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神々の塔

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第六十三話 過ちを犯した神霊その十一

「やはりな」
「それでああしたことをした」
「今も悔やんでいる」
 その時の自分がしたことをというのだ。
「この世界のことではないが」
「ご自身のことなので」
「その時は何とも思わなかった」
 二次大戦の時はというのだ。
「ごく普通の。正義とさえだ」
「日系人への迫害はですね」
「思っていた、しかしな」
 それがというのだ。
「戦争が終わってかなり経ってだ」
「批判されて」
「ようやく気付いた。私は取り返しのつかない過ちを犯した」 
 カルフォルニア州の知事だった頃にというのだ。
「その罪はあまりにも汚らわしく忌まわしいものだ、その罪は消えない」
「それで、ですか」
「その贖罪の為にもな」
 まさにというのだ。
「私はだ」
「公民権運動の時にですね」
「全てを捨てて向かい合い」
 そうしてというのだ。
「そのうえでだ」
「ことにあたられたんですね」
「そうだった、それが多くの人の未来を切り開いたのか」
「二千万のアフリカ系の、そして多くの人達の未来を」
「アメリカの有色人種のか」
「人類の差別への考え方にも」
 そのことについてもというのだ。
「貴方はそうしました」
「ならいいがな」
「過ちを犯しても」
「償いはしたか」
「そしてです」  
 そのうえでというのだ。
「功績がです」
「私にはあるか」
「わいはそう思います」
 トウェインは確かな声で答えた。
「ほんまに」
「そうなのだな」
「そやからです」
 ウォーレンにさらに言った。
「胸を張ってです」
「この世界で私がやることをしていけばいいか」
「法の神霊さんですね」
「如何にも」
 その通りという返事だった。
「私はな」
「ほなこの世界の法をです」
「司ってだな」
「そうしてです」 
 そのうえでというのだ。
「やっていって下さい」
「それではな」
「少なくとも下衆な感じはせんな」
 芥川はウォーレンを見て言った。
「むしろな」
「かなり立派な人やな」
 リーが応えた。
「そやな」
「ああ、知性と品性を兼ね備えた」
 この二つをというのだ。
「そうしたな」
「立派な人やな」
「そう思うわ」
 こうリーに話した。 
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