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傍にあった日本の暮らし

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第一章

                傍にあった日本の暮らし
 その家を見てだ、イタリアから日本に来たマリオ=ジュリアーノ茶色の鳥の巣の様な髪の毛とやや日に焼けた肌に太い眉に明るい二重の黒い目と彫のある顔に一七四程の背で引き締まった体格の彼は唸った。
「いや、これがだよ」
「日本のお家っていうのね」
「そうだよ」
 案内してくれている大学で同じゼミの須郷裕子穏やかな大きな垂れ目とピンクの小さめの唇に細く奇麗なカーブを描いた眉で色白の顔に形のいい顎と黒く長い髪を持つ一五五程の背の大きな胸を持つ彼女に答えた。
「理想的なね」
「理想的って」
「いや、お屋敷じゃないか」
 日本風のその屋敷と庭を見て言うのだった、木造のそれを。
「まさにね」
「私のお家見てこんなに驚く人って」
「いなかったんだ」
「皆もそうよね」 
 裕子はジュリアーノ以外のゼミ仲間に話した。
「こうしたお家はね」
「普通だよ」
「別にね」
「大きなお家だけれど」
「田舎ならこうしたお家結構あるし」
「この地域だとね」
「いや、日本に来て」
 ジュリアーノは彼等にもそれでもと言った。
「マンションと科アパートとか現代建築のお家とか」
「そういうのばかり見てきたから?」
「それでだよ」
 ジュリアーノに話した。
「こう思うんだよ」
「そうなのね」
「そして言うんだよ」
「大袈裟よ」
「大袈裟じゃないよ、お家もそうで」 
 それでとだ、さらに言うのだった。
「門だってお庭だって」
「日本のもので」
「立派過ぎるよ、裕子はお嬢様だったんだね」
「いや、普通の農家だからうち」
 裕子は真実を語った。
「それでこの辺りこうしたお家ばかりじゃない」
「そういえば」
 ジュリアーノも言われてはっとした。
「どんな高級住宅街って思えば」
「この辺りは元々天領でね」
 江戸幕府の直轄地でというのだ。
「土地がよくて年貢も軽くて」
「暮らしがよかったんだ」
「だからどのお家もね」
 それこそというのだ。
「大きいのよ、田畑もね」
「広いんだ」
「うち今も広い水田と畑持ってるしね」
「庄屋さんでもないんだ」
「普通の農家よ、ただここに代々住んでいるから」
 それでというのだ。
「古いことは古いよ」
「そうなんだね」
「まあ改築はしてるけれど」 
 裕子はジュリアーノにそれでもと話した。
「昔からこうした大きさよ」
「そうなんだ」
「ええ、じゃあ今からね」
 裕子はジュリアーノに話してからさらに言った。
「お家の中に入って」
「ゼミのお話しよう」
「そうしましょう」
「皆でね」
「それじゃあね」
 ジュリアーノも頷いた、そしてだった。
 家の中に入った、金木犀や松それに小さな池もある庭を見てそれから家の中に入ったがその家の中を見てもだった。 
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