ボーイズ・バンド・スクリーム
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⭐︎第29話 一逢のFull Glory
前書き
みなさま、おつトゲです!今回もバンドリとのコラボ会です!トゲトゲがベイキャンプでライブした後、ダイヤモンドダストと対バンするまでは少し間隔が空いているのでワンクラの出る幕があまりない…それでは、本編をどうぞ!今回は友希那視点です!
「で、話って言うのは?」
「そうね。今度の対バンについてなのだけれど…」
RiNGの喫茶店にて互いに向かい合って座る友希那と瑞貴。彼女は内心、驚いていた。髪型や目元もそうだが、声質が特に若い頃の父に似ている。ワンクラのライブ映像は、その一部が動画投稿サイトで配信されている。彼らのデビュー曲である『終わりの先へ』を見た彼女は初めてLOUDERを聴いた時と同じ気持ちになった。うねるサウンドに、このシャウト。抑揚こそあまりないが充分すぎる迫力だった。
「それなんだけど…目的は何だ?俺らはインディーズで名前もそこまで売れてない。俺が白石大介の孫で話題性が欲しいだけなら正直、他を当たってほしい。俺たちは歌に全部ブチ込めるやつらとしか対バンする気はない」
「それは…」
友希那は自身の胸の内を明かすべきか逡巡していた。瑞貴が彼女の父親の若い頃に似ているから。彼らの曲に、どこか惹かれるものがあったから。それはあまりにも不純な動機ではないか、と。彼は音楽業界では有名な白石大介の孫である。祖父の七光りで演歌歌手になるのではなくロックバンドのボーカルでいることを決意した。それは茨の道だ。当然、世間からの風当たりもあり音楽に対する情熱は生半可なものではないと容易に想像がつく。
浮ついた気持ちで対バンを申し込むべきではなかったかもしれない。彼らにも彼らのプライドがある。友希那は二の句が告げない状態になってしまった。
「話せないなら無理に話さなくていい。ただ、この話はなかったことにさせてもらう」
「待って…!ちゃんと話すわ。話を、聞いてちょうだい…!」
瑞貴は一瞬、辛そうな表情を見せてから真顔に戻った。自分の信念に従って断る姿勢を見せているが、友希那の葛藤を感じ取ったのかもしれない。優しい人なのだろう。
「…分かった。聞くよ」
友希那は自身の気持ちを包み隠さず話した。
「対バンをして、一緒に高みを目指したいの」
「一緒に高みを目指したい、か…うん。一緒にやろう。よろしくな、友希那」
「ありがとう。よろしくお願いします」
瑞貴は友希那の誠意を受け止めてくれたようだ。さっきまでの真顔とは打って変わって柔和な表情になる。彼女は内心、安堵の溜息を吐くと同時に彼の顔をつい見つめてしまった。
(…やっぱり似ているわ。父に)
「どうした?対バンまでに打ち合わせとかあるかもしれないから、連絡先は…おっと、事務所を通したほうがいいか?」
「ごめんなさい。なんでもないわ…私に連絡してちょうだい」
友希那は瑞貴と連絡先を交換する。
「うーん。俺、そんなにお前の父さんに似てるのか?」
「…そうね。あなた、読心術の心得でもあるの?」
「無いよ。なんか顔が気になってるのかなって思ってさ」
勘で初対面の人間の心を読んだというのだろうか。この男は只者ではないかもしれない。それとも表情に出ていたのだろうか。
「じゃあ俺はバイトだから。今日はありがとう。また連絡、取り合おうぜ」
「…少し、ゆっくりしていこうかしら。あなたにオーダー頼める?」
瑞貴は怪訝な表情をしていたものの、すぐ真顔に戻り席を立った。当然、RiNGは店員指名制ではないからだ。
「良いけど…香澄もいるぞ?」
「あなたが良いわ」
「?了解。ま、今空いてるから着替えだけしてくる。待ってろ」
友希那は自身の言動に内心、驚いていた。今まで音楽以外のことにあまり興味を持ってこなかった。父親の無念を晴らす。ただ真っ直ぐにFUTURE WORLD FES.で頂点に立つことを考え一心不乱に音楽に打ち込んできた。フェスで優勝した後も更なる高みを目指して歌を歌い続けている。今でこそライブハウスに出入りするうちに他のガールズバンドとの交流は増えた。しかしプライベートで彼女と交流があるのはRoseliaのメンバー以外では香澄ぐらいだろう。自身から、あまり積極的に人と関わってはいないはずだ。
やはり父に似ている男性というのは、それだけ友希那にとって興味深い存在なのだろう。口調は男らしく少し乱暴な口調だが、声が落ち着いている。歳上なのだろうか。落ち着いた低音が耳に心地いい。
「アールグレイのアイスを1つ」
「かしこまりました」
RiNGの制服はポロシャツだ。黒を基調としており襟やRiNGのロゴなど所々に紺色が使われている。
「お待たせしました」
「…なかなか様になっているわね」
「ありがとう。青色が好きだから俺もこの制服が気に入ってる。では、ごゆっくりどうぞ」
「ええ、ありがとう」
バイト中であり瑞貴も1人の客と長話をするわけにもいかないだろう。給仕をそつなくこなして彼は友希那のテーブルを後にした。
(…また来ようかしら)
友希那はアールグレイを飲みながら、そんな風に考える。これからの対バンがより楽しみになった。彼女は微笑みながら久しぶりにゆったりとした時間を過ごすのだった。
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