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黒歴史

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第二章

「な、何この人」
「普通に一五五キロ以上投げてるわよ」
「しかもホームランガンガン打って」
「投打二刀流!?」
「守備も足も凄いじゃない」
 栞はその細い目をこれ以上はないまでに見開いて仰天していた。
「無茶苦茶よこの人」
「あの、守備も足もね」
 理恵も目を飛び出させて言っていた。
「かなりの」
「何よこの人」
「これで二十二歳って」
「無双でしょ」
「人間!?本当に」
「あのソフトバンクが手も足も出ないじゃない」
 栞は負けているこのチームも見た。
「連覇したのに」
「あの戦力でね」
「工藤監督の采配も水際立ってるのに」
「しかも背高いわね」
「一九三って」
 今度は彼の体格の話をした。
「物凄く足長いし」
「普通ここまで大きいと動き鈍くてね」
「大味な感じになってね」
「守備も足も今一つな感じになるのに」
「それがね」
 そうなる筈がというのだ。
「無茶苦茶ね」
「動きいいわね」
「俊敏よね」
「守備の時も、それに」 
 理恵はさらに言った。
「俊足よね」
「投げて打つことに目がいくけれど」
「実は守備もよくてね」
「足も速いわね」
「何この人」
「こんな凄い人がカープと戦うの」
 二人共鯉女だ、そのことからも仲がいいのだ。
「シリーズで」
「うわっ!」 
 栞はここで叫んだ、何と。
 その彼が一六五キロを投げたのだ、それで思わず我が目を疑った。
「一六五キロ投げたわ!」
「えっ、まさか」
 理恵も我が目を疑って思わず目をこすった。
 そしてまた見たが真であった。
「本当ね」
「日本最速ね」
「何これ」
「何これって見たままでしょ」 
 これが栞の返事だった。
「一六五キロ出したのよ」
「あんたが前に言った」
「それを出したのよ」
「それもクライマックスの最後で」
「そうしたのよ」
「いや、これってね」
 理恵は驚いたまま言った。
「もうね」
「私が前に言った」
「異世界転生の」
 それでというのだ。
「無敵主人公でしょ」
「その世界で無双する」
「それでしょ」 
 まさにそれだというのだ。
「もうね」
「そのレベルよね」
「ないわよって言ったわねあんた」
「言ったわよ」
 栞は自分の言葉を訂正しなかった。 
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