ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第147話 愚か者たちに粛清を!八王の怒りと実力!
前書き
メルヴァゾア達の能力や口調はこの作品独自の物ですのでお願いします。
零蝶達と機械生命界の戦いが始まりそれはグルメ界全土を巻き込む戦いになった。その戦いの最中、グルメ界を支配する8匹の猛獣『八王』が戦いに割り込んできた。
自分の縄張りを侵された、群れを攻撃された、昼寝の邪魔をされた……理由はそれぞれだが機械生命界の無礼な振る舞いにキレたのは同じだろう。
八王の恐ろしさを理解できない感情の無い機械兵士達は愚かにも戦う事を選んでしまった。
「おのれ!よくも私の主を!皆殺しにしてくれるわ!」
レッズォ・ロアドに仕えていた『四将』の一角ルマ・イドゥラが怒りの声を上げながら馬王ヘラクレスに向かっていく。
人間型の機械兵士だが本体は飛行戦艦で本体が生きている限りいくらでも分身を作り出せる特性を持っていた。
その本体を光学迷彩で隠したルマ・イドゥラは千を超える分身をヘラクレスに向かわせた。
「……」
ヘラクレスは無言で少しばかり空気を吸い込んだ。だがヘラクレスの一呼吸は辺りの酸素を消してしまうほどの吸引力でアカシア達は急いでエアの実から作った酸素マスクを装着する。
「フン」
そして放たれたのはなんと鼻息だ。だがその鼻息は恐ろしい破壊力を秘めておりルマ・イドゥラの分身達をあっという間に飲み込んだ。
「な、何が起こって……!?」
そして隠れていた本体も一瞬で巻き込まれて塵になった。後に残ったのは雲一つない蒼い空だけだった。
「グオオオッ!久しく見ぬ強き者!俺の機械の体が喜びで震えておるわ!」
四将の一角でドラゴン型の機械生命体である『ガルヴァルダン』は竜王デロウスと戦っていた。太い腕でデロウスを殴りつけてその腕に仕込んでいた砲弾で無数の光球を浴びせる。
だがデロウスはほんの少しのダメージしかおっておらずその牙で腕を噛みつき引きちぎった。
「やるな!ならこれでどうだ!」
ガルヴァルダンは右肩に内蔵されたスピーカーユニットから不協和音を放つ、これを聞いた者は体の機能がおかしくなり動けなくなる。
だがデロウスはうっとうしいと言わんばかりに牙でユニットを破壊して尻尾で横なぎに攻撃してガルヴァルダンを後退させる。
「これも効かぬか……ならばこれでどうだ!」
ガルヴァルダンは口から極太の光線を放つ、しかしそれもデロウスの牙によって弾かれてしまい成すすべがなくなってしまった。
「グルル……」
「こんな強い生物がいたとは……見事だ。さあ殺せ」
ガルヴァルダンは自分を簡単に凌駕したデロウスに負けを認めて首を差し出した。デロウスは牙を使いその首を断ち切った。
「この猿……なんて早さだ!僕の体がどんどん破壊されていく!」
四将の一角であり無数の円盤に体を分離させてオールレンジ攻撃を得意とするベゥバ・レコルグ、彼は猿王バンビーナと戦っていた……いや戦いにすらなっていなかった。
「ウッキキ♪」
無数の円盤に分裂して様々な攻撃を仕掛けるベゥバ・レコルグ、しかしそのすべての攻撃をかわされいなされて無効化される。
そして無慈悲に放たれる拳や足、尻尾が円盤を凄い勢いで破壊していく。
バンビーナは喜んでいた。最初こそ昼寝の邪魔をされて怒っていたが自分に臆することなく向かってくれる相手など八王や零蝶、グレートレッドを除けばもういない。
そんな寂しい自分とこんなにも沢山遊んでくれるなんて……バンビーナは歓喜していた。
「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ!こんな事は今まで無かった!僕が蹂躙して遊ぶ側なのに遊ばれるなんて……!?止めろ!止めてくれ……!止めて……!」
ベゥバ・レコルグは今までは蹂躙して遊ぶ側だった。だがされる側になって初めて恐怖という感情を理解できた。
だがもう遅かった。バンビーナはベゥバ・レコルグの円盤全てを叩き潰すまで遊ぶのを辞めなかった。
「海から制圧するわ!貴方達、着いてきなさい!」
「この気高き私の邪魔をするなよ」
「それはこちらのセリフよ」
四将の一角で様々な兵器や武器を生み出す知能を持つ『アッドーサ』は水中戦に特化したボディを作り千の兵隊と共に海を侵攻していた。
そしてもう一体、クラーケンのような下半身とリヴァイアサンのような片腕を持つ機械生命体、かつてアカシア達に敗れたレガルゼーヴァに仕えていた海王の異名を持つ『ドゥルマード』もいた。
主を殺したこの世界に復讐をしに来たのだ。
「しかし変ね……生物が見えないわ」
「ふん、使えないな。所詮はレッズォ・ロアドなどという3流に仕える者、たかが知れるわ」
「貴様、私の主を侮辱するか!」
仕える主が違う者同士、気が合わなかった。だがこの二体は気が付いていない、自分達の後ろにいた千の兵隊がいなくなっていることを……
二人に知らぬ間に鯨王ムーンに飲み込まれていた。ムーンの腹は魂の世界に繋がっている、飲み込まれた者は二度と脱出することはできない。
この二人がそれに気が付くのは一体いつになるのだろうか……呑気に喧嘩しているだけまだ幸せなのかもしれない。
「くだらん、全部灰にするだけだ」
レガルゼーヴァに仕えし天王の異名を持つ『ルガティム』は淡々と猛獣を殺していた。自分はいつもどおり作戦を遂行するだけ……今日もそうなるはずだった。
「……むっ、なんだ?生命の反応が消えた?」
いつの間にか見知らぬ空間にいたルガティムは状況を把握しようとする、だが内部のセンサーが誤作動を起こしていた。
「なんだ?センサーの調子が……っ!これは……腕が錆びついている!?いや私の体がどんどん劣化しているのか!?」
ルガティムの全身が急激な速度で劣化していった。先ほどまで光沢を放っていた腕は見る見るうちにさび付いていき、全身の武装や外殻が音を立てて崩れていく。
「何が起こった!?この体は自己修復機能が搭載されている!1000年はメンテナンスもしないで活動できる高性能の体だぞ!何故それが朽ちていくのだ!」
ルガティムはそう叫ぶが体の劣化は凄い勢いで進んでいく。ルガティムがいるこの空間は鹿王スカイディアが生み出した空間だ、この中では圧倒的な速度で時が進み生物は老いて死んでいく。
だがそれを理解できなかったルガティムは思考すら消えていき、最後には物言わぬ鉄くずになっていった。
「ギャハハッ!空から撃ち殺してやるぜ!」
4本の腕が生え2本の足からジェット噴射を出し宙を舞うのは『ベベヴ・ス』、彼は小型ミサイルを放ちながら猛獣を殺していく。
「おいグヴァルドラ!どちらが多く殺せるか競争しようぜ!」
「望むところだ、貴様には負けんぞ!」
ベベヴ・スが話しかけたのは同僚の『グヴァルドラ』で有線式の巨大な両前腕をジェット噴射で飛ばしていた。
そしてそこから網目状のエネルギーを放ち猛獣を殺していった。
「カアァァァァッ!」
そこに烏王エンペラークロウが空から舞い降りた。
「おおっ、デカイ獲物が現れたな!俺が殺す!」
「そうはさせんぞ!俺の獲物だ!」
二人はエンペラークロウを唯の獲物としてしか見ておらず無謀にも突っ込んでいった。
「カァァ……」
エンペラークロウは口に輝く光球を生み出して強い光を放ち辺りを照らした。
「なんだ、目くらましか?下等な生物の使う手など……ッ!?」
「し、思考が消えていく……!?」
エンペラークロウの行動に失笑するベベヴ・スだったが体に異常が起こったことを自覚する。グヴァルドラは頭を押さえて蹲った。
烏王の陰に入った者は思考が消え去り最後には体も消えるという噂があった。光が収まった後にそこには何も残っていなかった。
「わらわ達も進行するぞ!兄上にこの世界を献上するのじゃ!」
まるで人形のような精巧な顔立ちをしたこの機械生命体は『セラセルベス』という名でメルヴァゾアの妹である。
自分以外の美しい存在を認めず特に美しい顔立ちの人間の雌を積極的に殺す趣味を持っていた。
彼女は自分の眷属を引き連れてこの世界の美しい物や生物を殺すつもりでいた。
「……おや?ここは何処じゃ?」
空を飛んで人間界に向かおうとしていたセラセルベスだったが、急に暗闇に包まれて首を傾げる。
「何か嫌な臭いもするのぉ……早くここを出ねば」
セラセルベスは急いで先に進むが出口は一向に見えてこなかった。
「なんじゃ?顔に違和感が……ッ!?」
セラセルベスは自慢の顔に何か違和感を感じて触ってみる、すると自身の顔がドロッと溶けてしまった。
「わらわの自慢の顔がッ!?いや顔だけでない!体が溶けておる!?」
セラセルベスは自分の体が溶け始めている事に気が付いた。
「お前達、なにをしておる!早くわらわを助け……ッ!?」
眷属に助けを求めようとしたセラセルベスは背後にいた眷属たちが皆ドロドロに溶けてしまったのを見て驚愕する。
セラセルベスは蛇王マザースネークと目を合わせてしまった。そして気が付く間もなくマザースネークに捕食されてその体の中を進んでいたのだ。
そして消化液によってセラセルベスは溶かされていく。
「……なんだか心地よいのぅ、悪くない気分じゃ」
最後には機械が感じる事のない『心地よさ』を体感しながらセラセルベスの思考は薄れていった。
「グルァァァッ!」
グレートレッドの振るう金棒を避けて相手が反撃に移る。彼が戦っているのは『ハズ・イリュウス』、月王の異名を持つメルヴァゾアの眷属で見た目は他の幹部達と比べると小柄な人間にしかみえない。
しかしその強さは他とは別格だった。グレートレッドの攻撃を避けて腕を伸ばして腹に打撃を打ち込む。
「ぐふっ!?」
するとグレートレッドの鋼よりも固い肉体がまるでゴムのような柔らかさになりダメージが内部まで響いた。
ハズ・イリュウスは自身のボディを好きな形に変形・変化させることが出来る、更に触れた物質の材質を変えてしまう事も出来るのでグレートレッドの体を変化させて防御できないようにしているのだ。
「メルヴァゾア様の為にその命を捧げろ、赤い蜥蜴よ」
グレートレッドの体を滅多打ちにするハズ・イリュウス、だがグレートレッドの目は決して死んでいなかった。
「とどめだ」
無機質に放たれた一撃がグレートレッドの胴体を貫いた。だがグレートレッドは肉体の筋肉を圧縮してハズ・イリュウスの腕が抜けないようにする。
「なに?」
「捕らえたぞ……!雷鳴八卦!」
グレートレッドは勢いよく金棒を振るいハズ・イリュウスの体を上空に吹っ飛ばした。
そして金棒を上にあげて自身も大きく飛び上がった。
「降三世引奈落!!」
そして凄まじい覇気を纏った一撃をハズ・イリュウスに叩きつけた。その一撃は大陸を割りヒビが大地を走るほどだった。
「申し訳ございません、メルヴァゾア様……」
自身の主に謝罪しながらハズ・イリュウスは消滅する。
八王やグレートレッド達だけでない、グルメ界の猛獣達も奮闘していた。
「キュララララッ!!」
デビル大蛇が無数の腕を伸ばして機械兵士達を捕えていく、そして毒液や胃酸で体を溶かしてしまう。
「ウッキッー!」
「ブルル!」
「ガルアァァァ!」
バンビーナの配下の猿達、ヘラクレスの群れの馬達、ギネスの部下のバトルウルフ達も次々と機械兵士たちを倒していった。
それ以外の野良の猛獣達も戦い勝利していく。食うか食われるかの真剣勝負をして生きてきた生命に唯与えられた命令をこなす事しかできない機械兵士が勝てるはずがなかった。
「馬鹿な……かつて精霊以外の全ての生命を滅ぼした機械生命界の戦士たちが悉く敗れていくだと!?」
「この世界を甘く見た、それがお前達の敗因だ」
「ッ!?」
自分の配下たちが次々に敗れ去っていくのを見て流石に驚くメルヴァゾア、その背後から声をかけられたので振り返るとそこには木で作られた千手観音像だった。
「秘術・真数千手」
「な、なんだと……ッ!?」
自分とほぼ同じ大きさの像の出現に驚くメルヴァゾア、その像の頭の上に零蝶が立っていた。
「消えろ。『頂上化仏』」
「うおおおっ!?」
そこから放たれたもはや流星群のような拳の雨、メルヴァゾアはバリアを張ろうとするが間に合わない。苦肉の策として自分の腕を10本にしてラッシュで対抗するが押し負けてしまい無数の拳を全身に浴びていく。
「があっ……ぐごっ……!?」
全身がボロボロになりヒビまみれになるほどの深刻なダメージを負ったメルヴァゾア、だがこれで終わりではなかった。
「カアアァァァ……!」
零蝶の背後で竜王デロウスが無数の舌からエネルギーを集めて何かをチャージしていた。それはデロウスの第二の武器である『異次元レーザー』だ。
まともに喰らえば他の八王でも危険なほどの威力を持つこのレーザー、一万年を生きるデロウスも片手で数える程しか使用していない。
なぜなら使う相手がいなかったからだ、故にデロウスは生涯たった1本の牙のみで戦うと人間が語る伝説に記されてしまう程使った試しがない。
そんな竜の王の切り札が今まさに放たれようとしていた。メルヴァゾアは今度こそバリアを張るが……
「ガァァァァァァッ!!!」
放たれた異次元レーザーはそんなバリアなど無かったかのように平然と突き進んでいく。かつてあらゆる魔法や兵器を全て防ぎE×Eに存在していた人類を絶望させたメルヴァゾアの分厚いバリアも意味をなさなかった。
「ば、馬鹿な……この我が……!?」
そのレーザーに胴体を貫かれたメルヴァゾアは信じられないという声を上げながらゆっくりと消滅していった。
そしてメルヴァゾアや幹部達の活動停止により他の機械兵士たちは一斉に逃げ出した。
「あいつらが逃げていく……俺達が勝ったの?」
「ああ、俺達の勝ちだ」
周りを見渡しながら三虎がそう呟くと一龍が頷いた。
「いや、まだだ」
だがアカシアはまだ終わっていないと警戒を解かなかった。
「アカシア様、一体どうしたんですか?敵の親玉はやっつけたしあいつらも逃げてるっすよ?」
「……邪悪な気配を僅かに感じる。この世界ではない、遠い異世界から私達を見ている者がいる。その証拠に八王達も警戒を解かずに空に空いた穴を見ている」
次郎は敵は逃げていくと言うがアカシアは首を横に振った。彼の言う通り八王達も警戒を解かず空の穴を見ていた。
『我が監視に気づいたか』
「っ!?」
すると上空からメルヴァゾアの声が響き三虎が驚きの表情を見せた。
「この声って姉者が倒したメルヴァゾアって奴だよな?なんで生きているんだよ!?」
『下等生物め、この我があの程度で死ぬと思ったか?あれは我の影武者だ』
「影武者だと?臆病風にでも吹かれたか」
三虎の疑問にメルヴァゾアは馬鹿にした態度で答えた。影武者だと聞いた一龍は冷静にそう返した、弟分を下等扱いされたからか怒っているようにも見える。
『我の弟レガルゼーヴァから送られたデータ、アレは非常に面白いものだった。我の知らない世界にこれ程凄まじい力を持った人間や生物がいた事は素直に驚いたぞ。我はお前達の本気の戦いを見てデータを取り究極の肉体を生み出そうと思ったのだ。つまり今回の戦いは完全な余興でしかなかったのだ。まあまさか全員がやられてしまうとは思わなかったがな、全く弱い配下達だった』
「究極の肉体……それを作るために自分の配下たちも利用したのか?奴らの考えは兎も角お前の為に戦ったのだぞ?それを捨て駒のように扱うなど……」
吐き捨てるように配下を罵倒するメルヴァゾア、それを聞いていたアカシアは不快そうにそう呟いた。
『奴らほどの駒など我がいる限りいくらでも生み出せる、いやそれどころか更なる強さを持った最強の軍隊を生み出す事もお前達のデータを得た今なら可能だ。我の新たなボディも含めて早速作らせてもらおうとするぞ。この最強の軍勢が出来上がったらお前達に見せてやる、楽しみにしているがいい』
メルヴァゾアが話し終えると声は聞こえなくなり、空間に空いていた穴も閉じていった。
「……」
零蝶は空をジッと見ながら何かを考えていた。
―――――――――
――――――
―――
「そんな事があったのね……」
「ああ、厄介な事になった」
戦いを終えたアカシア達はフローゼや節乃が待つ家に帰還していた。他の八王達もそれぞれの縄張りに帰っている。
話を聞いたフローゼは悲痛の表情を浮かべていた、それを見たアカシアも険しい表情を浮かべる。
「先生、奴の話が本当なら放っておくのはまずいですよ」
「そうだよ!こっちから乗り込んでやる!」
「どうやってだ?相手は異世界の存在だぜ?」
「それは……」
一龍はこのまま放っておけば敵は更なる強化をしてまた来ることが分かっているのでまずいと言う。三虎はこちらから攻めるべきと言うと次郎にそう言われて苦い顔をする。
「なあ姉者、あいつらがいる異世界ってどこにあるのか分からないのか?」
「我がいた次元の狭間のどこかにある、だがそこはグルメ界以上に広く広大な場所で全てを把握しきれていない」
「普通に探しても数十年はかかるだろうな、その間に攻め込まれる可能性が高い」
「そんな……じゃあ打つ手はないのかよ」
零蝶とグレートレッドが元々いた場所だと話を聞いた三虎が零蝶にE×Eの場所は分からないのかと聞く、だが零蝶は首を横に振りグレートレッドもその間に敵に攻め込まれると言う。
それを聞いた三虎が悔しそうに歯を食いしばった。
「……とにかく今日は休もう。みんな疲れてるはずだからな」
アカシアの言葉に全員が頷きその日は一旦話を終わりにして夕食に入る。しかしその日は全員の食欲は少なく珍しく料理を残していた。
それから数日が過ぎたある日、アカシアは零蝶を一人とある渓谷に呼び寄せた。
「零蝶、済まないな。急に呼び出したりして……」
「構わない、それで話とは?」
「ああ、実はな。奴らの本拠地であるE×Eの場所が分かった」
「えっ?」
そこで切り出された話はなんとE×Eの場所が分かったという内容だった。
「どうしてそんなことが?」
「実はな、私の知り合いが力を貸してくれたんだ。彼らが奴らの居場所を突き止めた」
「知り合い?それってアカシアがこっそり会ってる者達の事?」
「やはり知っていたか……その通りだ」
アカシアのこの情報を教えたのはブルーニトロだった。彼らからしたらあの程度の連中無視してもよかったが、もしグルメ日食の際に来られたら自分達の計画を1%でも邪魔される可能性があった。
そこで情報を与えて零蝶とグレートレッドをこの世界から引き離そうとしたのだ。特に零蝶は話を聞かずに大暴れする可能性があったからだ。
何故ならGODの調理にはすさまじい体力を消耗する、下手をすれば死ぬ可能性もある。そしてGODを調理できるのはフローゼのみ……話を聞いた零蝶が止めようとするのは目に見えている。
だがアカシアはある目的を果たすためにはGODを調理しないといけないことが分かっているので、心を鬼にしてそれを零蝶に黙っていた。
フローゼも自分の心配のせいで零蝶とブルーニトロ達と敵対するのを避けたかったので内緒にしている。
「零蝶、済まない。彼らはお前を警戒している、俺はどうしても果たさなければならない目的がある、その目的の為に彼らと敵対するわけにはいかないんだ」
「分かっている、我はアカシアを信じている。きっとこの世界の今後の為に必要な事、我はそのことは気にしていない」
「零蝶……」
アカシアは大切な家族に隠し事をしている事に胸を痛めていたが、零蝶は気にするなと言ってほほ笑んだ。
「アカシア、我はこの世界が好き。そしてアカシア達も好き、だから奴らの好きにはさせない。この世界の事はアカシア達に任せる。頼む」
「分かった、後の事は任せてくれ」
そして零蝶はアカシアからE×Eの場所を追跡する謎の機械を貰った。そしてその日に集まって話し合いをする。
「……という訳で我とグレートレッドはE×Eに攻め込むつもり。グレートレッドはそれでいいか?」
「俺としては構わない。元々奴らがこの世界に来る事になったのは俺のせいでもある、その責任を果たそう」
グレートレッドは零蝶と二人で戦う事を了承する。
「待ってくれ、姉さん!二人の実力は知っているが俺達だって戦える!俺達も連れて行ってくれ!」
「そうだぜ。姉さん。俺達は家族じゃないか、一緒に戦おうぜ!」
「一龍、二狼、ありがとう。でも二人はアカシアの力になってあげて欲しい」
一龍と次郎は自分達も戦うというが零蝶はアカシアの力になってほしいと言う。
零蝶はアカシアから四獣という猛獣が近い内に復活してその撃退、封印を二人にさせたいと言っていたのを聞いていたのでそう話すのだった。
「しかし……」
「お願い、二人とも。この通り」
「姉さん……」
それでも食い下がろうとする二人に零蝶が頭を下げた。ここまで頑なになる零蝶を見たのは生まれて初めてだった。
「……分かったよ、姉さん。貴方がそこまで言うならきっと何か考えがあるんだろうな」
「その代わり生きて帰って来いよ、美味い酒を用意して待ってるからよ」
二人は零蝶には何か考えがると思い引き下がった。
「待ってくれ!俺は姐者に着いていく!」
「三虎……」
「俺は兄者達ほど強くない、正直足手まといになるのは分かってる。でもそれでも姉者に何かあったら俺は……!初めて出来た家族を失うなんて嫌なんだ……!」
だがそこに三虎が待ったをかけた。彼は慕っている姉が帰ってこないんじゃないかと不安になったからだ。
「姉者の為なら文字通り肉壁にだってなってやる!だから俺も……!」
「ありがとう、三虎。その気持ちはとても嬉しい」
涙を流す三虎を零蝶は優しく抱きしめた。
「三虎、我は約束する。必ず生きて帰ると……だから三虎にはフローゼを守ってあげて欲しい」
「俺が……?」
「この先きっともっと大変な事が起こる、アカシアや一龍達も忙しくなるはず。だからその間は三虎がフローゼを守ってあげて。それなら我も安心して戦える」
「……」
「出来る?」
「……ああ、出来るさ!俺がフローゼを守る!」
「ありがとう」
話し合いを終えた零蝶はその日フローゼに好きなものを大量に作ってもらい心の底から満足するまで食べ続けた。皆が眠りについた頃、零蝶は久しぶりにフローゼと二人でベットに横たわっていた。
「こうやって二人で寝るのも久しぶりね」
「ん、あったかい……」
フローゼの胸に頭を埋めて甘える零蝶、今日ばかりは存分に彼女に甘えることにしたようだ。
「フローゼ、我は必ず帰る。もし帰ったらまた我の好きなハンバーグを作ってほしい」
「ええ、腕によりをかけて作るわ。だから無事に帰ってきてね」
「うん……」
フローゼの優しい温もりに零蝶はあっという間に夢の世界に旅立ってしまった。
「……零蝶、私も頑張るわ。必ずGODを調理してこの世界から戦争を無くして見せる。これからも皆と……あなたと一緒に生きていくために」
フローゼは決意を決めた強い目で窓から空を見上げる。そしてすぐに優しい笑みを浮かべると零蝶の額に口づけを落とした。
「おやすみなさい、私の可愛い零蝶……」
―――――――――
――――――
―――
「すげぇ、これがレッドさんの本当の姿……」
「大きいですね、ビックリしました」
「ふふっ、褒められるというのも悪くないな」
そして遂に出発の日が訪れた。グレートレッドは竜の姿になっており初めて見る姿に三虎や節乃は驚いていた。
「零蝶、レッド。必ず生きて帰ってくるんだぞ」
「姉さん、後の事は俺達に任せて好きに暴れて来てくれ」
「レッドさんも頑張ってくれよな、帰ってきたら姉さんも交えて美味い酒を飲もうぜ!」
「うん、約束」
「楽しみだな」
アカシア、一龍、次郎にそれぞれ声援を送ってもらった二人は笑みを浮かべて頷く。
「零蝶、レッド。私と節乃とで用意したお弁当も持っていって。貴方達の力になってくれるはずよ」
「私も腕によりをかけて作りました!どうかお二人ともご無事で……!」
「フローゼ、節乃、ありがとう」
「大切に頂こう」
フローゼと節乃から大量の弁当を受け取った零蝶とグレートレッドは二人に礼を言う。
「姉者、レッドさん。俺からはコレ」
「これは……?」
「俺が作ったお守りだ。こういうのを作ったの初めてだから不格好だけど……」
「ううん、そんなことは無い。とても嬉しい」
零蝶は三虎からボロボロのお守りを受け取った、だがそれは彼女達からすればとても輝いて見えるものだった。
「それじゃそろそろ行く。皆、必ずまた会おう」
「達者でな」
零蝶はグレートレッドの背中に飛び乗ると大きな羽根をはばたかせながらグレートレッドの巨体が浮き上がった。
「ホロブレス!!」
そしてグレートレッドが空に向かって炎簿ブレスを吐く、すると空間に亀裂が入って穴が開いた。
「姉者―――ッ!!気を付けて―――ッ!!」
最後の三虎の声援を受け取った零蝶はコクッと頷く、そしてグレートレッドが穴に入り二人は次元の狭間に突入するのだった。
後書き
我は零蝶、E×Eに乗り込んだ我とグレートレッド、遂にメルヴァゾアを追い詰めた。我らに喧嘩を売った事、後悔させてやろう。
次回第148話『決戦!零蝶VSメルヴァゾア!最強のボディの完成!』で会おう。
次回も美味しくいただきます。
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