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不可能男との約束

作者:悪役
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抑制という名の衝動

 
前書き
抑えた心は落ち着かず

しかし、それは裏切らない

それが今までの自分を支えたものなのだから

配点(抑制) 

 
ようやくかと内心で熱田は呟いた。
長かった。
十年は本当に長かった。
別に、トーリと約束したことについて何の不満も、後悔もないし、間違ったことをしたなんて微塵も思ってはいない。
しかし、不満はなくても───やはり、満足感は得られなかった。
自分で決めたこととはいえ、剣神が剣を表だって振るわないというのは、やはりストレスが溜まるものである。
文字通りの剣神にとっての半身をずっと表だって使わなかったら、ついその半身が体育などを見ていると疼くというものである。
だけど、それでも押さえ続けてきた。
トーリが動くまで我慢すると自分で誓ったのだ。この中で一番悲しみに囚われて、後悔を抱き続けた親友が動くと決意するまで絶対に我慢すると決めたのだ。
それくらい我慢できなかったらトーリの横に立つ資格はないと思ったからである。
そしてその我慢は報われたと思う。
今はもう臨時生徒会は終わりに向かっている。
直政の地摺朱雀に対して、シロが相対し、勝利し、ネイトが騎士代表として降伏をしようとする相対に鈴が出ることによって騎士の誇りを思い出させ、そして今は正純とトーリとの相対。

……まさか初っ端からいきなりかましてくれるとは思ってもいなかったぜ……。

この臨時生徒会を始める理由であったホライゾンを助けに行くという俺達の目的を一瞬でポイ捨てして「やっぱ、ホライゾン救いにいくの……止めね?」なのだ。
お蔭で鈴が倒れたり、正純が狼狽したり、喜美が踊りだしたり、ウルキアガが無駄に竜息を吐いたり、イトケンが何故かサムズアップしたり、ネンジのねばねばが何故か光ったりと大変だった。
というか、正純と鈴以外の人間の行動は狂っていたので、こりゃ駄目だなと一瞬で判断したが。
相も変わらず、人の意表を突くことが上手い馬鹿である。
あ。だから馬鹿なのかと改めて理解した。

『おい! 初めて馬鹿を哲学的に理解できたぜ!!』

『馬鹿は馬鹿を理解できるっていう哲学ね……』

『流石はトーリの親友だな……拙僧、思わず塩を撒きたくなってきた』

『塩で撃退出来ればいいんだけどねぇ……』

『ナルゼ……ウルキアガ……ナイト……てめぇ……何か俺に恨みでもあんのかよ……』

表示枠で密かに皆にメールを送ると痛烈な返しで思わず呻いてしまった。
ヘルプに智の方に目を向けると、何故か良いんですよと儚げな微笑をされて顔を背けられた。
敵はやはり、世界ではなく身内であるらしい。
今度絶対復讐してやると心に誓い、トーリと正純の相対を観戦する。
そこにはうちの欠食従士であるアデーレが何か桶を持って正純に渡している。
そこから出てるのは黒藻の獣である。

「あれって……」

「確か下水道とかに住み着いているよね。色々と汚れとか取ってくれるんだけど……それのせいでこっちに懐かない……じゃなくて近寄らないんだよね。こっちに色々と気遣って。ナイちゃん的には、別に気にしなくてもいい事なんだけど……」

「そうだな……私も以前、金を綺麗にしてくれないかと頼んで小銭を渡すと金貨かと疑いたくなるくらい綺麗になって返してくれた───とてもいい存在だぞ」

「うわぁ……」

守銭奴の言っている事に全員で引き、無言で視線を逸らした。

「やだっ、シロ君! そんなお金の魔力を更に引き出すためなら獣の力も借りるなんてもう! 素敵過ぎるよっ」

逸らした先にも金に狂った守銭奴メスバージョンがいたので、皆は黙ってトーリ達の相対に集中した。
狂人に視線を向けたら感染する。
そう思っていたら守銭奴二人がため息を吐き、そしてシロがだがと前置きをして言葉を作った。

「……あんな風に名前を覚えて喋りかけてくる光景なんて見たことないぞ」

黒藻の獣達が願っているのはただホライゾンの救出だった。
ただただ助けてほしいと正純に願っていた。正純は政治家だから、お金を使ったら、ホライゾンも助けてくれると言って、ここからでは上手く見えなかったが、何か綺麗なものを正純に渡していた
何なのかは解らないが、理解できることはある。
正純の体が震えている。
何の感情でその震えが起きているのかを考えるのは無粋と言うものだろう。それを持つ資格があるのは体感している本人だけだ。
だから、次の言葉で皆で納得した。

「───そうだ、な。政治家が意志を通さなきゃ政治家じゃないもんな……」

そして正純が選んだ表情は微笑だった。
それでいいと熱田も思う。
悩んで苦しんで出したのならば、最後には笑わなきゃ損だ。だから、トーリも喜美も満足そうに笑っている。やっぱり、このお馬鹿姉弟は似た者姉弟だぜと改めて実感する。
あのおばさんの教育の賜物かねぇ……いや、だったら何故喜美はホラー相手にあんなヘタレているのか?
という事は自前か。
自前であそこまで馬鹿な全裸と狂った変態女が生まれてしまったのか。原因は一体なんだ?
改めて考えるが、考えるとアホらしく思えてきたので、止めた。
そしてそれ以降、正純は完璧に自分の意志で口を動かして、ホライゾン救出の術と理由を語った。
曰く、ホライゾンが三河君主として責任を取る必要がないとのこと。
そして三河を航空都市艦として認定して三河消失をなかったことにする。そうすれば誰も責任を取らなくてもいいとのことだった。
思わず、皆で息を呑む結論だった。
だが、それならば……と誰もが思った瞬間に空に一つ巨大な表示枠が出てきた。そこには白い長衣を纏った男。

『───詭弁だな』

「教皇総長……」

『おう、そうだ。K.P.A.Italia の教皇総長インノケンティウスだ』

ホライゾンに自害を求めた張本人が現れた。
ぶっちゃけ第一印象はただのおっさんだったが、一応臨時生徒会に関わる気はないと言ったので、素直に言っては不味いだろうと思い黙っといた。
それにこっから先は完璧な政治系な話なので、戦闘系の俺には全く理解できないだろうと思い、暫く己の内を見つめる事にした。
内容は聞いていても俺には理解できるとは思えねぇし、気に入らなきゃ斬ればいいだけだと思っているので大丈夫だと己を理論武装して少し目を閉じ、意識を内に向ける事で外界を遮断した。
集中する事なんて、この十年で慣れたものである。
そして集中して考える事なんて、今は一つしかない。
すなわち、これからどうなるかという単純な疑問だ。
何せ、どう足掻いても、最低でもこのままK.P.A.Italia に喧嘩を売ることは確かだろう。そうなると必然、聖連に喧嘩を売る事にもなる。
完璧に敵に回すというわけではないかもしれないが、それでも出会ったら肩を組むなどという事が出来る関係じゃなくなるだろう。
とか言っても、前からそんな仲じゃないので別にいいかもしれないが。
でもまぁ、そうなると基本、世界各国は聖連に従っているような関係だから、そうなるともしや世界大戦になるかもしれない。

……世界VS武蔵か……。

笑える展開だ。
もしくは燃える展開だ。そういうのは一度はやってみたいものだと思っていたからある意味ラッキーかもしれない。
男なら一度は世界征服を夢見るだろう。
勿論、トーリがその気がないのならばする気はないが。
まぁ、あの馬鹿は馬鹿だから何をするか解らないが。そこが面白い所なんだがな。
そしたら自分の肩を叩く感触がしたので、目を開けてみると目の前に智の顔があった。

「───ああ、智か。どうした?」

「えっ。いや、えっと……話、聞かないんですか?」

「……俺が聞いても理解できないぜ……」

「……何故にそこで誇らしげな表情を浮かべますか……?」

おかしい。
何故そこで奇妙なものを見るような目つきでこちらを睨んでくるのだろうか? 最近、この幼馴染は視線で人を脅す事も習得しているようである。
こんな未知な体験はかなりいらないものであった。
そうしているとはぁと何故かかなり深い溜息を吐きながら、こちらの隣に座ってきた。
まぁ、こうなる事は大体予測できたので、俺は気にせず普通に座っていた。周りは教皇総長と正純の討論に夢中だったが、喜美だけがこっちにちらりと視線を向けて苦笑している。
あっちの幼馴染は逆にいらん所で鋭いので困ったもんだと思い、智に見えないように角度を調節した位置で手を振るってこっちを見んなと言っておいた。
すると何故かあっちはこっちに尻を向けてぷりぷりと無駄に尻を回すという異常行為をして来た。
まるで意味が解らないので思わず、頭に痛みが走ってしまったがここは無視一択がグッドエンドの最善の一択だと思い、無視した。

「……これからどうなるんでしょうね……」

そして智の台詞はさっきまで俺が考えていたのと同じことだった。
違うとすれば俺は未来に対してどうなるかと多少期待しており、智は未来に対してどうなってしまうのだろうかと不安を抱いている事だろう。
これに対しては言えることはない。
未来なんて読める筈がないのだから。だから、そういう意味では聖譜は違うと言ってやりたいが言っても仕方がない。
智は何時もより少しだけ沈んだような表情でこちらを見てくる。そんな彼女に言えることは一つしかない。

「とりあえず───昨日まで過ごしてきた日常じゃない事は確かだな」

「……はっきりと言いますね」

「お前が黙って、沈んだ表情でこっちに相談してくるときは甘えたいと思っているときだからな」

苦笑する幼馴染に長い付き合いだなと内心呟く。
この中で一番付き合いが長い少女なのだから、これくらいは読み取れて当然である。

「仕方ねぇよ……失ったもんは戻って来ねぇ。でも、逆にそれは大事だったからとも言えるだろ? じゃあ、つまり悪い人生を送ってたわけじゃねぇって事だろ───この外道共と出会ってしまったこと以外」

「良い事言ってたのに最後に毒を蒔きましたよ!!」

周りが何故か最後の台詞にだけ反応して、お前に言われたくねぇ! などとほざいてきやがった。
とりあえず嘘を吐けと叫んで、お互いがお互いに殺意を向けるという修羅場を発生させた。
皆、考えている事は同じだ。
すなわち、この外道が……!
非常に殴り合いたかったのだが、各国などの目線があったので、全員舌打ちすることによって今回はお開きにすることにした。
決着はいずれ……と目で語り合う俺達。

「……この外道達は……!」

その如何にも自分は外道じゃないですけどねという口調に全員がぐるんと首を回して智の方を見る。
それに何か危機でも感じたのか、智は身構えながら問うた。

「な、何ですか……!」

「いやー。アサマチのまるで自分はそんな外道じゃないですよ発言に思わず驚いちゃってね」

「そうね……武蔵最強のズドン巫女の二つ名を得ていて、そして浅間神社の特権を自由自在に使うある意味武蔵最強の巫女の癖してね……お蔭で私の同人誌で浅間は物凄い活躍してるわよ!」

「それに僕達が青春を溢れさせている時に、物凄く都合よく浅間君が来て、煩悩滅殺術式で雷とか落とすじゃないか……僕としてはそのコミカルなシーンを小説のネタに使えるからいいんだけどね」

「冗談じゃないぜ……俺なんかこの前、普通に歩いている最中にふと巨乳揉みてぇ……って思っていると、物凄い轟音と強烈な衝撃波を感じたと思ったら、吹っ飛ばされていたんだぜ……あれが矢と気づくのに時間がかかっちまったぜ。しかも、吹っ飛んだら行先は女風呂だったから、そのまま番屋直行。最悪だぜ……」

「……! そ、そこに幼女はいましたか!? だとしたら小生は許しませんぞ! この巨乳フェチが……!」

「一番最後は面倒だから無視しますけど、何ですかその私が悪いみたいな発言は! 嫌だったら、そっちが外道を止めたらいいじゃないですか! そっちが止めたら止めますけど?」

「お、脅しにきやがったぞ……!」

隣の巫女に対して全員で恐怖の視線を向けるが、本人は笑顔だった。
そんな冗談をかましあっているが、それでもちゃんと正純たちの話は聞いていた。
現に

「ハイ、チェックーーーーーーー!!」

「……え」

「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

正純のズボンが下される瞬間を男子メンバーは見逃さなかった。
俺は見ようとした瞬間に智の何かによって吹っ飛ばされたが。
吹っ飛ばされている間にシロがハイディに目を潰されているところを目撃した。しかし、あの商人は正気じゃない行動をとった。
痛みに悶えるよりも、この映像をリークすることによって金を得る事を選んだのである。

恐ろしいくらいの金への執着……!

そんなツッコミを入れようとして、そして地面に激突。
する寸前に、まずは右足から地面に下す。そのまま踵まで地面に着けるが、このままでは衝撃のせいで、また後ろに転ぶ。
なので、そのまま左足も後ろに置いて、数歩下がる。そのまま慣性が無くなるところまで歩いて、ようやく止まったところで俺を吹っ飛ばしたのが矢だった事に気付く。

「おい智! 俺はトーリみたいにボケ術式持ってないから、ボケてもダメージは受けるんだぞ! ───躊躇いがねぇ巨乳巫女だぜ!!」

股間に二連打が入った。

「あぱぁ……!」

死ぬ。
これは死ぬ。間違いなく死ぬ。死なない方がおかしい。痛みを超越して、もう何故か下半身どころか体全体が痛く感じてしまう始末。股間にはもしかして体全体に繋がる神経でもあったのだろうか?
とりあえずこれは痛すぎる。
周りの男性陣はもう怖いものを見るどころか、地獄を見るような瞳でこっちを見て、そして逸らした。
せめて手を貸せよ! と思うが、そんな事を言える痛みではない。
またもや、女の子座りで痛みを耐えていたら、智が目の前に来て微笑んでいた。

「ふふ、シュウ君───私はそんなカラダネタを言う子にはお仕置きをしちゃうんですよ」

「お、お、お、おっかねぇ……!」

「おっかない? とんでもないです───何も悪い事を言わなかったら何もしませんよ?」

「J、Jud.……」

いい子ですねーと呟きながら、智はこっちの頭を撫でてきた。
何時もなら嫌がって、避けるところなんだが、痛みに耐える事しかできない状態で体を動かすことも出来なかったこともあるし、女の子に撫でられているというより猛獣に頭を撫でられている感じしかしないのである。
お蔭で汗がさっきから引かない。
蛇に睨まれた蛙という単語が頭の中で何度も繰り返される。今度から怒らせるときは股間に何か防具でもつけた方がいいかもしれない。
とりあえず、ようやく痛みをこらえて立ち上がり、さっきまでいた所にまで戻って座った。智も付いてきたが、流石に頭からは手を離していた。
していなかったら、俺が離れていたが。
それにしても

正純が襲名を失敗したねぇ………。

正直意外だったという思いしかなかった。
それは単純に正純が襲名を失敗するような人物ではないと勝手な偏見を持っていたからである。
女であることは実は予想していた。歩き方とか、些細な仕草とかがかなり女の子していたから、もしかしたらという思いは持っていた。
それをなぜ隠していたのかという理由を今知った。
正純は自分には欠けている政治的思考や判断、そして単純に頭が切れる。文系の能力としてはかなり上だと思っていたのである。
戦闘とはまた違う戦う才能を持っている人物と俺は正純の事を判断していた。
真面目過ぎるのはどうかと思うが、それは武蔵の住人が狂っているからそう思えるのかもしれない。出来れば正純が狂わない事を祈ろう。
何せ、そうじゃなきゃ清純キャラが鈴だけのままになってしまう。このままではその内、狂気濃度が充満して、何れ俺まで狂ってしまうかもしれない。
頼むぜ……! と本気で願う。
そしてインノケンティ……面倒だからおっさんでいいだろう。おっさんからの意地悪のフォローは全部トーリがやってるようだから大丈夫だろうと思い、再び目を瞑る。
目を瞑っている感触が心地よかった。

智に……ネイトか?

二人の視線を感じるが、今、胸裏で大きくなっている感情に目を向けているから、そっちを見ようと思わない。
二人には悪いが、偶にはセンチにさせてくれやと思いながら、そして再び長かったと思う。
でも、絶対にこの臨時生徒会に参加するつもりはなかった。
自惚れるつもりはないが───俺の行動で、周りが動こうとしても駄目なのだ。トーリの覇道なのだから、その始まりはトーリの意志で始めるべきだし、そこに俺と言う不純物が混じってはいけない。
周りの奴らは良い。この梅組メンバーはトーリを王にする為に頑張り、そして自分達の夢を叶えるのだから。
あくまでトーリの夢なのだから、この物語では主人公はトーリでなければいけないのだ。
別に俺はトーリの夢を手助けしないとは言わない。むしろ、手伝う気満々である。
だけど、いや、だからこそ───この覇道はちゃんとトーリだけのものだと周りに認識してもらわないと困るのだ。
俺がいたから、トーリが動いたなどと余計な無粋はされたくないのだ。俺がいなくてもトーリは動いたという周りの認めが欲しいのである。
トーリ本人はそんなのどうでもいいじゃんかようとか言って苦笑するだろうが、そうはいかない。
俺がせっかく律義に約束を守ったのだから、お前も守ってくれなきゃ釣り合わないだろうが。
お前の横に立ってやるとは言ったが……合わせてやるとは一言も言ってねぇ。俺が横で馬鹿をして欲しければ、お前が自力で横に来てもらわないと、俺は無視するぞ。
でも、そうはならないと思っていた。
何も出来ねぇ馬鹿の癖して、いや、だから諦める事も出来ない馬鹿らからこそ、絶対にそんな事は起きないと思っていた。

ああ───だからこそ、お前を俺が誇らせるために決着を早くつけろよ親友。

その瞬間を聞き逃さないために、外界に耳を澄ませる。
すると、何か嫌な予感を感じるようなセリフをおっさんが言った。

『成程なぁ───決裂するわけだな。そうだよなぁ。お互いに平行線でなしに。そうかそうか───じゃあ、ガリレオ、やれ』

言葉と共に今まで感じていなかった場所に急に気配が生まれる。
それに体が勝手に反応し、目を開ける。
既に視線と体は勝手に生まれた気配の方に動いている。視線に籠もる力はもとより指先や足先まで力がいい感じに貯められていく感覚がある。
体が反応している。
剣神なのだから、勿論、剣を振るう場所───すなわち戦いの雰囲気を。
体育などの訓練などとは違う。正しく本音を出し合える場の雰囲気と匂いを自分の血と肉と意識が反応する。

「……そっちです!」

智の声が聞こえ、ようやく全員が俺が感じ、見ている方に視線を向けた。
そこにいるのは魔神族であった。
K.P.A.Italiaの制服と黑の外套を身に纏った赤の魔神。顔には眼鏡をかけている。おっさんが言った名前から誰かは想像できる。
K.P.A.Italia副長 ガリレオ・ガリレイだ。
だが、周りの馬鹿どもの対応は見事で、既に動こうとしている人間がいるので、ここは素直に頼りになる馬鹿どもだなと思った。
言うとつけあがるから絶対に言わないが。
ともあれ、少しむかついた。
せっかく、俺が似合わねぇ禁欲かまして事の経緯を楽しんで見ていたのに最悪な気分だ。
素晴らしい本を見ていたのに、終わる前にネタバレをされた気分だ。はっきり言って面白くねぇ。
そうと決まれば、やる事はただ一つ。


つまり───つまらん輩は殴ってご退場願おうか。











「拙・僧・発・進……!」

ガリレオ・ガリレイが公邸に現れた途端、動いたのは半竜であるウルキアガ君であったと浅間は見た。
いや、それとも異端審問官であるウルキアガ君と言った方が正しいかもしれない。
異端審問官の人がすることは名の通り、異端の人間にを審問する事である。だからこそ、彼は今回の戦いに自分は余り参加できないと愚痴っていたのである。
本当ならば彼も暴れたいのだろうけど、夢を蔑ろにする気もないのである。ここにいる誰もがそうだと理解しているので、それに付いては誰も文句は言わないし、そんな甘い仲でもないと理解している。
だからこそ、今回の戦いで唯一の異端であるガリレオ・ガリレイが出てきた時に最初に動いたのかもしれませんねと浅間は思った。
ガリレオ・ガリレイ。
特に説明はいらない有名人物である。
説明するまでもない。要約すれば、旧派に諸に喧嘩を売った異端の人物なのである。
ならば、ウルキアガ君が遠慮をする理由はないし、遠慮するようなまともな性格もしてないので彼は明らか殺る気である。
全身の加速器から竜息を出して加速し、疾走する。半竜の種族特性としての飛翔を如何なく発揮した突撃。
その両手には彼特性の拷問器具の一つであるベンチを握っての突貫。
半竜としての怪力に、飛翔の加速。既に水蒸気爆発もしている。更に武器も含めている。あれでは幾ら魔神族でも、ぶつかったらただじゃおかないですね!
だから、浅間は両手でその決定的なシーンを見たら血とか見てしまいますと思い、隠す。そしてこういう時は悲鳴を上げた方が女の子として正しいと思い、悲鳴を上げた。

「きゃーーー!! ぐしゃげちゃあ!!」

「あんた。偶にかっ飛ばすわよねぇ……」

喜美のツッコミと共に、そしてウルキアガとガリレオの距離は零になった。









ウルキアガは衝突と共に違和感を感じた。
腕に持っているのはベンチは合体して、巨大な鋏みたいな物になっている。人間相手に使うと相手があっさり音を上げてしまうから、これは頑丈な奴に使えよと教えられている審問具。
事実、甲殻系などにこれを使うと堅い外殻を潰すのに、使いやすいし、最後にひねったら素晴らしい声をあげてくれるというすばらしい逸品である。
なのにだ。

……手ごたえがない!

いや、そもそも当たっていない。
目の前の魔神族の手に何時の間にか杖みたいな物が握られていた。
それは

「……鎌か!?」

「いや。これでも戦槌なのだよ」

奇妙な形をしている戦槌であった。
まるで骨……肋骨を編んで作ったかのような槌。ある種の生物らしさを感じるような武器。それに似たような武器をウルキアガは知っている。

「まさか……」

「気付いたかね?」

気付かないはずがない。
つまり、これは昔、級友で今まさに助けに行こうかを議論し合っている少女の一部。

「K.P.A.Italiaに預けられた大罪武装”淫蕩の御身”。まぁ、もっとも正式使用者ではないので、本来の力を発揮できないが、対人レベルくらいの力は出せるものだよ」

まるで生徒に教えるような教師口調で、ガリレオは続きを説明する。

「効果は精々……触れた力を放棄させ遊ぶと言った所か」

言葉と同時にベンチが砕けた。
潰れたのではなく砕けた。分解という砕きだ。砕かれたベンチはバラバラ散り、組み立てなおさなければ使えないだろう。
その結果に、ガリレオは苦笑しながら問うた。

「力を遊ばれた気分はどうかね───とろけるようだろう」

「───行け!」

その言葉と同時に彼の背から一人の少年が出てきた。

「ノリキ!」

「名を呼ばなくてもいい」

何時も通りの無愛想な返事と表情と共に、既に両腕は構えられている。
そして彼が右腕に巻いている荒布を叩くと同時に緑色の鳥居型の術式紋章が展開される。

『創作術式”弥生月”:━━━発動』

ノリキはその腕をコンパクトに構えて、即座にガリレオの脇腹に全力と全速を込めて殴る。
拳が着弾するある種の良い音が響く。
だが

「───それだけかな?」

ダメージはまったくなかった。
魔神族の外殻はそれだけで防具になっている。並の衝撃では砕くどころか触感にすらならない堅さである。
何らかの術式を使っているようだが、ガリレオはそれはどうせ拳の強化だろうと見当を付けながら、それでもこの結果しか起こせてない事を解り易いように教える。

「君の拳は軽いようだ。痩せすぎている事もそうだが、そもそも君は総長連合ではないから、戦闘技能を鍛えていないだろう。嘆くことはない。一般生徒が私に挑んだこと気概は認めよう。だが、私を打倒するには───拳が軽い」

「……同じことを二度言わなくてもいい」

その瞬間、ウルキアガが動いた。

「返してもらおうか……!」

狙うは淫蕩の御身。
元より相手は副長なのである。いくら第二特務である自分であっても、そう簡単に勝てるなどと夢想していないし、狂っていない。
そもそも副長というのは戦闘に狂っている可哀想な生き物であるというのが自分の認識である。
自分みたいにエロゲや審問具に興味がある常識竜とは違って、戦闘しか興味がないのが副長である。
自分達の馬鹿は戦闘何て出来ねぇぜみたいな態度を取っているが、実際は全然違うというのが特務である自分達には解っていた。
何だかんだ言ってミトツダイラもそうだろうと思っている。
あれは戦闘に飢えている獣であると。
だから、あれは副長なのだとウルキアガは内心で納得しながら、戦槌を取りに行こうと腕を伸ばす。

「頼むぜウッキー!! それがあればホライゾンがエロく、そうエロく! いやら晴しいホライゾンになれるんだ……!」

「気が抜けるようなことを言うなーーーー!!」

味方からのまさかの妨害に物凄いダメージを受けたが気にせず、戦槌を盗ろうと腕を伸ばす。
半竜と言うのは魔神族と同じで腕とかは長い。
多少離れているがこれくらいならば……といけると判断できた。
淫蕩の御身の効果は武器限定の能力だと判断している。なら、武器ではない腕ならば触っても弾かれたりはしない。
だが

「おっと───残念だが、王手にはまだ早いな」

言葉によって作られた嫌な予感がウルキアガとノリキに疾った。
だが遅いとでも言いたげに、ガリレオは右手の三本指をこっちに向けて、ポツリと呟いた。

天動説(ゲオセントリズム)

言葉と同時に現象が起きた。
何故か自分とノリキが地面に叩きつけられて、そのままガリレオを中心に円弧を描いて吹っ飛ばされたのである。

「……がっ!」

ノリキの呻き声が耳に入る。
仕方がないと三半規管を乱されたウルキアガも思う。
地面を転がされたというが、それは地面を削るくらいの転がし方のである。自分のように甲殻がある種ならば、内にダメージが積もるくらいだが、ノリキはそうはいかない。
人間なのだから、転がされたことによって皮膚が削られる事によって血が出ている。
運がいいとすればここが土である校庭であったことだろう。
そうでなければ今頃ノリキは戦闘不能であろう。

『おいおい、それ。奪われないでくれよぉ。信頼してるんだからなあ、おい』

「異端の術式を使ったのに、御咎めは無しかね」

『後で地動説の否定証書を提出しろ。それで不問にしといてやる』

「その前に一仕事だな」

そう言って、ガリレオは周りを見回し、そして何故か御広敷を見て一言。

「君だな」

「な、何故にそこで小生が……! 最近、周りからの飛び火が激し……って、皆さん、何故そこで小生から離れるんですか!」

「作戦は決まったわね」

「そうだねナルゼ君。まずは御広敷君が相手の謎の術式を喰らって、地面這いずりまわっている間に、謎の術式の解明&ナルゼ君、もしくはナイト君の遠距離攻撃でガリレオ副長を攻撃。そして隙が出来た瞬間に僕がサインを貰ってくる───完璧な作戦だ」

「おおっとぉ!! 来ましたね!? 書記の唐突な病が来ましたね!」

「いや、でも、最後を無視すればそれが最善の策だと自分も思うで御座る。だから、御広敷殿はここで空に浮かんで歯を光らせる序盤で死ぬキャラになってもらうのが一番で御座ろう───あ、それもむかつくキャラで御座るな」

「本当に最悪ですなぁ!!」

相変わらず共食いが起きてるなとウルキアガは冷めた心で思うが、ガリレオはそこら辺無視したらしい。
体に力を溜める様な姿勢をして、いざ何かをしようとした瞬間。

「そして現れる、格好いい俺様ぁーーーーーーーーーーーーーーん!!!」

彼の肩に馬鹿が現れた。









唐突な感触にガリレオは驚きよりも疑問が先に浮かんだ。

……何時の間に私の肩に乗った……?

完全に知覚出来ていなかった。
そもそも、肩に乗るどころかこちらに来るところですら知覚出来ていなかった。
術式か?
否。
それならば術式を使用した形跡が見つかるはず。流体光か表示枠。何かがあるはずだ。
ならば、加速術式か。
それならば───否、無理だ。
それならば逆にここまで来るのに遅すぎる。加速術式を使っているのならば、元いた場所から、ここまでにそこまで時間がかかるはずがない。
武蔵副長の場所はここに転移する時に一番に確認されている。無能の副長とは言っても副長ではあるのだ。逆にそうやって正体不明でいるのが一番怖いと思っているので、やはり警戒はしていたのだ。
相手が錆び付いた剣であっても油断だけはしていなかった。
自分は副長ではあるが、純粋な戦闘系ではない。むしろ、文系である。魔神族故に身体能力は並の人間を凌駕しているが鍛えてはいない為に逆に並ではない人間には及ばない。
剣神というのは、その最たるものだとガリレオは思っている。
だから、彼は周りの意見など気にせずに、彼を注意していたのだが、この状況を見る限り、まだ甘かったという事だろう。
だから、ガリレオはそのまま淫蕩の御身を持っていない右の腕を肩に突き刺すように振るう。
だが、その直前に

「……!」

また消えた。
いや違う。今回は本当に彼を注視していたお蔭で、絡繰りは解らないが、どうなっているのかは解った。
言葉で表すなら───見えているのに見えていないのだ(・・・・・・・・・・・・・・・)
視覚には映っている。
視界の端に彼の存在が見えている。
だけど、それを何故か知覚できないのである。見えている、だけど見えていない。故に体の反応は止まってしまう、腕も止まった。
そして丁度、目の前に彼の姿が見え……いや、知覚出来た。

「よう。どうした? そんな間抜けなポーズをとって?」

「……いや」

にやにやと笑う武蔵副長の少年。
それを見て、ガリレオは冷静に理解した。
自分が、今、倒れていないのは彼がその気になっていないからであると。

「……元少年」

『ああ、解っている』

表示枠の元生徒である教皇総長が呆れたように目の前の少年を見ながら嘆息した。

『誰だ、奴を無能だとと判断した奴は……節穴にも程があるぞ、おい』

そうだなとガリレオは頷きながら内心では歓喜に震えていた。
そう、解らないのである。
少年が何をしているのか。これから何をするのかも解らない。
そう。解らないからこそ───面白いと笑う。いいぞとガリレオは思う。こうでなくてはいかんとも思う。
未知を前に立ち止まっていては学習にはならない。未知を前に、面白いと思いながら、理解し合うのが学ぶという姿勢なのだと思いながら、声は冷静さを装いながら目の前の少年に問う。

「聞き間違いかな? 君はこの臨時生徒会が終わるまで手を出さないと宣言していた気がするが?」

「ああ、そうだぜ。今でもその発言を撤回していないし、破った覚えもないぜ」

「だが、君は現に臨時生徒会に、このように関わっている気がするが」

「じゃあ、言わせてもらおうじゃねぇか───アホかてめぇ」

「シュウ君! 駄目ですよ! 馬鹿であるシュウ君にも解り易いように言わせてもらいますけど、その人はガリレオ・ガリレイっていって、何をしたかと言ってもシュウ君には理解できないですから、簡単に言いますけど、その人頭いいんです! だから、シュウ君にはアホって言える資格がないんですけど、そんな酷い事言えませんから、婉曲的に言いますけど、もう少し自分の事を知った方がいいですよ?」

「ふふふ、馬鹿ね浅間。それを理解できないから馬鹿なのよ。ね? 現に愚弟も愚剣もトッコンしかできない……あらやだ。噛んじゃった……って突根!? 何それ素晴らしくエロく聞こえるわ!! もう! 流石、愚剣ね! そそり立つ、その根のような剣で突くってわけね!?」

「ねーちゃんに浅間! 何、当たり前の事言ってんだよ! 俺の親友は芸風も馬鹿も突き抜けているから俺の親友なんだぜ!!? そう! 親友、シンユー、シーユー……やべぇ! 何か段々切なさを感じるような存在になっちまったぜ!」

「おいこら。この気狂い幼馴染共。人が格好よくバーーン! と登場したのに何台無しにしてやがる! だが、俺様も大人だ。寛容な態度で応対してやる……トーリは何をしても快楽に繋がるから、無視するけど、智と喜美は後で胸を揉ませてもらうぜ……これぞレディファースト……!」

「言葉の意味、間違ってんぞ!!」

周りのツッコミを武蔵副長は人差し指を立てて、上げ下げすることによって無視した。
些か、理解できない事だったから、これに付いては無視した。
何もかもを理解するのは危険だと判断したからだ。
この世には理解すべき事柄と理解しなくてはいけない事柄と、絶対に理解してはいけないモノがあるのだと経験則で知っているのである。
とりあえず、無言で先を促らせる。
それに嘆息しながら、少年が答える。

「ああ、いや……別にこれが終わった後ならばいくらでも来いよ。敵として完璧に相対する理由が出来たんなら俺は今回のような奇襲は大目に見るぜ? でもなぁ───まだ中途半端なんだよ」

その一言ともに目の前の少年が獰猛な野獣に変わる。
理解している。
目の前にいるのは飢えた野獣であると。

「まだ何も始まっていないんだ。まだ何も決まっていないんだ。まだ何も選んでないんだ。それをしようとしている所にてめえらが邪魔しやがる。はっきり言ってうぜぇの一言だぜ」

「悪いが、これも私達の仕事でね」

「ああ。だから────」

少年は袖からメスを取り出した。
それも両腕から。
武装……と言うには余りにも頼りなく、余りにも細く、余りにも小さい武器である。とてもじゃないが戦闘に使えるとは思えない。
自分の甲殻にぶつくたら直ぐに折れてしまうようなか細さである。
なのに、少年はまだ笑っている。

「それを邪魔するのが、俺の仕事だな」

「……それで敵うと思っているのかね?」

「逆に聞くが───俺に勝てると思ってんのかよ」

傲慢な答えだ。
まるで自分が無敵であるかのような返答に目を細める。
既にこの少年は自分の力を隠す気はなくなったらしい。既にここまで動き始めたから、隠す必要性がなくなったという事だろう。

「何だよ親友! そんなお姫様を守るような騎士様みたいに格好つけやがって! ちくしょう! 俺、惚れちまいそうだぜ!! ───終わったら、俺をあ・げ・る♪」

唐突に不敵な笑顔をそのまま凍らせたまま、こちらに少し待てのジェスチャーをして、後ろに振り返って、そして手には何時の間にか本が握られている。

「あ! それはさっきまで俺が見ていた銀髪特集ページ! 何だよ~。もしかしてシュウも銀髪キャラが好みだったのかよ! 恥ずかしがらずに教えてくれたら俺の厳選エロゲをプレゼントしてやったのに!」

「……」

その笑顔と沈黙のまま、武蔵副長はその本を懐から取り出した火打ち石で燃やし始めた。

「ああーーー!! お、おおおおおめぇ!? 一体何してんのか解ってんですかーー!!? え? 十分に解っている? だから俺は止まらない? 馬鹿野郎! お前が今やってることはすなわち男たちの秘宝を潰すという試み……! つまり、世界中の男共を敵に回してるんだぞ!! それを本当に解ってやってんですかーーー!! え? てめえと世界の男共を一緒にするんじゃねぇ? 皆、お前よりは穢れていないんだから?」

「……何でお前は喋っていない熱田と会話できるんだ……」

「え……?」

「ちょっ! 何だお前らのその無駄に変で高等なスキルはーー!?」

何やら向こうで興味深くない行いが起きているが、興味深くないので無視させてもらった。
武蔵副長がやれやれといった感じで再度こちらを見たからである。

「───ここで私と相対をする気かね」

「勘違いすんな。俺は今はお前らとバトルする気はねぇんだよ。今は。だからなぁ───」

にやついた笑顔をそのままに、彼は挑発を続けた。

「頼むから俺をこのままにさせねぇでくれよ。いいか? まだ俺は戦っちゃいけねぇんだよ。なぁ、頼むよ」

俺に約束を破らせないでくれ(・・・・・・・・・・・・・)

と正反対の表情と感情をこっちに見せながら、それでも彼は戦う気はないと告げた。
その凄惨な顔に、思った事はただ一言であった。

見事と。

正しく敵ながらよくぞそこまで我慢できたものだと思い、そして引けぬことも知っているからこそ、自分は先に動こうと一歩踏み込もうとする。
だが、それは止められることになった。
間にまた別の人物が突如乱入したことによって。

「極東警備隊総隊長、本多・二代」

槍の刃と石突きをこちらと武蔵副長に突き付け、黒髪を結えた侍であった。
その刃のような視線でこっちをつっと見て、そして最後に一言付け加えた。

「双方、ここで刃を引いてくれないで御座ろうか」











 
 

 
後書き
アットノベルスが復活できずにバックをとれていなかったので時間がかかりました……
第六話です。
感想よろしくお願いします 
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