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ソードアート・オンライン stylish・story

作者:黒神
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第十四話 愛とは?

シュウとリーダーはそれぞれの得物をぶつけ合い、力量を測っていた。
シュウが【スティンガー】で弾き飛ばそうとするとリーダーはそれを、少し後退したが短剣で受け止める。

「くっ。流石は真紅の狩人の名前を持つだけの事はあるようだな?パワーとスキルが今まで殺して来た奴とは桁違いだ」

「アンタこそ、俺のスティンガーを初見で止めたのはアンタが初めだ」

「俺も久しぶりに本気を出せそうだ。いくぞ」

リーダーが構えると持っていた短剣が赤く光りだし、シュウに向かって振り下ろした。シュウはそれをリベリオンで受け止めるが・・・

(パワーが・・・上がった!?)

「うおおおおおお!!!」

リーダーが振り切るとシュウはその反動で吹き飛び、木に激突してしまった。
シュウはカハッと肺の中の酸素を吐き出してしまうが、顔は笑っていた。これ程まで楽しませてくれる敵に出会えた事にシュウの心の中は恐怖よりも喜びが大きかった。

「今の攻撃は効いたな。リアルだったら一発KOだったな・・・」

「どうした?狩人の力はこんなものなのか?ならば今までの奴、同様にお前を殺すぞ?」

「Getcha(まさか)。あれが俺の全力だと思わねぇ事だ。パワーにはパワーをだ」

シュウはリベリオンを消すと最強の攻撃力を誇る、べオウルフを装着し構える。

「ちゃんと受けろよ?この武器は加減が出来ねぇからよ?」

「ふっ、面白い。C’mon(来いよ)!!」

シュウはべオウルフの力を最大限に溜めるとブーツの噴出力を生かし、地面を滑るようにリーダーに近づくと・・・

「Chew on this(これでも喰らえ)!!!」

右のストレートパンチをリーダーのフードで隠れている顔面目掛けて、放つ。リーダーはそれを斧で受け止めようとしたが短剣と右篭手が振れた瞬間・・・

バキィィィン!!

と、鈍い音を立てて短剣が砕け散った。
それもそうだろう、べオウルフは使い手によっては地面を砕く程の威力を誇っている武器なのだから、斧なんか眼も暮れないだろう。そしてその右の鉄拳は顔から反れた物の胸部に直撃し、リーダーを吹き飛ばした。そして吹き飛んだ後、地面に転がり、倒れ付した。
リーダーのHPは今の攻撃で2割近くまで減っていた。リーダーの危険に感付いた残りの二人は、リーダーを庇うように出る。そしてシュウはラフィン・コフィンに戦闘力が残されていない事を確認するとべオウルフをリベリオンに替えると背中に担ぐ。

「逃げな。もうじきキリト達が仲間を引き連れてここにやってくると思う。ここで無駄死にしたくねぇだろう?」

シュウの言葉に促されたのかメンバーはリーダーを両脇から担ぐと、その場を後にしようとしたが、シュウがリーダーに向かって言い放つ。

「アンタとは別の形で会いたかったな。そうすれば、ダチになれたのによ」

「ふっ。知り合っていたとしても俺は殺しを生きがいとしている奴だ。すぐに決別するに決まっていたさ。だが・・・お前とは・・・」

それだけ言うとラフィン・コフィンは霧に紛れ、姿を消して行った。
最後の言葉はシュウには聞き取れなかったみたいだった。シュウは黄金林檎のメンバーと合流しようとするとキリトが馬に乗ってやってきた。恐らく時間短縮のためだろう。

「よう、キリト。遅かったな?」

「シュウ。他の人達は?」

「大丈夫だ。ラフコフに襲われたが、シュミットと俺で追い払った。HPを削られたがそんなに危ねぇ程でもねぇよ。それで・・・何か分かったのか?」

シュウがキリトに問いかけると黄金林檎のメンバーと合流してから話すと言い聞かせ、合流を果たし、メンバーに自分の推測を話し始める。

~~~~~~~~~~~~

キリトの推測は結婚していたグリセルダとグリムロックの共有アイテムボックスから指輪が消えていた事を重点とした殺人者の決定だった。夫婦となったプレイヤー同士ではアイテムの共有が可能だったが指輪はグリセルダの元から消えていた。この事から一つの事が結びつく。

「じゃあ・・・グリムロックが俺にメモを忍び込ませ、グリセルダを殺した張本人だって言うのか!?」

「直接手は下さなかったと思う。恐らくは・・・」

キリトが自分の考えを述べる前に、シュウが自分の考えを述べる。

「なるほどな・・・だから殺人ギルドのラフコフの連中がここに居たってわけだ。グリセルダの殺害や指輪の事を知っている黄金林檎のメンバーをこの機会で葬り去る事が出来れば、真相を闇の中に封じ込める事が出来るって事だろう?キリト」

「ああ。そしてこの事を彼が見ていない訳がないからな」

メンバー達と話しているとアスナがハットをかぶり、サングラスをかけたの男性・・・グリムロックにレイピアを向けながら連れてきた。

「詳しい事は本人から聞くとしよう」

それを見たヨルコは涙声で問いかける。

「どうして・・・?どうして奥さんのグリセルダさんを殺してまで、指輪をお金にする必要があったの!?答えなさいよ!グリムロック!!」

「金?金だって?」

ヨルコの意見にグリムロックを貶すように嘲笑しながら答える。

「私は金のためにやったんじゃない。私はどうしても彼女を殺さなければならなかった!!」

「殺しが必要な程の理由か・・・何故だ?グリムロックさんよ」

シュウは目を細め、その理由を尋ねる。

「私とグリセルダは現実世界でも夫婦だった。その仲の良さは一度もケンカをした事も無かったのだよ。だが・・・ここに来て彼女は変わってしまった」

グリムロックはデスゲームと化したこの世界での恐怖に日々怯え、心を蝕まれて行ったが彼の妻、グリセルダは現実世界よりも輝いていたらしく、グリムロックも認めざるを得なかったみたいだった。そしてグリムロックは心の中で自分の知っている妻では無くなったのだと悟り始め・・・

「ならば!殺人が通用するこの世界で永遠に思い出として残したかった私を誰が攻められるだろう!?」

それを聞いていたメンバーは肝を抜かれていた。そんな馬鹿げた理由で殺人をやった事に・・・。キリトはグリムロックに聞き返す。

「アンタはそんな事で奥さんを殺したのか!?」

「十分すぎる理由だ。君にもいずれ分かるよ探偵君。愛する者が自分の中から消えて行く時には・・・」

バキィン!!!

グリムロックが言い切る前に彼の体が突然吹っ飛んだ。
そしてそこには自分の右手の拳を振り切ったシュウの姿が残っていた。そしてシュウは殴られた顔を抑えながら悶えているグリムロックの胸倉を持ち上げる。
シュウの目にはチャラチャラした表情ではなく、今にでも殺すぞと思わせるような殺意に満ちてた。

「テメェ・・・どれだけ心が腐ってんだ。変わってしまったから殺した?愛情が消えてしまったから思い出にするだと?寝言を言ってんじゃねぇよ!!俗物が!!!」

「き、貴様に何が分かる!?人を愛した事のない若造に私の気持ちが分かる筈が・・・」

「この・・・バカ野郎!!!」

シュウが大声で一言、言い放つと周りの空気が一気に重くなり、プレッシャーに満ちていた。キリトやアスナもここまでキレたシュウは初めて見たのか冷や汗を流していた。

「まだ気付かねぇのか!?テメェがグリセルダに抱いていたのは『愛情』じゃねぇ!!唯の『所有欲』だ!!テメェが彼女の事を思い出と言った瞬間から、彼女を【者】としてじゃなく【物】として見てんだよ!!そんな奴が『愛』なんて言葉を軽々しく口にしてんじゃねぇよ!!!」

シュウの言葉にグリムロックは返す言葉が見つからず、俯く。シュウはグリムロックを投げた倒すとそれを見ていたキリトとアスナが近寄ろうとしたがメンバーが言い聞かせる。

「この男の処遇は俺達に任せてくれないか?」

それを見たキリトとアスナは頷き、同意した。そしてグリムロックはメンバーに引き摺られ、その場を去っていった。そしてその事件を終幕を思わせるかのように日の出が上がっていた。シュウが頭を掻きながらキリトとアスナに寄って来た。

「あ~あ。俺らしくもなく、怒鳴っちまったぜ」

「シュウがあそこまで怒るなんて思わなかったな」

「ホントよ。何時もなら関係ないみたいな事を言って無視してたくせに」

アスナの言葉が少し引っかかったのかキリトがアスナに問いかける。

「何時もってどう言う事だ?まるで知り合いみたいな言い方だな?」

「あっ!それは・・・」

アスナが言葉に困らせているとシュウが言い聞かせる。

「別に俺達の関係を知られても良いんじゃねぇか?俺達はもうダチなんだからよ?」

「分かったわよ。キリト君。これから話すことは絶対バラさないでね?」

「バラした時はお前の明日がないと思え?キリト」

シュウとアスナの顔が黒くなっている事に気付くとキリトは冷や汗を流しながら、頷く。

「良し。俺とアスナは兄弟なんだ」

「はっ?」

シュウの言葉にキリトは間抜けた声を発して、目を点していた。

「前に俺には妹がいるって話しただろう?それがアスナなんだよ」

「えええええ!?シュウとアスナが兄妹!?」

「し~っ!!声が大きいよ!キリト君!!」

「ご、ゴメン!!でも・・・」

キリトがシュウとアスナを交互に見て、自分の意見を述べる。

「似てない・・・よな?」

「兄弟だからって似るモンじゃねぇだろう?キリト」

「そうよ。私がこんなチャラチャラしたお兄ちゃんに似てるなんて言われたら、傷つくわよ」

「おいおい!酷い言い様だな!?アスナ。流石の俺も傷つくぜ!?」

「現実論を述べただけです!!」

アスナの棘のある言葉にシュウはガックリと、うな垂れていた。アスナはそんなシュウを無視してキリトを連れて街に戻ろうとしていた。

「さてと・・・町に帰りましょうか?ご飯も食べ損なっちゃたし」

「シュウは置いてて良いのか?アスナ」

「良いの!それにお兄ちゃんの心は強いって知ってるから大丈夫よ」

アスナがシュウの見ている姿は慕っている事を思わせる表情だった。リアルでもアスナの事を一番に思っていたのはシュウだった。あまり話さなかったものの自分の話し相手になってくれたり、アスナの心を暖めていた。

「あんな事言ってて、アスナもシュウの事を大切に思っているんだな」

「そ、そんなのじゃないよ!!もう・・・今日の朝ご飯はキリト君の奢りだからね!!」

「ええ!?」

そのやりとりを見ていたシュウは笑みを零していた。

「その調子で自分の殻を壊せよ?アスナ。キリト・・・お前ならアスナを助けてやる事が出来そうだな。頼むぜ?」

そしてシュウは遅れて二人に付き添い、朝食を取ったみたいだった。 
 

 
後書き
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