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第百十八話 戸籍謄本その一

               第百十八話  戸籍謄本
 かな恵は湯口事件については調べないことにした、だが部長はその事件の話をした時に戸籍謄本の話をしたので。
 家に帰ってから母に夕食の時に尋ねると母は真顔で答えた。
「あれ滅多なことじゃ出してくれないわよ」
「そうなの」
「戸籍抄本は出してくれるの」
 こちらはというのだ。
「けれど謄本の方はね」
「出してくれないの」
「本人さんが頼んでもね」
「そうなのね」
「部長さんが言った通りよ」
 まさにというのだ。
「本当に本人さんが知らないことまでね」
「書かれてるの」
「個人情報でもね」
 明かされてはならないというそれの中でもというのだ。
「特によ」
「秘密にしないといけないことが書かれてるのね」
「本籍地とかね」
「本籍地なんて何でもないでしょ」 
 かな恵はご飯を食べつつ眉をやや曇らせて母に返した。
「別に」
「そう思うでしょ、けれどね」
「それが違うのね」
「本籍地って言っても色々で」
 それでというのだ。
「関西だと被差別部落多いでしょ」
「同和っていう?」
「その出身だったりね」
「いや、同和だからどうなの?」 
 かな恵は母に眉を顰めさせて返した、曇ったのがそうなったのだ。
「一体」
「それを言う人がいるのよ」
「人間でしょ、結局は」
「差別ってあるでしょ」
「部落差別?」
「そう、昔穢多とか非人とかいった」
「その人達のことなの、だから別にね」 
 娘はあくまでこう言った。
「何でもないでしょ」
「あんたはそう思ってもよ」
「思わない人いるの」
「その人が極悪人でもないとね」
 かな恵は自分の考えを述べた。
「別にね」
「それがね、身分というか」
「身分って」
「そういうの気にする人がいるのよ」
「今二十一世紀なのに」
「もっと言えば穢れね」
「穢れ?」
「穢多って書くでしょ」
 その差別されている人達はというのだ。
「穢れが多い人達だから」
「駄目なの」
「牛や豚を殺してね」
「肉屋さんなんて普通でしょ」
「昔の日本じゃ違ったのよ」
「そうなの」
「殺す、殺生は死の穢れを受けるからって」
「お葬式行ったら塩かけてもらうな」
 父が言ってきた。
「そうだな」
「ああ、あるわね」
「それなんだ」
「お葬式は死の穢れなの」
「それで清めの塩をかけるんだ」
 葬式から帰ったならというのだ。
「頭からな」
「ああするのってどうしてかっていうと」
「お塩は清めの効果があるからな」
「それで魔除けにもなるわね」
「だから悪霊や悪魔退治にも使われるんだ」
「世界のあちこちでね」
「それで清めのことでな」
 その為にというのだ。 
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