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魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵

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本編
  二十九話~決戦――ゆりかご

 
前書き
お待たせしました。

時間かかっただけあって今回は長めです。

それではどうぞ


 

 
side 士郎


ガジェットを殲滅しつつヴィータとなのはからの連絡を待つ。と、ヴィータから通信が入った。


(突入口が見つかったらしい。お前の目ならあたしたちが見えるだろ?ここまで来てくれ)
(ああ、了解した)


ワーカーをブレイドモードにし、道中落とせるだけのガジェットを落としながらなのはたちの元へと向かう。


「くっ、こんなところまでAMFが………」


そこへたどり着いたとき突入隊の一人がそんな言葉を漏らしていた。


「状況は?」


なのはに問うと、


「思った以上にAMFが強くてゆりかごの壁が破れないんだ」
「なるほどな………」


AMFは魔導師の天敵ともいえるものだ。だが、魔術師(・・・)にとっては何ら問題ない。
魔術師にとって魔力は結合するものではなく、変換するもの。大源(マナ)が使えなくとも小源(オド)がある。だからこそAMFの影響などあってないようなものなのだ。


強化、開始(トレース・オン)


ワーカーに強化の魔術をかける。ランサーがよくやっていたので効果は折り紙つきだ。


「どいていろ。私がやる」
「衛宮三尉!?」


魔力弾を放っている隊員たちをどかし、壁を一閃。
壁は簡単に崩れ去った。


「なのは、ヴィータ!突入するぞ!」
「うん!」
「おお!」


待っていろ、ヴィヴィオ……!



side なのは


「スターズ1,2,5ゆりかご内部に突入!」


中へ入ると、飛行魔法がキャンセルされた。


「内部空間全部にAMF!?しかも今までとは桁違いの濃度……」
「仕方がない……少し揺れるが我慢してくれ、二人とも」


飛行魔法がキャンセルされた私とヴィータちゃんを抱えて壁を蹴り綺麗に着地する士郎君。


「ったくよ、相変わらずふざけた運動神経だな」
「そんなことより、これはまずいぞ」
「ああ。わかってるよ」


そう。このAMF濃度では魔力消費が普段の3倍は必要と思われる。
これでは突入隊は相当な高ランク魔導士しか入ってこられない。


「なのは、ヴィータ。飛行魔法はなるべく使うな」
「おい!じゃあどうやって移動する気だよ!!」
「安心しろ。手はある。強化、開始(トレース・オン)


士郎君が私たちに触れ、言葉を紡ぐと体が異様に軽くなった。
この感覚はおそらく………


「身体強化……だね?」
「ああ。察しが良くて助かるよ、なのは。消耗を抑えるため、走って移動しよう」
「なるほどな。確かにこれだけ体が軽けりゃ飛ぶのと同じくらいの速さは出せそうだ」


AMFが濃すぎるため、突入隊の面々にはAAランク以下の隊員は入ってこないように伝えると、私たちは先を急いだ。



side ヴィータ


「すっげえな………」


士郎は手にした双剣……干将莫耶……だっけか?を使って次々ガジェットを破壊していく。
正直なところ、万能すぎだ。チーム戦だったらどのポジションだろうとこなしてしまう、と思えるほどに。そんな時に本部から通信が。


「玉座の間と駆動炉の位置、判明しました!」



示された駆動炉と玉座の間はそれぞれ反対方向にある。ここは……


「別行動を取ろう」
「ヴィータちゃん!?」
「それしかないだろうな」
「士郎君まで!?」


なのはは反対のようだが、士郎は賛成している。


「でもよ、駆動炉を止めるだけじゃゆりかごは止まらねえかもしれねえ。王座の間のヴィヴィオも止めないとゆりかごは止まらないかもしれねえんだ。それに、時間がない。別行動を取るしかねえだろ……!」


しばらく考えたなのはは


「わかった。私が一人でヴィヴィオのところに行く」
「なのは!?何を……!」
「私はなのはの意見に賛成だ」
「士郎!お前まで何言ってんだよ!?」


どうしてなのはが一人で行かなきゃなんねえんだよ……!


「私にはまだブラスターモードがあるし、ピンチになってもこれがある」
「令呪か……」
「それに、さっきの通信でギリギリ届くレベルのここじゃあ念話は届かない。だけど私と士郎君はパスによる念話が可能。だから私が単独行動をするの」


なのはは意思を固めた顔だ。ここは……


「わかった。さっさと片を付けてそっちに向かうからな!」


そうしてあたしたちは別行動を開始した。


side なのは


「行けそう?レイジングハート」
[運用にかかる魔力が桁外れに多いですが、問題ありません]
「OK。なら短期決戦と行こうか!レイジングハート、A・C・Sドライバー!!」
[all right.my muster.]


ガジェットを叩き潰しながら進む途中、私は思い出していた。



………………………………………………………………


「そうですか……」
「ええ。ですからあの子の本当の両親は……」
「もういないんですよね……」


シスターシャッハから聞いた話。
ヴィヴィオのオリジナルは300年前の古代ベルカの人物、と判明した。


「それにしても、本当に懐かれていますね。このままご自分の子に?」
「……本当に、私でいいのか不安になるときがあります。今は衛宮士郎三尉にも手伝っていただいているので何とかなっていますが、私は自分の事しか見えていないところがありますから。いい母親になれるのか、本当にあの子の母親になれるのか、まだ不安なんです」


そう。士郎君が支えてくれているから。私は何とかヴィヴィオの母でいられた。もし彼と離れたら?一人でこの子を育ててあげられるのだろうか?


「ママ……」
「どうしたの?」
「かなしいかおしてたから……」


生まれがどうであれ、こんなにも優しい子なのだ。幸せになってほしい。


「ヴィヴィオのおべんとう、たべる?パパのごはんはげんきがでるよ?」
「……大丈夫。ヴィヴィオが元気ならママも元気だから。ね?」
「うん!」



…………………………………………………………………


もうすぐ………!すぐに助けに行くからね、待っててヴィヴィオ……!



side クアットロ


やはりおかしい。想定よりも明らかに粘られている。そんな状況に苛立ち始めた時、ディエチちゃんから声をかけられた。


「正直な感想言ってもいい?」
「ご自由に」
「この作戦、あんまり気が進まない」


……やっぱりこの子もつまらない。わかっていない。


「どうして?」
「こんな小さい子どもを使って、こんな大きな船を動かして、目的が技術者の復讐、だなんて……」
「ああ、それはドクターの出鱈目。舌先三寸の大嘘よ」
「そうなの?」
「ドクターの目的は最初から一つ。生命操作技術の完全な完成。このゆりかごはそのための船」
「そうだとしても……やっぱり、この子は関係ないんじゃないか、って思うよ……こんなに弱くて、こんなに小さいんだから……」
「姿を見る前なら平然と引き金を引けたのに、ねぇ?」
「……ごめん、気の迷いだ。与えられた任務はちゃんとこなすよ」


そう言って王座の間から出ていった。本当にバカな子。あなたもチンクや
セインと同じでつまらない子なのね。


「小さい?弱々しい?そういう虫みたいな命を弄ぶのって、最高に楽しいじゃないの!」


side ディエチ


今、このゆりかごにあの子の母親と父親が乗り込んで来ている。
………あの子を助けるために。
もうすぐあの子の母親がここに来る。


「あなたに恨みはないけどここで落とす」


砲撃をチャージし、彼女が通路に入ってきた瞬間に放った。


「IS、ヘヴィバレル」
「エクセリオン、バスター!!」


お互いの砲撃が均衡する。チャージなしの上、このAMF状況下でここまで……


「ブラスターモード、リミット1、リリース!!」
「!!!」


威力が跳ね上がった!?


「ブレイク、シュート!!」


押し込まれ、砲撃の直撃を受ける。


「何て威力、本当に人間……?」
「あなたを、拘束します。ここで大人しくしていてください」


倒れている私にバインドをかけ、彼女は飛び去って行った。


side ヴィータ


「これなら余裕だな」
「気を抜くな。まだ仕掛けて来るかも知れんぞ」
「んなことねー「ヴィータ!!」えっ?」


突然士郎があたしに剣を投げてきた。
その剣はあたしに投げられたものではなかった。
あたしの頭を越え、後ろにいた何かに突き刺さる。
その後ろにいたナニカは………


「こいつは………!」


あのときなのはを襲い、撃墜したアンノウンだった。


「許さねえ、許さねええええっ!!」
「落ち着け!目的を忘れるな!!」


士郎がナニカをイッテいる。ダケドソンナコトハカンケイナイ。
壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊すコワスコワスコワスコワス壊す壊す壊す壊すコワスコワスコワスコワス壊す壊す壊す壊す!!!
一体残らずぶち壊してやる!!


「ヴィータ!!」
「うるせぇ!!」


何も聞こえない。あたしを支配するのは憎悪。ただこいつらを叩き潰すことだけ。


天の鎖(エルキドゥ)!!」
「!?」


ナニカに捕らわれた。動きが取れない。暴れるあたしの耳に力強い声が響いた。



「―――鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎ むけつにしてばんじゃく )


あたしは前を見た。白と黒の双剣が空中を舞っていた。


「―――心技、泰山ニ至リ(ちから やまをぬき)


その光景に思わず息を呑む。双剣は2組に増えた。


「―――心技 黄河ヲ渡ル(つるぎ みずをわかつ)


剣を投げた男を見る。その手には3組目の双剣が。


「 ―――唯名 別天ニ納メ。(せいめい りきゅうにとどき)


それを投げた彼の手に現れた4組目の剣。その刀身が見る見るうちに肥大化する。


「 ―――両雄、共ニ命ヲ別ツ……!(われら ともにてんをいだかず)


彼は両手を広げ、駆ける。そして、双剣の投擲により中央に集められていたアンノウンが………その手の剣により10体ほど破壊された。そして、彼は一言呟いた。


壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)


その一言が放たれると、アンノウンを囲んでいた3組の双剣が一斉に爆発する。
煙が張れると、30は居たであろうアンノウンが一体残らず残骸と化していた。


「…………」


あたしはただ呆然とその光景を眺める。と、拘束が解除された。


「落ち着いたか?」


彼、士郎に声をかけられた。


「あ、ああ……………」
「では行くぞ。駆動炉の破壊は君の仕事。それまでは力とカートリッジは温存してくれよ」


それだけ言うと、再び彼は駆けていく。あたしもそのあとに続いた。



side なのは


ようやく着いた王座の間。ここにヴィヴィオが………!


「ディバイーン、バスター!!」


砲撃で扉を撃ち抜く。ここまでの消費はかなり来ていたが、そんな弱音は言っていられない。


「いらっしゃーい、王座の間へようこそ」


私を出迎えたのは玉座に縛り付けられたヴィヴィオと、眼鏡をかけた戦闘機人。


「……大規模騒乱罪の現行犯で、貴方を逮捕します。速やかに武装の解除を」
「……フフ、娘のピンチにも顔色一つ変えずにお仕事ですか?いいですね~。その悪魔じみた正義感!」


にやにやといやらしい笑みを浮かべる彼女はヴィヴィオに視線を移す。


「でもぉ、これでもまだ冷静でいられますかぁ~?」


彼女が指を鳴らすと、それに反応したのか、玉座から電撃が奔った。


「う、う、あああ!!!」
「ヴィヴィオ!!」
「あらあら必死になっちゃって、ならこれはどうかしら~?」


彼女の手がヴィヴィオに近づく。その様子を視界にとらえた私は即座に砲撃を放った。
彼女は砲撃に触れると霧散するように消えた。この現象には覚えがある。ここにいた彼女は……幻影。
と、唐突に空中にディスプレイが浮かび上がった。


「ふふ、いいこと教えてあげる。あの日、輸送トラックとガジェットを破壊したのはこの子なの。あの時の白髪頭が防いだディエチの砲撃。あのくらいじゃあこの子はびくともしない。それが、古代ベルカ王族の固有スキル『聖王の鎧』なのよ~」


なおも勝ち誇った笑みを浮かべ、彼女は話し続ける。


「レリックとの融合を得て、彼女はその力を完全に発揮する。古代ベルカの王族たちがその身を作り変えて完成させたレリックウェポンとしての力を!」


彼女が話を終えたと同時、虹色の閃光がヴィヴィオから放たれる。


「ママぁ!」
「ヴィヴィオ!!」


近づきたいが、あまりの魔力の密度にその場に踏みとどまるのが精一杯だった。


「すぐに完成しますよ。私たちの王が。ゆりかごの力を得て、無限の力を得た戦士が!!」
「いやだ、ママ、ママぁ!!!」
「ヴィヴィオ……ヴィヴィオ!!!」


周囲を覆っていた魔力がヴィヴィオの元へ収束する。その際に一段と強い閃光が奔った。
光が納まると―――


「うう、ああああ!!!!!!」


ヴィヴィオが叫びだした。その体は見る見るうちに成長していく。
そして……………


「………あなたがヴィヴィオのママをどこかに拐った……」


あまり私と変わらないくらいまで成長したヴィヴィオが放った最初の一言。それは明らかに私への憎悪を込めた一言だった。




side ヴィヴィオ


いたい、いたい、いたい、いたい!!
いやだ、いやだいやだいやだ!!
たすけて、ママ………


―――ほら、いつまで泣いてるんですか?―――


だれ?このこえは……?


―――陛下のママが助けて、って呼んでいますよ?―――


ママが?


―――陛下のママを拐って行った悪い悪魔がそこにいます。そいつを倒して本当のママを助けに行きましょう?―――


この人が……わたしのママを?


―――陛下の体にはそのための力があります―――


私の……力?


―――心のままに、思いのままにその力を解放して―――


ママを助ける―――力!!


「う………」


私の中のナニカが目覚める。それは激しい痛みがあったが、ママを助けるため、そんなものは耐える。


「うう、ああああ!!!!!!」


痛いけど、耐える。耐える耐える耐える耐える耐える耐える!!
だって、ママはもっと苦しんでるはずだから。
そして、私は耐えきった。


「………あなたがヴィヴィオのママをどこかに拐った……」
「違うよ!?私だよ!なのはママだよ!!」


この人は悪魔。ママを拐った悪者。こうやって私も連れ去ろうとしている。


「嘘だ……私のママは、あなたじゃない!」
「ヴィヴィオ……」


全力を込めて殴りかかる。悪魔はシールドで防いだ。


「もうすぐパパも来る!ヴィヴィオを助けに来るから!」


その言葉を聞いて、私は固まった。


………パパ?私には、パパがいた?
考えた私の頭の中に薄ぼんやりとした記憶があった。


……………………………………………………


―――私を見て、笑っている。茶色い制服を着た190㎝位の人。この人が、パパ?


―――記憶に靄がかかっているようだ。顔が思い出せない。でも、私のことを大切に、本当に大切に思ってくれていることだけはわかっている。


……………………………………………………


―――パパも、その女に拐われたんですよ。―――


脳に直接語りかけられたその一言で正気に戻った。
正気に戻った私は自分の置かれている状況を確認した。
………四肢をバインドで固定され、魔力の籠のようなものに入れられていた。


「こんなの、聞かない!!」


力任せにバインドを引きちぎり、籠を破壊する。


「許さない……!あなたは、ママを拐っただけじゃなく、パパまで……!」


こいつを倒して、早くママとパパを助けにいくんだ……!!




side なのは


どうしよう。ヴィヴィオは話を聞いてくれない。先ほど父親の話をしたときはわずかに動きを止めたが、最初の一回目だけだった。
シールドやプロテクション、バインドを駆使してしのいではいるが、この高濃度AMF空間でやれることはひとつだけ………!
ぼんやりと体の中に感じる感覚を頼りに回路(パス)を探し当てる。
そのまま回路に意思を流し込むようなイメージで念を送った。


(……なのはか?)


無事に繋がった。並列思考(マルチタスク)を使い、念話と戦闘で思考を使い分けておく。


(うん。こっちは王座の間に着いたけど、洗脳されたヴィヴィオと戦闘になっちゃった)
(なるほど……洗脳ならば破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)で解けるはずだ。もうすぐ駆動炉へ到達する。そのタイミングでこちらから念話を送るから令呪で召喚をしてくれ)
(了解!)
(それでは………何!?)


念話を切ろうとした時、少し驚いた士郎君の声。


(どうしたの!?)
(………すまない。もう少し頑張ってくれ。大量のガジェットが駆動炉前で待ち構えていた)
(そう……。10分くらいなら持たせられる、と思うけど……)
(わかった。そのくらいで何とかしよう。それではな)


士郎君はそこで念話を切った。
念話中は誘導弾を使用し、上手く近づかせないようにしていたが、それも限界だった。
誘導弾を撃ち落としたヴィヴィオがこちらへ向かってくる。
咄嗟にシールドを張って受け止めるが、弾き飛ばされてしまった。


「はぁ、はぁ、っ!!」


出力が足りない。もっと、もっと!!


「レイジングハート」
[all right.limit break.]
「ブラスター2!!」


ブラスターシステムのレベルを引き上げ、士郎君を待つ。今の私がやれるのはそれだけだ。
ブラスター3ならばおそらく私一人でもヴィヴィオを抑えられる。だが、AMFの事を考えると、確率は高くない。だからこの場を凌ぐことだけを考える。
私は一人で戦っているわけではないのだから。 
 

 
後書き
ようやく前半戦終了です。


次回から後半戦に入ります。


そして、人気投票の中間結果発表です!!(=^・^=)





1位 衛宮家
2位 ランス&フェイト
3位 テスタロッサ家(エリオ、キャロ含む)



となっております。アンケートの方は本編終了まで受け付けますのでまだ送られてない方はぜひ投票お願いします!!
投票方法は感想版に書き込むor私に直接メッセージを送るのどちらかでお願いします。


それでは~!(^^)!
 
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