母親の若い恋人

　　　　　　　　　　　　　　　　母親の若い恋人
　野上泰造、サラリーマンである彼は家で妻の亜紀に項垂れて言っていた。穏やかな顔立ちで清潔な黒髪を茸の様な髪型にしていて一八〇近い背で痩せている。
「母さん再婚するらしいんだ」
「お義父さんお亡くなりになって三年よね」
「それで去年知り合ってな」　
　癖のある長い黒髪で上を髷にしている優しい顔立ちでスタイルのいい一六二位の背の妻に対して話した。
「今年な」
「再婚ね」
「ああ、親父が死んで三年で」
「喪が終わって」
「それでらしいけれどな」
「じゃあお祝いしないとね」
　妻は夫に明るい声で話した。
「私お義母さんにはよくしてもらってるし」
「母さん優しいからな」
「だったらね」
「いや、お祝いだけれどな」　
　泰造は妻に項垂れた顔のまま話した。
「それ考えてるんだよ」
「何をプレゼントするか」
「いや、お祝い自体しようかどうかってな」
　その様にというのだ。
「考えてるんだよ」
「あの、相手の人が」
　妻は夫に若しやと思って問うた。
「何かあるの」
「今度実家行って紹介してもらうからな」
「その時になの」
「相手の人と会おうな、俺もまだ相手の人の話を聞いただけで」
「お会いしてないのね」
「だからはっきり言えないけれどな」　
　それでもというのだ。
「どうもな」
「ヤクザ屋さんとか変な活動家じゃないわね」
「普通の会社員らしいよ」
「だったら問題ないわね」
「それが大ありなんだよ、どうなんだろうな」
「ヤクザ屋さんとかじゃないといいじゃない」
「そうか？」
「ええ、プレゼント買ってね」
　義母の再婚のお祝いのというのだ。
「そのうえで行きましょう」
「そうするか」
　夫はまだ不本意そうだった、だが。
　妻の笑顔での言葉に頷いた、自分はどう思っても妻が正論だと感じてだ。そして実家に行ってだった。
　亜紀と共にプレゼントを差し出し母の再婚相手と会った、母の横にいたが。
　長い腰まである銀髪に透き通った肌、銀色の切れ長の長い睫毛の目に細長く奇麗な眉を持つ銀色のスーツと膝までのタイトスカートの若い女性だった、女性は二人にぺこりと頭を下げてから名乗った。
「ミカエラ＝ポップです」
「チェコから来たのよ」　
　泰造の母の隆子が言ってきた、五十代であるが瑞々しい肌で顔には皺もシミもない。形のいい眉で黒髪は長く光沢がある。切れ長の穏やかな目で細く奇麗なカーブを描いた眉である。背は一六〇程でミカエラと同じ位だ。そして胸が目立っている。彼女はダークブルーのスーツに膝までのタイトスカートにストッキングといった服装である。
「同じ職場でね」
「そこでお知り合いになってですか」
「そうなの、それでなのよ」
　隆子は亜紀に微笑んで話した。
「お付き合いして」
「そうしてですか」
「今度結婚することにしたの」
「宜しくお願いします」
　ミカエラも挨拶をした。
「プラハ出身です」
「首都の」
「はい、そして」
　そのうえでというのだ。