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因幡の白兎

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第三章

「この話が伝わってじゃ」
「鰐がそのまま鰐ではなく」
「鮫となったんじゃろうのう」
「そういうことですか」
「わらわが思うにな、しかしな」
「しかし?」
「悪知恵は働かせんことじゃのう」
 碧は兎に言った。
「くれぐれも」
「このお話ですね」
「そうじゃ、いらん悪知恵を働かせてじゃ」
 そうしてというのだ。
「こんな神話ではじゃ」
「怒った鮫達に生皮を剥がれました」
「そうじゃのう」
「いや、そのことは私もわかってまして」
「自分自身のことじゃけえ」
「それで、です」
 主にあらためて話した。
「反省しまして」
「それでじゃな」
「今はご主人様に神具としてお仕えして」
 そうしてというのだ。
「世界を救うお助をしています」
「心を入れ替えたんじゃな」
「そうなります」
「ええことじゃ」
 碧は兎のその心構えを素直に褒めた。
「ならこれからもじゃ」
「そうしていくことですね」
「真面目が一番じゃけえのう」
「そうですね、ではご主人も」
「わらわもか」
「あの、最近は誰彼なくお声をかけられることはなくなりましたが」
「芥川君にか」
 緑もわかっていた。
「何かあると初夜を言うのはか」
「ご自重を」
「わらわは真面目に言うてるんじゃがのう」
「それはわかっていまうが」
 兎にしてもだ。
「旗から見て好色にしか見えません」
「おのこと手をつないだこともないがのう」
「それでもです」
「真面目に好色は違うか」
「世間はあまり思わないですね」
「難儀じゃのう、まあ真面目にやることはな」
 兎の言葉に見るべきものはしっかりと見ていた、そのうえで応えた。
「やっていかんとな、わらわも」
「そのことをご理解頂ければ」
「わかったけえ」 
 兎に応えてまた飲んだ、そして唐揚げも食べた。鰐のものではないがその唐揚げも実に美味いものであった。


因幡の白兎   完


                   2023・11・13 
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