| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパー戦隊総決戦

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十三話 何故かこの地にその九

 彼は講堂に皆を集めてだ。そのうえで彼等を前に話す。
「まず重要なのはだ」
「はい」
「それは一体」
「前向きになることだ」
 こう全員に話すのだった。
「所謂ポジティブシンキングだ」
「何だそれ」
 ジャンはその単語を聞いても首を捻るだけだった。
「ポジ何とかかんとかってよ。何なんだ?」
「だから。積極的に考えることなのよ」
 その彼に話したのはらんるだった。
「何でも果敢に、かつ前向きで積極的にね」
「つまりいつも通りのジャンじゃないのか?」
 番はそれを聞いて言った。
「そういうことになるよな」
「そうか。じゃあ俺はいつも通り行くぞ」
「それはいい」
 ゴリもそのこと自体はいいとした。あくまでそのこと自体は、である。
「それはだ」
「じゃあガシガシ行く!俺このまま行く!」
「同時に慎重に進むことだ」
 ところがゴリはこうも言うのだった。
「慎重にだ」
「それは無理だな」
 ハイドはそれを聞いてすぐに言い切った。
「ジャンだけがそうではないが」
「っていうと」
「心当たりのある面々が多過ぎて」
「もう誰が誰なんだか」
 皆それぞれ心当たりがあることだった。そう、まさに全員だった。
「皆結構無鉄砲に動く時があるからなあ」
「普段慎重な人でもね」
「飛び出たりするから」
「そうそう」
「もう誰でもね」
「自覚することも大事だ」
 ゴリの話は極めて理知的かつ合理的なものだった。
「自分でわかるとそれをどうかしようと考えるようになるからだ」
「だからなんですね」
「自分を知って、ですか」
「敵を知り己を知れば」
 ゴリの今度の言葉は中国の兵法書からのものであった。
「百戦危うからずだ」
「それじゃあ余計に」
「自分を知らないと駄目なんですね」
「最初はそれになる」
 彼はまた言った。
「それから前向きかつ慎重に動くことだ」
「前向きに、慎重に」
「そうなんですね」
「まずは自分自身を知ることですか」
「最初は」
「そうだ。自分についてよく考える」
 心理学者の言葉になっていた。その白い服に実によく似合っている。
「それをしていくことだ」
「自分にとなると」
「何か欠点ばかりで」
「気恥ずかしくなるし」
「しかしそこからだ」
 ゴリは照れ臭そうな顔になる彼等に対しても述べた。
「そこから全てがはじまる。欠点も長所も」
「長所もなんですか」
「そうだ、自分のことをわかりそのうえでさらに考えていく」
 こう皆に述べる。
「そうしていくことだ」
「成程、それなら」
「それぞれ考えていくか」
「さて、それではだ」
 ここで言葉が変わった。
「次は座禅だ」
「えっ、座禅!?」
「座禅って!?」
「そうだ、座禅だ」
 それを言うのだった。
「そのうえでそれぞれの内面を確かめる。いいな」
「うわ、とんでもない方向に話がいってるし」
「何か今までで一番嫌な話の方向に」
「ずっと正座なんて」
「いや、正座はしない」
 それはないのだという。
「座禅独自の座り方がある」
「そうなんですか」
「正座はしないんですね」
「そうだ。では正座を通じて自分自身を見詰めていこう」
 こう話してだった。皆はそれを聞いてであった。早速僧院の中で座禅に入った。師匠や支援者達も一緒に大勢で座り禅に入る。
 後ろには協力者の僧侶が回っている。その手には幅の広い薄い棒がある。それを持ったうえで彼等の前後を回っているのである。
 皆それぞれ叩かれていく。肩を次々にだ。
「喝!」
(これも修業なんだ)
(もう何でもありね)
 皆道着のまま心の中で呟く。今はそうした修業であった。
 彼等の修業はまだまだ続く。高野山に来てしまったのはまさに運命であった。彼等にとっては実にいいものであった。あらゆる意味で。


第十三話   完


                       2010・4・14 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧