ボーイズ・バンド・スクリーム
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⭐︎第30話 混じり合う叫び
前書き
みなさま、おつトゲです!しばらくバンドリコラボが続きますが、書きたかったところなので…お付き合いいただければと思います!
「ワンクラの皆さん、こんにちは。今日は来てくださってありがとうございます!Roseliaのマネージャーの晴海です!よろしくお願いします!」
「こんにちは。こちらこそ、お忙しいところ日程を組んでくださり、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
Roseliaの所属する芸能事務所で対バンについての打ち合わせが開かれている。Roseliaの5人もONES CRY OUTの5人も勢揃いしている。瑞貴と友希那は以前に会っているが、それ以外は初顔合わせである。軽く自己紹介をして本題に入った。
「…私は今回の対バンには反対です。貴方たちの過去のライブ映像を見ましたが、到底Roseliaに並ぶものではありません。特にボーカル。表現力の欠けらもありませんね」
「ちょっと紗夜!?」
友希那が狼狽している。以前、RiNGのカフェで上品な佇まいの落ち着いた女性という印象を受けた。紗夜の爆弾発言で持ち前の低音ボイスが裏返っている。
「瑞貴、何やこの失礼な女。紗夜言うたか?君みたいなやつに限って下手くそなんや。うちと対バンできる力ないんやったら家帰ってくれへん?」
「なっ、何ですって!?」
売り言葉に買い言葉で俊哉が切れ味鋭く言い返す。邂逅一番、瑞貴を馬鹿にされたことに腹が立ったのだろう。バンド内の年長者だが彼の言葉は毎回オブラートを貫通している。
「落ち着いてください、俊哉さん。俺たちはまだお互いのことをよく知らないんです。これから歌を聴くんですから実力はそこで判断しましょう。紗夜もそれでいいだろ?」
「…はい」
「…とりあえずモノを見な酷評もできひんし」
瑞貴は冷静に2人を諭す。瑞貴の歌唱力に関しては散々ネットで散々叩かれている。高低差があまりない、単純に下手くそ、演歌ロイドなど揶揄のオンパレードだ。自分の歌が荒削りで拙いものであることは彼自身が一番理解している。ムキになって言い返すより実力で黙らせるしかないと考えていた。
「…それでは、始めます」
それぞれの曲を聴くため事務所のスタジオに移動する。最初に歌うのはONES CRY OUT。曲は『終わりの先へ』。王道ロックでありダークなサウンドから瑞貴が自身の叫びを歌い上げる。
(…これは、LOUDER?いえ、転調もないはずなのに。どうして似た雰囲気を感じるのかしら)
紗夜は彼らの歌に息を呑んでいた。演奏は高水準だ。それよりも驚くべきは瑞貴の表現力である。ライブ映像は2年前のものであった。抑揚のつけ方は上手いが高低差のあまりない平坦な歌声。それが、たった2年でこれほどレベルが上がるのだろうか。おそらく天性のものだろうが、血の滲むような努力をしてきたことは想像に難くない。彼女は己の発言を後悔した。
「ワンクラの皆さん、ありがとう!やっぱり私の目に狂いはなかったわ!対バンが楽しみです!」
「ありがとうございます。精一杯、歌いますのでどうかよろしくお願いします」
晴美の拍手に釣られてRoseliaの面々も自然と拍手をしていた。瑞貴は温厚に頭を下げている。今度はRoseliaが曲を演奏する番だ。友希那も他のメンバーのも瑞貴より年下とは思えないほどオーラがある。まだ芸能事務所に入って日は浅いはずだが既に貫禄がある気がする。ずっと音楽に真摯に打ち込んできたのだろう。
曲が始まった。BLACK SHOUTというらしい。サビから始まる曲であり、どこか神々しさすら感じるイントロだ。ダークなサウンドはどこかワンクラに近しいものを感じる。だがワンクラにはないコーラスがあった。ワンクラでは俊哉がベースの完成度が落ちるからと嫌がっており基本的には瑞貴だけが歌っている。
(うーん。うちはうちで悪くないけどコーラスが入るとバンドの一体感があって良いな)
瑞貴は素直に感心していた。演奏技術もさることながらボーカルの歌唱力も高い。ワンクラにとっても良い刺激になるだろう。対バンがますます楽しみになった。
「…本当に良い曲だな。お互いに切磋琢磨できそうだ。あらためてよろしく頼む」
「ええ。よろしくお願いするわ」
瑞貴は友希那と握手を交わす。華奢な手だな、と瑞貴は思った。この手でマイクを何度も何度も握って修羅場を潜り抜けてきたのだろう。彼は今さら武者震いした。
「友希那ってば、瑞貴さんが歌ってるライブ配信を見て目を爛々と輝かせてましたからねっ!私も楽しみです〜☆」
「ちょっとリサ!?余計なことを言わないでちょうだい…」
「ごめんごめんっ」
「…なんか嬉しいな。励みになる」
「貴方まで。からかわないで…」
「いや、そんなつもりはなかったぞ?」
ベーシストの今井リサが瑞貴に明るく話しかけてくる。先ほどまでの剣呑な雰囲気から一転して穏やかな空気が流れていた。ワンクラの歌が彼女たちに届いたことに彼は安堵した。互いの実力もある程度把握したところでライブの日程や持ち時間を大まかに話し合った。セトリはこれから決めていくことになる。対バンであるため持ち時間に少し幅を持たせている。小さい箱のワンマンよりは自由度が高いだろう。
(あと問題があるとすればワンクラ側の楽曲が少ないことか…新曲、頑張れば1曲ぐらいはできそうか)
「…あの、白石さん」
打ち合わせも終わり帰ろうとした瑞貴に紗夜が声をかける。
「どうした?」
「すみませんでした。貴方の努力も知らずに馬鹿にしたような発言をしてしまいました」
「気にすんな。散々、言われてるからな。良いライブにしよう」
「…はい!」
打ち合わせの際にボーカルとしての瑞貴を酷評したことを気にしていたのだろう。紗夜は律儀に謝りに来たようだ。瑞貴に怒られるとでも思ったのだろうか。どこかほっとしたような表情をしている。
「紗夜。俺もすまんかった。君のギター、恐ろしく練習量が積まれてる。全然下手なんかやあらへん」
「鈴木さん…ありがとうございます」
俊哉も売り言葉に買い言葉で紗夜に下手くそという言葉を投げつけてしまった。音楽に関して完璧主義な彼は彼女のギターがもの凄い修練の上に成り立っていることを理解したのだろう。
「紗夜〜?帰るよ〜!」
事務所の奥の方からリサの声がした。紗夜はおおかたメンバーに言わずに抜けて来たのかもしれない。
「…私も良いライブにしたいと思っています。それでは、失礼します」
「ありがとう。またな」
紗夜はそれだけ言うと踵を返した。対バン前にお互いがギスギスしたままでいるのは瑞貴も本意ではない。彼女の背中を何気なく見送りながら彼はこれから始まる対バンに胸を躍らせるのだった。
後書き
最近はガルパに熱中しすぎて、あまり執筆の時間が取れていませんでした。お待ちしていた方々いらっしゃっいましたら、すみません。またバンドリコラボをするにあたって時系列に矛盾が生じないように構成を考えながら書いているので時間がかかるかもしれません。気長にお待ちください!今後ともよろしくお願いします!
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