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ハッピークローバー

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第百十九話 他の国から見ればその十五

「英語が浸透しないみたいよ」
「だから結構アメリカで色々あるのよね」
「アメリカ人だけれど」
「その中で差別されてるのよね」
「あそこの人達もね」
「そうよね」
「日本じゃ何でもなくても」
 そう思われて日本人が接してもというのだ、事実横浜大洋ホエールズにいた助っ人のポンセがこの地域出身だったことは意識されなかった。
「あっちじゃね」
「差別されてるわね」
「ええ、ただそのプエルトリコの人達よりも」 
 スペインの娘は真面目な顔で話した。
「ネイティブの人達は」
「深刻なのよね」
「うちの学園では普通にいても」
「アメリカではね」
「居留区にいて」
 そうしてというのだ。
「それでね」
「普通に暮らしているかっていうと」
「違うからね」
 アメリカに最初からいる人達だがというのだ。
「アメリカ人って何か」
「移民の国だしね、あそこ」
「他のところから来た人がね」
「アメリカ人ね」
「だからアフリカ系の人達も」
 差別が問題になることが多い彼等もというのだ。
「あくまでね」
「アメリカ人の中でってことね」
「アメリカ人だから」 
 そうみなされているからだというのだ。
「普通に野球出来て他のスポーツもね」
「出来るのね」
「居留区にいなくて」
 そうしてというのだ。
「進学も就職もよ」
「普通に出来るのね」
「そうよ、けれどね」
「ネイティブの人達は」
「中々ね」 
 居留区にいることが多くというのだ、ただそこから出てその外の世界で暮らす人も存在していることも事実である。
「そうもいかないのよ」
「アメリカもややこしいわね」
「それも差別よ」
 尚西部劇のカウボーイやガンマン、騎兵隊にはアフリカ系の人もいた、特にカウボーイの三分の一はアフリカ系であった。
「アメリカ人として差別されてるか」
「アメリカ人に入っていないか」
「それでプエルトリコの人達はね」
 その彼等はというと。
「ギリギリ?」
「アメリカ人なの」
「そうかもね」
「私にとっては何でもないけれど」
「プエルトリコの人でも」
「この学園にもいるし。犯罪者でないなら」
 そうでない限りはというのだ。
「どの国の人でもね」
「いいのね」
「別にね」
「その考えも嬉しいから。私ずっと日本にいたいとも思ってるし」
 スペインの娘は一華に笑って話した。
「一ちゃんもその考えのままでいてね」
「何かよくわからないけれどね」
「そうであってくれるわね」
「犯罪者でなければいいわよ」
 一華はまた言った。
「それならね」
「その考えでいてね」
「ええ、このことは変わらないわ」
 スペインの娘に答えた、二人はたまたま昼休みに図書館で会ってそうした話をした。一華にとっては思わぬだが彼女の人生差別について考えるその中でとても大きなものになっていったのは大人になってから気付いたことだった。差別について考えるうえでよかったと幸せに感じて思う様になった時だった。


第百十九話   完


                  2024・1・23 
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