ボーイズ・バンド・スクリーム
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第23話 ピンクレモネード
前書き
皆さん、おつマグです!今回はBAYCAMPでのライブより少し前の話です!仁菜が熊本に行っている最中のお話です。タイトルは三月のパンタシアの曲から取りました。甘酸っぱい青春ロックという感じで良いんですよね〜。それでは、どうぞ!
「おい、白石!この写真はなんだ!?」
「?どれだよ?あっ、これか…」
瑞貴と桃香は川崎アゼリアのモスバーガーに来ていた。桃香から「ちょっと会えないか」と言われ、合流するや否や彼は怒った顔の彼女にスマホの画面を見せられる。そこには仁菜が座っている瑞貴の膝に頭を乗せてうたた寝をしている写真が写っていた。どうやら春樹は隠し撮りした上に写真を桃香に送信していたらしい。
「私が好きなんだろっ!?なのにこんなにベタベタベタベタとっ…!ふざけんなっ!」
「ははっ」
「何がおかしいんだよっ!?」
「やっぱり怒っても綺麗だなって思ってさ」
「は、はあっ?!バカなこと言って、誤魔化そうとして…」
「あっ、ごめん。本音が口から出ちまった。実は仁菜に頼まれて。まだ17歳だし、お姉さんいるみたいだからさ。年上に甘えたい時もあるんだろ」
「そっ、それでも…いや、それより!お前!膝は大丈夫か?」
「…春樹から聞いたか。うん、痛む時はあるけど今は大丈夫。河原木は優しいんだな」
「うっ…怒るに怒れないじゃんか」
「悪気はなかったけど誤解させちまったなら謝る…ごめん」
仁菜の要望があったとはいえ瑞貴の行動が桃香を動揺させてしまったようだ。彼は謝罪し頭を下げる。
「もっ、もういいって!頭上げてくれ!私も理由聞かずに怒鳴っちゃったし…」
「ありがとう。そう言えば話があったのか?」
「いや、なんて言うかさ…仁菜のやつ、熊本にちゃんと帰ったのかなって思って。『ちゃんと会って話してこいよ。それまで私の家には入れない』って言ったら意地張って飛び出していっちゃってさ」
「それは仁菜の性格を考えて本人のためにそう言ったんだろ?俺のとこにも来たよ。両親に会って来いって言ったら『桃香さんと同じこと言うんですね』って膨れっ面だったけど。最後は『行って来ます!』って。表情も晴れてたし。大丈夫、ちゃんと行ってるよ」
「そっ、それなら良いんだけど…」
「仁菜が戻って来るか心配?それともキツイこと言っちゃったって後悔してるのか?」
「…両方だよ。うーん、こういうとこは鋭いんだよなあ」
「えっ?最後のほうは何て言った?」
「な、なんでもないっ!」
桃香は腕組みをしてそっぽを向く。今日の桃香はなぜか一段と怒りっぽいと瑞貴は思った。仁菜が熊本に帰省しており気が気でないのかもしれない。
「…その、白石。今日は暇?カラオケでも行くか?」
「おう!めちゃくちゃ行きたい!」
瑞貴は桃香からの誘いに嬉しさでいっぱいだった。
「お前、実は昔から歌ってた?」
川崎駅近くのBIG ECHO。米津玄師のlemon、GLAYの誘惑を歌い上げた瑞貴はオレンジジュースで喉を潤す。
「ま、高校生から春樹とTSUKIKAGEって名前でYouTubeに曲投稿してたし。幸い膝の怪我で時間は余りに余ってたからな」
「そっか…なんか優しい歌声だな」
「ずっと河原木の歌を聴いてたからだな。お前の歌はずっと俺の憧れだった」
「白石…ありがとう」
次に瑞貴が選んだのは樋口了一の1/6の夢旅人。
「ぷっ、水曜どうでしょう選ぶなよ!」
「さすがに分かるか。お前は?歌わないのか?」
「なんか白石の歌声、聴いてたい気分でさ」
「…お前の歌声、聴きたいんだけど?」
「うっ、うるせえなっ!今日は仁菜に膝枕してた罪滅ぼしだ!」
「分かったよ。めちゃくちゃな理屈だな…」
仁菜の件に言及されては瑞貴に立つ背はない。桃香が満足するまで歌うことにした。何気なく思い浮かんだのはflumpoolのしおり。突然の膝の怪我。サッカー選手生命を突然、絶たれた瑞貴が青春を振り返るように時には切なく、時には優しく歌い上げる。瑞貴の大好きな曲のひとつでもあり自然と歌声に気持ちが込められていく。河原木は静かに涙を流していた。
「かっ、河原木?どうして泣いてるんだよ?調子悪いのか?」
「ちっ、違うから!気にすんな!ほら、どんどん歌えって!」
「えぇ…」
桃香の突然の涙に驚いた瑞貴は声をかけるが、彼女は服の袖で強引に涙を拭う。まだ膝枕の件について怒っているのかもしれない。困惑しながらも彼は1人、彼女のまえで延々と歌を歌い続けるのであった。
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