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ボーイズ・バンド・スクリーム

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第17話 紅生姜

 
前書き
こんばんは!今回は吉野家回です!何だそりゃって感じですが吉野家回です!(笑) 

 
「で、なんでアンタたちがここにいるの?」

「牛丼食べに来たんだよ、智ちゃん。あ、俺は健斗でっす!よろしく〜!」

「ちゃんって言うなっ!」

ライブから数日後。瑞貴、俊哉、健斗の3人で川崎駅近くの吉野家に来ていた。ルパと智のバイト先である。バンド内ムードメーカーの健斗を連れてきたほうが話しやすいかと思ったが些か騒々しくなっている。夜遅めの時間帯であり瑞貴たち以外に客は殆どいない。

「瑞貴さんっ、みなさんも!ご来店ありがとうございますっ!この前のライブ見ましたよ!かっこよかったです〜」

「ありがとう、ルパ。ハンカチ返すよ」

「わあ〜!もう一生洗いません!」

「それは洗いなさいよ。俊哉さんもいらっしゃい。なに食べる?」

「よっ、ライブぶりか?来てくれてありがとうさん。ほな、特盛3人前よろしゅう」

「うん。ずいぶんと人気者みたいね?イケメンベーシストさん?」

「いや、瑞貴ちゃうそれ?俺、女顔やし需要ないで」

智は少し棘のある口調で俊哉に話しかけている。俊哉もライブで話す際にあれだけ女性陣に騒がれていながら自身の容姿には無頓着だ。銀髪赤眼のベーシストは涼しげな顔で智と話していた。

「おっ、今のやりとり聞きましたか瑞貴さん?なんか夫婦っぽいっ!何だい嫉妬してるのかい、智ちゃん?お兄さんに吐いちゃいなよ〜」

「なっ!?ち、違うからっ!アンタ、ウザいわよ!」

「健斗、少し遠慮しろって。ごめんな、智。騒がしくして」

「そ、それはいいけど…他のお客さんもいるから」

「ごめんね、智ちゃん!この後、時間ある?茶しばかへんか?」

「…まず君をしばいたろか?」

「俊哉さん、それ意味違うから」

会話がどんどん不穏な方向になりかけたところで牛丼が到着した。食欲をそそる匂いが鼻を駆け抜ける。

「お待たせしました〜。牛丼特盛ですっ!」

「やったっ!智ちゃんの手料理だ!いただきます!」

「吉野家の牛丼よ!ぎゅ・う・ど・んっ!黙って食べなさいっ!」

「えっ、違うの?俊哉さんに美味しくな〜れって愛を込めて〜♪」

「あんたねぇ〜」

「おおきに。よばれるわ」

「うん、ゆっくり食べてね」

「『うん、ゆっくり食べてね』ですって奥さん!きゃっ⭐︎」

「喧嘩売っとんのか?」

健斗が煽るたびに智が立腹している。この2人を会わせたのは間違いだったかもしれないと瑞貴は後悔した。

「私は愛を込めましたよ?瑞貴さんに!」

「…あはは、サンキューなルパ。イタダキマス」

「ひゅーひゅー!」

「健斗ダマレ」

「ねえ、智ちゃん!瑞貴さんが今日、俺にちょー冷たいんだけどっ!?」

「知らないわよ…」

ルパの言葉に乾いた笑みを返す瑞貴。煽ってくる健斗を当然のようにあしらって牛丼を食べる。吉野家には祖父の大介に連れられて何回か訪れたことがあり彼にとっては馴染みの味だ。懐かしい味わいが口中に広がり、丼が徐々に空になっていく。ルパも智も偶然もうすぐバイト上がりであり、一向は川崎駅地下の丸福珈琲店へ立ち寄ることにした。

「ねえ。俊哉さんは牛丼、好き?」 

智と向かい合って座る俊哉。俊哉の隣には健斗、智の隣にはルパが座っている。メンバーが5人なので今回ルパや智と面識のある瑞貴は4人に近い席に1人で腰かけていた。

「そうやな。牛肉全般好きやで。カレーも牛肉入れるし、ホワイトシチューもだいたい牛肉やな」

「そうなんだ…」

「智も牛丼好きなん?仙台やと牛タン美味いらしいやん?」

「覚えててくれたんだ…わ、私はそうね。牛丼も嫌いじゃないけど…白米とかお茶漬けとか梅干しとか好きよ。あとはシュークリーム。最近はモンブランにも興味があるわ」

「おっ、ぶぶ漬け来るか?俊哉さん作っちゃう?それか元パティシエとしてスイーツでハニーの胃袋掴んじゃうかい?」

「来ねーよ、アホンダラ。やかましいな」

「パティシエだったの?凄い…」

「まあ一応プロやったし。そんじょそこらのケーキ屋より美味い自信はあるでー。今度作ったろか?」

「えっ!?いいの?嬉しい…!」

智は遠慮がちながらも期待に満ちた眼差しを俊哉に向ける。心なしか口元も少し笑っているようだ。俊哉も満更でもなさそうに智に微笑みを返していた。ルパ、瑞貴、健斗のはそんな2人の様子を温かい目で見つめるのであった。 
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