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我が剣は愛する者の為に

作者:wawa
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陳留到着

「ここが陳留か。」

一刀は街の中を歩きながら、活気に満ちている街を見て言う。
ついさっき、俺達はこの陳留に到着した。
ただ街に来ただけなら、馬を預けるのだが華琳に客将として雇って貰うのなら、馬を城に預ければいい。
なので、馬を引き連れて華琳がいるであろう城に向かっている。

「街の様子を見た限りですと、民達は不満もなく生活しているようで。」

「豪鬼もこの様子を見ただけで分かるか。」

「ええ、儂も様々な街を見てきましたからな。
 民の表情、建物、活気、これらを見ていれば大よその判断は出来ます。」

さすがは華琳といったところだろう。
そこら辺にいる刺氏や州牧などとは何歩か先に行っている。
だからこそ、彼女の元に客将として仕え、少しせこいが独立に利用させてもらう。

「して、縁殿。」

「何だ、星。」

「曹操に会いに行くのはいいのですが、宛てはあるのですか?」

「まさか、何も考えないで正面から曹操に雇ってくれ、って言うんじゃないでしょうね。」

「安心しろ、ちゃんと考えてある。」

月火は不安そうに俺に尋ねたが、当然策はある。
というより、俺が来たと尋ねればとりあえずは通してくれるはずだ。
子供の頃の話を覚えてくれていたらの場合だが。
覚えていなかったら、その時は作戦を考えないといけない。
城の前に着いた俺達を、門番は疑うような目をしながらこちらに近づいてくる。
豪鬼の顔の事もあるが、これだけの数が尋ねたのなら警戒はするだろう。

「お前達、ここに何しに来た。」

「陳留の刺氏、曹操に会い来た。
 関忠が尋ねてきた、と伝えてくれないか?」

「少しだけ待っていろ。」

門番はもう一人の兵士に、伝えるとその兵士は城の中に入って行く。
数分くらいしてか、その兵士が戻ってきた。

「曹操様が通せとの事だ。」

「どうも。」

兵士の言葉を聞いて、俺は城の中に入る。
その後に皆も続く。
あっさりと通されたことに、皆は少しだけ疑問に思っているようだ。

『曹操と知り合い?』

「まぁな。
 その理由は曹操と会った時に分かる。」

その言葉を聞いて納得したのか、黎は聞いてこなかった。
玉座に案内され、中に入る。
玉座にはおそらく華琳であろう女性が座っていて、その傍らに華琳によく似た女性が立っている。
その両サイドにも女性が立っていた。

「久しぶりね、縁。」

凛とした声で彼女は俺の真名を呼ぶ。
子供の頃に会っただけだが、彼女は美しく成長していた。

「あの時以来だな、華琳。」

久しぶりの会話だったので、少し俺も楽しみしていた。
だが。

「貴様、華琳様の真名を馴れ馴れしく口にするなど無礼千万!!
 その首を斬ってくれようぞ!」

と、黒い髪で触角のようにアホ毛が生えた女性は大剣を構えて、俺に斬りかかってくる。
咄嗟に俺を庇おうと、前に出ようとする黎だが、それを手で制する。

「止めなさい、春蘭!」

華琳の鋭い声を聞いて、大剣を持った女性は足を止めて華琳の方に振り返る。

「しかし!」

「彼は大丈夫よ。
 幼い頃、私の命を救ってくれて真名を預けた仲。
 もし貴方が縁を殺すのならば、私はそれ相応の罰を与えないといけないわよ。」

「ううっ。」

「姉者、とりあえず落ち着け。」

「そ、そうですよ、春蘭さん。」

「秋蘭、華憐様まで。」

華琳を初めてとする人達に言われ、剣を収める。

「黎、ありがとうな。
 でも、次からは止めてくれよ。
 心臓に悪い。」

俺を庇ってくれた黎の頭を撫でながら言う。
黎は嬉しそうな顔をして、後ろに下がる。

『これで縁様は私の事を好きになる。』

「好感度アップとか、黎は抜け目ないな。」

「黎、あんな奴の為に身を挺して守る必要なんてないわよ。」

「だったら、私が身体を張って守らないとな。
 もちろん、守る以外の事でも身体を使ってね。」

「ッ!?」

「胡蝶って、本当にいじるの好きだな。」






「部下の無礼を許してちょうだい。」

「気にしていないよ。
 それほどまでに部下に信頼されているのは、良い事だ。」

「他の人にもまだ自己紹介していないわね。
 我が名は曹孟徳。
 傍にいるのが、私の妹の曹仁。
 その二人は夏候惇、夏候淵。」

あの華琳に似た女性は曹仁という名前なのか。
三国志では従弟だったはずだ。
それなのにここでは妹になっている所を見ると、つくづく俺の知っている三国志ではない事が分かる。
一刀の方に視線を向ければ、一刀なりに何かを考えている。
思う所があるのだろう。
曹仁は華琳の妹だというのに身体つきが全然違う。
まずは身長。
座っているとはいえ、華琳より身長が高く、髪型は同じ様に見えて少しだけ違う。
縦ロールに髪が巻いてあるのだが、曹仁のほうは柔らかい感じだ。
長さも曹仁の方が長い。
何よりの違いはやはり胸だ。
華琳と比べれば一目瞭然。
大きさやボリューム、何から何まで圧倒的に勝っている。
服装は華琳とあまり変わらないのだが、胸元が開かれていて、豊満な胸がより強調されている。
はっきり言うと目のやりどころが困るレベル。
夏候惇はピンクを基調とした服に、腰まで伸びた黒髪。
さっきも言ったようにアホ毛が一本生えている。
夏候淵はそれと対照的に、ショートヘアーで青い髪色をしている。
それに合わせて服装も青色を基調にしている。
史実では夏候惇、夏候淵は曹操が一番信頼していた部下だったはず。
故に華琳もあの二人を信頼しているだろう。
あの二人はかなりの強さを感じるし、曹仁も中々の強さを感じた。
俺達も自己紹介を終え、華琳は早速本題を聞いてくる。

「それでわざわざ、私の所にやってきた理由を聞かせて貰おうかしら。」

「簡単な理由だ。
 俺達を客将として雇ってほしい。」

「ほう、部下ではなく客将としてか。」

昔、彼女は俺の事を部下にすると言っていた。
俺自身、あの時はまだ王になると決意していなかった。
華琳自身も何か思う所があるのだろう。
少しだけ考えた後。

「いいでしょう。
 貴方達を雇うわ。」

華琳の発言に夏候惇は驚きを隠せないでいた。

「か、華琳様!
 こんなどこの馬の骨とも分からない輩達を雇うの言うのですか!?」

「彼は私の命を救ってくれた恩人よ。
 大きな借りがある。
 何より、今はどこも賊が蔓延っている現状よ。
 縁を始めとする、彼らは使えると判断したわ。」

「賊なんて、私一人いれば充分です!」

「確かにそうでしょう。
 でも、貴方だけで全域を動けないでしょう。
 だからこそ、彼らを雇う意味が出てくるのよ。」

夏候惇にそう言ってから、俺達に視線を向ける。

「もちろん、使えないと判断したら即解雇だけど。」

「安心してくれ。
 彼らは最高の仲間だ。」

俺の仲間の強さはよく知っている。
それを聞いた華琳は少しだけ笑みを浮かべて、玉座から立ち上がる。

「では、まずは部屋を案内しましょうか。
 明日から仕事を任せる事にするから、縁は今日までに私の部屋に来て彼らの事について教えて貰うわ。」

「了解。」

あっさりと雇ってくれたので、内心では少し驚いている。
廊下を歩いていると星と月火が、華琳についての感想を述べた。

「噂に聞いた通りの人物ですね。」

「縁とは真名を許す仲とはいえ、何も知らない私達を受け入れる器の広さ。
 一目で私が使えると判断する判断力、観察眼。
 噂以上の人物よ。」

「小さいのに凄いね。」

その中に美奈が笑いながら言う。
おそらく、美奈は何が凄いのか分かっていない。
でも、俺達の話を聞いてとにかくすごい事が分かったんだろう。
それを聞いて俺達は思わず笑いが込み上げた。
部屋に案内され、俺は荷物を置いて華琳の部屋に向かう。
中に入ると俺を待っていたのか、寝台に座っていた。

「まずは貴方と一緒に来ていた彼らについて教えて貰おうかしら。」

気のせいかもしれないが、華琳の声が不機嫌そうに聞えた。
彼女に会ったのは昔の時以来なので、怒らせる原因を作った覚えはない。
俺は別の事で怒っているのだろうと考えて、一刀達について説明する。
特に一刀が天の御使いである事を知ると、少しだけ驚いていた。

「最近、天の御使いが人助けをしながら旅をしているって、噂を聞いたけど貴方達だったのね。」

噂の方は華琳の耳にまで届いていたようだ。

「彼らについては分かったわ。
 次は私達の事について話し合いましょうか。」

「えっ、私達?」

何の話をするのか全く分からない。
華琳は立ち上がると、俺の胸ぐらを掴んで言ってきた。

「昔、私達が約束した事を覚えている?」

「お、おう。」

「縁がここに来た時、私は縁が私に仕えに来たと思ったのよ。
 それなのに客将として仕えるだなんて、どういうこと!?
 女性を何人も連れて生きて!?」

「女性って、星達の事か?
 それはあまり関係ないような・・・・」

「ともかく、どうして客将として仕えた理由を教えなさい!」

真剣な眼差しで俺を見てくる。
元より答えるつもりだったので、俺は答える。

「王になるためだよ。」

「王、ですって。」

「大切な人や苦しんでいる人を守る為に、俺は王になるって決めたんだ。
 その為にはどこかに仕えて独立を宣言し、手柄をあげて、土地を貰い、勢力を広げるほうが早いと思っただけだ。」

「そして、その仕える所を私に選んだ。
 つまり、この曹孟徳を利用するつもり?」

「否定はしないよ。」

しばらくの間、俺達の間に無言の空気が流れる。
すると、華琳は小さくため息を吐いて、胸ぐらを掴んでいた手を離す。

「という事は、いずれ貴方と戦わないといけなくなるのね。
 命を懸けて。」

「うん?それはおかしいぞ。
 確かに戦う可能性はあるけど、華琳の命を奪うつもりはない。」

俺の発言を聞いた華琳は眉をひそめる。
そのまま言葉を続ける。

「華琳と戦う事になっても、俺は絶対にお前の命は奪わない。」

「私が縁を殺しにいくつもりでも?」

「それでもだ。
 この国を自分の物にして平和にすれば、お前達を守りやすいと考えたから王になるって決めた。
 それなのに、お前の命を奪ってどうする。」

「私が頑なに自分の意思を曲げなかったら?」

「曲げるように状況を作るし、あらゆる手を尽くす。
 それでも駄目なら、さらに考える。」

「その考えた結果、縁の兵や大事な人が失うかもしれない。」

「そんな事はさせない。
 そうなる前に絶対にお前を屈服させる。
 俺はそんな未来を作る為に、人を殺すって決めたんだ。」

「ぷっ・・・あはははははは!!!!」

俺の覚悟を聞いた華琳は笑い始めた。
何だか、馬鹿にされた気分で少し不機嫌になる。

「ご、ごめんなさい。
 別に縁の覚悟を笑った訳ではないのよ。」

落ち着いてきたのか、俺が不機嫌になっているのに気がついたのか、謝罪の言葉を言う。
俺の覚悟を馬鹿にした訳ではないので、気を取り直す。

「笑ったのはね、縁が王になるって言っても何も変わっていない所よ。
 それに私以上に頑固って所よ。」

言われて考える。
俺って頑固か?

「頑固なのか?」

気になったので、聞いてみた。

「頑固よ。
 私を殺したくないからって、様々な状況を作って屈服させるところとかね。」

また思い出したのか、少しだけ笑いながら彼女は言う。

「縁、やっぱり貴方は最高よ。
 より一層貴方が欲しくなったわ。」

「今の所、脈はないぞ。」

「なら、これからさせればいいわ。
 独立するにも、まだ時間はあるでしょう。
 ともかく、これからよろしく。」

華琳は手を差し出してくる。
俺はその手を握り返す。
こうして俺達は独立するまでの間、華琳の所で客将として仕える事になった。 
 

 
後書き
曹仁は設定はオリジナルです。

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