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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第14話 湖の秘密

その日、一つの円盤が広大な宇宙から地球へと降下していった。
だが、その円盤の接近を探知する事は無かった。




     ***




「え? ジュエルシードの反応があったんですか!?」

その日、なのは達の居るアースラ艦内でジュエルシードの反応を探知する事が出来た。
実に久しぶりの事であった。

「場所は何処なんですか?」
「木曽谷付近の湖から反応があります!」

エイミィがそう言いながら木曽谷近辺の映像を映し出す。

「微弱ながらも反応がありますね」
「すぐに行きますね」
「まぁそう慌てなくても、甲児君達と一緒に行きなさい」
「は、はい!」

リンディ達に一礼し、なのははブリッジを後にした。
そして、その後甲児達の待機しているブリーフィングルームへとやってきた。
其処ではまた違った話題で盛り上がっていた。

「どうしたんですか?」
「さっきウルトラ警備隊から連絡があってね、ダン君が正式にウルトラ警備隊に配属する事が決まったんだよ」
「本当ですか!」

ハヤタの言い分に嬉しそうな顔をするなのは。
因みにダンと言えば以前出合った風来坊の事である。
あの後、彼はキリヤマ隊長のしごきを無事にクリアし、正式にウルトラ警備隊に配属が決まったようだ。

「それからキリヤマ隊長に連絡して、ダン君も僕達と一緒にアースラに搭乗して貰える事になったんだよ。今からこっちに向ってる所なんだ」
「そうだったんですか…あ、そうだ! それよりさっき、ジュエルシードの反応があったんです!」
「なんだって!」

話題が変わり一同はなのはからその話を聞く。

「成る程、こいつはウカウカしてらんねぇな」
「すぐに行くとしよう」
「ちょっと待ってくれ。そのジュエルシードって何なんですか?」

本郷は一人そう尋ねた。
彼はまだジュエルシードを知らないのだ。

「本郷君、ジュエルシードとは怪獣や機械獣、果ては無機物までも強力な怪物にしてしまう恐ろしい物質なんだ」
「なんですって! それを知ったらきっとショッカーもそれを狙う筈です!」

本郷の言う通りだ。
世界制服を企むショッカーがジュエルシードを放っておく筈がない。
必ずそれを狙って来るのは火を見るよりも明らかの事であった。
何としてもショッカーにジュエルシードを渡す訳にはいかない。
そう本郷は思えたのだ。
そして、それは皆も同じだった。
たった一つでもとてつもない力を持つジュエルシード。
それらが例え一つでも悪の手に渡ればとんでもない事となってしまうのは明らかな事だった。

「それでなのはちゃん。そのジュエルシードの反応は何処にあったんだい?」
「木曽谷近辺の湖だと言ってます」
「よし、早速移動しよう。ダン君には自力で其処に向う様に僕の方から連絡しておくよ」




     ***




木曽谷周辺は美しい自然で覆われた湖であった。
回りには木々が生えており湖は青く澄んでいる。
人の手が行き届いていない景色がこれほどまでに美しいのかとさえ思えてきた。
そんな場所になのは達は来ていたのだ。

「さて、まずはついたぞ」
「なのは、ジュエルシードの場所は僕がナビゲートするよ」
「お願いね。ユーノ君」

こう言う時にユーノの存在は頼もしい。
今でこそフェレット形態だが普段はこの方が余り目立たないので本人もこの姿が多い。

「それでハヤタさん。ダンさんは何時頃来るんですか?」
「もうすぐ来ると思うよ」

腕時計を確認しながらハヤタは言う。
すると、付近の林ががさついた。
皆がダンが来たかと思い視線が一斉に向けられる。
だが、其処から現れたのは全く別の青年であった。

「おっとぉ、もしかして誰かさんを待ってた口かなぁ?」
「君は?」
「ま、名乗れる程立派な名前はお持ちじゃないんだが、聞かれた以上応えないとな。俺の名は【滝 和也】アメリカのFBI所属の者だ」

何処か軽そうな感じの男が自己紹介した。
が、いきなり現れた人間にすぐにフレンドリーになれる筈がない。
その証拠に皆少し引き下がって滝を見ている。
が、その中で本郷だけは滝と間近で話をしていた。

「そのFBIの捜査官が何故此処に?」
「日本じゃ色々とクレイジーな事件が多いそうなんでねぇ。合衆国としてもこっちに飛び火が来ないんじゃないかって心配してる訳。其処で監視役も含めて俺が派遣されたってとこだな」
「なるほど、保険と言う奴か」
「厳しい言い方だけどま、そうなるわな」

確かに外国としてもその事態は放っておく訳にもいかない。
日本には数々の超常現象が起こっているからだ。
機械獣に怪獣、怪人にロストロギア等、挙げて見たらキリがない。
それらが全てこの日本を中心として起こっているのだ。
だが、その影響が自国に来ないとも限らないと言うのでこうして滝が送られてきたのだろう。

「ま、そう言う訳だから宜しくお願いしますぜぃ。噂のエキスパートさん達よ」
「俺達の事を知っているのか?」
「FBIの情報網を舐めて貰っちゃ困るな。あんたらの活躍は既に耳に入ってるぜ」

自信たっぷりに滝が言う。
それを聞いた甲児は嬉しそうに頬を搔くが、ハヤタとなのはは青ざめた。
もしかしたら自分たちの正体がバレてしまっているのでは。
そう心配になったのだ。

「そんで、お宅らはこれから何処へ行くつもりで?」
「この近辺にジュエルシードの反応があったからその調査に行くつもりなんだ」
「成る程、こりゃ良い所に出くわしたって訳ね」

指を鳴らして喜ぶ滝。
が、それを見た甲児が以外そうな顔をする。

「って、あんた付いて行くつもりなのか?」
「当然! あらゆる超常現象を未然に防ぐのが俺の仕事なんでね」
「危険だ! 命に関わる事になるぞ!」

真剣な眼差しで本郷は滝を見た。
彼なりに滝の事を心配しているのだ。
が、それに対し滝は鼻で笑った。

「お気持ちは有り難いんですがなぁ本郷さん。俺もFBIの捜査官としての意地ってものがあるんだよ。命に関わるってだけでほいほいと逃げ出す訳にはいかないんだよ」

どうやら滝自身にも意地と言うものがあるようだ。

「しかし…」
「良いじゃねぇか本郷さんよぉ」
「甲児君…」

渋る本郷を甲児が止める。

「そんなに危険なら俺達が守ってやれば良いじゃねぇか。それに今回は調査とジュエルシードの回収だけなんだしさ」
「甲児君の言う通りだな。滝和也と言ったね」

ハヤタが滝の前に立つ。

「今回の我々の任務はあくまで調査がメインだ。だけどもし戦闘になった場合は…」
「わぁってますよ。俺だって命が惜しいんだ。無茶なんかしませんよ」
「それなら良い」

滝の同行を許したハヤタ。
しかし本郷だけは未だに認めてないのか不満そうな顔をしている。

「すまない。遅くなった」

そうしているとお待ちかねのダンがやってきた。
一同は滝和也の事をダンに伝え、滝の同行を許可した事も伝えた。

「分かりました。僕は反対するつもりはありません」
「よっしゃぁ、さっさと行こうぜ」
「張り切ってますね。甲児さん」

張り切る甲児を先頭に一同はジュエルシードの捜索、並びに周辺の調査を行う事となった。
暫く長い林道の中を歩いていたのだが、一向にそれらしい物が見つからない。

「しっかし暑いなぁ」
「今は丁度夏だからな。日差しが防げるとは言え、この気温は堪えるのだろう」

一同の額に汗が滲み出た。
夏の温暖な気候と林道の湿気が合さって一同に疲労と不快感を与えていく。

「ユーノ君、ジュエルシードの反応はないの?」
「う~ん、今の所何も感じられないんだよ。一体何処に行ったんだろう」
「しっかりしてくれよぉ。このままじゃ俺達この林道でキャンプする羽目になっちまうぜぇ」

愚痴る甲児。
そんな甲児の愚痴を笑いながら聞き流していると、何処からか川のせせらぐ音が聞こえてきた。

「何処か近くで川が流れてるみたいだな」
「マジ? やっほう! 丁度喉渇いてたんだ」
「あ、甲児君!」

走り出す甲児を追って一同も林道を駆け抜けていく。
やがて、長い林道を抜けた先には、確かに滝の言った通り綺麗な小川が流れていた。
だが、それだけではなかった。
其処には見慣れない物体が一個置いてあったのだ。
形からして異星人の円盤にも見える。

「この焼け跡は…大気圏に突入した際に起こった摩擦熱によるものだ」

円盤の外面を触れダンは言う。
それはつまりこの円盤が地球外から来た物だと言う証拠になる。

「早速調査しよう」
「やれやれ、まさか日本に来ていきなり異星人とご対面とはねぇ」

一同は円盤の中に入っていく。
外面のイメージとは違い、中はかなり広々としていた。
それだけでも明らかに科学力の違いが伺える。

「うわぁ、見た事ない物ばっかりですねぇ」
「迂闊に触らない方が良いよなのはちゃん。もしかしたら異星人の罠かも知れないし」
「う、気をつけます」

うっかり触りそうになった手を引っ込めるなのは。
そう言う訳でこれから円盤の調査に乗り出すこととなった。

「僕はこの円盤を調査したい。その間君達はジュエルシードの捜索をして貰えるかい?」
「分かった。我々は引き続きジュエルシードの捜索を行う。気をつけるんだぞ、ダン」

ダンを残し、一同は円盤の外に出た。
広いとは言え円盤の中をぞろぞろ歩き回っていてはそれこそ敵の思う壺かも知れない。
そう思っての処置だったのだ。

(この円盤…見覚えがあるぞ。だが、この円盤が地球に来るなんて、まさか…)

ダンが一人調査しながら推測していた時だった。
配電盤の裏側から何かが出て来た。
咄嗟にダンは腰のホルスターから銃を抜き取り構える。
其処に居たのは一人の少女であった。

「君は?」
「おじさんこそ誰よ? 人の秘密基地に勝手に入ってきて」

少女はかなりご立腹な様子だ。
ダンは溜息をつきながらも銃を納める。

「申し訳ない。それより秘密基地とは一体何だい?」
「私、この辺に住んでるの。此処なら誰も寄り付かないでしょ。良い隠れ家にしてるの」
「そうか」

ふと安心しながらダンは少女を見た。
そして、ふと違和感に気づいた。

(おかしい、この円盤の中は一切冷房が効いていない。にも関わらず少女は汗一つ搔いてないし息も乱れてない。それに、あんな険しい山の中を歩いてきたと言うのなら多少の泥はついている筈。なのに彼女の靴は新品同様だ。どう言う事だ?)

違和感を感じたダンは少女から更に情報を聞き出そうとする。
が、その時円盤の壁からガスが噴出してきた。

「しまった! 罠か…」

逃げ出そうとしたが、入り口は既に閉じられており、瞬く間にガスで部屋が充満していった。
そのガスは催眠ガスであった。
やがて、ダンは意識を失い倒れてしまった。
そんなダンの元へやってきた何者かが彼の胸ポケットを弄る。
そして、其処から何かを取り出した。

「ま…待て…」

掠れた意識の中でダンは手を伸ばした。
だが、伸ばした手は何者かを掴む前に力尽き地面に倒れてしまった。




     ***




その頃、円盤から外に出た一同は再び長い林道の中を歩き回っていた。

「あっちぃなぁ」
「そう愚痴るなよ旦那。夏は暑いもんだしさ」

そう言う滝の顔からも汗が滲み出ていた。
確かに夏は暑い。
しかもこの周辺は酷く湿気が高いため余計に暑さを感じてしまうのだ。

「もう少し周辺を調査しよう。それで何も無かったら先ほどの円盤に戻ろう」
「さ、賛成~~」

すっかりなのははバテ気味であった。
無理もない。
こんな険しい山道を少女の足で登るのは酷なのだ。
持ってきたタオルも既に汗で重くなってしまっていた。
どうやら今回は外れだったようだ。
そう思っていた時、ふとなのはは林の奥に目を向けた。
其処には、金髪の少女のシルエットがチラリと見えた。

「あ、あの子は!」

咄嗟に駆け出すなのは。

「お、おい! 何処行くんだよ?」

滝が叫ぶもそれすら振り切ってなのはは走っていった。

「一体どうしたんだ? なのはの奴」
「トイレじゃね?」
「生理現象ねぇ。そんじゃ俺達は待つっきゃないわな」
「本当にそうなのか?」

甲児と滝は待つ姿勢だったが本郷はどうにも腑に落ちない。

「少々気が引けるが少し近くに居よう。何かあった時に遠くに居ては助けられないからな」
「ま、それもそうか…こんな森ん中じゃ紙もないし」
「おいおい、ポケットティッシュを持つのはエチケットだろ? エキスパートさんはそこ等へんが抜けてるようだな」
「うっせぇやい!」

鼻っ柱を曲げる甲児であった。




     ***




円盤から出て来たダンは青ざめていた。

(一体あの子は何者だったんだ? 僕の正体を知りウルトラアイを奪っていった。何としても取り戻さなければ! ウルトラアイは僕の命なんだ)

ダンは先ほど円盤の罠に掛かってしまい気を失っていたのだ。
その隙を突き何者かに大事なウルトラアイを奪われてしまったのである。
完全な油断であった。
恐らくあの少女が黒幕であろう。
まだそう遠くへは行ってない筈だ。
急ぎ探そう。
そう思い再び森の中へ行こうとした時、突如湖の水が持ち上がりだした。
水しぶきを上げて、中から現れたのは一体の怪獣であった。

「しまった! 今の僕には迎え撃つ手段がない!」

ウルトラアイが無ければ今のダンは多少超能力が使えるだけの只の人間にすぎない。
今の自分ではとても怪獣の相手など出来る筈がないのだ。

「仕方ない」

ダンは腰のポーチの中から四角い箱を取り出して蓋を開ける。
中から小さなカプセルを取り出す。

「ミクラス、頼むぞ!」

そう言って怪獣に向かいカプセルを投げる。
投げられたカプセルは爆発し、その爆発の中から一体の怪獣が現れた。
角を生やした猛牛を思わせる風貌のカプセル怪獣ミクラスである。
ミクラスと怪獣は互いに激しくぶつかりあい激戦を行いだした。
その間、ダンはウルトラアイを奪った少女の行方を捜す事にした。
急いで見つけねばならない。
ミクラスが倒されたら、次は自分の番なのだから。




     ***




森の中で見た人影を追って森の中を駆けるなのはは、其処で金色の髪の少女を見つけた。

「居た!」
「え?」

少女は驚きなのはの方を見る。
何故こんな所に居るのか。そんな風な面持ちで見ていたのだ。

「やっぱり、君だったんだ」
「どうして、此処に?」
「え? え~っと…」

なのはは悩んだ。
正直に話して良い物か。
別に悪い事をしている訳ではないのだが何故かためらってしまった。
そして…

「た、偶々だよ」

結局なのはは真相を隠す事にした。
今は余り揉め事を増やしたくない。
それよりも話したいことがあったからだ。

「前は、助けてくれたよね。でも、全然お礼とか言えなかったから…」
「別に良いよ。私は私の目的の為にあの時ああしただけだから」
「それでも、私の事助けてくれたよ。だから、お礼を言いたかったんだ。有難う」

満面の笑みでなのははそう言った。
理由はどうあれ、結果としてこの少女はなのはの窮地を救った事となる。
それに関して礼を言いたかったのだ。

「前にも言ったけど。私はジュエルシードを集める為にあの時戦っただけ。別に君を助けようなんて気はなかったの」
「それは…分かってるよ。でも…」
「貴方もジュエルシードを集めてるの? だったら、私とは敵同士になるって事だよ」

途端に怖い面持ちでなのはを睨むフェイト。
一瞬にして場に緊張が走った。
考えてみればそうだ。
なのはは被害を防ぐ為とユーノに協力する為にジュエルシードを集めている。
が、それは彼女も同じなのだ。
しかし集める理由が違う以上互いにジュエルシードを巡って争う事は起こりえる事になる。

「もう、会わない方が良いよ。でないと…今度は戦う事になる」
「そんな、戦う以外にきっと何か有る筈だよ!」
「無いよ。私は私の目的の為にジュエルシードを集める。それの邪魔をするのなら…今度は容赦しない」

そう言い残すと少女はデバイスを起動させた。
黒を基調としたスピード重視のバリアジャケットである。
それを纏い物質化したデバイスを手に持つとフワリと宙に浮かび上がった。

「ま、待って!」
「さようなら。もう二度と私を追おうなんて考えないで」

冷たく言い放つと、少女はそのまま空の彼方へと消え去ってしまった。
残されたのはなのは一人となった。

「どうして…私達が戦わなくちゃならないの?」

悲しみと疑問に心が一杯になっていくなのは。
其処へ追いついた甲児達がなのはを見つける。

「お、居た居た」
「なのはちゃん!」
「あ、ハヤタさん、それに皆も」

心配だったのか皆が集まっていた。

「やれやれ、はしゃぐのは勝手だけど、もう少し場面を見て行って欲しいもんだなぁ」
「御免なさい」

理由はどうあれ勝手な行動を取り皆に迷惑を掛けたのは事実である。
なのはは皆に向かい頭を下げて謝った。

「まぁ、無事だったのだからこの際は良いさ。それより、ここまで探してても見つからないと言う事はもうこの辺りにはジュエルシードは無いって事になるな。ダンの待っている円盤へ向おう」

ハヤタの言い分に皆が頷いた。
これ以上捜索範囲を広げても結果は見えている。
それに、一人で円盤を調べているダンの事も気になる。
此処は一旦戻るのが上策であった。




     ***




ダンの目の前ではミクラスが怪獣と必死に戦っていた。
だが、旗色は悪い方であり徐々にミクラスが押され始めている。

(そろそろ不味い。早くウルトラアイを見つけないと)

焦りが顔に出て来たダン。
その時、円盤の近くで声が聞こえた。
少女の声だった。
ダンは円盤を背にその声の主をそっと見た。
其処には先ほどの少女が仕切りに声を上げていたのだ。

「何をしているのエレキング! そんな怪獣さっさとやっつけなさい! そしてウルトラセブンを殺すのよ!」

間違いなかった。
先ほどの少女が怪獣に指示を送っていたのだ。
恐らく、ウルトラアイを奪ったのも彼女だろう。

「見つけたぞ!」
「きゃっ!」

ダンは静かに近づき、彼女を後ろから捕まえた。
激しく暴れた際に彼女のポケットからポロリと何かが落ちた。
それは紛れも無くウルトラアイだった。

「あった!」

ダンは少女を突き飛ばし、ウルトラアイを取り戻す。

「ミクラス! 戻れ!」

そして戦っていたミクラスを呼び戻し、今度は自分の目元にウルトラアイを掛ける。
ダンの体は眩い光に包まれていき、紅い巨人ウルトラセブンとなった。

「しまった! エレキング。こうなったら確実にウルトラセブンを倒すのよ!」

起き上がった少女がそう命令する。
その命令を受けたエレキングが今度はセブンに向かい威嚇も兼ねた雄叫びを挙げる。
それに対しセブンは両手を強く握り締めて構えた。
自然の残る湖を舞台にエレキングとセブンは激突した。
まず最初にエレキングが尻尾を振り回す。
それをセブンはジャンプしてかわし、隙を見て組み付いて地面に叩きつけるように投げ飛ばした。
が、投げられたエレキングはと言うと大して効いた様子もなくすぐに立ち上がる。

「何してるのエレキング! 貴方の得意な武器を使いなさい!」

少女が命令する。
するとエレキングが長い尻尾を巧みに操り振り回していく。
今度はかわす事が出来ず、セブンの体の回りにグルグル巻き状態に尻尾が絡みついてくる。
そして、その尻尾から強烈な電撃が発せられた。
一瞬痙攣するセブン。
だが、すぐに尻尾を振り解いた。
並の人間等であれば一瞬で黒こげになってしまうだろうがウルトラマンには効き目は薄いようだ。

「そんな、エレキングでは勝てないと言うの?」

エレキングの最大の武器が難なくかわされてしまったのを見た少女が愕然としながら円盤の中へと戻っていく。
その頃、エレキングは最早やけっぱちにとセブンに向かい突っ込んで来る。
そんなエレキングの頭についた日本のクルクル回る角に向かいセブンは額の輝くビームランプから発せられる光線【エメリウム光線】を放った。
それは見事に二本の角を破壊する。
それを破壊された後、エレキングはピクリとも動かなくなってしまった。
どうやらその角が操縦用のアンテナだったようだ。
動かなくなったエレキングに向かいセブンは頭部に取り付けられたアイスラッガーを放った。
アイスラッガーはエレキングの尻尾と首を切断し、やがて大爆発させるに至った。
残骸となったエレキングを見終わると、セブンは上空を見上げた。
其処には先ほどの円盤が悠々と飛び去ろうとしているのが見える。
逃がす訳にはいかない。
これ以上地球に怪獣を持ち込まれては迷惑この上ない。
第一、奴等は自分の秘密を知ってしまった。
他の異星人に秘密を知られる訳にはいかない。
空へと飛び上がったセブンは円盤を追い掛ける。
すると、円盤から無数のビームの雨が放たれた。
しかし、そんなビームなどウルトラセブンに効く筈もなく、カウンターにと両腕から放つ光線【ワイドショット】を諸に食らい上空で爆発してしまった。
円盤を葬った後、セブンは大空へと消え去っていった。





     ***




森を抜けて円盤の止まっていた川岸に辿り着くと、其処には既に円盤は影も形もなかった。
代わりにダンが皆の元に向って走ってくる光景だけが映っていた。

「ダン、円盤はどうしたんだ?」
「先ほどもう一人のウルトラマンが現れて運び去ってしまいましたよ」
「そうか」

ハヤタはそれに納得した。
もう一人のウルトラマンとは即ちセブンの事だ。
やはりあの円盤は侵略者の円盤だったのだ。
となれば破壊して正解だった筈である。
下手に置いておいて仲間に連絡されると厄介な事になる。

「それより、そちらはどうでしたか?」

ダンが尋ねるとハヤタは首を横に振った。

「残念だが収穫なしだ。ジュエルシードらしき物は見つからなかった」
「そうですか、どうします? もっと捜索範囲を広げてみますか?」
「嫌、止そう」

ダンの提案をハヤタは跳ね除けた。
既に時刻は夕方を指している。
これ以上探しても見つからないのだからここいら近辺にはないのだろう。
ならば探すだけ時間の無駄となる。
それに探査装置も一向に反応がない所を見るに恐らく外れでもあろう。

「此処は一旦戻るとしよう」
「はぁ、今日は結構くたびれたぜぇ」
「私もぉ」

すっかり疲れてグッタリ状態でそう言うなのはと甲児。
二人がグッタリするのも仕方ない。
既に半日近く険しい山道を歩いていたのだ。
熟練した登山者でもキツイ山道だ。
一般人である二人には尚更キツイ事でもあった。

「そうですね、僕の紹介もあるでしょうし、此処は一旦アースラに…ん?」

何処からかアラームらしき音が鳴り響いた。
皆が持ち物を探る。
だが、誰の物からも音はしない。
では、一体何処から。

「あ、私の携帯だ」

それは、なのはが常に身につけている携帯からであった。
しかも、発信者はあのリンディ艦長であったのだ。

「はい、なのはです…」

携帯のボタンを押し、耳に近づける。
一体何が起こったのだろうか?
疑問を胸になのははリンディの言葉を聞いた。
そして、それは恐ろしい事であった。

「えぇっ! それは本当ですか?」

明らかに焦りだしたなのはに皆が動揺する。
一体何があったのか?

「なのは、一体どうしたんだよ?」
「リンディ艦長がすぐに戻るように言ってるんです。今、日本が大変な事になりそうなんです」




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

少女の出会いは新たな戦いの幕開けとなった。
迫り来るは心無き巨人の大軍勢。
迎え打つは心宿した若者達。

次回「脅威!日本攻略作戦」

お楽しみに 
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