼノヴィアと紫藤イリナですか…」

うーむ。

「年上は先輩を付けると習ったぞ」

ゼノヴィアもどうしてだと問いかけていた。

「狂信者って思考がぶっ飛んでるじゃないですか。苦手なんですよね、言葉の通じない人って。だからどうでも良いっていうか、関わりたくないと言うか」

「言葉の…通じない…」

ゼノヴィアがショックを受けていた。

「ま、まぁそう言う所もあるわね…」

リアス先輩が困った表情を浮かべた。

「だ、大丈夫ですよ。ゼノヴィアさんは変わりましたから。今はこんなに感情豊かで可愛らしいじゃないですか」

「アーシア…私は…私は…うぅ…こんな私が友達で良いだろうか…」

ゼノヴィアがアーシアに抱き着いていた。

「大丈夫ですよ。私はずっとゼノヴィアさんのお友達です」

アーシアはゼノビアを抱きしめてあやしていた。

「お前はこの間会ったミカエルも好きじゃねぇだろ」

とアザゼルが嫌な笑みを浮かべて問いかけた。

「そりゃそうですよ。善人ぶっているくせに結局教会の不正を正せない。正したとしたら表面化してようやく重い腰を上げただけ。アーシアの事も天界の神が残したシステムに異常がきたすからと追放したみたいですし、ゼノヴィアも神の不在を知ってシステムに負荷がかかると破門したんでしょう?それってゼノヴィアに何の罪があったのでしょうね?」

それに、と続ける。

「八つ目の大罪に虚飾を含める事もあるそうですよ?虚飾が罪と言うのなら、神の不在を黙ったままの天使ってなんなのですかね?システムの為に仕方がなかったと言う言い訳が通じるなら罪にはならないとでも?」

「それは…まぁ…な…ミカエル達も仕方がなかったんだ。あいつらは良くやっているよ」

とアザゼル先生。

「アザゼル先生も仕方がなかったとしか言えないじゃないですか。仕方ないを免罪符に出来ないんですよ。トップがそれを容認しているのはもう性質が悪くありません?」

アザゼル先生も苦い顔をした。

堕天使は欲を持ったが故に落ちた存在だが、人間味豊かな存在が多いそうだ。

その為だろうか、アザゼルに先生を付けているのは。それともここが学校だからだろうか。その両方かな。

「紫藤イリナってゼノヴィアが破門されたのを責めたと言うじゃないですか。破門された理由も考えずに。そう言う人間が天使になるんですよ。狂信者だから。すべてが自分が正しいと思っている人種なんですよ」

まぁ思考がぶっ飛んでいて極端に悪魔に転生したのがゼノヴィアなのだが。

「言い過ぎじゃないかしら」

とリアス先輩。

「そうですね。だから出来れば関わりたくないです。どうでも良い存在なんですよ。だから敬称を付けてないんです」

ガタと扉の向こうから走り去る音が聞こえた。

しまった…気配を読むのを怠った。

「追え、イッセー」

アザゼルが檄を飛ばす。

「お、俺っすか!?」

「良いから走れっ!」

「はいーっ!」

ドタドタと走っていくイッセーを見送る。

「ちょっとタイミングが悪かったな」

「ですね…」

イッセーがどうにか追いつき連れ戻してきたのは紫藤イリナだ。

オカルト研究部の部室にイッセーに手を引かれた入ってくる。

その眼は泣きはらしたのだろう。真っ赤だった。

「すみません、アザゼル先生…先生の協力が必要です」

とイッセー。

「ごめん…ごめんなさい…アーシアさん…ゼノヴィア…私…謝ったけど…分かってなかった…ぐす…」

「イリナ?どうしたんだ」

ゼノヴィアが駆け寄るが再び泣き始めてしまうイリナ。

「私だけ…そんな…知らなくて…おかしいって…分からなくて…」

「おい、イリナ…イリナっ!」

「もう、信じられなくて……」

イリナを抱きしめるゼノヴィアは理解が追い付いていないよう。

「あー…これは確かに俺の力が必要か」

「……不可抗力ですよ?」

イリナの光力が変質していた。

「わぁーってんよ」

アザゼル先生に釈明する。

「ちょっと、何がどういう事よ」

「はい、イリナさんがどうしたんですか」

リアス先輩とアーシアが他の部員を代表して呟く。

「イリナ、お前…翼を見せてみろ」

アザゼルの言葉にイリナが翼を生やすがその色は黒く染まっている。

「堕天したな」

「なっ…なぜだっ!!」

信じられないとゼノヴィアが叫ぶ。

「堕天ってのは欲を持った天使が堕ちるもんだ。だがな、神を信じられなくなった天使も堕ちるんだよ」

「なっ!?」

アザゼル先生の言葉にゼノヴィアが驚く。

「イリナはミカエルの転生天使だ。そのミカエルを否定するような事を聞いちまった。そして思ったんだろう、そうかもしれない、と」

「別にわたしも仕方がないとは理解してますよ。一応ですが」

理解はしている。ただ納得しないだけだ。

「んな事もわぁーってんだよ。だが、その言葉をイリナは深く受け止めちまったのさ。堕天するほどにな」

どうにかゼノヴィアとアーシアが落ち着かせ、イリナはアザゼル先生が預かる事に。

イリナは今さら教会の元に戻ることは出来ないだろう。堕天使の総督なのだから彼以上の適任も居ない。

彼女はグリゴリに所属する事になり、アザゼル先生の取り計らいで兵藤家で心のケアを行う事になった。

わたしの近くで大丈夫かと心配したが、しばらくすると堕天した自分を受け入れたみたいだった。

とりあえず、アザゼル先生から三勢力同盟に尽力する補佐としての生き方を提示されたらしい。

そしてゼノヴィアからは…

「ミライよ。君の考えも分かる。だがこうして私も、イリナも悪魔と堕天使になったのだ。そろそろ先輩と呼んでくれてもいいのではないか?」

そうイリナを連れてわたしの部屋に突撃して来た。

恐らくゼノヴィアなりに気を使ったのだろう。

紫藤イリナはどうすれば、とおろおろしていた。

「はぁ…分かりました。ゼノヴィア先輩、イリナ先輩。これからよろしくお願いしますね」

「うむ」

ゼノヴィア先輩が満足に頷く。

「ほら、イリナも」

「だ、堕天使になっちゃったけど、よ、よろしくお願いしますっ!」

勢いよくペコリと頭を下げるイリナ先輩。

「こちらこそ。それとごめんなさい。イリナ先輩を堕天させたかった訳じゃ無いのは分かって欲しい」

もしかしたらアザゼル先生が扉の前にイリナ先輩が居るのに気づいて話を振ったのではと疑ってしまう。

「ゆ、許します。堕天したからこそ今まで見てこなかったことにも気が付いたから悪い事ばかりじゃないわ」

とは言え、信仰の根幹に亀裂を入れてしまったのは事実。多少罪悪感は感じているのよ、これでもね。

それと彼女の両親。

彼女の両親は両方とも教会の関係者で父親に関しては元聖剣の使い手だったとかで、今はイギリスに居るらしい。

娘が天使になってさらに堕天したなんて知ったらどうなるだろうか。

アザゼル先生が連絡を入れたようだが、不祥事も不祥事の為すぐに来日は出来ないらしい。

イリナ先輩の事は心配していて理解も示しているらしいのだが…

はぁ…最悪わたしが責任を取るしかないのかな。

あとイリナ先輩は堕天した時に弱った心をイッセーに慰めてもらったからかイッセーに好意的だ。

ハーレム要員が増えるのも時間の問題かもしれない。

ゼノヴィアもイッセーにモーションをかけていて、最近では悪魔のアーシアと堕天したイリナ先輩を連れて三人でイッセーに迫っているみたいだ。

天使では肉欲に溺れれば堕天するらしいけれど、もう堕天しているしね。関係ないよ。

まぁヘタレなイッセーだから最後のラインは越えていない様だが、イッセーのリア充度が留まる事を知らない。

イリナ先輩は天界から支給されていた試作型の聖魔剣はアザゼル先生経由で天界に返したらしい。

剣士の彼女が丸腰ではとわたしは急遽武器を作る事にする。

堕天させてしまった罪滅ぼしの面もある。

刀を振っていたみたいだし、白夜みたいなものを一本鍛造すればいいか。

堕天使とは言え光力は使えるのだから悪魔特攻は聖剣でなくても大丈夫だろう。


兵藤家の地下の訓練場で、わたしは訓練着を着た小猫ちゃんと対峙している。

彼女の頭からは耳が生え、尾てい骨あたりからは尻尾が生えている。

小猫ちゃんは猫又で、その中でも希少な猫魈と言う種族らしい。

長く猫又の力を嫌っていたようなのだが、心境の変化か最近修練を始めたようだ。

「いきますっ!」

小猫ちゃんの悪魔の駒(イーヴィル・ピース)は戦車。

防御力と腕力の向上がクラス特性だ。

小猫ちゃんは生命エネルギー…気や仙術と呼ばれるものを駆使して戦うスタイルを極めたいようだ。

「はっ!」

バシ、バシ、と拳打が響く。

拳打に乗せ相手に気を送り込むことにより相手の内側にダメージを与える事を得意としていた。

「まだまだ気の練り方が甘いかな」

「くっ…やぁっ!」

いくら必殺の一撃も当たらなければ意味がない。

抜いた掌手で小猫ちゃんを吹き飛ばした。

「あぐっ…」

地面を転がる小猫ちゃんはどうにか受け身を取ったようだ。

「今ので気を流し込んでいれば相手は倒れる。柔拳とはそう言うものだよ」

「くっ…おねがいしますっ」

小猫ちゃんはヨロヨロと立ち上がり、構えた。

ただ吹っ飛ばしただけだがそれなりのダメージはあったらしい。

「小猫ちゃんっ」

修行に付き合っていたアーシアが小猫ちゃんに駆け寄り神器(セイクリッド・ギア)聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)で回復させていた。

「ありがとうございます、アーシア先輩。ミライさん…まだまだ…です」

そう言った小猫ちゃんは再び地面を蹴って攻めてくる。


「おや、今日はミライに練習に付き合ってもらおうと思っていたのだが、先約があったか」

「あら、本当」

訓練場に現れたのはゼノフィア先輩とイリナ先輩。

彼女達もたまにわたしを練習相手に模擬戦をしている。

「しかし、本当にミライちゃんて謎な存在よね。魔王様やアザゼル様よりも強いんでしょう?」

とイリナ先輩が言う。

「コカビエルを子供のように斬り飛ばし、白龍皇もまるで相手になっていなかったぞ」

ゼノヴィアはその現場を間近で見ていた。

「うわぁ…それでいてケンポーまで使えるんだから、ほんと笑っちゃうわね」

「と言うより、小猫の完成系がまさにあれだろう。ミライがその気になれば小猫のように相手に気を流し込む事も造作も無いらしい。私も一度食らってみたが、アレは効くな。そしてあの拳法はそのためにあるような動きだ。なぜミライが使えるのかという疑問は尽きないがな」

「なるほどねぇ。まぁミライちゃんて剣術もすごいから今さらよね」

実戦を想定した邪剣ばかりを練習して来たのだろう二人の剣は人類の研鑽と言う流派は感じられない。

ただ聖剣の能力を操り悪魔を倒せれば良いと言う事なのだろう。

その事を思い直したのか二人は最近わたしに師事していた。

「ギャスパーからミライは時間を止めれるらしいとも聞いたな。魔法を使っている所も見たぞ」

「うへぇ…うっかり彼女の前に出てくると神ですら滅ぼされるんじゃない?」

「…神は滅ぶものな」

「……ええ」

教会組が自分の言葉でダメージを受けていた。

わたしは小猫ちゃんにどこからどう気を通すのか、自分の体を持って教え込んでいる。

その都度吹き飛ばされダメージを負う彼女をアーシアが回復させている。

イッセーも遠くの方で木場先輩と訓練しているようだ。

皆が訓練に身が入っているのはレーティングゲームの二戦目が近い為らしい。

体育祭も有ると言うのに体が一つでは足りなくらい忙しそうだ。

「っは……はぁ…はぁ…」

小猫ちゃんが肩で息をしてついには倒れ込んだ。

「小猫ちゃんっ」

倒れ込んだ彼女にアーシアが駆け寄る。気絶しているようだ。

「まぁ少し寝かせてあげて」

「はい…お疲れさまでした。小猫さん」

アーシアが小猫ちゃんの頭を自分の膝に乗せた。

「さ、次は私達の番だな」

「待ってたんだから」

やる気のゼノヴィア先輩とイリナ先輩。

「えー…わたしに休憩は?」

「何、必要ないだろう」

とほほ…もう少し彼女たちの訓練に付き合う事になりそうだ。


イッセー達は冥界にレーティングゲームの為に行ってしまったようだ。

イリナ先輩もアザゼル先生に付いて冥界入りしている。

後から聞いた話だと、旧魔王派の禍の団(カオス・ブリゲード)の連中が反乱を起こしイッセー達も巻き込まれたらしい。

イッセー達のレーティングゲームの相手は旧魔王派に内通していたらしく、騒ぎを起こすと同時にアーシアを攫い、救出した後になぜかイッセーの目の前で次元の狭間に飛ばされたらしい。

偶然通りかかったヴァーリが助けてくれたと言うがイッセーは暴走してしまった。

アーシアが殺されてしまったと思ったイッセーは暴走して、以前白龍皇が使った覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を発動させて相手は倒したがそれなりの代償を支払ってしまった。

一万年を生きる悪魔の寿命がこのままでは百年ほどになってしまったらしい。

アーシアにはエクスカリバーの鞘にこれでもかと守護の魔法を付けていたから次元の狭間でも死ななかったとは思うけど、わたしでなければ救出は困難だよね。

と言うか、何の用事で次元の狭間にいたのかね?その辺の情報はわたしの所に来てないから分からないか。

イッセーの寿命は小猫ちゃんが仙術の応用で少しずつ生命力を回復させているみたいだ。

それでも数日イッセーは寝込んでしまっていた。

まったく、すぐに無茶をする兄だ。

体育祭は、父さん母さんともビデオカメラやデジカメを持って応援しに来てくれた。

イッセーは途中参加になってしまったが、体育祭は無事に終了。

まったく、春からどれほどの事件に巻き込まれるのかね、イッセーは。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧