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ガンダムSEED ゲルズゲー

作者:使徒
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第1話 ゲルズゲー、誕生

エアハルト・フレイル。

彼は、C.E.(コズミック・イラ)48年に大西洋連邦のフレイル財閥総帥の一人息子として生を受けた。
その後の少年期は色々と省くが、14歳の頃、厨二病を発症したことがある……とだけ記しておく。


C.E.(コズミック・イラ)68年。
彼が20歳になったとき父親が急死した為、若くしてフレイル財閥を率いることになった……のだが………。

フレイル財閥傘下の兵器開発陣が、何を考えたのか多脚型砲戦車なるゲテモノを作ってしまった。
コンセプトは『山岳地帯などの不整地において高い踏破性を誇る新世代型戦車』とかなんとかで、しかもホバーによる飛空能力すら付与されていた。
技術者たち曰く、「つい夢中になってやった。反省も後悔もしていない」とのこと。

そんな技術者たちを、周囲の人間は呆れた目で見ていた。

だが、『多脚戦車』『空飛ぶ戦車(フライング・タンク)』という夢の兵器の出現に一男子として心躍ったエアハルトは、これを即決で採用してしまう。
エアハルト曰く、「ついノリでやった。反省も後悔も存在しない」とのこと。

ある意味で似た者同士の連中を混ぜるとこんな化学反応が起きるという良い見本である。

しかし、現実問題としてコストがバカ高く、これほど複雑な機構のものを作ればそれも当然であった。
経営陣の誰もが「こんなの売れないだろ……」と思って匙を投げ中止を訴える中、エアハルトは、

「確かにこれで利益を上げるのは難しいかもしれない。だが、我が社の技術力を喧伝する良いチャンスじゃないか。売れる売れない、儲かる儲からないじゃないんだ。これを……この兵器を世に出すこと自体が重要なんだ」

と言って周囲を説得した。
もちろん、本音が別のところに有るのは明白である。

とはいえ、確かにこの戦車は技術力の喧伝に成ることも事実だった。
故に周囲も効果的な反論が出来ず、多脚型砲戦車『ゲルズゲー』は世に出ることになる。

そして、この一軒が後に世界に影響を及ぼすとは、このとき誰一人として予測できなかった。


* * *


C.E.(コズミック・イラ)70年2月5日。
前年のL5宙域事変を経て緊張が高まる大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国のプラント理事国とプラントは、月面都市コペルニクスにて交渉を行うこととなっていた。
だが、交渉当日、爆弾テロにより理事国側代表者と国際連合首脳陣が死亡するという事件が起こる。
犯人は不明なのだが……これをプラント側のテロと断定した理事国は、先の事件を『コペルニクスの悲劇』と呼称し、地球各国への宣戦布告であると発表。
首脳陣を失った国際連合に変わり地球連合が発足し、2月11日にプラントへと宣戦布告。
地球連合宇宙艦隊が出撃した。


地球側の誰もが疑わなかった物量で圧倒的に勝る地球連合軍の勝利……その予想は、ザフト軍の使用したMSの活躍によって覆されることとなる。
1機で連合の主力MAメビウス3機に匹敵するMS――ZGMF-1017ジンの登場により敗北を喫する。

この際、ブルーコスモス派将校によって持ち込まれた核ミサイルがプラントへ向け放たれ、農業用コロニー『ユニウスセブン』が崩壊。
24万3721名の犠牲者を出したこの事件は、2月14のバレンタインデーに起きたため『血のバレンタイン事件』と呼ばれることになる。


その一週間後の2月22日。
地球と月を結ぶ地球連合の拠点であるスペースコロニー『世界樹』へザフト軍が侵攻。

地球軍は第1~第3の3個艦隊を投入して防衛戦を展開するが、先の戦いと同様、戦況は芳しくなかった。

「よし、こい………そこだ!」

地球軍のMAメビウス・ゼロが、有線式全方位攻撃兵装『ガンバレル』による全方位《オールレンジ》攻撃で1機のジンを撃墜する。

「ふぅ……これで2機か」

そのパイロット――ローレン・ハスター少尉は、一息つきながら周囲にも目を向けてみた。

そこで彼は、戦場の味方機の連携があまりにも出来ていないことに気付く。
これでは性能で勝るジンに各個撃破されるだけだ。

援護に向かおうとも思ったが、ハスターの機体もそろそろ燃料がヤバい。
仕方なく、彼は補給のため母艦であるドレイク級護衛艦サムナーへ戻ろうと通信回線を開いた。

「こちらハスター。サムナー、応答願う。サムナー」

だが、返信は何時まで経っても帰ってこない。
ザーザーと雑音ばかりが耳に響く。

「ちっ、こりゃ通信が妨害されているな……他の部隊の無様はこれのせいか。ザフトの奴ら、何をしやがった?」

繋がらないものはどうしようもなく、ハスターは直接母艦へと向かう。

通信は、サムナーに接近したときに漸く回復した。

「こちらハスター、燃料がヤバい。一時帰還のためハッチの開放求む」

『こ、こちらサムナー。了解しました』

通信士の返答後ハッチが開かれ、ハスター機は艦内へと収容された。

・・・・・

「3機目、ってか」

補給を済ませて再出撃したハスターは、メビウス・ゼロを巧みに駆り更にジン1機を仕留めていた。

「前の戦いで2機、今日は最低3機。これで俺もエースだな」

エースパイロットは5機以上の敵機を撃墜したパイロットに与えられる称号であり、ハスターはこのときその条件を満たした。

そんな中、ザフトMSジンの一群が世界樹へと取り付く。

「おいおい……これはちょっとばかしヤバいんじゃないか……」

彼のその言葉は、程なく現実となった。

ジンが放った大型ミサイルが世界樹へと吸い込まれ大爆発が起き、続けて更に数発のミサイルが撃ち込まれる。

連合軍はこれ以上の被害を阻止せんと懸命に防衛するが、それを嘲笑うかのようにザフト軍MSは戦線を突破し、世界樹へと攻撃を加えていく。

そして遂に、世界樹は崩壊した。

「あいつら……やりやがった! ………このままでは済まさんぞ、コーディネイターめ!」

ハスターは湧き上がる怒りのままリニアガンを連射し、目の前のジンを仕留める。

と、そこで連合軍旗艦より信号弾が打ち上げられた。

それは、全軍の撤退を意味するものだった。
連合軍は守備目標であった世界樹を損失したことで、これ以上戦い続ける意義を失ったのだ。

一方のザフトも連合軍の数が多かったため相応の手傷を負っており、追撃の余力はなかった。

・・・・・

こうして、両軍が死力を尽くした世界樹攻防戦は世界樹の崩壊と連合側の撤退――ザフト軍の勝利として幕を閉じた。

連合の戦艦6隻、MA37機を撃墜したザフト軍のラウ・ル・クルーゼはネビュラ勲章を受章し、連合もこれに張り合うように、また敗戦を誤魔化す意図を以って、この戦いでザフト軍MS4機を撃墜しMSの通算撃墜数が6機(メビウス換算18機)となるローレン・ハスター中尉(昇進)を『世界樹の英雄』として担ぎ上げる。


この戦いで連合軍の3個艦隊は手酷い損害を被り、以後2ヶ月の間宇宙での連合の活動は縮小するのであった。
 
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